子ども・学校 日常生活のトラブル

学校の事故で子どもがケガ!保険や損害賠償などの対応を解説

学校事故

学校で起きる事故は少なくありません。

皆さんの中にも、登山合宿で生徒が雪崩に巻き込まれて命を落とした事故や、組体操で生徒がケガを負うなどした事故のニュースを覚えている方もいるかもしれません。

日常的にも、授業中の事故、生徒同士の悪ふざけでケガを負うなど、学校事故は、内容も程度もさまざまです。

しかし、もし実際に自分の子どもが学校で事故に遭った場合、どういう対応を取ればいいのか、誰に責任を追及すればいいのか、悩むことも多いのではないでしょうか。

学校事故は、学校が公立か私立か、事故の原因が何であったかによって責任の所在が異なり、取るべき対応も変わります。

そこで今回は、学校事故にあった場合の対応方法について解説します。

学校の事故で多い原因別の5つの事例

学校事故

「学校事故」に明確な定義があるわけではありませんが、一般的に、学校の教育活動に伴って発生した事故や災害、または学校の施設や設備の使用に伴って発生した事故や災害で、生徒にケガや死亡などの被害が生じたものをいうと言われています。

学校事故は、類型別に次の5つの事例に分けることができます。

教師の行為が原因の事故

教師の行為が原因で起きる学校事故の例としては、指導と称して体罰を加え生徒がケガをしたケース、体育の授業で無理な練習をさせたり、生徒の体調不良に気付かず運動させて、生徒がケガをしたケースなどが考えられます。

例えば、平成28年に、中学生の男子生徒が部活動中に熱中症になり死亡した事故では、教師が生徒の運動能力や水分補給の状態を把握不足だったこと等が要因の一つとされました。

また、平成29年に、中学生の男子生徒が体育の授業中に跳び箱から転落して首を損傷し、後遺症が残った事故では、教師の適切な指導がなかったことが事故の要因とされています。

生徒の行為が原因の事故

生徒の行為が原因で発生する学校事故は、いじめによる被害や、生徒同士の喧嘩や悪ふざけで発生しがちです。

具体的には、平成29年に、小学生の男子生徒が、掃除時間中に他の生徒を追いかけて転倒し後遺症が残った事例、高校生の男子生徒が、体育の自習後にふざけて同級生をマットで挟んで踏みつけるなどして重症を負わせた事例などがあります。

生徒同士の悪ふざけが原因の事故ではありますが、上記のケースでは教師が適切な措置を講じなかったことも問題視されました。

学校以外の関係者の行為が原因の事故

学校以外の関係者の例としては、部活動や課外活動の指導者として外部の人を依頼し、その人の不注意で事故が起こるようなケースです。

例えば、平成29年に、登山講習会で雪崩が発生し、参加した高校生や教員計8名が死亡した事故があります。

この事故では、主催者の計画全体のマネジメント不足や運営・指導体制の整備がないこと、登山講師のリスク対応の意識や状況確認、安全確認の不足が原因とされています。

第三者の行為が原因の事故

第三者の行為が原因で起きる学校事故としては、赤の他人が学校内に乱入して暴れて生徒がケガをする、登下校中に交通事故にあうケースなどが考えられます。

通学中の生徒の列に車が突っ込むという痛ましい事故は後を絶ちません。授業中の事故でも、図工の授業で小学6年生の生徒が校門近くで作業をしていたところ、別の生徒を迎えに来た保護者が、生徒の存在を忘れて車を発進させ轢死させたケースがあります。

学校施設の問題が原因の事故

学校の施設、運動用の器具や遊具のトラブルが原因で生徒がケガをする事故は少なくありません。

実際の裁判例では、昭和48年に、公立小学校の体育の授業中、走り幅跳びの練習中に、砂場の異物で生徒がケガをした事故で、公立学校を設置した市の責任が認められたケースがあります。

学校の事故で生じる3つの責任

学校事故

学校の事故で生じる法的な責任は、次の3つが考えられます。

民事上の責任

民事上の責任とは、損害賠償責任のことを言います。被害に遭った生徒側から、学校側に対して請求していきます。

損害賠償の内容としては、学校事故でケガを負い、入院や通院を余儀なくされたことに対しての入通院慰謝料、重い後遺症が残った場合の後遺障害慰謝料、亡くなってしまった場合の死亡慰謝料があります。

行政上の責任

行政上の責任とは、生徒が通う学校が国公立学校の場合に、学校事故の原因が教師にあるようなケースで、国や公共団体が負う責任のことです。

刑事上の責任

刑事上の責任は、学校事故の原因を作った加害者に対して、刑罰を科すことを求めるものです。

たとえば、登下校中の交通事故については、事故を起こした運転手は過失運転致死傷罪の責任を負うことになります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)。

学校事故の責任を追及できる相手とは

学校事故

学校の事故で生徒がケガなどを負った場合、次のような相手に、損害賠償請求等の責任を追及することができます。

教師に対する責任追及

学校事故が、教師の故意(わざと)や過失(不注意)で発生した場合は、教師に対して不法行為に基づく損害賠償を請求することができます(民法709条)。または教師が行うべき仕事をせずに発生した場合は、債務不履行に基づく損害賠償を請求することができます(同415条)。

具体的には、次のようなケースです。

  • 故意による不法行為:教師が体罰を加えて生徒がケガをしたケース
  • 過失による不法行為:危ない運動をする際に指導が不十分で生徒がケガをしたケース
  • 債務不履行:生徒間のいじめを知りながら対策を取らず生徒がケガをしたケース

責任追及の理由を、不法行為にするか債務不履行にするかで、主張する内容や必要な証拠が変わってきます。

どちらのルートで請求するかは、弁護士に相談することをおすすめします。

学校に対する責任追及

学校の場合、通学先が国公立か私立かで異なります

国公立学校の場合、教師は公務員になります。公務員である教師の故意・過失によって、生徒がケガをするなどした場合は、国や地方公共団体はその責任を負わなければいけません(国家賠償法1条1項)。

逆に、国公立学校では、上記のような場合に、公務員である教師に責任を追及して損害賠償を請求することはできず、専ら国や地方公共団体に請求します。

私立学校の場合、教師の不法行為によって生徒がケガをした場合、原則として教師自身に損害賠償を請求します。しかし、学校事故の状況によっては、教師を雇っている学校の責任を追及し、損害賠償を請求できる場合があります(使用者責任)。

また、学校の設備が原因で学校事故が発生した場合は、国公立学校の場合は「営造物責任」(国家賠償法1条1項)、私立学校の場合は「土地工作物責任」(民法717条)として、いずれも管理する国や地方公共団体・あるいは国に責任を追及することができます。

生徒に対する責任追及

学校の事故、ケガを負わせた加害者側の生徒に責任を追及し、損害賠償を請求できるかは、加害者側の生徒に責任能力があるかどうかで変わります。

責任能力とは、自分がした行為の責任を弁識(理解)できる能力のことを言い、責任能力がない場合は、その行為の責任を負わないとされています(民法712条)。

責任能力を有する明確な年齢の規定があるわけではなく、生徒の知能や環境などをベースに個別具体的に判断されます。通常は、12歳未満の者を責任無能力者と考えるのが一般的です。

加害者生徒に責任能力がある場合は、その生徒も不法行為責任を負います(同709条)。そこで、被害に合った生徒は、加害者である生徒自身に対して損害賠償を請求することができます。また、事故の内容によっては、生徒以外にも、親や教師、学校にも損害賠償請求できる場合があります。

加害生徒に責任能力がない場合は、その人を監督する責任がある人(監督義務者)に責任を追及していきます(同法714条1項)。

具体的には、親権者である親が監督義務者になり、親に対して損害賠償を請求します。

学校事故で利用できる保険・共済給付制度とは

学校の事故でけがなどの損害を被ったけれど、加害者生徒や学校になかなか損害賠償の請求ができない場合もあります。

学校の事故では、多くのケースで災害共済給付制度が利用できます。これは、独立行政法人日本スポーツ振興センターが行っている制度で、医療費のほか、ケガや死亡に対する見舞金が支給されるものです。

災害共済給付制度の対象になる事故と金額

共済給付制度は、学校の管理下で起きた事故で、次のような被害にあった場合に利用できます。

  • ケガ:治療に要する費用が5000円以上の場合
  • 病気:治療に要する費用が5000円以上の場合で、熱中症や溺水、給食による中毒など文部科学省令で決められたもの
  • 障害:1~14級の後遺障害等級にあたるもの
  • 死亡:学校事故が原因で亡くなった場合

災害共済給付金は、原則として医療費の10分の4が支払われます。障害が残った場合は等級別に最大4000万円、死亡の場合は3000万円の見舞金が支給されます。

なお、加害生徒や学校にも損害賠償請求をする場合、災害共済給付ですでに支払われている場合は、その分の金額は支払われない(二重にもらうことはできない)のでご注意ください。

学校事故の相談は弁護士に相談を

今回は、学校の事故で被害に遭った場合に、生徒や保護者ができることを、法的な観点から解説しました。

昔よりも、生徒の体調管理などについての知識は教師にも普及したとはいえ、今も学校事故はなくなりません。事故が発生した場合、まず何をしたらいいか、誰に何を請求したらいいか、動揺して戸惑う保護者の方は多いと思います。

そのような場合は、まずは弁護士にご相談ください。弁護士なら、過去の事例をもとに、どのような責任を追及できるか、何を根拠に責任を追及し、どの程度の損害賠償を請求すべきかなどを、的確にアドバイスすることができます。

お子様がケガをした場合、責任を追及したからと言ってケガが治るわけではありません。しかし、適切に損害賠償を請求するなどすることで、今後の治療や人生に役立てられるケースも少なくありません。

学校事故でお悩みの場合は、お気軽に弁護士にご相談ください。

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