日常生活の中で、うっかり他人の駐車場や禁止区域に車を停めてしまったことはありませんか?
「少しの時間だけだから」と思った行動が、法律違反や思わぬトラブルに発展することもあります。
特に、無断駐車が警察に通報された場合は、どのような罪に問われるのか、どのように対応すべきなのかを知っておくことが重要です。
本記事では、無断駐車に関する基礎知識から、場所ごとに適用される法律やトラブル事例、通報された場合の適切な対応方法まで詳しく解説します。
無断駐車における基礎知識
無断駐車がどのように扱われるかは、車を停めた場所や状況によって異なります。
以下では、公有地・私有地、公道・私道の違い、そして駐車と停車の違いについても解説します。
公有地と私有地の違い
土地には大きく「公有地」と「私有地」があります。
- 公有地
:国や自治体が所有する土地のこと - 私有地
:個人や法人が所有する土地のこと
公道と私道の違い
次に、道路は大きく「公道」と「私道」の2種類に分けられます。
道路の区別としては、公有地にある道が公道、私有地にある道が私道です。
- 公道
:国や地方公共団体が管理する道路で、基本的にすべての人が自由に通行可能です。 - 私道
:個人や法人が所有する道路で、原則として所有者の許可を得た人のみが通行可能です。ただし、建築基準法で「通行可能」と指定されている私道もあります。
駐車と停車の違い
最後に、道路交通法では「駐車」と「停車」が明確に区別されています。
- 停車
:荷物の積み下ろしや人の乗降のため、短時間(5分程度)車を停止させている状態です。運転手が車内に留まり、すぐに車を移動できる準備が整っていても停車に該当します。 - 駐車
:車を停止させ、運転手が車から離れて直ちに運転できない状態、または5分以上車を停止させている状態が駐車です。たとえば、荷物の積み下ろしや人の乗降で停止している場合も、5分以上が経過すれば駐車に該当します。
無断駐車はどんな罪に問われる?
無断駐車は、発生した場所によって適用される法律が異なります。
公道は国や自治体が所有する土地であり、公共の利用を目的としています。
一方、私道は個人や法人が所有する土地であり、原則として利用には所有者の許可が必要です。
以上をふまえて、場所や状況によってどのような法律が適用されるかを見ていきましょう。
公道(公有地)で適用される法律
公道での無断駐車は道路交通法によって規制されています。
駐停車違反
駐車禁止場所、または駐停車禁止場所に車を停めた場合に適用される違反です。
違反点数は普通車の場合、
- 駐車禁止場所で1点、反則金が10,000円
- 駐停車禁止場所で2点、反則金が12,000円
放置駐車違反
駐車禁止場所、または駐停車禁止場所で運転手が車両から離れた状態で車を放置した場合に適用されます。
違反点数は普通車の場合、
- 駐車禁止場所で2点、反則金が15,000円
- 駐停車禁止場所で3点、反則金が18,000円
私道(私有地)で適用される法律
私道は個人や法人が所有する土地であり、基本的には民事問題として扱われます。
つまり、私有地の所有者や管理者側との話し合いなどによって解決すべき問題であり、警察は原則として関与しません。
ただし、以下のようなケースでは警察が関与し、最悪のケースでは刑罰が科せられるおそれがあるため注意が必要です。
住居侵入罪
私道や私有地を所有者の許可なく使用する行為が該当します。
この罪に問われると、「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」が科されます。
不退去罪
無断駐車を注意されても退去しない場合に適用されます。
住居侵入罪と同様に、「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」に科せられる可能性があります。
威力業務妨害罪
無断駐車によって業務や日常生活に支障を与えた場合に適用されます。
この罪が成立すると、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科される可能性があります。
無断駐車しがちな場所とトラブル事例
無断駐車が発生しやすい場所と、実際に起こり得るトラブル事例を紹介します。
マンションやアパートの駐車場
マンションやアパートの駐車場は、居住者専用として契約されていますが、近隣住民や通りすがりの方が「短時間だけなら大丈夫」と考え、無断駐車するケースがあります。
たとえば…
近くのコンビニや友人宅を訪れる際、数十分のつもりで駐車した結果、居住者が帰宅後に駐車できずクレームにつながってしまい、警察沙汰に発展することもあります。
マンションやアパートの駐車場は、基本的に私有地に該当します。
そのため、無断駐車をしてしまうと、住居侵入罪や不退去罪が適用される可能性があります。
コンビニや店舗の駐車場
コンビニや店舗の駐車場は、本来その店舗を利用するためのスペースですが、「近くの別の店を利用する間だけ」や「少し休憩するだけ」との考えで長時間駐車するケースがよく見られます。
たとえば…
友人と車内で話し込んだり、目的地の下見だけで店を利用しなかったりといった場合、店舗側から警察に通報されてしまうケースがあります。
コンビニや店舗の駐車場は多くの場合、私有地に該当します。
そのため、無断駐車によって、威力業務妨害罪に問われる可能性があります。
その他にも、無断駐車が理由で来店した方の駐車スペースがなかった場合、売上の減少を理由に損害賠償請求される可能性もあるため注意が必要です。
契約駐車場や月極駐車場
契約駐車場や月極駐車場では、利用者が固定されているため、外部の方が「ここは空いているから大丈夫だろう」と考え、無断駐車してしまうことがあります。
たとえば…
近隣でイベントが開催されている際に、用意された駐車スペースや近隣のコイン駐車場などの空きがなかったため、軽い気持ちから一時的な駐車スペースとして使用するケースです。
契約駐車場や月極駐車場も私有地に該当します。
そのため、無断駐車による駐車スペースの無断利用があると、威力業務妨害罪に問われる可能性があります。
また、駐車場の使用料相当の損害賠償を請求される可能性も考えられます。
警察に通報された場合の対応方法
では、無断駐車が警察に通報された場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
警察からの電話や指示があった場合
警察から連絡を受けた場合は、まずは状況を確認し、指示に従い速やかに車を移動させることが最優先です。
無断駐車が他者に迷惑をかけている状況では、誠実な対応を見せることが重要です。
特に、車両の移動を求められた場合には速やかに従い、トラブルが深刻化する前に解決する努力をしましょう。
また、警察への対応では事実を正確に伝えることが基本です。
不誠実な対応や言い訳は、状況を悪化させる可能性があるため避けましょう。
管理者とトラブルに発展した場合
警察問題が解決したとしても、無断駐車によって駐車場の管理者や他の利用者とトラブルに発展してしまうこともあります。
その場合は、まず謝罪の意を示し、相手の不満や懸念に耳を傾けることが大切です。
相手に対して可能な限りの謝罪や補償を提案することで、トラブルを回避しましょう。
たとえば、「今後は駐車場の利用ルールを十分に確認し、同じ過ちを繰り返さない」と具体的な改善策を伝えると、相手も納得せざるを得なくなります。
反省を示し誠実に対応するのが重要
無断駐車をしてしまった場合は、自身の過ちを素直に認め、反省の態度を示すことが解決への近道です。
相手への謝罪や誠実な対応は、損害賠償請求や裁判といったより深刻な状況を回避するためにも欠かせません。
相手にとって納得のいく対応を取ることが、もっともトラブル回避につながるでしょう。
トラブルの解決には時間がかかる場合もありますが、誠意を持った対応が、その後の結果を大きく左右することを忘れないでください。
ただし、相手からの請求が法外な場合や、ご自身でのトラブル解決が難しい場合は、弁護士への相談を検討されることをおすすめします。
無断駐車のリスクを理解して適切な行動を
安易な無断駐車は、道路交通法違反や刑事罰に該当するおそれがあるだけでなく、損害賠償請求や裁判といったトラブルの原因になる可能性があります。
自分の行動が周囲に与える影響を考え、法律を守った駐車を心がけてください。
もし、トラブルに巻き込まれてしまった場合は、法律の専門家である弁護士への相談も視野に入れましょう。
状況に応じた、もっとも的確な解決策をアドバイスしてくれるでしょう。