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民法改正で18歳から成人になるのはなぜ?何が変わるかわかりやすく解説

2022年5月26日

成人年齢の引き下げ(アイキャッチ)

民法が改正され、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。

特に18~19歳の年齢に該当する方や、その年代の子どもをお持ちの親御さんにとっては、成人年齢が引き下げられたことで、何が変わり、何が変わらないのか気になる点は多いのではないでしょうか。

たとえば、「親の同意なく1人で契約ができるようになる」ことで、

  • 18歳でもマンションを借りられる
  • スマホを購入できる
  • クレジットカードで買い物ができる

など、生活の幅が広がるプラスの変化がある一方で、

  • 親が後から契約を取り消せない
  • 一定の所得以上を稼ぐと住民税がかかる

など、注意しなければいけない変化もあります。
同時に、国民年金保険の加入や養育費の支払い、飲酒年齢など、成人年齢が引き下げられても変わらないこともあります。

そこで、なぜ成人年齢が引き下げられたのか、いつから何が変わるのかなどについて詳しく解説します。

なぜ成人年齢が18歳に引き下げられたのか

成人年齢の引き下げ(イメージ)

成人年齢の変更は、明治9年以来、146年ぶりです。

日本では、古来の慣習では元服に代表されるように13歳から15歳になると一人前と認められていましたが、明治9年の太政官布告により20歳が成人と定められ、長く「ハタチ」が一つの節目として捉えられてきました。

今回、成人の年齢が引き下げられた理由のひとつは、世界的に18歳で成人とするのが主流なことがあげられます。

たとえば、OECDに加盟する35か国のうち、アメリカ、イギリス、ドイツ、スペイン、メキシコなど32か国が成人年齢を18歳と定め、韓国が19歳、日本とニュージーランドが20歳としていました。

加えて、若者が自分で決定できる範囲を拡大し、選挙に参加するなどして積極的に社会参加することを促すことも理由の一つとされています。

成人の年齢はいつから変わる?

成人年齢の引き下げ(イメージ)

成人年齢の引き下げは、18歳未満の人だけではなく、すでに18歳になった人にも関係があります

たとえば、2003年1月1日生まれで2022年4月1日時点で19歳の人は、2022年3月31日までは未成年で、2022年4月1日に成人になることになります。

いつから、誰の成人年齢が変わるのかご説明します。

2022年4月1日から18歳が成人年齢に

2022年(令和4年)4月1日、「民法の一部を改正する法律が」施行され、民法上の成人年齢が20歳から18歳に変わりました。

成人年齢が変わることで影響を受けるのは、これから18歳になる人と、2022年4月1日時点で18歳以上20歳未満の人です。

具体的には、2022年4月1日の時点で該当する年齢の人が、以下のように成人になります。

  • 18歳以上20歳未満の人(2002年4月2日~2004年4月1日に生まれた人)
    →2022年4月1日に成人になる
  • 18歳未満の人(2004年4月2日以降に生まれた人)
    →18歳の誕生日と同時に成人になる

成人年齢の引き下げで大きく変わる2つのこと

法律上、成人になるということは、未成年を保護するための権利の制限がなくなることを意味します。

具体的には、

  1. 1人で有効な契約ができる
  2. 親の「親権」が及ばなくなり、1人で住所地や進路を決められるようになる

という2つの意味を持ちます。

18歳以上なら1人で契約ができる

法律上、未成年者は1人で契約ができません。親の同意がなく1人で契約した場合は、親が後から取り消すことができるのが原則です。

今回、成人年齢が引き下げられたことにより、18歳以上であれば、まだ高校生であっても、1人で有効に契約ができるようになりました。

たとえば、次のような契約が可能になります。

  • マンションの賃貸借契約
  • スマートフォンの契約
  • 車の購入
  • クレジットカードの契約
  • ローンを組む

これらが1人でできるようになることで、自由に行動できる範囲が広がります。

一方で、未成年の間は親の同意なく契約した場合、後から「やめておけばよかった」と思った場合は親が取り消せていたものが、成人になると取り消せなくなるので、慎重な判断が必要です。

18歳以上なら親の親権が及ばなくなる

親権とは、親が、結婚していない未成年の子どもを監護・養育したり、財産を管理する権利と義務のことです。

具体的には、子どもが住む場所を決める(居所指定権)、しつけをする(懲戒権)、仕事をする許可をする(職業許可権)等が含まれます。両親が結婚している場合は両親が共同で親権を行使し、離婚した場合は一方の親が必ず親権者になる決まりです。

法改正により、成人年齢が18歳に引き下げられたため、18歳以上になれば親の親権から外れ、どこで生活するか(住居地)、進学・就職先(進路)を1人で決めたり、自分の財産を自分で管理することができます。

成人年齢の引き下げで変わる具体的なケース

そのほかにも、次のようなことが18歳以上になればできるようになります。

  • 訴訟の提起
    未成年者は訴訟能力がないとされますが、18歳から1人で裁判を起こすことができます。
  • 裁判員に選ばれる可能性がある
    裁判員裁判の裁判員に「くじ」で選ばれる可能性があります。
  • 戸籍上の性別の取扱いの変更審判
    性同一性障害で戸籍を変えたい場合、18歳から1人で家庭裁判所に審判の申立てができます。
  • 医師、歯科医師、獣医など国家資格の取得
    未成年者は取れなかった資格がとれるようになり、その仕事につくことができます。
  • 有効期間が10年のパスポートの取得
    未成年者は5年の有効期間です。
  • 住民税の非課税対象から外れる
    前年の合計所得額が135万円以下の場合に利用できた非課税枠が利用できなくなります。
  • NISA口座開設による資産形成
    一般NISA口座を開設し非課税となる投資上限額120万円を利用できます。
  • 女性の婚姻開始年齢が18歳以上になる
    従来男性18歳、女性16歳だった婚姻開始年齢が、男女ともに18歳になりました。

またすでに、選挙権が18歳以上からとなり、投票ができるようになっています。

18歳で成人になっても変わらないこと

一方で、成人年齢が引き下げられても変わらないこともあるので注意が必要です。
具体的には、次の3つは変わりません。

  1. 飲酒や喫煙の制限年齢
    従来通り20歳未満は禁止とされます。
  2. 競馬、競輪、競艇などの公営ギャンブル
    従来通り20歳未満は禁止とされます。
  3. 国民年金への加入
    20歳以上から強制加入となり、国民年金保険料の支払いも20歳からで変わりません。

養育費の支払いはどうなる?

離婚した両親に未成年の子どもがいる場合、親権者ではない親は、子どもの教育や生活を支援するために「養育費」を払うのが通常です。

いつまで養育費を払うかは親が合意して決めますが「子どもが成人するまで支払う」と決めていた場合は、従来通り子どもが20歳になるまで支払う義務を負うと考えられています

少年法と「特定少年」

少年法の扱いについても注意が必要です。少年法は、犯罪をした20歳未満の少年を、大人とは違う手続きで、刑罰を与えるのではなく、更生を支援する法律です。

今回の改正では、少年法の枠組みでは20歳未満は少年のままになりました。
ただし、18歳・19歳については、「特定少年」として、殺人、傷害致死、強盗、放火、強制性交等などの重い罪を犯した場合は原則として大人と同じ刑事手続きで扱われることになりました。

これにより、従来は少年院に入っていたケースでも、刑事裁判で有罪になると刑務所に入る可能性が生じることになります。

成人年齢の引き下げで何が変わるか知れば可能性も広がる

成人年齢が18歳に引き下げられたことで、想像より多くのことができるようになったと感じた方もいらっしゃるかもしれません。

可能性が広がる反面リスクもあるので、重要なことは親子で相談したり、心配なことは弁護士に相談することをおすすめします。

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