- 事件を起こしてしまったけれど、前科をつけたくない
- 前科がついたら仕事や学校はどうなってしまうのか
- 前科が残ると家族にも迷惑がかかってしまうのではないか
このように不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
たしかに有罪になると前科がつきます。
前科がつくとさまざまなデメリットがあり、社会のなかで生活しにくくなってしまうことも否定できません。
しかし、犯罪を犯したすべての場合に前科がつくわけではありません。
たとえ逮捕されても、前科がつくことを回避できる場合もあります。
前科をつけたくないのなら、一刻も早く適切な行動をとる必要があります。
前科をつけたくない!まずは前科とは何かを知っておこう
「前科」とは、正式な法律用語ではありませんが、以前に刑の言い渡しを受けたことがあることを意味する言葉です。
刑を言い渡されるときには、必ず刑事裁判が行われます。
正式な裁判で刑を言い渡された場合はもちろんのこと、略式手続で罰金刑を受けた場合も前科がつきます。
刑を言い渡されるかどうかが、前科がつくかどうかの分かれ目となるのです。
「起訴猶予」と「執行猶予」では結果が大きく異なる
起訴猶予とは、捜査を受けたものの裁判所への起訴は見送られる処分のことです。
その後も捜査が続けられて後日起訴される場合もありますが、多くの場合は捜査が終了し、起訴されることもなくなります。
刑事裁判を受けることがなくなるため、起訴猶予となった場合は前科はつきません。
これに対して、執行猶予の場合は前科がつくので注意が必要です。
執行猶予とは、刑事裁判で刑の言い渡しを受けたものの、その刑の執行が一定期間猶予されることを言います。
その一定期間、新たに罪を犯すことなく過ごせば実際に刑罰を受けることはなくなります。
刑罰を受けないという点では起訴猶予と同じですが、刑の言い渡しを受けた事実は残ります。
そのため、執行猶予を言い渡された場合は前科がつくのです。
交通違反や著作権侵害でも前科がつくことがある
前科がつくのは凶悪な犯罪を犯した場合だけではありません。
交通違反や著作権侵害など、誰でもうっかり犯してしまう事件で前科がつくこともあるので注意が必要です。
交通違反の場合は、違反の種類や程度によって、刑罰が科される場合と刑罰に至らない行政罰が科される場合に分かれます。
速度違反でいえば、一般道で時速30キロ未満の超過であれば行政罰としての反則金が科されますが、前科はつきません。
しかし、時速30キロ超の違反をすると刑罰としての罰金が科され、前科がついてしまいます。
最近では、インターネットの普及により、誰もが著作権侵害を犯してしまう危険があります。
自分のSNSやブログなどに他人の文章や写真などをコピーして掲載すると、著作権侵害となる場合があります。
著作権侵害には10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金という刑罰が用意されています。
刑を言い渡されると前科がつくので、SNSやブログを利用する際は注意が必要です。
※具体的な注意点についてはこちらの記事をご覧ください。
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「科料」でも前科がつく
上記の交通違反のところでご説明した、刑罰と行政罰の違いはご存知の方も多いかもしれません。
それと関連して、「科料なら前科はつかない」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、これは間違いです。
科料とは、1,000円以上1万円未満の金銭の支払いを命じられる刑罰です。
1万円以上の金銭の支払いを命じられるのは「罰金」です。
科料と罰金の違いは、金額の違いに過ぎません。
科料もれっきとした刑罰なので、言い渡されると前科がつきます。
なお、「過料」はポイ捨てや路上喫煙など行政上の規則に違反した場合に科されるものであり、刑罰ではないので言い渡されても前科はつきません。
被疑者になると前科がつかなくても「前歴」が残る
前科に似た言葉に「前歴」というものもあります。
前歴とは、刑の言い渡しは受けなかったものの捜査を受けた場合に残る記録のことをいいます。
捜査機関に罪を犯したことを疑われて捜査の対象になると「被疑者」と呼ばれます。
被疑者になると、逮捕された場合だけでなく、在宅のまま捜査を受けた場合にも前歴は残ります。
前科と前歴の種類
前科や前歴に種類があるわけではありませんが、記録が保管される場所には次の3つの種類があります。
- 警察
- 検察
- 市区町村の役所
警察や検察に保管されている前科・前歴のデータは、再犯をしてしまった人の捜査や処分を決めるための資料として使われます。
市区町村の役所には資格や選挙権・被選挙権を制限するための確認資料として「犯罪人名簿」が保管されています。
ただし、一般人が閲覧できるものではないのでプライバシーが流出する心配はありません。
前科がつくことで受けるデメリットは大きい
前科がつくと社会生活を営む上で何かと不利になるのではないか心配する方は多いでしょう。
しかし、具体的にどのような不利益を受けるのかを知っている方は多くないかもしれません。
実際に前科がつくことで受けるデメリットを正確に解説します。
資格が制限される
前科がついても働くことはできます。
ただし、前科がつくことで一定の資格が制限される場合があります。
その結果、それまでしていた仕事を続けることができなくなったり、新たな仕事に就けないことがあります。
例えば、医師や看護師は罰金以上の刑を受けることで免許を取り消されたり、免許が与えられなかったりすることがあります。
地方公務員や一般職の国家公務員については、禁錮以上の刑を受けると失職事由となり、受験資格も与えられません。
他にも非常に多くの資格について、一定の前科によって制限が科されるので、資格を要する仕事をしている方や、新たに仕事に就こうと考えている方は注意が必要です。
仕事や学業に支障が出る
前科は実名報道されない限り、他の人に知られることはほとんどありません。
そのため、資格を要しない仕事や学業はそのまま続けることができるのが通常です。
ただし、会社や学校によっては、一定の前科があると解雇や退学・停学の対象となるという規則を定めている場合があります。
自分から前科を申告する義務はないのが一般的ですが、もし会社や学校に前科を知られた場合は処分を受けることがあるので注意が必要です。
また、一定の前科があると会社の取締役には就任できないこともあります。
就職や転職、入学試験の申込みなどで提出する履歴書などに前科の有無を記入する欄が設けられている場合もあります。
前科の欄を白紙のままにして提出するのは違反ではありません。
しかし、前科があるのに「前科なし」と記入すると「虚偽私文書作成」として新たな罪に問われる可能性があるので絶対にしてはいけません。
その他の社会生活上の制限
禁錮以上の刑など一定の前科があると、選挙権や被選挙権が停止されることがあります。
旅券法違反など一定の前科があるとパスポートが発行されず、海外への旅行や出張ができなくなる場合もあります。
年金や生活保護の受給には前科の影響はありません。
ただし、服役中に年金保険料を納められなかった場合は、年金の受給資格を満たせなかったり、支給額が減額されることもあるので注意が必要です。
住宅ローンや事業ローンなどの融資、クレジットカードなどの審査にも前科が影響することはほとんどありません。
ただし、服役中に返済が途絶えたり、前科による資格制限のために安定した職に就けないことによって審査に影響が出る可能性はあります。
制限はなくても生活しにくくなる場合もある
実名報道などによって前科が人に知られてしまうと、好奇の目にさらされたり、陰口を叩かれたりすることがあるのは否定できません。
自分だけでなく、家族や親戚などの身内も後ろ指を指されてつらい思いをすることがあります。
また、職業によっては就職の際に身辺調査が行われ、身内に前科者がいると採用されないケースがある可能性もあります。
自分の前科によって身内の方の将来を制限してしまう恐れもないとはいえないのです。
その他、配偶者から離婚を要求された場合、前科の内容によっては「婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚を拒めないこともあります。
また、縁談があっても相手本人やその両親から、前科のある人とは結婚したくない、させたくないと思われてしまうのも無理はありません。
前科があることで、法律上の制限の他にも生活上のさまざまな場面に不利益が及ぶことは覚悟する必要があるでしょう。
刑事手続における前科のデメリットは大きい
前科がある人が新たな罪を犯してしまった場合は、刑事手続において重大なデメリットを受けてしまいます。
まず、前科の執行猶予中に新たな罪を犯すと、原則として執行猶予が取り消されて実刑が科せられてしまいます。
また、新たな罪の捜査において、前科があることで警察や検察の姿勢も厳しくなり、いくら反省しても起訴猶予は認められにくくなります。
刑事裁判においても、前科があると反省が不足している、再犯の傾向が強いなどと判断され、量刑が重くなりがちです。
勾留されている場合は保釈が認められにくいという問題もあります。
犯罪の種類によっては、累犯加重といって刑罰が通常よりも重くなることが定められているものもあります。
常習累犯窃盗のように、同種前科があることによってより刑罰が重い犯罪で処罰される場合もあります。
※常習累犯窃盗……窃盗・窃盗未遂を何度もくりかえすこと。窃盗罪の刑罰が1か月以上10年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金であるのに対し、常習累犯窃盗罪の刑罰は3年以上20年以下の懲役となる。
前科を重ねることによるデメリットは極めて大きいといえます。
前科をつけたくないのなら起訴を回避するしかない
日本の刑事手続では、起訴されてしまうとほとんどのケースで有罪になってしまうのが現実です。
法務省が発行している『犯罪白書』によると、起訴されて無罪判決が出る割合は例年わずか0.2%前後で推移しています。
つまり、起訴されてしまうと99.8%は有罪判決が下り、前科がついてしまうのです。
自分が事件を起こしたことに間違いがなければ無罪判決は期待できないので、前科をつけたくないのなら起訴を回避するしかありません。
起訴を回避することはそれほど難しくない
起訴された後に無罪判決を勝ち取ることに比べれば、起訴を回避することはそれほど難しいことではありません。
『犯罪白書』によれば、刑法犯について、捜査機関に認知された事件のうち起訴されたケースが40%前後、起訴が回避されたケースが60%前後で、例年推移しています。
起訴されるかどうかは事件の内容によるところが大きいのですが、起訴を回避するためにできることはいくつかあります。
自分で対応するのは難しいこともありますが、刑事事件に詳しい弁護士に依頼することで適切に対処すれば、不起訴または起訴猶予の可能性を高めることができます。
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前科をつけたくない方は、弁護士に依頼することで以下の対処を適切に行い、起訴される確率を下げるというメリットがあります。
被害者と示談をする
起訴を避けるために最も重要なことは、被害者と示談をすることです。
一定の重大犯罪でなければ、示談をして被害者に許してもらうことで不起訴または起訴猶予となるケースも多くあります。
ただ、そのためにはいち早く示談をする必要があります。
被害者との話し合いに時間を要すると、示談が成立する前に起訴されてしまうこともあります。
また、犯罪の被害者は精神的にも大きな損害を受けている場合が多いので、高額の示談金を要求してくることもよくあります。
示談交渉を冷静かつ適切に進めるためには、刑事事件の経験が豊富な弁護士に依頼したほうがいいでしょう。
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自分に有利な事情を捜査機関に提示する
事件を起こした場合でも、被疑者に有利な事情は何かしらあるはずです。
犯罪は犯罪として、被疑者に有利な事情も考慮すれば不起訴や起訴猶予が相当なケースも多々あります。
しかし、警察官や検察官は被疑者の悪い点を中心に追及してくるため、不利な点ばかりが捜査記録に残ることになりがちです。
有利な事情を十分に提示できないと、起訴を回避できるケースでも結果的に起訴されてしまう恐れがあります。
そんなときは、弁護士が被疑者に有利な事情を収集して捜査機関に提示することで、有利な事情も考慮してもらうことができます。
その結果、不起訴または起訴猶予となる可能性が高まります。
不起訴が相当であることを検察官に主張する
最終的に起訴するかどうかは検察官が決めます。
検察官が起訴を決める前に、不起訴や起訴猶予が相当な事案であると主張することで起訴を避けることができる場合もあります。
刑事事件に詳しい弁護士であれば、検察官に対して適切に主張することができます。
検察官も、弁護士に対しては「示談ができれば不起訴にできますよ」「身元引受人が確保できれば起訴猶予にできますよ」などと教えてくれるケースもあります。
一人で戦うよりは、弁護士に依頼することで起訴を回避できる可能性を格段に高めることができます。
川越で前科をつけたくない方は当事務所へご相談ください
前科をつけないために弁護士に依頼するにしても、スピードが命となります。
当事務所では、ご連絡をいただければできる限り最速で接見(面会)に伺う体勢を整えております。
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埼玉県川越市で事件を起こしてしまい、前科をつけたくないとお考えの方は、ぜひ早めにご相談ください。
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前科をつけたくないなら、まずは弁護士に相談してみよう
事件を起こしてしまっても、起訴される前なら前科がつくのを避けることも可能です。
ただ、何もしないでいると捜査が進んでしまい、必要な対処をとる前に刑を言い渡され、前科がついてしまうこともあります。
特に逮捕・勾留された場合は厳しい取り調べを受け、自分の言い分を十分に主張できないまま前科がついてしまう可能性が高くなってしまいます。
前科をつけたくないなら、少しでも早く弁護士に相談してみることをおすすめします。
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