身近な家族やパートナーとの間で、こんなトラブルを経験したことはありませんか?
誰もが一度は経験する、家の中の物の処分を巡る問題。
しかし、知らないうちに法律に触れる行為をしているかもしれません。
この記事では、「人の物を勝手に捨てる」という行為が、法律上どのような問題を引き起こすのかを詳しく解説します。
よくあるトラブル事例や、法律的な対処法も解説するので、是非ご一読ください。
人の物を勝手に捨てると何罪?法律上の責任
他人の物を勝手に捨てる行為は、法的に大きな問題となる可能性があります。
「民事上の責任」と「刑事上の責任」に分けて説明します。
民事上の責任
他人の物を勝手に捨てると、民事上の不法行為(民法709条)に該当します。
わざと捨てた場合はもちろん、不注意で捨ててしまった場合でも、不法行為として損害賠償請求される可能性があるのです。
損害賠償の額は、捨てられた物の価値や、その物に対する所有者の思い入れなども考慮されます。
刑事上の責任
他人の物を勝手に捨てる行為は、器物損壊罪(刑法第261条)に該当する可能性があります。
注意ポイント
器物損壊罪になると「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」に処せられます。
ただし実際に刑事責任を問われるケースは稀で、多くのケースは民事上の問題として扱われます。
もっとも、悪質な場合や高額な物品の場合は、刑事告訴されるケースもゼロではありません。
万が一刑事告訴されると、警察から呼び出しを受ける可能性があります。
不安を感じたら、速やかに弁護士に相談しましょう。
家族ならOK?関係性による違い
相手との関係性によって、物を捨てる行為の法的な取り扱いが異なることがあります。
夫婦や親子、カップル、友人間のケースについて、それぞれ説明します。
夫婦間の場合
家族であっても、個人の所有物を勝手に捨てることは基本的に違法です。
ただし、夫婦の場合は「共有財産」と「特有財産」で取り扱いが異なります。
共有財産と特有財産の違い
- 共有財産:夫婦で共同で購入した家具や家電など、共同で使用する物
- 特有財産:結婚前から所有していた物や、個人的に購入した趣味の物など
共有財産の場合、処分には夫婦双方の合意が必要です。自分の判断だけで捨てることは許されません。
一方、特有財産は個人の所有物です。
自分の物であれば勝手に捨てても構いませんが、夫や妻の物を処分すると違法となります。
親子の場合
親子の場合も、人の物を勝手に捨てることは許されません。
例えば、実家を離れた子どもの私物を捨てるようなケースでは、必ず本人に確認しましょう。
母親であろうとも、子どもの私物を勝手に捨てることは認められていないのです。
カップルや元交際相手の場合
カップルや元交際相手の場合、それぞれの所有物は、基本的に個人の財産です。
したがって、相手の物を勝手に捨てると、違法となる可能性が高いです。
例えば、同棲中に購入した家具や電化製品は、誰の所有物か明確でない場合があるため注意しましょう。
相手に所有権がある物を勝手に捨てると、損害賠償を請求される可能性があります。必ず、事前の確認が必要です。
友人の場合
友人の物を勝手に捨てることは、明らかな違法行為です。
相手とどれだけ仲が良いかなど関係なく、他人の所有物を無断で処分することは許されません。
特に高価な品物の場合は、後々トラブルに発展する可能性があります。
相手が忘れている場合でも、捨てる前に必ず確認の連絡を入れましょう。
よくあるトラブル事例
ここでは、他人の物を勝手に捨てることで起きるトラブル事例を4つ紹介します。
法律的なリスクや対処法について見ていきましょう。
亡くなった家族の遺品を処分したら
家族の遺品整理であっても、勝手に処分するとトラブルの原因となります。
例えば、亡くなった家族が生前、趣味で骨董品や美術品を集めていたようなケースでは特に注意が必要です。
価値を確認せずに処分して、実は高価な物であると判明すると、深刻なトラブルになる可能性があります。
遺品を処分する前に、遺産としての価値がないか相続人全員で確認しましょう。
また、相続放棄を行っている場合も注意が必要です。
遺品を勝手に処分すると、相続放棄が無効となるおそれがあります。
-
被相続人に負債があったら?相続で損しないためには早めの対処がカギ
身内の方が亡くなって相続手続きを始めたところ、被相続人に負債があることが判明したら、ほとんどの方は慌ててしまうことでしょう。 負債も相続してしまうのか、負債を相続しないですむ方法はあるのか、手続きはい ...
続きを見る
元カノが置き忘れていったアクセアリーを処分したら
元カノの忘れ物もトラブルに発展しやすいケースです。
例えば、高価なアクセサリーなどを勝手に捨ててしまう人は珍しくありません。
しかし、元カノに忘れ物の連絡をせず、同意がない状態で処分をしてしまうと、後日になって「忘れていたから返してほしい」と言われ、トラブルになる可能性があります。
先ほどもお伝えしたとおり、元カノが残していった物を勝手に捨てることは、違法行為です。
忘れ物を勝手に捨てることはせず、元カノに連絡を取り、引き取りを依頼しましょう。
退職した社員が職場に置いたままの私物を処分したら
会社に残されている、退職した社員の私物を勝手に処分することはできません。
退職者に連絡を取り、私物の返却または処分について同意を得ることが必要です。
▼詳しくは、次の記事で詳しく解説しています。 退職後、職場に私物を置き忘れてしまったことはありませんか? 体調不良や精神的な理由で、なかなか取りに行けずに困ってしまう状況は意外と多いものです。 そんな時、どのように対処すればよいのでしょうか? 本 ... 続きを見る
【退職して私物を取りに行けない方へ】受け取り方と注意点を解説
マンションの共用部分に置かれた私物の植木を処分したら
マンションの共用部分に置かれた私物の処分は、管理組合の規約に基づいて行うことが必要です。
例えば、共用部分に置かれた私物の植木などが気になる場合は、管理会社に連絡しましょう。
個人が勝手に処分すると、トラブルの原因となる可能性があります。
▼詳しくは、次の記事で詳しく解説しています。 マンションの共用部分に私物が放置されていてお困りではありませんか? 共用部分は、住民全員が快適に生活するための重要なスペースです。 私物が放置されていると、クレームに発展するだけでなく、避難経路をふさ ... 続きを見る
マンション共用部分に放置された私物で困ったら?今すぐできる対処法
他人の物を処分する必要がある場合はどうする?
他人の物を処分する必要がある場合は、次の手順を踏むことが望ましいです。
- 所有者に連絡を取り、引き取りを依頼する
- 引き取り期限を設定し、記録の残る方法(メールやラインなど)で連絡する
- 期限を過ぎても引き取りがない場合、再度最終確認を行う。
- それでも反応がない場合、処分を検討する
まずは所有者と連絡を取り、物の処分について同意を得ることが必要です。
同意が得られたことを証明するために、メールなどのやり取りは必ず保管しておきましょう。
また、次のようなケースでは、同意があったとしても、後々問題になりやすいです。
- 高価なものを処分するケース
- 換金性の高い物を処分するケース(金券や貴金属など)
- 処分に費用がかかるケース(家電など)
トラブルに発展しそうな場合は、早めに弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。
人の物を勝手に捨てるのは危険|トラブルに発展しそう場合は弁護士へご相談ください
この記事では、人の物を勝手に捨てる行為の法律的な問題点や、身近なトラブル事例について解説しました。
人の物を勝手に捨てることは、民事上・刑事上の責任を問われる可能性があります。
家族間であっても、個人の所有物を勝手に処分することは避けるべきです。
どうしても、他人の物を処分する必要がある場合は、所有者への連絡や法的手続きを経るなど、適切な対応が求められます。
問題が生じた場合は、早めに弁護士のサポートを受けましょう。
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシーと利用規約が適用されます。