還付金詐欺の被害のニュースが後を絶ちません。
警察庁によると、2021年に発生した、電話で相手をだましてお金を振り込ませるなどの「特殊詐欺」の認知件数は14,461件と4年ぶりに増加し、被害金額は278億1000万円にもなりました。
中でも際立って増加し、件数も多かったのが「還付金詐欺」です。前年から2倍以上増加し、1年間の認知件数は4,001件にのぼりました。
内閣府の調査では、80%以上の人が「自分は被害にあわないと思う」と答えていますが、還付金詐欺の手口は日々巧妙化し、新たな手口で騙そうとしてきます。
そこで今回は、還付金詐欺の手口や事例を紹介し、還付金詐欺の被害にあわないための対策をご紹介します。
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還付金詐欺とは何か?
還付金詐欺とは、税金や医療費の還付に必要だとして、被害者にATMを操作させ、犯人の口座にお金を振り込ませる詐欺の手口のことを言います。
還付金詐欺の特徴
還付金詐欺の手口の特徴は、以下のようなものです。
- 電話による詐欺であること
- 税務署、市役所、銀行などの担当者を名乗って電話してくること
- ATMに誘導させること
- 高齢者の被害者が多いこと
実際に存在する公的機関や銀行の担当者を騙って電話をしてくるので、本当に還付されるお金があるのかもしれないと思ってしまいやすいのが特徴です。
還付金詐欺被害者の94%以上が高齢者
還付金詐欺の特徴として、被害者の94.4%が65歳以上の高齢者ということがあります。
また、男女比では、男性が885件、女性が2854件と、圧倒的に女性の被害者の方が多いのも特徴です。
なお、被害額平均は、男性が113.8万円、女性が114.1万円と、大きな違いはありません。
還付金詐欺の具体例!犯人の手口を紹介
実際に、還付金詐欺はどのように行われるのでしょうか。
先日、タイで日本人の特殊詐欺グループが逮捕され、「詐欺マニュアル」が押収されました。
ここでは、明らかになった詐欺のマニュアルをもとに、実際の還付金詐欺の具体例を、時系列に沿ってご紹介します。
還付金詐欺の電話内容
実際の還付金詐欺の犯人は、このように電話をかけてきます。
よくある還付金詐欺の電話
このように、市役所や区役所、税務署や国税庁、年金事務所、病院など、公的機関や金融機関等を名乗ることが特徴です。
また「還付」「払戻し」というキーワードもよく用いられます。
劇場型の還付金詐欺の電話に注意
上記が一般的な還付金詐欺の電話ですが、実はこれだけではありません。
など、事前に通知があったかのようなウソをつき、あたかも被害者のミスで手続きができていないように煽ることもあります。
また、事前に
といった電話があり、数日後に
と電話をしてくるなど、何人もの人間が関わって騙してくることもあるのです。
このように、複数人がドラマのように関わる詐欺の手口を「劇場型詐欺」といいます。
役所、税務署、銀行と、様々な組織の担当者を騙って電話をしてくるので、本当に還付金があるかのように錯覚してしまいがちです。
ATMに誘導するのが還付金詐欺の手口
還付金詐欺では、上記のように返金の話が出た後、銀行口座を聞いてATMに誘導するよう話が進められます。
「還付するのは、普段お使いの銀行で大丈夫です。どちらの銀行の口座に還付金を戻しますか?」
「お手続きしますので、通帳とキャッシュカード、身分証と印鑑をご準備ください。」
「いますぐ手続きをしないと、無効になってしまいます。携帯電話とキャッシュカードを持参して、ATMで手続していただく必要があります。」
などと伝えてきます。
身分証や印鑑などそれらしいことを言っても、最終的に必ず「ATMに誘導する」のが還付金詐欺の特徴です。
「今すぐ」「無効になる」「役所の期限がある」
など、被害者を焦らせることも多いです。
還付金詐欺でよく利用されるのが、無人の銀行ATMです。銀行内にあるATMや、コンビニATMだと、行員や職員が気付いて阻止されるケースが増えたためです。
最近はネットバンキングの利用者も増えていますが、還付金詐欺の被害者の多くが高齢者なので、ネットバンキング利用による還付金詐欺は一般的ではありません。
「携帯でATMの操作を案内」は還付金詐欺の常套手段
被害者がATMに到着すると、犯人の番号に電話をかけるよう促され、携帯で指示を受けながらATMの操作をさせられます。
「手続きが少々面倒でお手間をかけるのですが、私が電話でご説明するので大丈夫ですよ。」
「キャッシュカードを入れて、「お振込み」のボタンを押してください。」
などと、電話では具体的な指示を出されます
冷静に考えると、自分の口座にお金が入るはずなのに「振込み」ボタンはおかしいのではと気付くかもしれません。
しかし、犯人は言葉巧みです。
「あなたの口座にお振込みをする手続なので「振込み」で大丈夫です。」
などとうまく誘導します。
普段利用しないATMの操作に不安を感じているときは、つい信じてしまう人も少なくありません。
そして、「返金のための支払元口座を伝えるので、入力してください。」
といい、犯人の口座を入力させるのです。
最後に「還付される金額を伝えるので、入力して確認してください。」
等と伝え、金額を入力させると、その金額が被害者の口座から引き落とされ、犯人の口座に振り込まれてしまうという流れになります。
還付金詐欺の対策!このセリフがあれば詐欺確定
上記の事例から「自分も騙されてしまうのではないか」と不安に思った方もいるかもしれません。
そこで、このセリフがあれば還付金詐欺と気付ける、詐欺対策をご紹介します。
「ATMでお金の手続き」と言われたら詐欺
税務署や、市区町村役場、年金事務所などが、税金・医療費・保険料などを還付するためにATMの操作を依頼することは、絶対にありません。
ですから、
- ATM
- お金・還付金
この言葉がセットで出てきたら、100%還付金詐欺で間違いありません。
相手は詐欺師です。
それ以上話を聞く必要はありません。
すぐに電話を切って構いません。
「携帯を持ってATMへ」と指示されたら詐欺
還付金詐欺は、「還付金を受け取るにはATMで手続きが必要」
等と騙して、お金を犯人に振り込ませる手口です。
犯人は、携帯で指示して振込みの手続きを行わせます。
しかし、そもそも、ATMに還付金やその他のお金を受け取る手続きをする機能はありません。
税務署や役所、銀行や年金事務局が、ATMで操作を依頼することは絶対にありません。
そこで、
「携帯を持ってATMへ」
この言葉が出たら、100%還付金詐欺です。
事前にできる還付金詐欺の3つの対策
実際に電話がかかってきた場合、冷静に対応できるか分からないという方は、事前に還付金詐欺に備えて対策しておくことが有効です。
ここでは、事前にできる対策を3つご紹介します。
電話の発信者が表示される機能を付ける
携帯は、かけてきた相手の番号が表示されますが、固定電話にも同様の機能を付けることができます。
還付金詐欺のみならず、昨今、特殊詐欺の手口は巧妙化しています。
そもそも詐欺の電話に遭遇することがないように、番号を表示させ、知っている人の電話だけ対応するという対応方法です。
還付金詐欺の発信元番号はほぼ携帯電話
通常、還付金詐欺をはじめとする特殊詐欺は、組織化されたグループで行われています。
そのため資金力もあり、詐欺に用いる電話は、何十台とある足のつかない携帯電話、いわゆる「飛ばしの携帯」を使っています。
そのため、税務署や市役所を名乗っても、発信番号は携帯電話になることが多いです。
そのような不審な電話には最初から出ないというのも、効果的な詐欺対策です。
詐欺のマニュアルから発覚・非通知の詐欺電話に要注意
上述の「詐欺マニュアル」では、被害者に
「電話番号が非通知なのはなぜか」
と聞かれた際の回答として、
「年金機構の受給者リストが流出した問題があったと思います。
そのため役所でも、お金を扱う部署は、セキュリティ上自動的に非通知設定で対応しています。」
と回答するよう記載されていました。
年金受給者の情報漏洩も実際にあったことなので、実際に聞くと信じてしまいそうな内容です。
詐欺の犯人は、非通知の着信をはじめ、色々なパターンの回答例を用意しています。
非通知電話は最初から気を付けておくと安心です。
録音していることを相手に伝える
詐欺の犯人は、電話内容を録音されることを嫌がります。
相手を騙している会話の内容は、詐欺罪(刑法246条)に該当する中核の行為になるからです。
そこで、電話が繋がった際に
「この電話の通話内容は録音しています」
というメッセージが最初に流れるようにすることで、犯人に心理的プレッシャーをかけることができます。
このセリフが流れるだけで、犯人から電話を切る可能性が高まります。
メッセージの設定方法は、お使いの電話の機種によって異なるので、電話機や携帯を購入した店舗等で相談してみることをお勧めします。
ATMの利用極度額を下げておく
冒頭でご説明したように、還付金詐欺の被害額は、平均で110万を超えるなど高額です。
もし、詐欺の電話をつい信じてしまった場合に備えて、ATMで振り込める金額の上限を、あらかじめ低く設定しておくことも効果的です。
たとえば、犯人が100万円以上振り込ませようとしても、口座の設定で30万円しか一度にATMから振り込めないようにしておけば、万が一騙されてしまったとしても被害額を3分の1以下に抑えることができます。
詐欺の被害にあわないことが一番ですが、事前にもしもの状態に備えておくことも検討してはいかがでしょうか。
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もしも還付金詐欺にあった場合にするべき対策
万が一還付金詐欺に合ってしまった場合には、次の3つの対策をとってください。
警察に届け出る
ATMで操作をした後、還付金詐欺にあってしまったと気付いた場合は、直ちに警察に連絡しましょう。
着信履歴から、いつ、どのような電話がかかってきて、いくら被害にあったのかを申告します。
上述のように、特殊詐欺グループは組織化されています。
先日、タイで日本人の詐欺グループが逮捕されたように、施設の維持費などが安い海外に拠点を置いて詐欺を行う場合もあります。
それだけに、警察に被害を届け出ても、すぐに犯人を見つけて逮捕するというのは難しいのが実情です。
しかし、犯人は同様の詐欺行為を多数行っているため、別件で逮捕されることがあります。
その場合は、警察に被害を届け出ておけば、本件についても捜査が進んだり、示談などの形で被害金の賠償を一部ないし全額受けられる場合があります。
そもそも逮捕が難しい犯罪類型なので、必ずしも救済されるというわけではありません。
それでも、警察には被害を届け出ておくようにしましょう。
銀行に連絡する
還付金詐欺にあったことに気づいたら、取引銀行に連絡しましょう。犯人の口座に入金されないよう口座を凍結してもらったり、もし、決済時間外で取引が翌日になる場合は資金移動を止めてもらえないか、相談しましょう。
銀行のシステムが関係するため、必ずしもできるとは限りませんが、今後口座が悪用されることを防ぐためにも、詐欺被害にあったら銀行には連絡をしておくことをお勧めします。
相談先を見える化しておく
還付金詐欺は、被害者を一人でATMに誘い出し、振込手続きをさせる類型なので、犯人は被害者が誰かに相談したり、複数人で行動することを非常に嫌がります。
そこで、電話の近くに、警察署、銀行、家族の番号をメモしておき、怪しいと思ったら、ATMに行くなどする前に、まずは電話で相談しましょう。
その場合の連絡先を以下ご紹介します。
還付金詐欺の被害にあったら弁護士にも相談を
日本の刑事司法上、刑事事件の被害者の救済は実は難しいのが実情です。
被害届が出されるなどすると、捜査が進められるのが通常ですが、実際に救済されるのは、犯人が逮捕され、犯人が示談を求めてくる場合などです。
その際も、犯人側は弁護士を付けて示談の依頼や交渉をしてくるので、被害者が個人で対応しようとすると、示談金額が低く抑えられてしまったり、被害者として、犯人に反省を促したい、怒りや失望の気持ちを伝えたいといった希望が叶わないこともあります。
そこで、被害者側も弁護士に相談することで、ご自分が望むような示談交渉をしたり、裁判になった場合には意見を伝えられる場合があります。
また、そもそも、被害者が警察に出向いても、被害届を受理してもらうことが難しい場合もありますが、弁護士がついていれば、ほぼ確実に被害届を受理してもらえます。
還付金詐欺の被害にあった場合は、お気軽に弁護士にご相談ください。
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