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カスハラとは何か?実際に起きた事例から解説

カスハラ事例

「カスタマーハラスメント(カスハラ)で従業員が困っている」「カスハラにどう対応したらいいかわからない」「クレームとカスハラの区別がわからず悩んでいる」など、経営者の方には、カスハラでお悩みの方もいるのではないでしょうか?

厚生労働省が令和3年に発表したハラスメントに関する調査報告によると、過去3年間に相談を受けたと回答した企業の割合では、パワハラ(48.2%)、セクハラ(29.8%)に続き、カスハラ(19.5%)と高い結果となっています。

また、他のハラスメントが減少傾向にある中、カスハラだけが唯一増加傾向にある結果となりました(※1)。

会社がカスハラに対して従業員を守る措置をとるためにも、まずはどのような行為がカスハラに当たるのかを知っておく必要があります。

今回は、カスハラとは何か、また実際に起きた事例をご紹介したいと思います。

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カスハラとは何か?厚生労働省によるカスハラの定義

カスハラの中には、当初は商品の不備やサービスの改善点を指摘するものだったのが、次第にエキサイトして悪質なクレーマー化するケースも少なくありません。

客からのクレームには、対応や品質の改善を求める正当なクレームもあるため、会社としてはどこから「カスハラ」として対応すべきか、見極めに困るケースもあります。

企業や業種によって顧客や取引先等への対応の基準が異なるため、カスハラを一元的に定義することは難しいのが実情です。

厚生労働省では、企業へのヒアリング等を踏まえ、カスハラを

顧客等からの著しい迷惑行為

として、

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの

と定義しています。

とはいえ上記の厚生労働省の定義は長いので、一般的には、顧客や取引先などから企業などに対する理不尽なクレーム、度を越した要求、暴言や暴行などの行為を言うとされています。

厚生労働省のマニュアルによるカスハラにあたる事例

厚生労働省が公表しているマニュアル(※2)では、カスハラの定義に基づいて、次のような行為がカスハラに当たるとされています。

顧客等の要求の内容が不当なケース

そもそもカスハラ、つまり不当なクレームが根拠を欠くような場合です。
具体的には、

  • 企業の提供する商品・サービスに問題や不注意がない場合
  • 要求の内容が、企業の提供する商品やサービスの内容と関係がない場合

といったものが挙げられます。

要求を実現するための手段や対応が社会通念上不相当なケース

カスハラは、たとえば「商品に傷があったので交換してほしい」といった正当なものであっても、手段・方法が度を越していると「社会通念上不相当」としてハラスメントに当たります。

要求の内容が正当か、そもそも不当な内容かにかかわらず、社会通念上不相当とされる可能性が高い行為として次のような具体例があります。

  • 暴行や傷害など身体的な攻撃
  • 脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言など精神的な攻撃
  • 威圧的な言動
  • 土下座の要求
  • 継続的なしつこい言動
  • 不退去や居座り、監禁など拘束的な言動
  • 差別的な言動
  • 性的な言動
  • 従業員個人への攻撃や要求

また、場合によって不相当とされる可能性がある行為として

  • 商品交換の要求
  • 金銭的な補償の要求
  • 土下座を除く謝罪の要求

があります。

暴行や傷害といった身体的攻撃はもちろん、土下座の強要や脅迫、名誉棄損なども、場合によっては刑事事件に該当することもあります。

万が一危険を感じた場合は、実際に従業員に危険が生じる前に通報することも大切です。

カスハラに関する3つの裁判例

謝るカスタマーセンター女性

カスハラには、上記のような様々な行為態様がありますが、事例によっては裁判沙汰になることもあります。

ここでは、実際にカスハラが問題になった裁判例をご紹介します。

顧客のしつこい言動がカスハラに当たるとされた事例

交通事故の被害者が保険会社に保険金を請求する交渉の際、保険会社の従業員に対して何度も長時間にわたって電話をするなどして業務を妨害したとされた事例です。

保険会社は業務に支障が生じたとして、保険契約者である被害者に対する業務妨害の禁止を求める仮処分の申し立てを行いました。

一審では却下されましたが、控訴審では、保険契約者から複数の部門に多数回、長時間の電話等で業務に著しい支障が生じたと認められました。

また、弁護士を介さずに自ら電話したり電話や面談を強要する妨害行為に対しては、保険会社は業務遂行権に基づく差し止め請求ができるとされました(大阪高裁H20.7.1決定)。

教員が児童の家族からカスハラを受けた際、上司が対応せず謝罪を強いた行為がパワハラに当たるとされた事例

小学校教員が児童宅で飼い犬にかまれて2週間のけがを負い、児童の家族の保険を使えないか尋ねたところ、学校を訪れた児童の父と祖父に90分責められ、同席した校長にも謝罪を強要されて土下座をし、児童宅を訪問して謝罪を強要されたところ、うつ病を発症した事例です。

裁判では、カスハラ対応を怠った校長の行為がパワハラに当たると認定されましたが、児童の父と祖父の行為がカスハラに当たることが前提となっています(甲府地裁H30.11.13判決)。

濫用的な請求や多数回にわたる不当な要求行為がカスハラに当たるとされた事例

市民が市に対して膨大な数の情報公開請求や質問文書の送付を行い、職員に暴言を吐くなどした行為が、市の平穏に業務を遂行する権利を侵害しているとして、市が行為の差し止めを求め、対応を余儀なくされた職員の給与や残業手当を請求した事例です。

裁判では、市民の行為が市の業務に支障を生じさせたことが認められ、行為の差し止めと損害賠償が認められました(大阪地裁H28.6.15判決)。

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カスハラ事例に当たるか悩んだ場合は弁護士に相談を

企業として、顧客や取引先の対応がカスハラに当たる事例か悩んだ場合は、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

カスハラを弁護士に相談するメリットとしては大きく3つあります。

過去の裁判例などをもとに、顧客等からのクレームや要望などの行為がカスハラに当たるかどうかの判断をし、取るべき対応のアドバイスを受けられる

カスハラは、ケースによっては刑事事件に該当したり、民事上の不法行為に当たる場合もあります。今後の対応を検討するうえでも、証拠の保全方法などのアドバイスを受けておくことは非常に有効です。

相手方との交渉がしやすくなる

企業としては相手が顧客や取引先など関係者だと、不当な要求でも強く言いにくいケースも考えられます。そのような場合に「弁護士から言われている」「弁護士に相談したところ、この対応は無理とのことだった」などと、効果的な抗弁として意見を伝えることができます。
弁護士に代理人となってもらえれば、相手方との交渉を弁護士に任せることも可能です。

従業員に対する義務を全うできる

企業にはカスハラなどのハラスメントに対し、労働契約法第5条に基づく安全配慮義務の一環として、従業員を守るべき義務があるとされています。
カスハラが起きた場合に放置したり、対応が不十分だったために従業員がメンタル疾患を生じるなどの損害が発生した場合は、安全配慮義務違反として責任を負う可能性があります。

厚生労働省の指針でも、企業は顧客等からのカスハラに関して従業員からの相談に応じ、適切に対応をとるための体制を整備したり、従業員の心身に配慮したり、カスハラを防止する取り組みをすることが求められています。

企業が取り組むべき課題は多いですが、弁護士に相談することでその企業に合った対応の取り方の助言を受けることが可能です。

カスハラ事例で迷った場合は、まずは弁護士にお気軽にご相談ください。

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