交通事故・交通違反

無免許運転で逮捕されたら?罰則や欠格期間などについて解説

2019年7月23日

車と免許証

今月(2019年7月)7日、千葉県柏市にある小学校の教頭が無免許で軽乗用車を運転したとして逮捕されました(※1)。

また、18日には、静岡県富士市の高速道路で乗用車を無免許で運転したとして2月に逮捕された男の初公判があり、懲役6か月、執行猶予3年の判決が神戸地裁で言い渡されています(※2)。

このように、日本では毎年のように無免許運転で逮捕される人がおり、場合によっては事故を起こして他者を巻き込んでしまうケースも少なくありません。

無免許運転については2013年の道路交通法の改正に伴って罰則が強化されたばかりですが、それでも無免許で逮捕されてしまう人が後を絶たないのが現状です。

「どうせ見つからない」とか「少しぐらい大丈夫だろう」という思いから軽い気持ちで無免許運転をしてしまう人がいますが、重い刑罰や処分が科されることを知っておかなければいけません。

そこで今回は、無免許運転で逮捕された場合の罰則や欠格期間、同乗者の罪などについて解説します。

無免許運転の種類と罰則

車 バツまず無免許運転がどういうものか、その概要と具体的な罰則について知っておきましょう。

無免許の4つの種類

「無免許運転=免許を所持しないまま車などを運転すること」だというのは、ほとんどの人が知っていますよね。
一言で無免許運転といっても、厳密には以下の4種類に分類されます。

純無免 これまで一度も運転免許の交付を受けたことのない人が運転した場合
取り消し無免 事故や交通違反をしたために運転免許を取り消された後、再び免許が交付される前に運転した場合
停止中無免 免許停止期間中や免許の有効期限が切れている状態で運転した場合
免許外運転 所持している免許が対象としている車種以外の車を運転した場合
(普通免許で大型トラックを運転するなど)

他にも、

  • 免許の試験に合格したものの免許証の発行前に運転してしまった
  • 日本では無効な外国の免許証で運転した場合
  • 他人名義の免許証や偽造された免許証で運転

などといったケースも無免許扱いになります。

冒頭で紹介した事例の場合、はじめの小学校の教頭は一度も免許を取得したことがない状態で車を運転したため純無免での逮捕ということになり、2番目の男性の場合は、かつて運転免許の取消処分を受けていたにもかかわらず運転したため、取り消し無免での逮捕ということになります。

どちらも自分が免許がない状態であると知りながら車を運転したということで、かなり悪質な事例といえるでしょう。

しかし、こういった本人に自覚があるケースはもちろんですが、停止中無免のように運転者が有効期限切れになっているのに気づかずに運転してしまうケースも少なくありません。

つまり、運転者がうっかり免許の更新を忘れており、そのまま失効に気づかずに運転し続けてしまうケースもあるのです。

こういった場合、本人に自覚はないものの、無免許運転であることに変わりはなく、他の交通違反に比べて重い罰が科されてしまいます。

そのため、免許の更新忘れには十分注意しなければなりません。

免許不携帯と無免許運転の違い

このように、無免許運転にはいくつかの類型がありますが、無免許運転と免許不携帯を混同している人が、実は少なくありません。

免許不携帯とは

有効な運転免許を所持しているにもかかわらず、携帯せずに運転すること。

たとえば、財布の中に運転免許を入れていて、それを自宅に忘れたまま車の運転をしてしまった、などの場合です。

有効な免許は所持している状態なので無免許運転とはなりませんが、見つかった場合は3,000円の罰金となる可能性があります。

なお、AT車のみの限定免許でMT車を運転したり、運転の際に眼鏡やコンタクトレンズが必要にもかかわらず、それらを着用せずに運転した場合などは「免許条件違反」となります。

この場合は無免許運転とはならないものの、罰金7,000円と違反点数2点となる可能性があるので注意しましょう。

無免許運転の罰則

それでは、無免許運転で逮捕された場合の罰則についてです。

運転免許は多くの車両が通る公道を安全に走るために必須のもので、運転者だけではなく、他の車を運転している人や歩行者の安全にとっても重要となります。

無免許で車を運転することは、しっかり免許を取得してから運転するよりも圧倒的に交通事故が発生する可能性が高くなるため、その事態を防ぐために非常に重い罰則が科せられるようになっています。

無免許運転で逮捕された場合、まず道路交通法違反となり「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科されます(道路交通法第117条の2の2)。

本来、軽微な交通違反の場合は反則金を納付することにより刑事罰を免れることができるようになっています。

いわゆる「(違反)切符を切られる」と言われるものですが、無免許運転の場合は軽微な犯罪とはみなされず、刑事罰に加えて、以下で説明する行政処分が科されることになります。

2013年までは無免許運転の刑罰は「1年未満の懲役または30万円以下の罰金」だったのですが、相次ぐ無免許運転による重大事故の影響もあり、道路交通法が改正されて、今ではさらに重い刑罰が科されるようになっています。

なお「3年以下の懲役」と「50万円以下の罰金」のどちらが科されるかは、無免許運転の状況や逮捕者の態度など諸々の条件を考慮して裁判官が判断することになりますが、初犯の場合は罰金刑となることが多く、さらに無免許運転のみの違反行為だった場合は、罰金の額も30万円程度になるケースもあります。

しかし、再犯の場合や人身事故で他者を巻き込んでしまった場合などは、罰金ではなく懲役刑が科される可能性が出てきます。

刑罰以外に科せられる行政処分と無免許運転の欠格期間

無免許運転では、刑罰に加えて行政処分も科されることになります。

行政処分とは、一般的に警察法や国家行政組織法、地方自治法などの行政に関する法律に違反した場合の処罰のことをいい、運転免許に関しては以下の5つの行政処分があります。

免許停止処分
免許の効力を一定期間停止する処分

免許取消処分
免許の効力を完全になくす処分

免許保留処分
一定期間免許の付与を保留する処分

免許拒否処分
試験に合格しても免許が発行されない処分

運転禁止処分
一定期間運転を禁止する処分

これらのうち、どの処分が科されるかは加点制による点数制度が適用されることになり、違反の内容や事故の状況によって決まった点数が加算される決まりになっています。

点数制度の詳しい内容については警視庁のホームページなどに掲載されていますが、無免許運転の場合、最低でも行政処分の中でもっとも重い罰である違反点数25点が加算されるため、一発で免許取り消しとなります。

さらに欠格期間といって免許を取得できない期間が設定され、無免許運転の場合は最低でも2年以上は免許をとることができなくなります。

もし欠格期間中に無免許運転を繰り返した場合、重い罰金を科せられたうえに、その期間が3年、4年と延びていくことになります。

無免許運転で事故を起こした場合の刑罰と点数

交通事故このように、無免許運転は他の交通違反に比べてかなり重い罰が科せられることになりますが、さらに無免許の状態で事故を起こしてしまったらどうなるのでしょうか?

すでに説明したように、無免許運転の場合は道路交通法違反で「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられるほか、行政処分の違反点数25点が加算されます。

それに加えて、事故の被害の状況に応じてさらに重い刑事罰が科せられたり、以下のように相手の被害の程度によって加算される点数が増えることになります。

治療期間15日未満、あるいは建造物等損壊 3
治療期間15日以上30日未満 6
治療期間30日以上3か月未満 9
治療期間3か月以上あるいは後遺障害を伴う被害 13
死亡事故 20

なお、無免許運転で事故を起こしてしまった場合、自賠責保険や任意保険に入っていれば対人賠償や対物賠償は有効となりますが、無免許運転者自身に保険はまったく適用されません。

つまり、被害者への賠償や補償に関しては保険が使える場合はあるものの、加害者である無免許運転者自身の怪我や車の破損などについては、保険は一切利用することができないということです。

同乗者にも責任はある?

また、無免許運転に関しては、同乗者の責任についても問われることになるので注意が必要です。

運転者が無免許であると知りながら同乗した人や、その可能性に気づいていながら車両を貸した人も、無免許運転幇助(ほうじょ)行為として以下のように処罰の対象となります(道路交通法64条ほか)。

無免許運転をするおそれのある者に自動車などを提供し、実際にその者が無免許運転をした場合

→3年以下の懲役または50万円以下の罰金

運転者が自動車などの免許を受けていないことを知りながら、その者に自動車などを運転して自己を運送するように要求したり、依頼して同乗した場合

→2年以下の懲役または30万円以下の罰金

このように、無免許運転者に車を貸した人や、無免許運転者の車に同乗した人も処罰される可能性がありますから十分注意が必要です。

高校生など未成年者が無免許運転をした場合の扱い

それから無免許運転に関しては、特に高校生をはじめとした未成年者が逮捕されるケースが非常に多いのが特徴で、無免許運転者による重大な事故のうち、約3割が未成年者によるものです。

未成年者の場合、他の犯罪行為と同様に少年法が適用されることになります。

そのため被害者が死亡するなど重罪となるケースを除き、家庭裁判所による調査の結果、以下の処分のうち保護観察処分保護観察なしの不処分となる可能性が高いでしょう。

不処分 保護監察官による指導の必要なく更正が可能と判断された場合
保護観察処分 保護観察官による指導により更正をはかる必要があると判断された場合
少年院送致 少年院での指導で更正が必要と判断された場合
事件送致 検察官に事件を送致し、成人と同様の刑事処分を受けさせる必要があると判断された場合

また、未成年者の起こした交通事故だからといって、被害者に支払う損害賠償の金額が成人と変わるわけではありません。本人に代わって親権者が被害者側と示談交渉したり、賠償金を支払うことになります。

なお、未成年者の事故に関しては、以下の記事で詳しく説明していますので、ぜひこちらを参考にしてください。

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無免許運転で逮捕された場合の対応

逮捕それでは、万が一、無免許運転で逮捕されてしまった場合、どうすればよいのでしょうか?

すでに説明しましたが、無免許運転は初犯であれば罰金刑となることが多く、逮捕されずに略式裁判となることがほとんどです。

略式裁判とは

100万円以下の罰金また科料に相当する事件で、正式裁判をせず書面で審査する裁判手続。交通事故の場合はこの方法で処罰を決めることが多い。

しかし無免許運転の再犯の場合や、他の事件の執行猶予中に無免許運転をした場合などは、起訴されて刑事裁判の後に実刑判決となる可能性もあります。

その場合には、できるだけ早く弁護士に相談して必要な対策についてアドバイスをもらうことをおすすめします。

特に無免許運転の容疑に身に覚えがない場合は、弁護士に依頼して警察や検察に対して不起訴処分にするように働きかけてもらうことが重要になります。

たとえ無免許運転を繰り返してしまった場合にも、それまでの経緯や違反の状況などを検討して罰金処分となるように弁護活動をしてもらうことができます。

いずれにしても、被疑者個人では有力な証拠集めや主張ができないことがほとんどですから、逮捕されたら早急に弁護士に連絡して相談に乗ってもらうのがベストです。

弁護士に相談するメリットについては、以下の記事で詳しく説明しています。ぜひ参考にしてください。

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無免許運転で逮捕されたらすぐ弁護士に相談を

無免許運転の罰則や行政処分、そして無免許運転で逮捕された場合の対応について解説しました。

日本では年間に2万件以上も無免許運転が発生しているといわれています。

自分は無免許運転などしないと思っていても、子供がちょっとした出来心で無免許のまま車を運転してしまうかもしれませんし、無免許運転者による事故の被害者になってしまう可能性もあります。

交通事故にはいつ巻き込まれるかわかりませんから、他人事だと思わずに、いざというときに弁護士への相談も含めてどう対応すべきか考えておくことが重要です。

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