国土交通省の調査によると、高速道路の逆走は、2018年に32件と、ピークだった2016年に比べ約4割減少しました。
交通事故全体でみると、人身事故は全体の9%にとどまるのに対し、逆走事故の場合の人身事故は44%に上り、結果が重大になるのが特徴です。
中でも高速道路における逆走事故の場合、事故全体に比べて死亡事故になる場合は約15倍、死傷事故になる場合は約5倍と、特に重大な結果につながりやすい特徴があります。
これは、逆走の性質上、正面衝突の割合が各段に高くなるためといわれています。
逆走は危険な行為なだけに、通報されたり、確保される場合もあります。
現に、2018年には、逆走について802件通報があり、3割に相当する200件が確保されています。
しかし、中には、気づかず逆走していたとか、そのような重大な行為と認識せずに逆走していたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
つい逆走をしたり、自覚なく逆走して後日警察から連絡が来た場合にどのように対応すべきか、ご説明します。
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高速道路の逆走はなぜ起きるのか
2018年、逆走事故を起こした人の年齢構成は75歳以上の人が全体の約50%を占めました。
65歳以上の人を含めると、逆走を起こした人の全体の約70%を占めます。
実際、近年にも高齢者が起こした逆走で重大な事故が発生しています。
高齢者が起こした交通事故逆走のニュース
2021年1月、70代の男性が西名阪自動車道を逆走し、軽自動車と正面衝突、軽自動車に乗車していた30代の運転手が死亡する痛ましい事件が発生しました。
事故は片側2車線の道路で発生し、逆走した男性は追い越し車線を走っていました。
高速道路での逆走は、インターチェンジやジャンクションで発生するものが約半数を占めますが、このような本線での事故も発生しています。
高齢者以外も起こしうる高速道路逆走の理由
上記のように、高速道路の逆走は高齢者によるものが多いですが、若年層も一定数が逆走しています。
現に2018年に逆走をして通報され、警察に確保された200人の分類を見ると、
- 75歳以上が96人
- 65歳以上75歳未満が41人
- 65歳未満の人は63人
に上っています。
高速道路の逆走の原因として、次の3つに分けることができます。
1.本来のルートに戻るための故意の逆走
降りるべきインターチェンジを通り過ぎ、Uターンして戻る故意(わざと)で行う逆走をいいます。
2.本来のルートに戻るための過失の逆走
一般道路から高速道路に誤って侵入したことに気づき、一般道路に戻るために料金所手前でUターンし、逆走の認識がないまま過失(うっかり)で反対車線を逆走する場合をいいます。
3.進行ルートを誤った過失の逆走
一般道路から侵入場所を誤って(うっかり)出口に侵入する場合をいいます。
注意
中でも多いのが、一般道を走行中にインターチェンジの出口に間違って進入する場合です。サービスエリアやパーキングエリアから出る際に、出口と入り口を間違えるケースもあります。
このような過失による誤侵入はいわゆる認知能力の低下といえますが、高齢によるだけではなく、同乗者との会話で標識を見逃したり、考え事をして気づかなかったなど、年齢にかかわらず誰もが起こしうるケースといえます。
逆走はどんな罪に相当するのか
道路を逆走した場合、事故を起こしたかどうか、事故を起こした場合は逆走した理由と生じた結果により、成立する罪が変わります。
逆走したが事故が起きなかった場合の違反と点数
道路を逆走した場合、事故を起こさなくてもそれだけで罪になります。
自動車を運転して、本来通行する部分と異なる場所を運転することは「通行区分違反」として道路交通法という法律で禁止されています(同法17条)。
違反した場合は、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が定められています。
ただし、逆走はわざとやった場合のみ罰せられます。気づかず逆走した場合は処罰されません。
とはいえ、気づかず逆走した場合も含めて、行政処分の対象にはなります。
普通自動車の場合は反則金9,000円、また基礎点数2点の付加が定められています。
過失で逆走して死傷事故を起こした場合の罰則
不注意(過失)で道路を逆走し、人にけがをさせたり死亡させた場合は、「過失運転致傷罪」(自動車運転死傷処罰法5条)に該当し、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金を課せられる場合があります。
- 懲役刑:刑務所で労働の義務がある罪
- 禁錮刑:労働の義務がない罪
逆走して交通事故を起こした場合は、基礎点数に付加点数がプラスされることになります。
逆走した人の不注意によって死亡事故が発生した場合は20点、それ以外の場合は13点がプラスされます。
故意に逆走して死傷事故を起こしたら
万が一、わざと高速道路を逆走し、人にけがをさせたり死亡させた場合は、「危険運転致死傷罪」が成立する場合があります。
この場合は、けがをさせた場合は15年以下の懲役刑、死亡させた場合は1年以上の有期懲役(最長20年)が定められています。
行政処分の点数としては、死亡の場合は基礎点数62点、けがの場合は45~55点が付加されます。
逆走による交通事故の過失割合
交通事故を起こした場合に問題になるのが過失割合です。
過失割合とは、交通事故の結果につき、加害者と被害者が負う責任の割合のことをいいます。
通常、四輪車同士の交通事故の場合、逆走した車と被害者側の車の過失割合は、10:0で逆走した側に過失が認められます。
しかし、被害者側にも一定の要素がある場合、修正要素によって過失割合が変わる可能性があります。
ポイント
具体的には、被害者側の車両が15キロ以上のスピード違反や前方不注意があった場合、スマホを見ながら運転していたような場合は、被害者側に10%程度の過失が加算されます
また、被害者が居眠り運転や酒酔い運転をしていた場合、無免許運転だった場合は20%程度加算されます。
とはいえ、逆走による事故では、逆走者の法の過失が高いのは確実です。
もし事故を起こした場合は、過失割合については弁護士に相談しましょう。
高速道路を逆走した場合に取るべき対策
高速道路を逆走するのは、なにも高齢者に限らず、誰しも起こりうること、実際に事故を起こすと重大な結果に繋がりうること、そして重い刑罰が科せられることをご説明してきました。
実際、2018年には802件の逆走が通報され、200件が確保されています。
逆走で探知され後日逮捕される可能性
逆走は、その場で通報され、現行犯逮捕されるのが原則です。
煽り運転など、重大かつ悪質なケースでは、ドラレコやスマホで録画された情報をもとに捜査がされる場合もありますが、過失による逆走だけでは、これらの情報から後日逮捕される可能性は低いというのが一般的です。
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しかし、逆走の程度が悪質な場合、事故を起こしていた場合は後日逮捕の可能性があります。
特に、人身事故を起こしていた場合は、ほぼ確実に捜査が進むと考えて間違いありません。
逆走で警察に通報された場合は弁護士に相談を
逆走で事故を起こすなどした場合は、1日も早く弁護士に相談することをお勧めします。
逆走で人身事故を起こして逮捕されると、逮捕から48時間以内に警察から検察庁に身柄と事件が送られ勾留すべきかが検討され、24時間以内に検察が勾留すべきと考えて裁判官もこれに同意して勾留決定が下りると、それから10日間、留置場生活が続きます。
勾留はさらに10日間延長される場合があり、逮捕から23日間、外に出られない可能性もあるのです。
このような場合、弁護士にできるだけ早く相談して、早期釈放と、罪を軽くしてもらう活動をすることが重要です。
特に人身事故は相手がいる類型なので、示談にして謝罪と賠償を尽くすことが重要です。
逆走による人身事故は、決して軽い事故ではありません。
もし逆走をして事故を起こした場合は、早急に弁護士に相談してアドバイスを受けることをお勧めします。
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