近年、主に電車内での痴漢行為が様々な点から問題となっています。
埼玉県でも一向に数が減らない迷惑防止条例違反(そのほとんどが痴漢行為)や、行為を行っていないにもかかわらず、痴漢行為の疑いをかけられる冤罪事件も増えています。
混雑した電車で日々通勤している男性の方はもちろん、その配偶者(妻)の方にとっても、そういった事件には絶対に巻き込まれたくないでしょう。
当然ながら、自ら痴漢行為をしてしまったのであれば、逮捕されて罪を償わなければいけません。
しかし、場合によっては女性側の虚偽の証言によって逮捕され、刑事裁判にまで至ってしまう可能性もあります。
万が一、自分や大切な家族がそういう目に遭ってしまったら…そう思う人は決して少なくないでしょう。
そこで本記事では、主に電車内で痴漢で逮捕されてしまった場合にどうなるか、刑事事件のプロセスに沿って説明するとともに、痴漢冤罪で捕まった際の適切な対応について解説します。
痴漢は現行犯逮捕のケースが多い
まずは痴漢とはどういう犯罪であり、何を根拠に処罰されるのかを知っておきましょう。
電車内での痴漢行為で逮捕された場合、その多くが乗客や被害者の通報による現行犯逮捕となります。
現行犯逮捕とは、刑事訴訟法では、現に犯罪を起こしている犯人、又は犯罪直後の者を逮捕することとされています。
『刑事訴訟法212条:現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。』
ただし痴漢の場合、現場にいた乗客が犯人を取り押さえたり、鉄道職員が犯人を拘束して警察に通報し、駆けつけた警察官に連行されるケースも多いです。
現行犯逮捕の場合は警察官でなくても一般人(私人)でも逮捕できるとされており、これを私人逮捕といい、刑事訴訟法にも規定されています。
『刑事訴訟法212条:現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。』
ただし、犯人が現行犯であっても、30万円以下の罰金などにあてはまる軽微な罪の場合には、その犯人の氏名や住所が不明な場合、又は逃亡のおそれがある場合に限られます。
痴漢の場合は6ヶ月以下の懲役刑の規定があり、これにあてはまらないため、被疑者の氏名や住所が明らかだったり逃亡のおそれがなくても、現行犯であれば一般人でも逮捕できることになります。
痴漢の私人逮捕が法的に正しいとは限らない
このように、痴漢の場合も現行犯ならば一般人でも逮捕できますが、現行犯逮捕が可能なのは、犯罪と犯人が明確な場合とされています。
万が一、痴漢冤罪で一方的に取り押さえられたような場合、駅事務所に連れて行かれる前に弁護士に連絡しましょう。
駅事務所にまで連れていかれてしまうと、そのまま拘束されてしまう可能性が高いです。
もし本当に冤罪だった場合は、犯罪行為が明確になっていないにもかかわらず逮捕しようとした案件となりますから、逆に違法逮捕となることも考えられます。
痴漢冤罪の場合の詳しい対応は後述しますので、そちらを確認してください。
痴漢逮捕のほとんどは迷惑防止条例違反又は強制わいせつ罪
そもそも痴漢という名前の犯罪はなく、そのほとんどが迷惑防止条例違反又は強制わいせつ罪となります。
迷惑防止条例とは、各都道府県がそれぞれ制定している条例です。
川越を含む埼玉県の場合は『埼玉県迷惑行為防止条例』がそれにあたり、痴漢行為はその第2条第4項のに該当します。
『第2条(粗暴行為等の禁止)4項:何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人に対し、身体に直接若しくは衣服の上から触れ、衣服で隠されている下着等を無断で撮影する等人を著しく羞(しゆう)恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。』
川越市で発生した痴漢行為が条例違反とされる場合も、この条例によって処罰されることになります。同条例では、痴漢の罰則は『六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金』となっています。
痴漢は強制わいせつ罪とされることもある
痴漢は上述の迷惑防止条例違反とされることもありますが、さらに重い犯罪で罰則も重い強制わいせつ罪とされるケースもあります。
『刑法176条:十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。(強制性交等)』
このように、13歳以上の相手に対してわいせつな行為をした場合は強制わいせつ罪となりますが、迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪の明確な区別がつかないケースも多いです。
上述の迷惑防止条例では『衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること』が要件となっており、強制わいせつ罪にはそういった規定はされていません。
しかし、現場の状況や被疑者の行動態様によっては、一般的に痴漢とみなされる相手に触れる行為であっても強制わいせつ罪が成立した例があります。
そのため、万が一、冤罪で逮捕されてしまった場合には、早急に弁護士を呼んで少しでも不利にならないよう対応してもらうことが重要です。
川越で痴漢として逮捕されたらどうなる?
それでは、もし川越市で痴漢の疑いで逮捕まで至ってしまったらどうなるのでしょうか?
川越で痴漢として逮捕されてしまった場合、そのほとんどが川越警察署に連行されて取調べを受けることになります。
警察による取調べの期間は48時間と決められており、その期間内に逮捕した被疑者を検察に送検するか、そのまま釈放するかを決めなければなりません。
『刑事訴訟法203条第1項:司法警察員は、~中略~留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。』
場合によっては微罪処分として扱われることもありますが、痴漢が社会的問題として注目されている昨今は、検察に送致される可能性が高いです。
ただし、初犯でしっかりと反省しており、被害者から被害届が出されなかった場合には、微罪処分として釈放されるケースもあります。
いずれにしても、罪を自覚しているならば反省の色を示すことが重要で、それ以上不利な状況にならないように弁護士に来てもらうのがベストです。
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送検されると勾留に至る可能性が高い
警察の取調べの結果、検察へ送致すべきと判断された場合、被疑者は犯罪を裏付ける証拠や書類とともに、身柄を検察庁へと送られることになります。
その後は検察官による取調べが行われ、検察官が勾留請求すべきと判断した場合には、24時間以内に裁判所に勾留請求をし、裁判官が勾留すべきと判断した場合には勾留決定が出されます。
勾留とは簡単にいえば、被疑者を釈放すると逃亡したり犯罪の証拠を隠滅するおそれがある場合に、留置場に身柄を拘束しておく措置をいいます。
その期間は原則として10日間と決められていますが、捜査に時間がかかる場合、さらに10日間の勾留期間の延長が認められています。
つまり、一度勾留されてしまうと、最長で20日もの間、被疑者は留置場で身体的拘束を受けることになってしまいます。
検察官に送致された事件では勾留請求されることも多く、痴漢事件もその例外ではありません。
勾留されると被疑者の日常生活に大きな不利益となり、特に会社勤めの人は、それによって不利な立場に追い込まれる可能性もあります。
そうならないためにも、逮捕されたらできるだけ早く弁護士に来てもらい、被疑者の不利にならないように適切な弁護をしてもらう必要があります。
弁護士ならば不当な勾留に対して不服を申し立てることもできますし、起訴されてしまった場合でも、被告人の身柄を開放する保釈手続きのサポートもしてくれます。
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痴漢で逮捕されたら素早く弁護士を呼ぶ
これまで何度も繰り返してきましたが、痴漢で逮捕されてしまった場合、もっとも重要なのは早急に弁護士に連絡して来てもらうことです。
弁護士に依頼するメリットとしては、まず警察および検察による捜査が行われている間でも、弁護士ならば被疑者本人に面会してアドバイスをすることができる点が挙げられます。
逮捕されてから勾留されるまでの最長72時間は、たとえ被疑者の家族であっても本人と面会することができません。
さらに裁判所から接見禁止決定が出された場合、勾留中も被疑者本人と会って話をすることができなくなります。
そんな状況で唯一、被疑者と会って話をすることが許されているのが弁護士であり、捜査機関による不当な取調べを防ぎ、被疑者に不利にならないようなアドバイスをしてくれます。
いかなる状況でも被疑者は弁護士(弁護人)を選任できる権利がある
逮捕されると、被疑者は常に孤独な状態におかれるため、捜査機関による時に高圧的な取調べに畏怖して自分に不利な供述をしてしまうケースも散見されます。
たとえ痴漢冤罪の場合であっても、警察は被疑者が痴漢をした前提で脅迫的な取調べをするケースもあり、後々その取り調べ方法が問題になることもあります。
本来、被疑者はどんな状況であっても、弁護士(弁護人)を選任する権利が認められており、本来は逮捕の時点で弁護人を選任できる旨を伝えられることになっています。
しかし実際は、弁護士を呼べることを言わずに取り調べをする警察官が多数で、さらに弁解の機会さえ碌にもらえないケースも報告されています。
そのため、もし痴漢で逮捕されてしまった場合、すぐに近くの弁護士に連絡して来てもらうようにしてください。
被疑者本人が弁護士に連絡できない場合は、川越警察署から連絡が来た時点で、家族が自発的に弁護士事務所に連絡を取って警察署に向かってもらうよう依頼しましょう。
痴漢冤罪の場合は逮捕・連行される前に弁護士に連絡を
上述のように、痴漢事件は私人による現行犯逮捕が多く、その後に警察官が通報で駆けつけて警察署に連行するケースが一般的になっています。
弁護士によっては、もし痴漢と間違われたり、場合によっては犯罪をでっち上げられたりした場合は、すぐにその場から逃げることを推奨している場合もあります。
しかし闇雲に逃げるよりは、弁護士を呼んで対応してもらうべきという意見もあります。それによって、その場から平穏に立ち去れる可能性も高まります。
注意すべきなのは、鉄道職員の言うことに従って駅事務所に連行されると、そのまま拘束状態で警察署に連行されてしまう可能性が高いということです。
そうなると、たとえ弁護士を呼んでも被疑者のもとに辿り着けないケースがあります。駅事務所は民間の施設ですから、警察署などのように、弁護士がスムーズに入れない場合があるのです。
ですから、痴漢で逮捕されそうになったら、冷静にその場で弁護士を呼ぶ。これを徹底するようにしましょう。
特に川越市の場合は、川越市内の駅や取調べが行われる川越警察署にすぐに来てくれる弁護士の連絡先を知っておくことが重要です。
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