相続・贈与

子供名義の預貯金には贈与税がかかる?非課税で贈与する方法とは

2020年4月24日

お年玉と通帳

子供が小さいうちから子供名義の口座を作り、その口座でコツコツとお金を貯めている方は多いことでしょう。

しかし、その預貯金にはいずれ贈与税がかかってしまう可能性が高いことをご存知でしょうか?

大切な我が子のためにしっかりとお金を貯めたのに、贈与税を支払うのはもったいないです。

そこで今回は、贈与税との関係で子供名義の口座でお金を貯めることの問題点を解説し、非課税で子供にお金を贈与できる方法もご紹介します。

名義預金とは?子供名義なのに贈与税の支払い義務がある?

赤ちゃんの手 お金名義預金とは、口座の名義人が実際に預金しているのではなく、別の人が預金して口座を管理している場合の預金のことをいいます。

この場合、税務署との関係では真の預金者は口座名義人ではなく、実際に預金をして口座を管理している人であるとして取り扱われます。

子供名義の口座に親が預かったお年玉を入金したり、コツコツと積み立てたりしていると「名義預金」に該当する可能性が高いといえます。

子供に通帳を渡したときに贈与税がかかる

親子の間でも金品を贈与すると贈与税がかかります。

ただ、1年間の贈与額の合計が110万円以内であれば、基礎控除の範囲内なので非課税となります。

それなら、子供名義の口座への入金額を毎年110万円以内に抑えておけば、贈与税はかからないと思われるかもしれません。

しかし、この考え方は危険です。

たしかに、親が子供名義の口座を管理している限り、贈与税がかかることはありません。

ただ、非課税となる理由は入金額が毎年110万円以内だからではなく、まだ子供への贈与が成立していないからです。

名義預金の真の所有者は、実際に預金をして口座を管理している人です。

その預金を実際に子供に渡すまでは贈与が成立しておらず、親が自分で預金している状態にすぎません。

自分の所有する口座にいくら入金しようが、贈与税はかからないのです。

ところが将来、その預金通帳を子供に渡すとその時点で贈与が成立するため、贈与税がかかります。

仮に1,000万円積み立てたとして、成人した子供にその預金通帳を渡せば、177万円もの贈与税を支払わなければなりません。

名義預金とみなされる4つの基準とは

子供名義の口座の預貯金について、最初から子供が真の預金者であるとみなされれば問題はありません。

親が真の預金者であるとみなされると「名義預金」であるということになります。

どのような場合に名義預金とみなされるのかについては、明確な基準が定められているわけではありません。

税務署が個別の事情を調査して判断することになります。

ただ、税務署が重視する基準として、次の3つのポイントを挙げることができます。

口座を開設したのは誰か

口座名義人である子供本人ではなく、親が解説した場合は名義預金とみなされやすくなります。

実際に預金をしたのは誰か

子供自身が所持金を預金した場合は名義預金にはなりませんが、親が給料などの中から預金をすると名義預金となります。

ただし、親が出したお金でも子供への贈与が成立している場合は名義預金にはなりません。

例えば、子供が親からもらった小遣いを預金している場合は名義預金とはみなされにくいですが、幼い子供名義の口座に毎月数万円単位の入金があると名義預金とみなされやすくなります。

口座を管理しているのは誰か

通帳やキャッシュカード、届出印などを親が管理していて、子供自身が預金を自由に引き出して使えない状態であれば、名義預金とみなされやすくなります。

名義預金とみなされるのを避ける方法

子供名義の口座の預貯金を名義預金とみなされるのを避けるためには、上の3つの判断基準を参考にして、税務署に名義預金とみなされにくい状態を作ることが重要です。

具体的には、以下の3点を実行することです。

  1. 子供自身に口座を開設させる
  2. 入金する都度、贈与契約書を作成する
  3. 通帳やキャッシュカード、届出印などを子供に管理させる

ただ、高校生くらいの子供であればともかく、小中学生までの子供にこれらのことを実行させるには無理があるでしょう。

結論として、子供の将来に備えて子供名義の口座にお金を貯めることは、贈与税との関係では得策でないといわざるを得ません。

贈与税を払わなくても税務署にバレない?

子供名義の口座にお金を貯めていると、将来子供に通帳を渡すときにかなり高い確率で贈与税の課税対象となります。

しかし、現実にはそうしても贈与税を払っていない人がいるのも事実です。

税務署としてもあらゆる口座の出入金について全て調査することは不可能なので、名義預金で贈与税を払わなくてもバレないことはあり得ます。

しかし、相続税を申告した際には税務調査が行われることがよくあります。

名義預金をしていた親が亡くなり、相続人が相続税を申告したことがきっかけで名義預金がバレる可能性が高いのです。

相続税の申告が不要な場合でも、名義預金がバレる可能性はゼロではありません。

バレてしまうと、本来の贈与税に加えて何年分もの追徴課税を課されることになります。

したがって、バレない可能性があるからといって名義預金をすることはおすすめできません。

非課税で子供にお金を贈与する方法はたくさんある

無理に子供名義の口座にお金を貯めなくても、非課税で子供にお金を贈与できる方法はたくさんあります。

子供名義の口座に入金することで「大切な我が子の将来のためにお金を貯めている」という気持ちになりやすいのも事実ですが、多額の贈与税を課されたのでは損をしてしまいます。

口座を作るなら親自身の名義で、子供の将来のためにお金を貯める専用の口座を作った方がよいでしょう。

その口座に貯めたお金の中から必要に応じて子供にお金を渡す方が、贈与税との関係では得策であるといえます。

この形で子供にお金を渡す際にかかる贈与税が気になると思いますが、親子間の贈与では以下のように年間110万円を超えても非課税となるものがたくさんあります。

生活費や教育費は非課税

子供 人生設計子供が一定の年齢に達するまでは、親が子供の生活費や教育費を負担するのは常識です。

法律上も、親から子供へ生活費や教育費として贈与した場合は、一定の範囲で非課税とすることが定められています。

(贈与税の非課税財産)
第21条の3 1項 次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
2号 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの

親子には法律上の扶養義務があります。

したがって、日常生活にかかるお金や学費、教材費、通学費など生活や教育に必要な費用の贈与は非課税となります。

ただし、無制限に非課税となるわけではなく、「通常必要と認められるもの」という制限があります。

「通常必要と認められるもの」とは、要するに社会通念上相当な範囲内という意味です。

例えば、一人暮らしをしながら大学に通う子供への仕送りとして、毎月10万円程度であれば社会通念上相当といえます。

しかし、50万円や100万円といった金額を毎月仕送りすると社会通念上相当とはいえないでしょう。

社会通念上相当な範囲を超える贈与をすると、超えた部分について贈与税がかかります。

なお、非課税となる「生活費」には日常生活にかかるお金だけでなく、以下のような費用も社会通念上相当な範囲内のものは含まれます。

治療費

子供が病気にかかったり怪我をしたときの治療費も、日常生活を営むために必要な費用に該当します。

したがって、親が子供の治療費を支払っても、贈与税の課税対象にはなりません。

結婚に関する費用

結婚式や披露宴の費用の他、結婚後の生活のために家具や家電、寝具その他の家財道具を購入するための費用の贈与も非課税です。

出産に関する費用

分娩費用はもちろん、検査や検診、入院に要する費用も治療費に準ずるものとして「生活費」に含まれます。

また、産着や寝具をはじめとするベビー用品の購入費も、生まれた子どもが日常生活を営むために必要な費用に該当します。

したがって、これらの費用を親が子供のために負担した場合も、贈与税は非課税となります。

まとまった費用を子供に贈与しても非課税にする方法がある

以上の「生活費」や「教育費」の贈与が非課税となるのは、社会通念上相当な範囲内にとどまる場合だけです。

しかし、ときには子供のためにまとまった金額を贈与したい場合もあるでしょう。

そんなときは、以下の非課税制度を活用しましょう。

教育資金として1,500万円まで非課税で贈与できる

親や祖父母から30歳未満の子供(または孫)へ教育資金を贈与する場合に、子1人につき最大1,500万円まで贈与税が非課税となる制度があります。

この「教育資金の一括贈与」と次の「住宅取得等資金の贈与」の非課税制度については、こちらの記事でも解説していますのでご参照ください。

相続税がかかるのはいくらから?計算方法と節税対策のまとめ

住宅の購入・新築資金として1,500万円まで非課税で贈与できる

親や祖父母から20歳以上の子供(または孫)へ住宅の購入や新築をするための資金を贈与する場合、子1人につき最大1,500万円まで贈与税が非課税となる制度もあります。

上記の記事も併せてご参照ください。

結婚・子育て資金として1,000万円まで非課税で贈与できる

親や祖父母から20歳以上50歳未満の子供(または孫)へ結婚や子育ての費用を贈与する場合、子1人につき最大1,000万円まで(結婚費用については300万円まで)贈与税が非課税となる制度があります。

この制度を利用するためには、信託銀行と一定の契約を結んだ上で専用の口座を利用することが必要です。

なお、この制度は今のところ、2021年3月31日までで終了する予定なのでご注意ください。

既に子供名義の口座で預金している場合は贈与税の対策が必要

この記事をお読みの方のなかには、既に子供名義の口座で預金している方も少なくないかもしれません。

その場合は、どうすればいいのでしょうか。

答えは簡単です。

その口座を子供に渡していなければ、預金はまだ自分のものです。

したがって、ここまでにご説明してきた方法を活用して、これから子供にお金を渡していけば相続税の課税を避けることができます。

つまり、扶養義務者としての生活費や教育費の譲渡、まとまった金額の贈与に関する非課税制度を活用すればよいのです。

さらに、一般的な贈与税の節税対策として「暦年贈与」という方法もあります。

毎年110万円以内を贈与すれば非課税

暦年贈与とは、贈与税の基礎控除額である年間110万円の範囲内で、毎年贈与を重ねていくことによって贈与税の課税を避ける方法です。

既にある子供名義の口座には、そのまま預金をしていってかまいません。

子供がある程度の年齢になったら、子供に独自の口座を新たに作らせて、その口座に毎年110万円以内の金額を贈与として入金していきましょう。

できれば、入金する都度、贈与契約書を作成すれば万全です。

間違っても、コツコツと預金してきた子供名義の口座をそのまま渡すことはやめておきましょう。

名義預金として、多額の贈与税を課せられる可能性が非常に高いです。

子供名義の預金に贈与税を課せられたら弁護士に相談を

スーツの男性もし、子供名義で預金してきた口座を名義人である子供に渡したことが税務署にバレて、贈与税を課せられた場合は一度、弁護士に相談することをおすすめします。

子供名義の口座での預金は名義預金として贈与税の課税対象となる可能性が高いことは事実です。

しかし、名義預金に該当するかどうかは個別にさまざまな事情を考慮して判断されるものであり、ときには税務署の判断が誤っていることもあります。

税務署の誤った判断によって税金を徴収された場合は、裁判によって税金を取り戻すことができます。

ただ、税務署を相手とする「税務訴訟」で争うためには高度な専門的知識が必要なので、弁護士によるサポートが不可欠です。

課税に納得できない場合は、お気軽に弁護士に相談してみるとよいでしょう。

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