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払ってもらえない残業代どうする?未払い分の請求方法を解説

投稿日:2019年6月12日 更新日:

残業 オーバーワーク

近年、さまざまな労働問題を抱える企業が増えており、賃金や職場環境などに関する企業側と従業員側の争いが後を絶ちません。

厚生労働省の「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、企業の労働問題に関する相談件数は110万4,758件で、10年連続で100万件を超える大台に乗っているのが現状です。(※1)

さらにそのうち、労働基準法などの法令違反の疑いがあるものは19万8,260件となっており、残業代の未払いをはじめとした給与問題で雇用主と従業員が揉めるケースも非常に多くなっています。

実際、多くの会社の従業員が残業代を払ってもらえない状況に陥っており、実質的にタダで時間外労働をさせられている状況は決して珍しくなくなっています。

具体的な数字をみると、本来は労働者に支払われるはずだった時間外労働分の平均金額は一人あたり20万円以上となっており、新入社員の約1か月分相当の給与相当が多くの労働者に支払われないままになっているのです。

もし、あなた自身や家族がこういった残業代の未払いに遭ってしまったらどうするでしょうか?人によっては「残業分は仕方がない」と諦めてしまっているかもしれませんが、上手く請求すれば払ってもらえる可能性は十分あります。

そこで今回は、企業から残業代を払ってもらえない場合の対応や、未払い分の請求方法について解説します。特に今現在、残業代の未払い問題に直面している人は、ぜひ参考にしてください。

未払いの残業代は請求できるか?

残業代冒頭で説明したように、業界・業種を問わず残業代の未払い問題を抱える企業が増えており、これからも増え続ける可能性は高いといえます。

そのため、現状すでに残業代を払ってもらっていない人はもちろん、これから転職を考えている人や、働いている会社の業績が下がってきた人なども、将来的に未払い問題に悩まされる可能性は決して低くはありません。

そこでこの機会に、残業代の未払いの実態について知り、そういった問題に直面した際の適切な対応を覚えておきましょう。

残業代を未払いにする企業の実態

残業代を未払いにする企業の特徴として、社内で残業代を払わないルールにしていたり、一見そういった規定がないように装っているものの、社内規定などをよく読むと、巧妙に残業代を支払わないような文言になっているケースもあります。

また、企業によっては「ウチの会社は残業は禁止」と経営者が明言していて、規定の労働時間を過ぎるとタイムカードが押せなくなるところもあるようです。

「残業禁止」と聞くと、人によってはよい職場環境だと感じるかもしれません。しかし、残業を禁止されたうえで、通常の勤務時間では絶対に終わらないような量の仕事を日常的に課せられてしまうとしたらどうでしょうか?

そうなると、結局は規定の時間内に終わらずに自発的に残業をしなくてはならなくなり、結果的にタダで残業をさせられている状態になってしまいます。

このように、他では通用しないような独自のルールによって残業代を払ってもらえなかったり、事実上のサービス残業を強いている会社は決して少なくありません。社内でまかり通っている常識が、法律に照らしてみると明らかに違法であるというケースは決して珍しくないのです。

そして多くの人は、労働基準法について詳しくなかったり、職場での風当たりが強くなるのを恐れて、残業代が未払いのまま働き続けています。これが多くの日本企業の実態です。

労働者は残業した分を会社に請求する権利がある

しかし、絶対に覚えておくべきなのは、労働者は残業した分の給与を企業に請求する法的な権利があるということです。それは企業がどういった職場規定を設けていたとしても変わりません。

たとえ企業側が「残業代は払わない」と明言していたとしても、企業は雇用している労働者が時間外労働をした場合は残業代を当然に支払わなければならないのです。もし支払わない場合は、労働基準法違反となり、相応のペナルティが課せられることになります。

企業によっては「他でも同じように頑張っている」「この業界では当たり前のこと」といった言い方でサービス残業を強いるケースも見受けられますが、法的に企業側のそういった言い訳は通用しませんから、未払いの残業代があるならば会社に請求して何の問題もないのです。

未払いの残業代を請求できる具体的なケースは?

未払いの残業代それでは、労働者が未払いの残業代を請求できる具体的なケースについてみていきましょう。

どんな企業でも請求できる基本的な4パターン

まず、以下の4つのパターンに当てはまる場合、どんな企業であっても残業代を請求できます。

  1. 1日8時間以上働いた場合の、8時間超過分の残業代が支給されていない場合
  2. 週に40時間以上働いた場合の、40時間超過分の残業代が支給されていない場合
  3. 企業が規定している就業時間を超えて働いた分の残業代が支給されていな場合
  4. 残業代は支給されているものの、その金額が労働基準法に規定された割増賃金(25%)に達していない場合

労働基準法では1日に8時間、週に40時間以上の労働をした場合は時間外労働となり、残業代として25%の割増賃金をもらえると規定されています(※2)。

それが支払われていない場合、あるいはその金額が25%の割増分に達していない場合は、どんな業種であれ労働者は不足分の残業代を請求できる権利があるのです。

固定給のなかに残業代が含まれている場合

企業のなかには基本給や固定給のなかに残業代が含まれていると主張するケースもあります。

いわゆる「みなし残業」といわれるもので、実際に働いた分の時間が把握しづらい労働者に対して、事前に残業代を給与に含んでおく制度です。これを理由に超過労働分の支払いを拒否する企業も少なくないようです。

ですが、残業代を固定給に含む場合は、雇用主はその時間と具体的な残業代の金額を明らかにしておく必要があり、その時間を超えて労働者が働いていた場合は、残業代を追加で支払わなければなりません。

労働者の立場からすれば、あらかじめ明記されている残業分の労働時間を超えて働いた場合、その分を未払い分として会社に請求できます。

管理職でも残業代を請求できる場合がある

また、従業員から管理職に出世したことによって残業代が出なくなってしまった場合でも、それがいくつかの条件に当てはまっている場合、他の従業員と同様に未払いの分の残業代を請求できるケースがあります。

労働基準法の41条には「職場の管理監督者にあたる者には1日8時間、週40時間の労働時間や毎週1日の休日、そして法定労働時間を超えた場合の割増賃金の支払いの規定は適用されない」という趣旨が明記されています(※3)。

これを利用し、本来は他の労働者と同じ待遇をしなければならない人を管理職にすることで、残業代の支払いを免れようとする企業が実は少なくありません。いわゆる「名ばかり管理職」と呼ばれる問題です。

しかし労働基準法における「管理監督者」の定義は企業が勝手に決めてよいものではなく、その部署を統括する立場であることや、企業の経営に関係していること、給与面で監督者にふさわしい待遇がされていることなどが必要です。

もし企業から管理者の立場にされているものの、こういった条件に当てはまっていない実態があるならば、それは「名ばかり管理職」であり、違法に残業代が支払われていない可能性が高いです。

あなたや家族がそういった立場にあるならば、これまでの未払い分の残業代を請求できる可能性がありますから、弁護士に相談して請求を検討しましょう。

残業代を請求する方法

それでは未払いの残業代がある場合の請求方法について説明します。

証拠があれば自分で直接請求できる

まず、基本的に残業代の請求は労働者本人が直接会社にすることができます。自分で会社と直接交渉して円満に解決できそうな場合は、自分で残業代を請求するとよいでしょう。その際のポイントは以下の2点です。

  • 実際に未払い分がどれぐらいあるのかを把握する
  • 未払い分が発生していることがわかる証拠を集める

未払いがわかる証拠としては、勤務日と勤務時間がわかるタイムカードや出勤簿などの写しが考えられます。そういったものがない場合は、毎日の通勤を証明する交通ICカードの履歴などが有効となるケースもあります。

そして未払い分の具体的な金額の算出にあたっては、雇用契約書や就業規則などに記載されている内容と給与明細を比較するなどして、可能な限り正確に金額を出す必要があります。

未払いを証明できる十分な証拠があり、具体的な金額を算出できる場合は、自分で会社に支払いを促しましょう。実際、証拠を集めて直接会社と交渉したことで未払い分を払ってもらえたケースは少なくありません。

直接交渉が難しい場合は労働基準監督署を利用する

ブラック企業しかし、いわゆるブラック企業と呼ばれる性質をもっている場合、労働者自身が請求しても相手にしてもらえなかったり、場合によってはそういった請求を理由に「解雇する」といった恫喝をされる可能性もあります。

そういった場合は労働基準監督署に相談し、監督署の方から未払いの残業代を支払うように指導してもらうことができます。

労働基準監督署の監督官は労働問題の専門家ですから、労働者本人に残業代の計算方法などの知識がなくても、残業を証明する給与明細などの証拠があれば、それをもとに未払いを証明して支払いを促してくれます。

また、本来、労働基準監督署は労働基準法に違反している企業を指導する組織ですから、会社との関係を考えて自分の名前を出したくない場合でも、匿名の依頼があったとして未払いの請求をしてくれる場合もあります。

利用するうえで費用はかかりませんから、会社と直接交渉が難しい場合は労働基準監督署への依頼を検討してみましょう。

最終的には弁護士に相談するのが確実

ただし、最終的に訴訟になりそうな場合は、はじめから弁護士に相談するのがベストです。

明らかに未払いの証拠があるにもかかわらず、残業代を請求しても一向に支払わない企業も残念ながら少なくありません。その場合は裁判や労働審判で決着をつけることになるため、訴訟の専門家である弁護士の協力のもとで戦っていくことになります。

労働審判:裁判所の手続きの1種で、通常の裁判よりも短時間で行われるが、審判の結果は通常の判決と同様の法的拘束力をもつ。ここで決着が付かない場合は通常の裁判に移行する。

また、場合によっては未払いの重要な証拠を企業側が隠してしまうケースもあります。そんなときにも、弁護士ならば様々な手法を使って残業の事実を証明するために努力してくれます。実際、企業の経営者の発言や労働者の残業時間に関するメモ、同僚をはじめ周囲の証言から残業の事実が証明できたケースもあります。

特に、労働者本人が残業代をめぐる争いに関わっている時間や余裕がない場合、はじめから弁護士に調査や請求を依頼しておけば、後は結果を待てばよいということになるので、精神的にも楽になります。

残業代をはじめとした労働問題をスムーズに解決した場合は、信頼のおける弁護士や法律事務所に依頼することをおすすめします。
弁護士に相談

残業代の請求で注意すべきこと

最後に、残業代の請求で注意すべきことを説明しておきます。

未払いの残業代には時効がある

それは本来、未払い分の残業代が支払われるはずだった日(給与日)から2年を経過すると、請求する権利そのものが時効により消滅してしまうということです。

たとえば2019年6月5日に未払い分の残業代を請求する場合、2017年の6月5日以降に支給されるはずだった残業代については請求できますが、それ以前のものについては時効によって請求ができません。たとえ請求したとしても、企業側が時効を主張した場合、それがそのまま認められてしまうということです。

そのため、未払いの残業代が発生している場合、できる限り早く請求しなければなりません。時効が成立する2年以内であれば、たとえその企業を退職していても未払い分の請求ができますから、弁護士の協力のもと素早くアクションを起こすことをおすすめします。

なお、弁護士や法律事務所によっては無料相談を受け付けているところもありますから、残業代の未払いに悩んでいる人は積極的に利用しましょう。

弁護士の無料相談については、以下の記事で詳しく説明していますから、ぜひこちらも参考にしてください。

時効以外にもこんな失敗に注意

残業代の時効以外にも、請求する側が未払い分を少なく見積もってしまい、結果として、本来は得られるはずだった残業代をほとんど回収できずに終わってしまうケースもあるので注意が必要です。

たとえば、次のように時間外労働は原則として25%の割増給与となり、深夜残業の場合は、さらに25%増しの割増給与を支払ってもらうことができます(※4)。

  • 通常の時間外労働(残業):基本給の1.25倍
  • 深夜残業:基本給の1.5倍
  • 休日労働:基本給の1.35倍
  • 休日の深夜労働:基本給の1.6倍

このことを知らずに、すべて基本給をベースに残業代を計算してしまい、結果として割増を請求せずに終わってしまうケースが実は少なくありません。自分で残業代を請求する際には、まず割増賃金について正しく理解し、正しく金額を計算できているかチェックしましょう。

もし、自分がどれだけ働いたのかわからない、あるいは働いたことは確かでも、それを証明できないといった場合は弁護士に相談してみましょう。弁護士ならば、さまざまな証拠から残業代を正しく計算して会社側に交渉してくれます。

ただし、残業代の請求をはじめ、企業の労働問題に関わったことのない弁護士に依頼してしまうと、交渉に失敗してしまう可能性もあります。弁護士に依頼する場合には、その弁護士がどんな分野に精通しているか、具体的な実績はあるかなど、事前にしっかりとチェックしておきましょう。

弁護士選びのポイントについては、以下の記事で詳しく説明しています。ぜひ、こちらを参考にしてください。

残業代の未払い請求なら弁護士に相談を

企業の残業代未払いの実態と、残業代を請求できるケースについて説明しました。

日本の場合、どうしても労働者は企業で働かせてもらっているという意識が強いため、たとえ企業が残業代を払わなくても我慢して働き続けてしまうケースが少なくありません。また、未払いの状況に気づいていても、職場の風当たりや解雇を恐れるあまり、上司や経営者に不満を訴えづらい企業が多いのが実態です。

しかし、時間外労働は25%分の割増賃金をもらえるというのは、明確に法律で決まっていることですから、遠慮することなく堂々と請求すべきです。

それでもなかなか請求しづらいという人は、ぜひ弁護士に依頼して代わりに請求してもらいましょう。弁護士ならば、確実に残業代を取り戻す方法やスムーズに交渉する術を心得ていますから、自分で交渉するよりも精神的にも楽になることは間違いありません。

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