厚生労働省によると、全国で覚せい剤の所持で検挙される人数は毎年1万5000件~1万7000件ほどもあり、埼玉県でも600件以上の覚せい剤取締送致件数があります。
これは全国平均を大きく上回る数で、日本全体でみてもかなり多い方です。川越市もその例外ではありません。
特に中学生や高校生が薬物事件で逮捕されてしまうケースも多く、年頃の子供をもつ親としては、そういった事件には絶対巻き込まれないで欲しいと思っているはずです。
それでも、万が一自分の肉親が覚せい剤で逮捕されてしまったら…。毎年一定数の検挙者がいるなかで、自分の家族が絶対に巻き込まれないとは限りません。
そんなとき、親として、あるいは配偶者として一体どうすればよいのでしょうか?
重要なのは、逮捕されてしまった後の具体的なプロセスについて把握しておき、それぞれの段階で適切な対応は何なのかを知っておくことです。
川越市で覚せい剤所持により逮捕されるとどうなるか?
一般的に覚せい剤の所持・使用は覚せい剤取締法違反として逮捕されることになります。
同法は覚せい剤(フエニルアミノプロパン、フエニルメチルアミノプロパンおよびその塩類等)の所持や使用、製造、受け渡しの禁止について規定したものです。
覚せい剤の所持や使用は10年以下の懲役という重い刑罰が課せられ、営利目的での所持や受け渡しを行った場合、さらに重い刑罰となります。
覚せい剤は中枢神経を興奮させるため、眠気や疲労感を和らげる作用があるなどとされ、そういった謳い文句で秘密裏に売買されることがあります。
しかし一度手を出してしまうと、非常に強い脱力・疲労感に襲われ、高い確率で依存してしまいます。
そうなると幻覚症状などに悩まされ、まともに日常生活を送れなくなりますから、絶対に手を出してはいけません。
逮捕後の流れは
それでも万が一、覚せい剤の所持や使用によって逮捕されてしまった場合、まず警察署に連行されて取調べを受けることになります。
特に川越市内で逮捕された場合は、その多くが川越警察署での取調べとなるため、家族にも川越警察署から連絡が来ます。
警察署内での取調べの結果、警察は被疑者を検察官に送致してさらに取調べを進めるか、そのまま釈放するかを決めます。
「送検」というのは、警察が当該事件に関する書類や被疑者の犯行を裏付ける証拠とともに、被疑者の身柄を検察官に送ることいい、その後の捜査は検察官の指示により行われます。
また、以下のように刑事訴訟法によって、警察が被疑者を検察官に送致するかどうかは48時間(2日間)以内に決定しなければなりません。
『刑事訴訟法203条:司法警察員は~中略~留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。』
厳しい取調べが行われることも
このように、警察は取り調べの時間が限られているため、何とか犯罪を裏付ける情報や自白を引き出そうと、時に厳しい取調べが行われることもあります。
覚せい剤取締法違反の場合は、逮捕されるときに被疑者が鞄や車の中などに隠し持っていた覚せい剤が押収されるケースがほとんどで、所持しているかいないかで問答がされることはあまりありません。
むしろ被疑者が「どこで覚せい剤を手に入れたのか」「誰から購入したのか?」といった背後関係を徹底的に調査されることになります。
特に薬物関係は売春などほかの犯罪との関わりも強いため、麻薬密売グループなどが背後にいる場合が多く、警察は神経質に売買ルートを洗い出そうとします。
そのため、たとえ未成年者であっても、その交友関係や生活状況などを詳細に調べられるため、万引きや傷害事件などよりも取調べに時間がかけられる傾向があります。
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覚せい剤所持による逮捕から検察の捜査・勾留へ
警察が被疑者を送検すると、その後の捜査は検察官の手で行われることになりますが、検察官は送致を受けてから24時間以内に、裁判所に拘留請求をするか、被疑者を釈放するかを判断しなければなりません。
検察官は裁判所に対して勾留請求をして取調べの期間を延ばそうとするケースがほとんどです。
他の記事でも説明していますが、勾留とは、被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐために、一定期間被疑者を刑事施設に身柄を拘束しておくことです。
逆に検察官が勾留の必要はないと判断した場合は釈放され、在宅のまま捜査が進められる(在宅事件)か、早々に不起訴が決定されることとなります。
ただ、検察に送致された事件の多くは勾留請求がされており、特に捜査に時間がかかりがちな覚せい剤に関わる事件の場合、そのほとんどが勾留に至ると考えておくべきです。
勾留されると長期間身柄を拘束される
一度勾留が決定されると、被疑者は原則10日間、警察の留置場に身柄を拘束されることになります。
その間に、検察官は被疑者を起訴するか不起訴にするかを決めなければいけません。
また、検察官がさらに取調べが必要と判断した場合、さらに10日間勾留の期間の延長請求をすることができるため、最長で20日もの間、被疑者は留置場で身体的拘束を受けることになります。
勾留期間の制限は被疑者の人権を守るための措置ともいえますが、会社勤めをしている一般の人にとっては、20日間はかなりの社会的ダメージを受けてしまう期間といえるでしょう。
そのため、早い段階で弁護士に相談して、できる限り勾留を回避できるように対策する必要があります。
覚せい剤所持で逮捕後、最長72時間は家族との面会ができない
そして、取調べについて被疑者の両親や配偶者などの家族が知っておかなければならないことがあります。
それは、逮捕されてから検察に送致されるまでの48時間と、検察が勾留請求を出すまでの24時間の合計72時間は、たとえ被疑者の家族であっても本人に面会できないということです。
たとえどんなに心配であっても、この期間の取調べの間は口裏を合わせて証拠を隠滅したりするおそれがあるため、原則として被疑者本人と合って話をすることができません。
ただ、勾留後は基本的に面会が可能となっており、これを「接見」といいますが、接見時には必ず警察職員が立ち会うことになり、時間も限られています。
そのため、時間に関わることや今後についてなど、じっくり話をする時間はないと考えるべきです。
接見禁止決定がされることもある
さらに状況によっては、たとえ勾留期間中であっても裁判所の決定で接見が禁止されてしまうことがあります。
『刑事訴訟法81条:裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じる(ことができる。)』
接見禁止決定が下される理由としては、まず接見者と口裏を合わせて逃亡をはかったり、証拠隠滅などのおそれがある場合、そして組織的犯罪の可能性が高い場合などが挙げられます。
特に覚せい剤に関する事件の場合、被疑者と密売グループとの関係が疑われるときには接見が禁止されてしまう可能性も十分あります。
一般的に、薬物事件には組織犯罪がつきものですから、傷害事件などに比べると接見禁止となる可能性が高いと考えておくべきでしょう。
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未成年者が覚せい剤で逮捕されたらどうなるか?
近年は、未成年者が覚せい剤に関わる事件に巻き込まれるケースも目立っています。
特に中学生や高校生が覚せい剤取締法違反で逮捕される事件は全国で発生しており、埼玉県も例外ではありません。
未成年者が逮捕された場合の手続きは年齢によって違いますが、14歳以上は刑事責任能力があるとみなされるため、逮捕から検察の捜査に至るプロセスは成人の場合と同じです。
ただし、そのまま勾留される場合もあれば、検察官の判断によって逮捕後すぐに家庭裁判所に送られることもあります。
家庭裁判所では、裁判官が少年鑑別所に収容するかを判断し、また、調査を実施したうえで少年審判を行いますが、審判の必要がないと判断すれば、この時点で審判不開始として釈放されることになります。
少年審判によって処分が決まる
少年審判は成人における刑事裁判にあたり、これによって少年を不処分にするか、保護観察処分にするか、あるいは少年院などの更正施設に送致するかなどが決められます。
不処分は刑事事件でいう不起訴や無罪となるため、そのまま身柄が解放されることになります。
保護観察処分の場合は、そのまま家庭には戻れるものの、その後は観察官による生活指導が行われることになります。
そして、更正施設への送致が決まった場合は、少年は児童自立支援施設や少年院に送られることになります。そうなると、更正施設で生活を送らなければならなくなります。
他にも、状況によって児童福祉施設に送られる場合や、重大な犯罪の場合は「逆送致」といって、検察官に送致されて成人と同じ刑事手続きが行われる可能性もあります。
保護観察になるケースが多いが、少年院送致になる可能性も
このなかでも、特に覚せい剤をはじめとした薬物犯罪の場合、定期的に観察官が生活状況をチェックする保護観察処分となることが多いです。
覚せい剤に関する少年事件で多いのは、周囲からの誘いを断れないケースや、依存症の怖さを知らずに軽い気持ちで手を出してしまうケースです。
そのため、たとえ家庭に戻れたとしても、入手経路を断つために交友関係などが厳しく制限されることになり、すでに依存している場合には、専門の医療機関で治療を受けることになります。
また、審判の結果、覚せい剤の恐ろしさを理解しておらず、密売組織と関わりを持ち続けてしまうと判断された場合には、拘束されたまま少年院送致になってしまう可能性もあります。
いずれにしても、できる限り早い段階で弁護士に協力してもらい、少しでも不利にならないように対応することが重要です。
川越で覚せい剤所持で逮捕された場合の対応は?
それでは、万が一、家族が川越市で覚せい剤の所持・使用などで逮捕された場合にすべき適切な対応とは何でしょうか?
取調べ中に面会できない家族が早急にすべきことは、何よりも素早く弁護士に連絡して川越警察署に行ってもらうことです。
弁護士は、たとえ家族が面会できない72時間以内の間でも、被疑者本人との面会・相談が認められている唯一の存在です。
また、上述の刑事訴訟法81条には『第三十九条第一項に規定する者以外との接見を禁じ(ることができる)』とありますが、この『三十九条第一項に規定する者』こそが弁護士です。
そのため、たとえ勾留中に接見禁止決定がされたとしても、弁護士ならば被疑者本人に会って相談を受けることができます。
弁護士に必要なアドバイスを受ける
弁護士は被疑者と会って話を聞き、事件の詳細や取調べの状況から、可能な限り被疑者に不利にならないためのアドバイスをします。
特に薬物事件の場合、未成年を含む若者が被疑者として取調べを受けるケースがあるため、自分にどういう権利が保障されているのか知らないことも多いです。
そんな状況で、警察や検察の言われるままに供述させられ、どんどん立場が不利になってしまう可能性があります。
弁護士はそういった厳しい取調べによって被疑者が自分に不利な証言をしてしまうのを防ぎ、被疑者の人権を尊重した取調べをするよう主張してくれます。
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被疑者本人にとって精神的メリットが大きい
取調室や留置場では、被疑者は常に孤独な状態におかれるため、精神的に追い詰められてしまうことが多いです。
とりわけ外部との接触が禁止されたまま長時間経過すると、人間はどうしても弱気になってしまいますから、少しでも早く釈放されたいために事実に反した発言をしてしまいかねません。
弁護士はそういった被疑者の不安定な精神状態をよく知っているため、彼らの心に寄り添い、その時点でのベストな対応についてアドバイスしてくれます。
これは刑事事件のプロセスを適正に進めることにも寄与しますが、何よりも被疑者の精神面に大きなメリットがあります。
弁護士に会って話を聞いてもらえるだけで精神的に楽になる被疑者はとても多く、パニック状態になっている自分の頭を整理して、今後の対応について冷静に考えられるようになります。
起訴されても保釈請求ができる
検察の取調べの結果、起訴が妥当と判断されてしまった場合、被疑者は被告人と呼ばれるようになり、刑事裁判を受けることになります。
そうなると、起訴後勾留と呼ばれるさらに長期の身体的拘束を受けなければなりません。
特に被告人の勾留には期限がありませんから、起訴されてから第一回の公判まで勾留されてしまうケースも多く見受けられます。
これは被告人が公判に出廷しなかったり、判決に重大な影響を及ぼす証拠の隠滅をはかったりするのを防ぐ目的があり、多くの場合、裁判が終わるまで勾留され続けることになります。
そうなると、被告人の生活に大きなダメージとなり、その後の社会復帰が難しくなってしまうことも少なくありません。
そういった事態をできるだけ回避するために設けられているのが保釈制度で、これが認められると被告人の身柄を釈放することができます。
弁護士は保釈請求に必要な手続きのサポートをしてくれるほか、保釈金についての相談にも乗ってくれます。
起訴されてしまったと諦めずに、弁護士の協力のもとでできるだけ長期の勾留を回避し、準備を万全にして訴訟に臨むことをおすすめします。
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覚せい剤で逮捕されてしまったら早急に弁護士に連絡を
以上のように、万が一にも家族が覚せい剤の所持で逮捕されてしまったら、すぐに弁護士に連絡をして警察署に行ってもらいましょう。
勾留されるまでの72時間以内の期間が勝負で、早めの対応によって勾留や起訴を免れた例もあります。
特に覚せい剤に関する事件は、組織的犯罪が背後に絡んでいることが多いために、捜査が長引く傾向があります。
そうなると長期間の勾留によって大切な家族の生活が復元不可能なほどダメージを受けてしまう可能性が高いです。
ぜひ、早めに弁護士に行ってもらい、適切な対応についてアドバイスを受けるように手配してください。
川越市内で逮捕された場合は川越警察署で取調べが行われることがほとんどですから、いざというときに備えて、すぐに川越警察署に出向いてくれる弁護士の連絡先を知っておきましょう。
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