セルフレジの普及により、買い物のスピードや利便性は大きく向上しました。
しかし一方で、「会計をわざと通さない」「支払いを一部だけ済ませる」といった“ズル”をする人が増加傾向にあり、いまや社会問題にまでなっています。
そこで本記事では、セルフレジでの万引きがなぜ窃盗罪にあたるのか、店側や警察はどう対応するのか、そして、「うっかりミス」との違いや誤解を避けるためのポイントについて、わかりやすく解説します。
セルフレジ万引きとは?
セルフレジは、利用者が自分で商品をスキャンして会計を行う仕組みですが、これを悪用して「支払いをせずに商品を持ち出す」行為が増えています。
これは、従来のレジで店員の目を盗んで商品を持ち出す万引きと本質的には同じであり、刑法上の窃盗罪に該当する可能性が高い行為です。
「わざと」レジを通さないと窃盗罪に問われるのか
セルフレジで意図的に商品の一部をスキャンせずに袋へ入れたり、安い商品とすり替えて会計したりする行為は、明確に「わざと」会計を避けているため、窃盗罪に該当するおそれがあります。
メモ
刑法235条によると、
「他人の財物を窃取した者は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」
と定められています。
ここでいう「窃取」とは、他人の財物を占有者の意思に反して不法に自己の支配下に移す行為です。
つまり、商品の所有権は会計を済ませるまでは店舗にあり、それを「無断で持ち去る意思(不法領得の意思)」をもって支配下に置くことが窃盗罪の成立要件にあたります。
「うっかりスキャンを忘れた」といった単純なミスであれば、故意=不法領得の意思は認められず、犯罪にはあたりません。
しかし、意図的に一部の商品をレジに通さない場合や、すり替えによって安く精算する行為は、不法領得の意思があると判断され、窃盗罪が成立する可能性が極めて高いのです。
「うっかりミス」との境界線はどこにあるのか
一方で、セルフレジでは操作の不慣れや確認不足から「商品のスキャン漏れ」が生じることも現実にはあります。
たとえば、バーコードがうまく読み取れていなかったのに気づかず袋に入れてしまった場合などです。
こうしたケースでは「故意」があるかどうかが判断の分かれ目になります。
- 故意に会計を飛ばした場合
→ 窃盗罪として処罰対象 - 単なる過失(うっかりミス)の場合
→ 原則として窃盗罪は成立しない
とはいえ、実際に「うっかりだった」と主張しても、行動や状況次第では「わざと」と判断されるリスクがあることを忘れてはなりません。
少しでも行動の不自然さが見受けられる場合、言い逃れは難しくなるでしょう。
そのため、セルフレジを利用する際には必ず「全商品が会計済みか」を確認し、誤解を招かないよう注意することが大切です。
詳細については、以下の関連記事も参考にしてみてください。
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セルフレジ万引きによる警察と店側の対応
セルフレジを利用した万引きは、「軽微なズル」と思われがちですが、店側や警察は従来の万引きと同じように対応しています。
実際には現行犯で逮捕されるケースもあれば、防犯カメラなどの記録から後日逮捕されることもあり、見逃されることはありません。
現行犯逮捕されるケース
セルフレジ万引きの多くは、店内の防犯カメラや警備員によって監視されています。
商品を会計せずに袋へ入れる行為や、レジでの操作に不自然さが見られる場合、その場で声をかけられ、現行犯逮捕に至るケースが少なくありません。
現行犯逮捕された場合、そのまま警察署に連行され、取り調べや供述調書の作成など、刑事手続きに進むのが一般的な流れです。
後日逮捕されるケースもある
万引きの現場で捕まらなかったとしても安心はできません。
店側は防犯カメラの映像を保存しており、不審な行為があった場合には後日、警察に証拠映像として提供します。
警察が映像をもとに捜査を行うことで特定され、後日逮捕されてしまうケースもあるのです。
ポイント
「現行犯でなければ捕まらない」という誤解は危険であり、実際には映像証拠に基づいて逮捕される事例も増えてきています。
なお、逮捕については、以下の関連記事も参考にしてみてください。
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万引きGメンやAI監視の導入が進んでいる
近年では、スーパーやコンビニなどの小売店で、専門の監視員である「万引きGメン」だけでなく、AIを活用した防犯システムも導入されています。
ポイント
AI監視システムは、商品を手に取る動作やレジ操作の流れを解析し、不自然な動きを自動的に検知することができます。
これにより、従来の人間による監視だけでなく、テクノロジーによる二重のチェックが行われており、セルフレジ万引きの発覚率は高まっています。
つまり、「バレないだろう」と思っても、店側の監視網をすり抜けるのは非常に困難になっているのです。
セルフレジ万引きが人生に及ぼす影響
セルフレジを使った「わざと」の会計逃れは、たとえ少額であっても立派な窃盗行為です。
中には「バレなければ平気」と軽く考える人もいますが、実際には刑事責任だけでなく、生活や将来に大きな影響を及ぼす可能性があるのです。
常習犯とみなされるリスク
セルフレジ万引きを繰り返してしまうと、「常習犯」とされるおそれがあります。
初犯の場合は罰金や執行猶予で済むケースもありますが、再犯や常習性が認められると、裁判所は厳しく対応し、実刑判決につながる可能性が一気に高まるでしょう。
また、警察の取調べや裁判で「一度ではなく、何度も行っている」と指摘されれば、言い逃れは難しくなり、処罰は重くなる傾向にあります。
安易な「ズル」の積み重ねが、自分の人生を大きく狂わせてしまうのです。
民事上の損害賠償請求もあり得る
セルフレジ万引きは刑事事件だけではなく、民事トラブルに発展することがあります。
メモ
被害に遭った店舗が、被害額の弁償に加え、防犯強化や従業員対応に要したコストを「損害」として請求するケースもあるのです。
請求額は数万円から数十万円にのぼることもあり、刑事処分とあわせて大きな経済的負担を抱えることになります。
支払いを怠れば、差し押さえなどの強制執行に至るリスクもあり、軽い気持ちでは済まない事態に発展することを理解しておかねばなりません。
前科がつくことの社会的影響
窃盗罪で有罪判決が確定すれば、たとえ少額の商品であっても前科がつきます。
前科は就職や転職の際に不利に働いたり、資格取得や更新に影響を与えたりする可能性があるのです。
また、海外渡航の際に入国制限を受けるケースもあり、社会生活のあらゆる場面で大きな制約となるのです。
セルフレジ万引きは「ちょっとしたズル」のつもりでも、人生の選択肢を狭めてしまう行為になり得ることを忘れてはなりません。
セルフレジだからといって軽い気持ち万引きしない
セルフレジの登場で買い物は格段に便利になりましたが、その一方で万引きと判断されるリスクも増えています。
レジを通さずに商品を持ち出す行為は、たとえ軽い気持ちでも窃盗罪に問われるリスクがあり、現行犯逮捕や後日逮捕といった結果を招くかもしれません。
もし、ご自身やご家族がセルフレジでの万引きを疑われてしまった場合には、早急に弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士は店側や警察との対応を代理し、故意ではなく過失であったことを示すサポートをしてくれるでしょう。
また、書類送検や起訴を避けるための交渉、逮捕・勾留された際の早期釈放に向けた対応もできるため、まずは弁護士に相談することが大切です。