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威力業務妨害ってどんな罪?具体的な事例と逮捕されたときの対処法も解説

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電話と手紙

威力業務妨害の犯人が逮捕されたというニュースを、ときどき見かけることがあります。

「爆弾を仕掛けた」「人を殺害する」などと電話やメール、ネットで予告したことで犯人が逮捕されたニュースを見たことがあるのではないでしょうか。

ただ、このような目立つケースでなくても、思わぬ行為で威力業務妨害の容疑をかけられる場合もあります。

「注文した商品と違う商品が届いた」「店員の態度が失礼だった」というような場合に、店に文句を言いたくなった経験は誰でも一度はあると思います。実際に文句を言ったという方も少なくないかもしれません。

クレームを出すのは悪いことではありませんが、度を過ぎると相手の仕事を邪魔したとして、威力業務妨害で逮捕される可能性があるのです。

そのため、どのような行為をすると威力業務妨害になるのかを知っておかなければ、ふとしたはずみで逮捕されてしまう恐れがあります。

今回は、「威力業務妨害とはどんな罪なのか」「どんな行為をすると逮捕されるのか」「逮捕されてしまったらどうすればいいのか」などについて解説していきます。

威力業務妨害とはどんな罪なのか

そもそも業務妨害とは、言葉どおり、相手の業務を妨害することです。つまり、人の仕事の邪魔をすると業務妨害罪となります。

刑法では、人や企業の仕事を邪魔する犯罪を以下のとおり3種類に分けて取り締まっています。「威力業務妨害」は、そのうちの一つなのです。

嘘の情報を流して人や企業の社会的信頼を低下させる「信用毀損罪」

嘘の情報を流して悪い評判を広めることによって人や企業の社会的信頼を低下させると信用毀損罪になります。

例えば、「Aというスーパーでは賞味期限が切れた総菜を売っている」という嘘の情報を流すようなケースがこの犯罪にあたります。

嘘の情報で仕事を邪魔する「偽計業務妨害罪」

上記のように嘘の情報を流すことによってA店の売上げが顕著に低下したり、顧客からのクレームなどによって仕事に支障が出るなどの結果が発生すれば、「偽計業務妨害罪」となります。

また、嘘の情報を第三者に対してではなく、直接相手に伝えて騙すことも偽計業務妨害罪にあたります。

例えば、他人の名前をかたってピザ10人前を注文するようなケースがこの犯罪にあたります。

威力によって人の仕事を邪魔する「威力業務妨害罪」

上記の2つの犯罪とは異なり、威力業務妨害罪は「威力」を使って直接的に人の仕事を邪魔する犯罪です。

ここにいう「威力」とは、人の意思を制圧するほどの勢力を示すことをいいます。

暴力や暴言によって相手の仕事をする意思を抑えるケースが典型的ですが、言葉で情報を伝えることが「威力」にあたる場合もあります。

例えば、クレームの電話を頻繁に入れたり、爆破予告や殺人予告を電話やメールで伝えるケースは威力業務妨害罪にあたります。

業務妨害罪や信用毀損罪に科される刑罰は同じ

以上の3つの業務妨害罪と信用毀損罪に科される刑罰はすべて同じで、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

数多くある刑法犯のなかでは、比較的軽い罰則となっています。

威力業務妨害罪には時効がある

殺人罪などの重大犯罪を除いて、犯罪には一定の期間を経過すると起訴されなくなる「公訴時効」というものがあります。

公訴時効の期間は、クレームを定められた刑罰の軽重に応じて決められています。

威力業務妨害罪の公訴時効期間は3年です。偽計業務妨害罪も信用毀損罪も刑罰は同じなので、公訴時効期間も同じ3年となります。

公訴時効期間は、犯罪行為が終わったときから始まります。

以前に行ってしまった威力業務妨害で逮捕されるのではないかと不安な方は、参考にしてください。

威力業務妨害罪は親告罪ではない

犯罪のなかには、被害者が捜査機関に対して被害を申告して訴追を求めるという告訴がなければ訴追されない「親告罪」というものがあります。

親告罪には比較的軽微な一定の犯罪が該当しますが、残念ながら、威力業務妨害罪は親告罪ではありません。

偽計業務妨害罪も信用毀損罪も同様、親告罪ではありません。

したがって、被害者からの告訴の有無にかかわらず、警察に逮捕され、起訴されることがあるのでご注意ください。

威力業務妨害で逮捕されるケースの具体例

人の仕事の邪魔をする犯罪を3種類に分けて説明しましたが、この3つの犯罪はお互いに似ている面もあります。

具体的にどのような行為をすると威力業務妨害として逮捕されるのかはまだ分かりにくいと思いますので、具体例を挙げてさらにご説明します。

クレームも度が過ぎると威力業務妨害となる

注文した商品と違う商品が届いたり、店員の態度が失礼だったりしたときには、クレームを付けたくもなるでしょう。

店や企業側に非がある場合にクレームを付けるのは悪いことではありませんが、度が過ぎると威力業務妨害にあたることがあります。

クレームがエスカレートして、
「大声を出して怒鳴る」「『店に火をつけてやろうか』などと脅迫的な発言をする」「長時間にわたって文句を言い続ける」
などの行為に及んでしまうと危険です。

これらの行為は相手の仕事の邪魔になりますので、威力業務妨害となります。

電話による威力業務妨害は回数が多いほど逮捕されやすい

クレームの電話や迷惑電話をかけることによって威力業務妨害で逮捕されることがあります。

クレームの内容が正当なものであっても、多数回にわたって頻繁に電話をかけると「嫌がらせ目的」と判断され、逮捕される場合もあるのです。

最近、逮捕された事例としては、ラジオ番組への電話がつながらなかった原因がKDDIにあると思った男がKDDIに対するクレームの電話を約1週間の間に約400回かけたというものがあります。

ただ、クレームの電話や迷惑電話については、回数だけで判断されるわけではありません。

通話時間や通話内容によっては、少ない回数でも相手の意思を制圧して仕事に支障をきたしたとして逮捕される場合があります。

爆破予告や殺人予告の電話では1回で逮捕されたケースがいくつもあります。

また、保育園に対して「園児の歌声がうるさい」というクレームの電話をかけ、約50分間にわたって通話を続けたとして逮捕された事例もあります。

メールの場合は送信内容が重視される

クレームのメールや迷惑メールを送信することによっても、電話をかける場合と同じように威力業務妨害で逮捕されることがあります。

ただし、メールは電話と異なり、相手が即時に対応する必要がないため、どちらかといえば送信回数よりも送信内容が重視されやすい傾向にあります。

最近の逮捕事例としては、利用していたゲームに対する不満などから、そのゲームを提供している会社に対して、「殺してやろうか?」などと書いたメールを6回送信したことで逮捕されたケースがあります。

この事例では殺意をほのめかす内容のメールが送信されましたが、あからさまな殺害予告や爆破予告のメールであれば1回でも逮捕される場合があるのは電話の場合と同じです。

ツイッターの悪ふざけで逮捕されたケースも

近年、ツイッターへの悪ふざけの投稿が炎上するケースが続出しています。

逮捕にまで至るのは爆破予告や殺人予告を投稿したケースがほとんどです。

コンビニや飲食店でアルバイト店員や客が悪ふざけする様子を撮影して投稿したケースでは、検挙されても書類送検にとどまっている場合が多くなっています。

しかし、悪ふざけであっても、悪質な行為で店に与えた損害が大きい場合は逮捕される可能性も十分にあります。

大手中華料理チェーンの店内で複数名の男性が全裸の写真を撮影してツイッターに投稿し、その店が閉店に追い込まれたケースではその男性たちが逮捕されています。

ツイッターは電話やメールと異なり、第三者への拡散力が強いのが特徴です。

そのため、一度投稿しただけで、たとえその投稿をすぐに削除しても深刻な結果が発生して逮捕される恐れがあります。

ちょっとした悪ふざけが犯罪になってしまう可能性があるので、十分に注意が必要です。

ネットへの書き込みが威力業務妨害にあたるケースは多い

ツイッターなどのSNSの他にも、ネットへの書き込みが威力業務妨害にあたるケースは数多くあります。

5ちゃんねる(旧「2ちゃんねる」)などの掲示板に爆破予告や殺人予告を投稿して逮捕されるケースが典型的です。

誰かに対する誹謗中傷や、「あの会社は借金まみれで倒産寸前だから取引しない方がいい」「あの店で買ったパンは賞味期限が切れていた」など嘘の情報を書き込んだ場合は、威力業務妨害というよりは偽計業務妨害にあたる可能性があります。

また、特定の店や企業などのFacebookやホームページに「営業を辞めないと、従業員がどうなっても知らないぞ」「値段を下げないと店に火をつけるぞ」などと書き込むと威力業務妨害になります。

ネット上でのやりとりにおいては、ときに感情が昂ぶって書き込みがエスカレートしてしまうこともあります。

しかし、はずみで書き込んだことがネットの拡散力によって第三者に広まり、相手に重大な損害を与えることがあるので注意してください。

バスの運行妨害も威力業務妨害にあたる

ここまで、電話やメール、ネットといった通信手段を使ったケースをご紹介してきましたが、直接的な行為によっても、もちろん威力業務妨害罪は成立します。

判例では、以下のようなケースで有罪と判断されています。

・営業中の食堂でヘビ20匹をまき散らして、混乱に陥れた
・競技場にクギをまき散らして、競技の進行を妨害した
・弁護士の業務用カバンを奪って隠し、業務を妨げた

他にも無数の行為が威力業務妨害にあたり得ますが、一例としてバスの運行妨害のケースをご紹介します。

最近の逮捕事例としては、運行中のバスの運転手の顔にレーザーポインターを照射し、視覚を妨げることによりバスの運行を妨げたとして犯人が逮捕されたものがあります。

この事例では、バスと同じ方向に進行していた車の運転手が、自車の前にバスに割り込まれ、腹立ち紛れにレーザーを照射したとされています。

他にも、かけこみ乗車できなかった人がバスの前に回り込んで進行を止めたり、バスの車内で運転手にクレームをつけて正常な運行を妨げたことなどで逮捕された事例があります。

社内で威力業務妨害が発生することもある

威力業務妨害は、第三者や客などによってのみ犯されるものではありません。社内でも発生する場合があります。

判例では、職場で同僚に嫌がらせをする目的で、相手が目にするであろう場所に猫の死骸などを置いた行為が有罪とされたケースがあります。

先ほどもご紹介した、コンビニや飲食店などのアルバイト店員による悪ふざけなども、社内における威力業務妨害の一例です。

なお、社内で「あいつは会社のお金に手を出している」「あの子は社長と不倫している」などの誹謗中傷を広めて相手の評価を下げ、仕事をやりにくくした場合は、偽計業務妨害罪や名誉毀損罪にあたる可能性が高くなります。

その他、威力業務妨害で逮捕されたニュース

威力業務妨害に該当するケースをすべてご紹介するのは不可能ですが、最近のニュースにおける逮捕例をいくつかご紹介しておきます。

・警察に嫌がらせをする目的で、警察署駐車場へ数十個の生卵を投げつけたケース

・酒に酔って警視庁に電話をかけ、「東京都庁に爆弾を仕掛けたらしい」「1時間くらいしたら爆発するらしい」などと告げたケース

・「橋を爆破する」という趣旨の電話を管理事務所にかけ、河川工事を中断させたケース

・スーパーの店内で「女児のむせた顔が見たい」という動機で催涙スプレーをまき、同店の営業を2日間停止させたケース

・新幹線の車内で酒に酔い、非常用ドアコックのフタを開けて緊急停止させたケース

威力業務妨害の他にも成立しうる犯罪

威力業務妨害罪と偽計業務妨害罪や信用毀損罪は似ており、3つのうちどの犯罪にあたるのかが微妙なケースもよくあります。

その他にも、威力業務妨害罪に似た犯罪や、威力業務妨害罪と同時に成立しうる犯罪がいくつかあります。ここでは、それらの犯罪の区別を解説します。

警察への嘘や嫌がらせの通報で公務執行妨害となるケース

警察への嘘や嫌がらせの通報は、威力業務妨害にあたる場合もありますが、「公務執行妨害罪」にあたる場合もあります。

両者の違いは、暴行または脅迫の有無です。

公務執行妨害罪は、暴行または脅迫によって公務員の職務執行を妨害することが要件となっていますので、暴行や脅迫を使わない場合は威力業務妨害となります。

公務執行妨害罪の刑罰は3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金です。

こちらの記事で公務執行妨害について詳しく解説していますので、興味がある方はご参照ください。

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危害を加えることを告げれば脅迫罪・強要罪が成立しうる

爆破予告や殺人予告のように、人に対して危害を加えることを告げて脅迫した場合は、威力業務妨害罪と同時に脅迫罪も成立する可能性があります。

脅迫罪に対して科される刑罰は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

また、業務と無関係に脅迫や暴行によって人に義務のないことを行わせたり、行動を妨害した場合は威力業務妨害罪ではなく、強要罪となります。

強要罪に対して科される刑罰は3年以下の懲役です。

誹謗中傷や嘘の情報を流すことで名誉毀損罪が成立しうる

誹謗中傷や嘘の情報を流せば、偽計業務妨害罪や信用毀損罪と同時に名誉毀損罪も成立する可能性があります。

名誉毀損罪に対して科される刑罰は3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金です。

店内や社内に居座ると不退去罪が成立しうる

店内や社内でクレームを出し、退去を要求されたのに居座ると、威力業務妨害罪の他に不退去罪が成立する可能性もあります。

不退去罪に対して科される刑罰は3年以下の懲役または10万円以下の罰金であり、威力業務妨害罪に対する刑罰より少し軽くなっています。

コンピューターの機能を損壊させると電子計算機損壊等業務妨害罪が成立しうる

電子計算機損壊等業務妨害罪とは、コンピューターを壊すなどの手段による業務妨害であり、威力業務妨害や偽計業務妨害よりも重く処罰されます。

科される刑罰は5年以下の懲役または100万円以下の罰金です。

コンピューターを直接壊す場合の他にも、データを消去したり、ウィルスに感染させて機能を喪失させる場合も電子計算機損壊等業務妨害にあたります。

特定の企業やお店のホームページに頻繁に書き込みをして荒らす行為も、そのホームページを閉鎖に追い込むような場合は威力業務妨害ではなく電子計算機損壊等業務妨害にあたる可能性があります。

威力業務妨害で逮捕されたときの対処法

威力業務妨害で逮捕されたときは、どのように対処すればいいのでしょうか。

まずは、逮捕されてから刑事処分が決まるまでの流れを知っておきましょう。

初犯の威力業務妨害であれば処分は軽いことが多い

他の犯罪で逮捕された場合もそうですが、初犯の場合は身柄拘束期間も短く、処分も軽い場合が多くなります。

威力業務妨害の場合は比較的刑罰が軽く、人を怪我させたり金品を奪うという意味での「実害」が生じたわけでもないので、その傾向が強いといえます。

深く反省して謝罪の意思を表明すれば、逮捕されても勾留される前に釈放されたり、勾留されても10日間だけで釈放されるケースが多くなっています。

刑事処分としても、略式命令による罰金刑となる場合が多いです。

ただし、行為の内容や相手に与えた損害の程度によっては、長期間の身柄拘束や懲役などの重い処分が科されるケースもあります。

また、初犯では処分が軽くても、2回目以降は重い処分が科される可能性が非常に高くなるので、油断することは許されません。

被害者と示談することが最も大切

威力業務妨害で逮捕されたら、たとえちょっとしたいたずら心や感情の高ぶりで犯してしまった場合でも、結果を重く受けとめて深く反省することがまずは必要です。

それから、処分を少しでも軽くするためには被害者と示談することが大切です。

いち早く被害者に謝罪して示談金を支払い、許してもらうことができれば不起訴となる可能性もあります。

ただし、業務妨害の内容や程度によっては、相手に莫大な損害が発生している場合もあります。

また、売上げの低下などの経済的損害だけでなく、精神的損害も相手が訴えてくるケースが多くあります。

示談交渉は簡単でないケースも多いので、できる限り早い段階で弁護士に相談した方がいいでしょう。

川越で逮捕された場合は当事務所へご相談ください

当事務所では、刑事事件に関するお問い合わせは24時間受け付けております。

接見(面会)にはご連絡いただいた後、できる限り最速で伺うようにしております。

また、法律相談は初回の30分まで無料で承っておりますので、逮捕された方のご家族や知人の方が無料相談をご利用いただく形でも結構です。

埼玉県川越市で威力業務妨害で逮捕された場合は、一刻も早く当事務所へご相談ください。詳細はこちらからご覧ください。

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威力業務妨害をしてしまったら、いち早く弁護士に相談を

これまで解説してきたように、ちょっとしたはずみで行ったことが威力業務妨害にあたり、逮捕されてしまう場合があります。

なかには、ついネットに書き込んだことで警察が逮捕しにくるのではないかと不安になっている方もいらっしゃるかもしれません。

自分の行為が不適切だったと気づいたら、いち早く相手に謝罪して示談することで、逮捕を避けることもできます。

不安な場合は、可能な限り早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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