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相続税がかかるのはいくらから?計算方法と節税対策のまとめ

2020年4月22日

家の外観

身内の方が亡くなると遺産相続が発生しますが、相続税がいくらからかかるのかは気になるところでしょう。

かつては相続税がかかるのは一部の資産家のケースのみというイメージもありました。

しかし、平成27年の税制改正により相続税がかかるケースが増えています。

国税庁の発表によると、平成30年中に亡くなった約136万2千人のうち、相続税の課税対象となった方は約11万6千人でした。

割合にして8.5%の家庭で相続税が発生しています。この割合は平成26年分の課税割合(4.4%)の約2倍に上っています。

相続税がかかるケースなのに申告をしなければ、追徴課税で重い負担を課せられてしまうので、相続税がいくらからかかるのかは知っておかなければなりません。

そこで今回は、遺産の額がいくらから相続税がかかるのかを解説し、相続税の具体的な計算方法や節税対策についてもご紹介します。

遺産総額いくらまで相続税が無税になる?

下がるグラフ相続税には大きな基礎控除があり、その範囲内であれば無税になります。

まずは、基礎控除とは何かについてご説明します。

3,600万円までは無税

基礎控除とは、税金を計算する際に課税対象額から一律に差し引くことができる金額のことです。

相続税の基礎控除は、次の計算式によって決まります。

3,000万円+600万円×法定相続人の数

遺産総額がこの計算式で算出した金額を超えなければ、相続税はかかりません。

相続税が発生するということは、最低1人は相続人がいるということなので、どのようなケースでも遺産総額3,600万円までは無税ということになります。

法定相続人とは民法に定められた相続人のこと

誰が相続人となるかは、民法で優先順位とともに定められています。

具体的には、以下の優先順位に従って相続人が決まります(民法第887条、第889条)。

  • 第1順位 子供
  • 第2順位 直系尊属(両親、祖父母など)
  • 第3順位 兄弟姉妹

亡くなった方に子供がいれば、子供が相続人となります。この場合、直系尊属や兄弟姉妹は相続人となりません。

子供がいない場合は直系尊属が相続人となり、子供も直系尊属もいない場合は兄弟姉妹が相続人となります。

配偶者は以上の優先順位には関係なく、常に相続人となります(民法第890条)。

基礎控除額は法定相続人が多いほど大きくなる

法定相続人の数が多ければ多いほど基礎控除額が大きくなるため、相続税はかかりにくくなります。

例えば、法定相続人が息子1人しかいない場合、基礎控除額は3,600万円です。

遺産総額が5,000万円だとすれば、基礎控除額を超える1,400万円に相続税がかかります。

これに対して、法定相続人として配偶者と子供3人の合計4人がいる場合、基礎控除額は5,400万円となります。

この場合、遺産総額が5,000万円であれば基礎控除額の範囲内なので、相続税はかかりません。

相続税がいくらからかかるかは控除や特例によっても異なる

貯金箱相続税の節税対策にはさまざまな方法がありますが、特別な対策をしなくても「控除」や「特例」を適用すれば相続税を軽減することができます。

以下にご紹介する控除や特例は、相続税の申告をする際に自分で適用する必要があります。適用を忘れても税務署は指摘してくれないので、ご注意ください。

配偶者の税額の軽減

配偶者が相続する場合は、実際に取得する遺産額が法定相続分に相当する額または1億6,000万円のどちらか多い金額まで相続税はかかりません。そのため、配偶者に相続税がかかるケースはめったにありません。

未成年者控除

遺産総額が基礎控除額を超える場合でも、相続人が20歳未満の未成年者の場合は、「10万円×(20-相続開始時の年齢)」で計算した金額が相続税額から控除されます。

例えば、相続開始時に10歳の子供がいれば100万円の控除が受けられます。その結果、相続税がかからなくなるケースもあります。

障害者控除

相続人が障害者の場合も、一定の金額が相続税額から控除されます。

控除額は、一般障害者の場合と特に重い特別障害者の場合で異なります。

  • 一般障害者の控除額 … その人が85歳になるまでの年数×10万円
  • 特別障害者の控除額 … その人が85歳になるまでの年数×20万円

相次相続控除

被相続人が亡くなる前10年以内に相続税を支払ったことがある場合、今回の相続で通常どおりの計算によって相続税を課すと実質的に二重評価となってしまうことがあります。

このような場合には、今回の相続税額から一定の金額が控除されます。

贈与税額控除

相続開始前3年以内に贈与された財産は、相続税の課税対象となる遺産に加算されます。

しかし、贈与税を支払っていた場合は二重払いを避けるため、相続税額から贈与税額が控除されます。

小規模宅地等の特例

宅地を相続する場合、一定の要件のもとに土地の評価額を減額することができます。

細かな要件が定められていますが、一例として、被相続人が住んでいた居住用宅地を相続する場合は土地面積が330平方メートルまで80%減の評価額で相続税が計算されます。

この特例を適用できれば、通常の評価額1億円の土地でも2,000万円として相続税を計算できるので、基礎控除額の範囲内におさまって相続税がかからないケースが多くなります。

相続税を節税するなら生前贈与を活用しよう

贈り物生前贈与は相続税の節税効果が高いので、積極的に活用するのがおすすめです。

しかし、生前贈与をするには贈与税に注意する必要があります。

そこで、まず贈与税について簡単に解説した上で、生前贈与の活用方法をご紹介します。

贈与税はいくらからかかる?

1年間に110万円を超える財産を贈与すると、贈与税がかかります。

贈与税には1年ごとに110万円の基礎控除があるので、毎年110万円以内の財産を生前贈与すれば贈与税はかかりません。

贈与税率は相続税率より高いため、多額の財産を一度に生前贈与すると節税対策としては逆効果になってしまうので、注意が必要です。

例えば、評価額3,000万円の自宅を生前贈与すると、1,195万円もの贈与税がかかってしまいます。

この自宅を相続すれば基礎控除額の範囲内となる可能性もありますし、仮に相続税がかかったとしても贈与税よりは大幅に少額となります。

そのため、相続税の節税対策として生前贈与を活用するなら、以下にご紹介する方法を検討する必要があります。

暦年贈与で少しずつ財産を渡す

暦年贈与とは、年間110万円の贈与税の基礎控除の範囲内で毎年少しずつ生前贈与をしていく方法のことです。

ただし、被相続人が亡くなる前3年以内の贈与は相続税の対象となるので、暦年贈与をするなら長期的にコツコツと生前贈与をし続けることが必要です。

最大1500万円まで非課税となる住宅取得等資金の贈与

両親や祖父母などの直系尊属から子供や孫へ住宅の新築や購入の費用を贈与する場合、一定の要件のもとに贈与税から大幅な控除を受けることができます。

控除額は住宅の種類や新築・購入などの契約の時期によって異なりますが、最大で1,500万円まで贈与税が非課税となります。

ただし、この制度が適用されるのは2023年12月31日までです。

延長される可能性はありますが、その場合は適用要件や控除額が変更されると考えられます。

教育資金の一括贈与も最大1500万円まで非課税

両親や祖父母などの直系尊属から子供や孫へ教育資金としてまとまった金額を一括で贈与する場合も、一定の要件のもとに贈与税から大幅な控除を受けることができます。

控除額の上限は1,500万円です。そのうち授業料や入学金など学校等へ直接支払う資金は1,500万円まで、塾代や習い事にかかる費用など学校等以外へ支払う資金については500万円が上限となります。

なお、この制度の適用を受けるには資金を直接贈与するのではなく、信託銀行と所定の契約をした上でその口座へ入金する必要があります。

また、この制度が適用されるのは2021年3月31日までの予定です。延長される可能性はありますが、その場合は適用要件や控除額が変更されると考えられます。

2500万円まで非課税となる相続時精算課税とは?

相続時精算課税とは、生前贈与を受けたときに贈与税を支払わず、贈与した人が亡くなったときに相続税を支払うことで清算できる制度のことです。

60歳以上の両親や祖父母などの直系尊属から20歳以上の子供や孫へ財産を贈与した場合にこの制度を利用することができます。

生前贈与される財産が2,500万円までは贈与税ではなく相続税で清算することができますが、2,500万円を超える場合は超える部分について贈与税を支払う必要があります。

贈与税と相続税のどちらで支払う方が有利かはケースによって異なります。そのため、この制度を利用するかどうかは贈与税と相続税のそれぞれの税額を正確にシミュレーションして判断しましょう。

実際に相続税を計算して節税対策を考えよう

電卓遺産総額が基礎控除額を超える場合は、相続税がどれくらいかかるのかを実際に計算してみましょう。

被相続人が存命中の場合は、実際にかかる相続税額を計算した上で節税対策を考えるのがおすすめです。

そこで、相続税の計算方法をご説明します。

相続税は3ステップで計算する

相続税の計算式は「(遺産総額-基礎控除額)×相続税率-控除額」ですが、実際の納税額を求めるためには、次の3ステップの計算が必要になります。

  • 課税遺産総額を求める
  • 相続税の総額を仮計算する
  • 各相続人ごとに相続税額を計算する

それでは、具体例を挙げて実際に相続税を計算してみましょう。

ここでは、被相続人に総額8,000万円の財産があり、相続人として妻と長男、次男の3人がいる例で相続税を計算していきます。

課税遺産総額を求める

まずは、課税遺産総額を求めます。

プラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産も漏れなくピックアップして、評価額を合計します。

評価額を合計した金額から、基礎控除額を差し引きます。

このケースでは相続人が3人なので、基礎控除額は4,800万円となります。

3,000万円+600万円×3人=4,800万円

したがって、課税遺産総額は3,200万円となります。

8,000万円-4,800万円=3,200万円

相続税の総額を仮計算する

課税遺産総額を求めたら、その遺産を法定相続分どおりに分割したと仮定して相続税の総額を仮計算します。

このケースで法定相続分どおりに分割すると、各相続人の取得分は次のようになります。

  • 妻  3,200万円×1/2=1,600万円
  • 長男 3,200万円×1/4=800万円
  • 次男 3,200万円×1/4=800万円

相続税率と控除額は、次の速算表で求めます。

法定相続分による取得額 税率 控除額
1,000万円以下 10% 0円
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下  20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超  55% 7,200万円

以上の取得分について、それぞれ相続税を仮計算すると次のようになります。

  • 妻  1,600万円×15%-50万円=190万円
  • 長男 800万円×10%=80万円
  • 次男 800万円×10%=80万円

以上を合計すると、相続税の総額は350万円となります。

各相続人ごとに納税額を計算する

次に、実際の相続割合に応じて各相続人の相続税額を計算します。

計算方法は、上で求めた相続税の総額に各相続人の実際の相続割合を掛けます。

実際の相続割合が妻50%、長男40%、次男10%だったとすれば、各相続人の相続税額は次のようになります。

  • 妻  350万円×50%=175万円→0円(配偶者控除があるため)
  • 長男 350万円×40%=140万円
  • 次男 350万円×10%=35万円

配偶者には法定相続分または1億6,000万円までの控除があるため、このケースでは配偶者に相続税はかかりません。

節税対策を考える

このケースでは、長男と次男に合計175万円の相続税がかかります。

被相続人が存命中であれば、生前贈与を活用するなどして遺産総額を少なくすることによって、相続税を軽減したり非課税とすることができます。

暦年贈与によって毎年少しずつ財産を渡すのもいいですし、長男・次男や孫へ住宅取得等資金教育資金を贈与するのもいいでしょう。

各種控除や特例なども、適用できるものは忘れずに適用するようにしましょう。

相次相続には注意が必要

相次相続とは、短い間に相続が立て続けに発生することをいいます。

配偶者控除が大きいからといって配偶者の相続分を多くすると、今回の相続では節税できても、数年後に配偶者も亡くなった場合は結果的に多額の相続税がかかることがあります。

例えば、上の例で妻が遺産全部を相続すれば、今回の相続では相続税は一切かかりません。

しかし、ほどなくして妻も亡くなり、長男と次男が8,000万円の遺産をそのまま相続した場合は、合計470万円の相続税がかかります(1/2ずつ相続した場合)。

実際にはここから相次相続控除額が差し引かれますが、結果として相続税がかえって高くなる可能性が高いので注意が必要です。

相続税がいくらからかかるか不安なときは弁護士に相談しよう

メモをとる弁護士相続税の計算や節税対策について、単にサポートを受けた場合は税理士に相談するのもよいですが、円満に進めたいなら弁護士に相談するのがおすすめです。

生前贈与によって相続人間に不公平が生じるとトラブルが起こりがちですが、弁護士であればトラブルにも対応できますし、トラブルを避けるためのアドバイスも可能です。

被相続人が亡くなった後も、遺産の分割方法次第で相続税が変わってくることもあります。

公平に遺産を分割したつもりでも、遺産の内容や種類によって相続税のかかり方が異なるために不公平が生じ、トラブルに発展するおそれもあります。

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