近年、性犯罪の増加に伴って痴漢と間違われてたり、犯罪をでっち上げられて逮捕されてしまう冤罪事件が増えており、社会的な問題として注目されています。
性犯罪以外にも、無実にもかかわらず逮捕されて起訴にまで至ってしまうケースも多く、普通に生活していても、突然無実で逮捕されてしまうリスクがあります。
全国的に見て犯罪件数が多めの埼玉県では、特にその傾向が強いといえるでしょう。
無実にもかかわらず逮捕されてしまうと、たとえ後から誤解が解けて釈放されても社会的なダメージを負ってしまう例が多いため、できる限り早く釈放されるように努力する必要があります。
そこで今回は、無実で逮捕されてしまった場合の対応について、逮捕後のプロセスや弁護士に相談するメリットとともに解説していきます。
無実で逮捕されているケースはかなり多い
冒頭で説明したように、近年は痴漢などの性犯罪に関する事件を中心に、無実の人が誤認逮捕されてしまうケースが増加しており、もとの生活に戻れないほどの社会的なダメージを追ってしまう例も増えています。
誤認逮捕とは
誤認逮捕の件数自体は、全国で毎年発生している犯罪のうちの0.1パーセントにも満たない数字ですが、実数をみると、年間300~500人程度の人が誤認逮捕されている現状があります。
刑事事件全体としての割合はかなり少ないとはいえ、無実で逮捕されてしまった人からすれば、自分の生活を脅かされ、仕事や家庭に大きなダメージを負ってしまうわけですから、人生にとって大きなマイナスになることは間違いありません。
もし無実で逮捕されてしまった場合には、すぐに弁護士に連絡して犯罪の事実がないことを法的な視点から証明してもらうのがベストです。
冤罪と誤認逮捕の違い
冤罪とは本来は無罪の人間が刑事裁判で有罪となってしまうことを、誤認逮捕は警察の認識違いにより無実の人を逮捕してしまうことをそれぞれ指します。
ただし、無実の人が逮捕・勾留され、起訴されてしまうことをまとめて「冤罪」と呼ぶ場合もありますから、そこまで厳密に区別しなくてもよいでしょう。
誤認逮捕の問題点
誤認逮捕は無実の人を不当に長期間拘束することになるため、著しい人権侵害であることは間違いありません。
しかし、たとえ取調べの場でやっていないことを主張しても、警察や検察などの捜査機関は被疑者の話をまともに聞かず、まるで有罪が決まっているかのような強引な取調べを行うことがあり、後から問題となるケースは少なくないのが実態です。
その背景として、取調べには明確に期限が設けられていることがあります。
警察の取調べに許されている期間は48時間、検察の場合は勾留期間を考えなければ24時間しかありません。そのため、警察や検察は限られた取調べ期間中に、何とか逮捕した被疑者から自白を引き出そうとして、時に声を荒げるなどして厳しくあたる場合があります。
そのような状態で長期間孤独な状態に置かれた無実の被疑者は、たとえやっていない犯罪行為であったとしても、早く認めてしまって楽になりたいという心理状態になってしまいがちです。
その結果、無実にもかかわらず起訴されて刑事裁判にまで至ってしまう可能性もあります。
逆に、必死に無実を主張することによって検察官の心証が悪くなり、勾留されやすくなってしまうというジレンマもあります。
いずれにしても、無実で誤認逮捕されてしまうと、警察の取調べだけでも最長で48時間(2日間)身体的な拘束を受けることになるため、すぐに弁護士に連絡して犯罪の事実がないことを証明してもらう必要があります。
無実で誤認逮捕されたらどうすべきか?
それでは、万が一、自分が無実にもかかわらず誤認逮捕されてしまった場合、どうすればよいのでしょうか?
残念ながら、被疑者として逮捕されてしまうと様々な制限が課されるため、自分だけでできることは限られていますが、少なくとも以下の行動はするべきです。
すぐに弁護士に相談する
真っ先にすべきなのは、早急に弁護士に連絡して相談することです。
長期間の身体的拘束のなかで、さらに厳しい取調べを受けていると、どうしても精神的に追い詰められて冷静な思考ができなくなってしまいます。
そんな状態で捜査官の誘導にしたがって自白をしてしまえば、やってもいない犯罪で起訴されてしまう可能性が出てきます。
そうならないためにも、早急に弁護士に来てもらい、犯罪の事実がないと証明できる事実や証拠集めをする必要があります。
川越の場合は、実際に取調べが行われる川越警察署やさいたま地方検察庁(川越支部)に来てくれる弁護士事務所の連絡先を押さえておきましょう。
黙秘することも重要
取調べ中のプレッシャーで自白してしまわないようにすることが重要ですが、自分が無実であることを主張してもまともに聞いてもらえない可能性があります。
むしろ、余計なことを話して捜査官の心証を悪くしてしまうよりは、黙秘を貫くことがベストな選択となることもあります。
被疑者には自分にとって不利な証言は一切しなくてもよいという「黙秘権」が与えられており、さらに黙っていることを理由に不利な扱いを受けないということが憲法で保障されています。
また、自白は犯罪の証拠とすることができない、とされていますが、残念ながら日本の取調べでは被疑者の自白が刑事裁判でも大きなウェイトを占めているため、捜査官は様々な方法を使って何とかして被疑者から自白を引き出そうとしてきます。
たとえ無実を裏付ける話をしたとしても、犯罪の事実を認めないために嘘をついていると思われてしまう可能性が高く、信じてもらえることはほとんどないのが実態です。
むしろ細かい矛盾点を追求してくるなど逆効果になってしまうリスクがありますから、こちらの話をまともに聞いてくれない場合は黙秘を貫くことが重要です。
事実と違う供述調書にはサインしてはいけない
刑事事件では、警察や検察が取調べによって得られた情報を供述調書にまとめて後の裁判の証拠とします。
いわゆる「調書をとる」とは、この供述調書に取調べの内容を記録することをいい、最終的には捜査官がその内容を読み上げて被疑者自身が署名(サイン)と指印をする、という流れになることが多いです。
しかし実際は、被疑者に対して供述調書に署名押印するのを求めることができるだけであり、被疑者側に押印義務があるわけではなく、嫌ならば署名押印を拒否しても構わないことになっています。
しかし捜査員はその旨を告げず、自分達にとって都合のよい内容の調書にサインさせて裁判の証拠としようとするケースがありますから、少しでも事実と違う内容の供述調書にはサインしないようにしてください。
もし犯罪の事実を裏付けるような、虚偽内容の供述調書に署名押印してしまうと、後の刑事裁判で不利な事実の証拠として認められてしまう可能性が高くなります。
特に供述調書は被疑者の犯罪を印象づけるような表現が用いられることも多いですから、少しでもおかしいと感じたらサインを拒否することが重要で、たとえ捜査員に強く言われたとしても拒否する姿勢を貫きましょう。
ただし、頑なに拒否し続けるのも精神的に相当なプレッシャーとなりますから、弁護士に協力してもらって不利な供述調書をとらないように働きかけてもらう必要があります。
無実で逮捕された場合に弁護士を呼ぶメリット
これまで説明してきたように、無実にもかかわらず逮捕されてしまった場合には、できるだけ早く弁護士に連絡して弁護活動を行ってもらうことが必須となります。
弁護士ならば、家族が面会できない取調べ期間中であっても自由に被疑者と面会でき、法的な視点からアドバイスができますし、取調べによって追い詰められた被疑者の精神的なサポートもしてくれるほか、先に説明した黙秘や供述調書の拒否などについてもアドバイスがもらえます。
また、検察官に勾留しないように働きかけることができますし、たとえ勾留が認められても裁判所の勾留決定に異議申し立てを行うこともできます。
他にも弁護士に相談するメリットは多くありますが、詳しくは以下の記事で説明していますので、ぜひこちらをご覧ください。 もし、家族や大切な人が川越で逮捕されてしまったら、そのあとどうなるのでしょうか…? ドラマや映画で逮捕されるシーンは見たことがあっても、実際身内にそのようなことが起きた時、その先どんなプロセスをたどっ ... 続きを見る
逮捕されたらどうなる?逮捕後プロセスを弁護士が詳しく解説
誤認逮捕で無実を証明するために必要なこと
次に、誤認逮捕されてしまった場合に無実を証明するうえで必要なことを説明しますが、以下のいずれについても、事前に弁護士と相談したうえでしっかりと捜査機関(警察や検察)に主張していくことが重要となります。
犯罪行為が不可能だったことを立証する
無実を証明するためには、まず容疑をかけられている犯罪行為が不可能だったことを証明することが重要です。
俗に言うところの「アリバイ」を立証するということです。
たとえば、事件当時に犯行現場にいなかったことを主張し、それを裏付ける事実を出すことができれば、本当の犯人と被疑者が同一人物ではないことが証明できますから、たとえ起訴されて刑事裁判を受けることになっても、無罪を勝ち取るための非常に強力な証拠となります。
ただし、繰り返しになりますが、はじめからこちらが有罪だと決め付けている捜査員に対して主張しても、まともに聞いてもらえない可能性が高いです。
犯罪を否定する事実や証言がある場合は、まず弁護士にそれを伝えて代わりに主張してもらうことが重要となります。
犯罪の証拠としている事柄に対する異議
捜査官が取調べのなかで、犯罪の根拠としている事柄(物や関係者の証言など)に対する異議申し立てをすることも重要です。
事件の証拠には被害者や目撃者の証言や物証などがありますが、そのなかでもこちらに不利になるものに関しては、それが本当に証拠になるのか、合理性があるのかを確認していくことが大事です。
当然、このあたりも弁護士の協力のもとで行う必要があります。
特に冤罪事件の場合、被害者や第三者の供述には明らかに不自然なものや合理性を欠くものが少なくありませんから、そのあたりを争うことになります。信用性のない供述に関しては、裁判でも証拠として扱われることはありません。
捜査員の違法な取調べや捜査について訴える
これまで説明してきたように、取調べでは捜査員が時に脅迫的な態度によって被疑者に自白を迫ったり、場合によっては暴力を振るって問題になるケースも報告されています。
そういった行為でとられた供述調書は裁判上無効となりますから、積極的に主張していく必要があります。
不当に長い時間拘束したうえでの自白も証拠とは認められないケースがあります。
このあたりも、弁護士の協力のもとでしっかりと主張していく必要があります。
無実で逮捕されてしまったら早急に弁護士に相談を!
近年、社会問題として注目されることの多い冤罪事件で、もし無実で逮捕されてしまった場合の対応について解説しました。
誤認逮捕によって無実の人を長期間拘束することは人権侵害であり、社会的に可能な限りなくしていかなければなりません。
しかし、残念ながら警察から一方的に犯罪の疑いをかけられてしまう事件が毎年一定数起こっているのが現状です。
そして取調べが長期に及ぶと、被疑者はどうしても精神的に追い詰められて事実とは違う供述をしてしまい、その結果、裁判で有罪とされてしまう可能性もあります。
そうならないためにも、無実で逮捕されてしまったら早急に弁護士に連絡し、取調べに対するアドバイスを受けたり、無実の証拠を集めてもらうよう依頼しましょう。
早ければ早いほど不起訴になる可能性は高まりますし、早期に釈放されやすくなります。
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