好きな漫画やアニメのキャラクターを描いた同人誌を作りたいと思っても、「著作権侵害にならないだろうか」と不安になってしまうものです。
原作の絵をそのまま使わなければ問題ないのか、パロディなら許されるのか、判断に迷う場面も少なくありません。
二次創作の適法性というのは、原作のどの表現を利用するか、作品をどのように公開するかなどによっても変わります。
この記事では、同人誌やファンアートの著作権上の注意点を、具体例や権利者のガイドラインを交えて紹介します。
作品の二次創作グッズを作成する際の注意点については、こちらの記事を参考にしてください。
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二次創作の同人誌は著作権侵害になる?

二次創作とは、既存の作品のキャラクターや世界観などをもとに新たな作品を作る活動です。
ファン活動として親しまれていますが、原作の表現を利用する場合には著作権との関係を考えなければなりません。
キャラクターや原作の表現を使うと著作権が問題になる
漫画やアニメのイラスト、文章などの創作的な表現は、著作権によって保護されます。
一方、「魔法学校を舞台にした物語」といった抽象的なアイデアや設定そのものは、原則として著作権の保護対象ではありません。
著作権法第21条では、著作者の複製権について次のように定めています。
著作権法第21条
著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
(引用:著作権法|e-Gov法令検索)
例えば、原作のコマをコピーして同人誌に掲載する行為は、複製権の侵害となる可能性があります。
また、キャラクターの名前や性格だけでなく、具体的な容姿の表現をどの程度利用しているかも判断のポイントです。
絵柄やストーリーを変えても著作権侵害になる場合がある
原作と異なる絵柄で描いたり、オリジナルの展開を加えたりすれば、必ず自由に公開できるわけではありません。
原作の創作的な表現を利用して新たな作品を作る場合は、翻案権が問題になる可能性があります。
翻案権とは
原作の創作的な表現上の特徴を残しながら、新たな表現を加えて別の作品に作り変えることを認めるかどうか決める権利
著作権法第27条では、原作をもとに別の作品を作る行為について、次のように定めています。
著作権法第27条
著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
(引用:著作権法|e-Gov法令検索)
例えば、原作の登場人物や物語の特徴的な表現を利用して続きを描く場合、翻案に該当する可能性があります。
原作をもとに創作的な表現を加えた作品は二次的著作物と呼ばれますが、独自の要素を加えたからといって、原作者の権利がなくなるわけではありません。
また、著作権法第20条では、著作者の意に反して作品の内容などを改変されない同一性保持権も定められています。
原作の内容を変更する場合には、こちらの権利が問題になる可能性もあるでしょう。
パロディ・オマージュ・パクリの違いとは?

二次創作では、パロディやオマージュという言葉がよく使われます。
ただし、作品の呼び方だけで著作権侵害になるかどうかが決まるわけではありません。
パロディやオマージュなら自由に利用できるわけではない
パロディは既存作品の特徴を利用して風刺や笑いにつなげる表現、オマージュは原作への敬意を込めて要素を取り入れる表現などを指します。
しかし、日本の著作権法には、パロディやオマージュというだけで自由に利用できる一般的な例外規定はありません。
例えば、原作の有名な場面をほぼそのまま描いてセリフだけを変更した場合、笑いを目的としていても著作権侵害となる可能性があります。
作品への敬意があるかどうかと、法律上の許諾が必要かどうかは別の問題です。
「パクリ」と著作権侵害は必ずしも同じ意味ではない
パクリは、他人の作品を真似した行為などを表す一般的な言葉で、法律上の明確な定義はありません。
似ている部分があるだけで、直ちに著作権侵害となるわけではない点にも注意が必要です。
著作権侵害の判断では、依拠性と類似性が重要になります。
依拠性とは
既存の作品を知り、その表現をもとに作品を制作したかどうかという点
類似性とは
既存作品と新たな作品との間で、創作的な表現が共通していること
既存作品を参考にしていても、共通する部分が一般的なアイデアやありふれた表現だけであれば、著作権侵害には当たらない場合があります。
反対に、原作の創作的な表現上の本質的な特徴を感じ取れるほど似ており、依拠性も認められる場合には、著作権侵害が問題になる可能性があるでしょう。
原作の構図やセリフを利用する場合の注意点
同じ「原作を参考にした作品」でも、利用する内容によって著作権上の評価は変わります。
例えば、次のような違いがあります。
- 原作のコマをそのままトレースする…複製権などの侵害となる可能性が高い
- 印象的な構図や長いセリフをほぼ再現する…創作的な表現の共通性によっては侵害となる可能性がある
- 「仲間と冒険する」という着想だけを参考に独自の人物・場面を描く…アイデアの共通にとどまれば、通常は著作権侵害には当たらない
ただし、「何割までなら真似してよい」という明確な基準はありません。
原作のどの部分を利用し、どの程度その表現が残っているかを個別に考える必要があります。
二次創作の同人誌やファンアートを公開するときの注意点

二次創作の適法性は、制作するだけなのか、SNSで公開するのか、同人誌として頒布するのかによっても変わります。
作品を発表する前に、利用目的や公開範囲を確認しましょう。
自分用の制作と同人誌の頒布・SNS投稿では扱いが異なる
著作権法第30条では、個人的または家庭内などの限られた範囲で使用する目的の複製について、一定の例外を認めています。
著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
(引用:著作権法|e-Gov法令検索)
つまり、自分だけで楽しむための模写などは、原則として私的使用の範囲に収まる場合があります。
ただし、コピーガードを解除してDVDを複製する場合や、違法に公開された漫画を、その事実を知りながら丸ごとダウンロードする場合などは、自分だけで楽しむ目的であっても認められません。
一方、同人誌を印刷してイベントで頒布したり、ファンアートをSNSに投稿したりする行為は、通常、私的使用の範囲に含まれません。
特に、原作の表現を利用したファンアートなどをSNSに投稿する場合には、著作権法第23条の公衆送信権も問題になります。
著作権法第23条第1項
著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
(引用:著作権法|e-Gov法令検索)
公衆送信権とは
著作物をインターネットなどを通じて、不特定または多数の人に向けて送信することを認めるかどうか決める権利
SNSに投稿し、ほかの人が閲覧できる状態にする行為も対象となる
そのため、無料公開や赤字での頒布なら必ず許されるわけではありません。
公式の二次創作ガイドラインを確認する
作品によっては、権利者が同人誌やファンアートの公開を一定の条件で認めるガイドラインを設けています。
制作前に公式サイトを確認し、対象作品・頒布方法・収益化の可否・禁止表現などを調べましょう。
例えば、タイトーの「悠久幻想曲リバイバル」シリーズでは、趣味の範囲内での同人誌の頒布などを認める一方、公式素材の転載や実質的に同一のトレースを禁止しています。
これは同シリーズ独自の条件であり、ほかの作品にもそのまま当てはまるわけではありません。
また、SNSで二次創作が多数公開されていても、権利者が正式に許可したとは限りません。
ガイドラインが見つからない場合や判断が難しい場合は、権利者への確認を検討しましょう。
生成AIを使った二次創作も著作権に注意する
生成AIで漫画のキャラクターに似たイラストを作成した場合も、AIを使ったという理由だけで著作権侵害になるわけではありません。
著作権侵害の判断では前述のとおり、生成された画像と既存作品との間に、創作的な表現の共通性があるかという類似性や、既存作品をもとに制作したかという依拠性などが問題になります。
例えば、特定の作品名やキャラクターを指定し、原作に酷似した画像を生成してSNSに公開する場合は注意が必要です。
ただし、生成AIの場合は、利用者自身が元の作品を知らなくても、AIが学習した作品に似た画像が生成される可能性があります。
そのため、利用者に真似する意図がなくても、既存作品をもとに作られたかどうかという依拠性が問題になる可能性があります。
文化庁も、AI生成物の利用段階について、既存作品との類似性や依拠性を踏まえて検討する考え方を示しています。
つまり、生成した画像だから自由に使えるとは考えず、公開前に原作との共通点やガイドラインを確認することが大切です。
二次創作の同人誌はルールを確認してから公開しよう
二次創作の同人誌やファンアートは、原作の創作的な表現を利用する場合、著作権侵害となる可能性があります。
絵柄やセリフを変更していても、パロディやオマージュと呼んでいても、必ずしも自由に利用できるわけではありません。
まずは公式ガイドラインを確認し、自分だけで楽しむ制作なのか、SNSへの投稿や同人誌の頒布なのかを区別しましょう。
無料で公開する場合も、権利者の許諾が不要になるとは限りません。
権利者から削除を求められた場合や、著作権侵害に当たるか判断できない場合は、弁護士に相談する方法があります。
創作内容や利用方法を整理したうえで、適切な対応を検討することが大切です。

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