相続・贈与

死後事務委任でよくある5つのトラブル事例と対応方法を解説

白いユリの花

おひとりさまなので、死後の手続きが心配」「自分の死後、家族に負担をかけたくない」といったお悩みは年々増え、生きているうちに、自分の死亡後に必要な手続きを第三者に任せる方が増えています。

このように、依頼する人(委任者)と、引き受けた人(受任者)の間で、相続以外の死後の諸手続きを任せる契約のことを「死後事務委任契約」といいます。

人が亡くなると、死亡届の提出から、火葬・埋葬、税金や借家の明渡しなど、さまざまな手続きが生じます。

それだけに、死後事務委任契約であらかじめ何をどうしてほしいか決めて、信頼できる人に任せておくことが、万が一に備えた安心に繋がります。

しかし、死後事務委任は、亡くなった後に手続きが開始することや、多額の預託金を預けておくことから、トラブルも生じています。

そこで今回は、死後事務委任でよくあるトラブル事例をご紹介し、対策方法をご紹介します。

死後事務委任のよくあるトラブル事例とは

言い合いをしている人たちの手元死後事務委任契約において、受任者は家族や親族になることもありますが、多くの場合第三者が務めます。

そうすると、事前に契約内容の理解に齟齬があったり、受任者と遺族がもめるなどしてトラブルになることがあります。

具体的なトラブル事例としては、主に以下のようなものがあります。

預託金・銀行口座の使い込み

死後事務委任契約では、死後事務の遂行に必要な予算の概算を出しておき、預託金として受任者に預けたり、銀行口座の管理を任せるのが通常です。

受任者は、そのお金を管理する権限があるので、死後委任契約の内容に従わず、使い込んで自分のために浪費してしまう可能性があります。

委任者が死亡すると、銀行に預けている預貯金や現金は相続人に承継されるので、相続人が受任者を追及する場合もあります。

使い込みを防ぐには、弁護士など信頼できる第三者を選ぶようにしてください。

契約内容があいまいで死後事務が滞る

死後事務委任契約は口頭でも成立します。

しかし、委任内容を明らかにするために、通常は依頼する内容を「死後事務委任契約書」に記載します。

ただし、事前の調査不足で解約すべき契約関係が漏れていたり、依頼内容があいまいで委任者の希望が分からないなどの状況になると、死後事務が滞ってしまいます。

すると、いつまでも家賃や公共料金の支払いが続くなどして、トラブルに発展するリスクが高まります。

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死後事務をきちんと履行してくれない

死後事務は、本人である委任者の死亡後に手続が発生するため、きちんと希望通りに死後事務が履行されたかを確認できない場合があります。

そのため、受任者がいい加減な対応をする、委任者の希望よりも安い葬儀をあげる、墓石を安価なものにするなど、死後事務を契約内容通りに履行してくれないというトラブルが生じる可能性があります。

受任者と相続人間でもめる

委任者に相続人がいる場合、受任者と相続人で死後事務の方針について意見が食い違い、もめてトラブルになることは少なくありません。

死後事務では、委任者の意思で任された受任者が主導して身辺整理をすべきですが、一方で相続人は被相続人である委任者の財産を相続しています。

そのため、死後事務の委任の内容が相続人の考えと異なった場合、協力を拒否したり預託金の過大な返還を求めるなどのトラブルになりがちです。

死後事務委任の内容が遺言の内容と矛盾する

死後事務委任契約は、口頭でも成立します。

相続に関する内容は対象外ですが、家財道具など財産の処分に関する内容も含むことができます。

一方、遺言は、厳格なルールの書類(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)で作成しなければならず、財産の処分に関することしか定められません。

そこで、死後事務委任の内容と、遺言の内容に矛盾があった場合に、どちらが優先するかというトラブルになる場合があります。

このような場合、どちらを優先するかは未だに手探りの状況です。

それだけに、死後事務委任契約の内容は、少なくとも書面で遺しておくことが重要です。

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死後事務委任のトラブルを防ぐために公正証書の作成を

公証役場

上記のように、死後事務委任契約は、口頭でも成立します。

しかし、それでは、後からどんな内容を依頼したのか委任の内容があいまいになるうえ、相続人がいる場合にはトラブルを拡大させかねません。

そこで、死後事務委任の内容を「死後事務委任契約書」に記し、公証役場で公正証書にしておくことをお勧めします。

死後事務委任契約が始まるときに、委任者は死亡しているため、口頭の契約ではだれに何を委任したのかわかりません。

契約書があったとしても、死後事務について相続人などとトラブルになった場合「委任者が理解していないのにむりやり契約書を作らされたのではないか」等と疑われる恐れもあります。

しかし、公正証書は、委任者と受任者の双方が公証役場に出向き、公証人が作成した契約書を確認して署名押印するという手順を踏むため、委任者が内容を理解していたという証明になり、トラブルを防ぐことができます。

社会福祉協議会に死後事務を委任したらトラブルを防げるか

死後事務は、当事者間の契約なので、自治体などの行政が代わりにやってくれるというものではありません。

しかし、昨今の高齢化を受けて横須賀市のように登録カードを設け、死後事務を関係部署に引き継ぐ対応をしているところや、各都道府県の社会福祉協議会が死後事務委任を扱っているところもあります。

ただし、全ての社会福祉協議会が死後事務委任を扱っているわけではなく、扱っている場合でも、委任できる内容が限られる場合が多いです。

具体的には、

  • 役所等への届け出
  • 葬儀や埋葬
  • 家財の処分

に限定されるのが通常です。

必要最小限の内容に限られるため、相続人等とトラブルになりにくいとも考えられます。

しかし、預託金は預けること、委任者が多くきめ細やかな対応が難しいことから、トラブルを必ず回避できるとは限りません。

どのような内容の死後事務を委任したいのか検討したうえで、社会福祉協議会との契約を検討することをお勧めします。

弁護士に死後事務を委任した場合の費用の相場

弁護士死後事務委任契約でのトラブルを避けたい場合は、弁護士に死後事務を委任することをお勧めします。

死後事務委任を扱っている弁護士は、通常相続の問題も扱っているため、死後の手続全般に精通しています。

また、弁護士には守秘義務があり、弁護士法や弁護士職務規定など、様々な規制で倫理に反する行動が厳しく制限されています。

そのため、使い込みや、死後事務を履行しないなどのトラブルを避けることができるからです。

弁護士に死後事務を委任した場合、次のような費用がかかります。

相談料

専門家に死後事務委任契約の相談をした場合に発生します。

弁護士の法律相談の場合、30分5000円が法律相談の目安と言えます。

契約書作成料

専門家に、死後事務委任契約書の作成を依頼した場合にかかる費用です。

数万円から30万円程度と差があるので、事前に見積もりを依頼するなどして確認しておきましょう。

公証役場に納める手数料

死後事務委任契約書を公正証書にする場合、11,000円の手数料がかかります。

死後事務の執行費用

葬儀費用、埋葬費用、未払いの家賃など、死後事務委任の内容によって金額が変わります。

委任者の希望に沿って、費用の概算を見積もっておき、受任者に預託金として預けておきます。

死後事務報酬

報酬金は、依頼する事務の内容や、弁護士によってかなり目安が異なります。

参考として、弁護士が遺産分割の代理交渉をした場合の報酬の目安は、旧弁護士会報酬規程で次のように決められていました。

  • 経済的利益が300万円以下:16%
  • 経済的利益が300〜3,000万円:10%+18 万円
  • 経済的利益が3,000万円~3億円:6%+138 万円
  • 経済的利益が3億円~:4%+738 万円

事務手続きの遂行と交渉という違いがありますが、概ね数十万円~200万円程度と言えると思われます。

死後事務委任のトラブル防止・トラブル対応は弁護士に相談を

説明を受ける夫婦死後事務委任契約は、高齢化社会、単身世帯の増加を受けて、これから重要性を増す契約と言えます。

それだけに、死後事務委任に関するトラブルは今後増加する可能性があります。

せっかく、自分が亡くなった後に周りに迷惑をかけないために死後事務委任契約を締結しても、相続人や関係者とトラブルになったのでは、本来の目的を達成できないばかりか、望んだのとは真逆の結果になりかねません。

弁護士にあらかじめ死後事務委任の相談をしておくことで、相続人の有無、遺言の有無、成年後見の利用の有無など、状況に応じた死後事務委任契約の内容を精査し、また、死後事務委任を任せることもできます。

せっかく死後事務委任契約をして死後に不安を残さないためには、信頼できる相手に委任する方が、余生を安心して過ごすことにもつながります。

死後事務委任でトラブルがご心配な方は、まずはお気軽に弁護士にご相談ください。

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