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コロナで内定取り消し!泣き寝入りしないために知っておくべきこととは

投稿日:2020年5月21日 更新日:

悲しげな男性

新型コロナウイルスへの感染拡大の影響により、多くの企業の業績が急激に悪化しました。

仕事がない、人件費が払えない、業務を縮小するなどの理由で採用予定だった学生の内定を取り消す企業が多く発生したことが話題となっています。

厚生労働省の発表によると、2020年春に高校や大学などを卒業する予定の学生についての内定取り消し数は、3月31日の時点で23社、58人に上ったとのことです。

公的なデータに反映されない内定取り消しも少なくないと考えられるので、実際にはこの数値の何倍もの内定取り消しが発生している可能性があります。

新卒時の就職は、その人の今後の人生を決定しかねない重大事項です。入社直前の時期に一方的な内定取り消しが行われると、学生にとっては計り知れない不利益となってしまいます。

そこで今回は、コロナの影響で会社側が一方的に内定を取り消すことが法律的に許されるのかについて解説します。

併せて、内定取り消しを宣告されたとき、泣き寝入りしないために知っておくべき重要な知識もご紹介します。

コロナの影響による内定取り消しは許されるのか?

内定イメージコロナ騒動による経営状態の悪化は、会社に責任があるとはいえません。新卒者の採用を控えることについても、やむを得ない面はあるでしょう。

しかし、内定を取り消される学生の側には何の非もありません。経営状態の悪化や業務縮小を理由とする内定取り消しは、会社側の都合によるものといえます。

では、いったん出された内定を会社側の都合で取り消すことは法律的に許されるのでしょうか。

内定を出した時点で労働契約が成立している

まず、内定にどのような法律的意味があるのかというと、裁判例上、「始期付解約権留保付労働契約」に該当するとされています(最高裁昭和54年7月20日判決「大日本印刷事件」など)。

「始期付」というのは、就労開始の時期を学校卒業後とするという意味です。

「解約権留保付」というのは、始期が到来するまでの間は、一定の事由に基づいて解約する権利が残されているという意味です。

つまり、内定とは採用予定者が学校を卒業すれば労働契約を結ぶという約束ではなく、内定が出た時点で既に労働契約が成立しているのです。

会社からの契約解除は原則として許されない

内定の時点で労働契約が成立しているということは、雇用の問題について会社は採用予定者も従業員と同じように取り扱わなければならないということを意味します。

上でご紹介した大日本印刷事件の最高裁判決でも、採用内定者の地位は使用期間中の従業員と基本的に同じであると述べられています。

会社が従業員を解雇することは平時でも厳しく制限されています。一定の事由に該当する場合を除き、自由に解雇することは許されません。

それと同様に、内定取り消しについても会社が自由に行うことはできません。

コロナの影響で経済情勢が悪化している状況においては、会社は平時よりも従業員の雇用を維持する義務を負っています。

したがって、コロナの影響で会社が一方的に内定を取り消すことは、原則として許されません。

なお、内定段階での労働契約には「解約権」が留保されていることから、会社からの内定取り消しも自由ではないかとの疑問もあるかもしれません。

この点については事項で詳しくご説明しますが、ここでは、学生からの「内定辞退」に法的問題はないものの、会社からの「内定取り消し」には問題があるとご理解ください。

転職や中途採用の「内定」についても同様

本記事では主に新卒者の内定取り消しの問題についてご説明しますが、転職や中途採用の場合は「内定」の問題が発生するケースはそれほど多くありません。

転職や中途採用においては採用決定後にすぐ入社することが多いため、「内定」という形をとることが少ないからです。

この場合、採用決定と同時に「始期」も「解約権」も留保されていない、完全な労働契約が成立していると考えられます。

しかし、転職や中途採用でも採用決定から入社予定日までにある程度の期間がある場合は、「内定」を想定することができます。

この場合の内定取り消しについては、新卒採用予定者の内定取り消しの場合と全く同様に考えることになります。

コロナを理由とした内定取り消しが認められる場合もある

はさみで紙を切るコロナの影響で会社が一方的に内定を取り消すことは、原則として許されないことをご説明しました。

では、例外的に内定取り消しが認められる場合はあるのでしょうか。

この問題については、既に労働契約が成立している以上、会社が従業員を解雇することが認められるのはどのような場合かということと基本的には同じ問題です。

そこで、一般的に解雇が認められる場合についてご説明しつつ、コロナを理由とした内定取り消しについてどのように考えるべきなのかを解説していきます。

解雇が認められる2つの要件とは

会社は、従業員を自由に解雇できるわけではありません。いったん雇用契約を結んだ従業員については、会社はできる限り雇用を維持する義務を負っています。

そのため、次の2つの要件を満たさない解雇は権利の濫用として無効とされています(労働契約法第16条)。

  • 解雇することに客観的で合理的な理由があること
  • 解雇することが社会通念上相当と認められること

この2つの要件は、内定取り消しの場合にも全く同様に適用されます。

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内定時に判明していた事由では取り消せない

先ほどご紹介した大日本印刷事件の最高裁判決では、内定取り消しが認められる要件として、さらにもう一つの要件を掲げています。

それは、内定の時点で知ることができず、知ることを期待もできなかった事由でなければ内定取り消しは認められないという要件です。

2019年中に内定を出した場合、その時点では2020年に入ってからのコロナ騒動を知ることは期待もできなかったことでしょう。

したがって、この要件を満たす内定取り消しのケースは相当数あるものと考えられます。

しかし、2020年1月に日本国内で初めてのコロナ感染者が確認され、2月にはある程度感染が拡大されていました。

それにもかかわらず、4月の入社予定日の直前になって会社が一方的に内定を取り消すことは、権利の濫用として認められない可能性が高いでしょう。

整理解雇が認められる4つの要件とは

コロナの影響による業績悪化や業務縮小を理由とした内定取り消しは、同じ理由による解雇の問題、つまり整理解雇の問題と同様に考えられます。

整理解雇が認められるためには、裁判例上、次の4つの要件を満たすことが必要とされています。

  1. 人員を削減する必要性があること
  2. 人員を削減する手段として整理解雇を行う必要性があること
  3. 解雇する対象者の選定に妥当性があること
  4. 解雇手続きが妥当なものであること

コロナ不況においては、①と②の要件を満たす会社は少なくないかもしれません。
③についても、既存の従業員を解雇するよりも新卒採用予定者の内定を取り消すことに妥当性が認められる場合はあるでしょう。

しかし、一方的な内定取り消しには手続きの妥当性が認められず、④の要件を満たしません。

したがって、たとえ会社の経営状態が本当に苦しくなっていたとしても、一方的に内定を取り消された場合は、権利の濫用として無効である可能性が高いといえます。

コロナ禍での内定取り消しに対する政府の支援とは?

マスク政府は、新卒の採用内定者を支援するために一定の取り組みを行っています。

残念ながら給付金など金銭的な支援はありませんが、以下の内容を知っておくと、もし内定を取り消されたときに役立つことと思います。

政府から企業に対する要請

新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえて、政府は新卒の採用内定者に対しては特段の配慮をすることを主要経済団体に対して要請しています。

その内容は、要請を受けた経済団体を通じて傘下の各企業に周知されています。

要請されている主な事項は、以下のとおりです。

  • 採用内定を取り消さないこと
  • 採用内定の取り消しを防止するために、最大限の経営努力を行うなどあらゆる手段を講じること
  • やむを得ず採用内定を取り消すときは、対象となった学生・生徒の就職先の確保について最大限の努力を行うこと
  • 採用内定取り消しを受けた学生・生徒からの補償等の要求には誠意を持って対応すること

もし、内定を取り消されたり、取り消されそうなときには、以上の政府からの要請事項を指摘して、会社に対して誠意ある対応を求めましょう。

ハローワークを通じた支援

厚生労働省は、コロナの影響で内定取り消しにあった新卒者のために「新卒者内定取消等相談窓口」を設置しています。

この相談窓口は全国56箇所の「新卒応援ハローワーク」に設置されていますが、最寄りのハローワークでも相談を受け付けています。電話による相談も可能で、卒業後でも利用できます。

新卒者内定取消等相談窓口での主な支援内容は、以下のとおりです。

  1. 内定が取り消されそうなときは、内定取り消しを回避すべく企業への働きかけを行ってもらえます。
  2. 内定が取り消されたときは、新たな就職先を早期に決定できるように、個別にきめ細かな支援が行われます。
  3. 内定取消によって精神的ダメージを受けたときは、臨床心理士などによる心理的サポートが行われるとともに、再度の就職活動に向けて個別に丁寧な支援が行われます。

自分で会社と話し合っても誠意ある対応が受けられない場合で、早急に就職先を決める必要があるときは、新卒者内定取消等相談窓口へ相談してみるとよいでしょう。

コロナを理由とした内定取り消しを法的に解決する方法

法律書イメージ就職が内定していた会社から内定取り消しにあった場合、翌年度の採用に向けて改めて就職活動をするのも一つの方法かもしれません。

しかし、翌年度の採用時期までにコロナが収束しているとは限りません。いったん収束したとしても第2波、第3波が来て、翌年度も今年と同じような就職難が発生するおそれもあります。

現に、翌年度の新卒者向けの各企業の合同説明会なども既に中止が相次いでいます。就職活動は引き続き厳しいものになることが予想されます。

このような状況で1年間のブランクを抱えて就職活動をしても、希望の会社に就職できる可能性は高いとはいえないでしょう。

先ほどご説明したとおり、コロナを理由とした内定取り消しは権利の濫用として無効である可能性が高いものです。

内定取り消しが無効であれば、法的に解決することができます。

具体的には、ご自分の希望に応じて次のような解決方法があります。

どうしても内定先の会社に就職したい場合

内定先の会社に就職したい場合は、内定取り消しが無効であることを法的に訴えることになります。

内定取り消しが無効であれば、内定時に成立した労働契約は継続しています。したがって、就労の始期が到来している場合、内定者は既にその会社の社員であるということになります。

この法的関係を裁判で明らかにするためには、「地位確認請求訴訟」を提起します。その会社の社員である地位を裁判所で法的に確認してもらうための訴訟です。

この訴えは訴訟だけではなく、労働審判という簡易な裁判手続きでもすることができます。

しかし、労働審判は3回以内の審理で話し合いを中心として柔軟な解決を図る手続きです。強制的な解決を希望する場合には、労働審判はあまり適しているとはいえません。

どうしても内定先の会社に就職したい場合は、地位確認請求訴訟を提起する方がよいでしょう。

なお、訴訟を提起する場合も労働審判を申し立てる場合も、入社予定日以降の未払い賃金の支払いも請求することができます。

実際に働いていなくても、会社が無効な内定取り消しを行ったために働かせてもらえなかったのですから、未払い賃金については全額の請求が可能です。

その会社に就職する気はないが責任を追及したい場合

内定を取り消した会社にはもう就職したくないけれど、その会社の責任を追及したいという場合もあるでしょう。

突然の内定取り消しによって損害を受けた場合は、損害賠償を請求することができます(民法第709条、第710条)。

ただし、法的に無効な内定取り消しであっても、そのときの状況に応じて違法性の程度はさまざまです。

場合によっては、内定取り消しが違法ではあるものの、損害賠償請求が認められるほどの違法性はないと判断されることもあります。

また、損害賠償請求が認められるとしても、通常は少額の慰謝料にとどまります。

ただし、内定取り消しが原因でうつ病を発症し、その後の就職活動に支障をきたしたような場合は損害賠償を請求すべきです。

それ以外の場合は、その会社に就職する気がなくても地位確認請求訴訟を提起して、未払い賃金の支払いも請求する方が得策といえます。

裁判手続きは弁護士に依頼するのがおすすめ

男性弁護士以上にご紹介した裁判手続きは自分で行うことも可能ですが、専門性が高くて複雑な手続きなので弁護士に依頼するのがおすすめです。

また、会社側は多くの場合、顧問弁護士が対応します。無理に自分で裁判をしても、対等に争うことは困難でしょう。

裁判手続きに関する知識や技術の問題で敗訴してしまうと、本来なら認められる権利も行使することができなくなってしまいます。

ただでさえ内定取り消しにあって大変な時期なので、会社との争いは弁護士に任せてしまいましょう。

弁護士に依頼したくても、費用が気になる方もいらっしゃることと思います。弁護士費用についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

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コロナ禍で内定取り消しにあったら弁護士に相談しよう

せっかく採用が内定した会社から突然の内定取り消しにあったら、気が動転してしまうことでしょう。

それまで思い描いていた将来の人生設計が根底から崩れてしまい、呆然としてしまうのも当然のことだと思います。

しかし、会社の権利濫用による内定取り消しは、法的に解決することが可能です。

別の就職先を探すときは、新卒応援ハローワークの新卒者内定取消等相談窓口を利用することもできます。

何から手をつけてよいか分からないときは、お気軽に弁護士までご相談ください。個別の事情をお聴きした上で、ご希望に応じて最善の解決策をご提示できるはずです。

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