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カスハラを受けた場合に企業がとるべき対応マニュアル

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カスハラ(カスタマーハラスメント)を受けた場合に取るべき対応を、マニュアルとして備えていますか?

会社の人員に限界があり、カスハラのタイプが多様でマニュアルとして一元化することが難しいことから、なかなか対応フローが決まらず、その場限りの対応になったり、カスハラに不安を感じている企業も多いのではないでしょうか。

厚生労働省の調査によれば、カスハラ被害者の90%以上が窓口などの従業員です。

しかし、カスハラを受けると、その従業員の心身不調などに加え、企業の業績低下や他の顧客の離脱など、多方面に影響が生じることが同省の資料()にも示されています。

カスハラに対しては

  • カスハラに備えた事前対応
  • カスハラが疑われる場合の初動対応
  • 実際にカスハラを受けた場合の現場対応

の3つの場面に分けて対応を取ることが求められます。

そこで今回は、実際カスハラを受けた場合に企業が自社、従業員、取引先等を守るために、上記の3つの場面に分けて取るべき対応をご紹介します。

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カスハラに備えて企業がとるべき4つの事前対応

企業としてはカスハラが今後生じることを想定し、事前に以下の4つの対応を準備しましょう。

①企業としてのカスハラに対する基本方針を従業員に周知する

企業として、カスハラに屈せず適切な対応を取るという、カスハラ対策の基本方針を従業員に示します。

一般的なクレームとカスハラのボーダーラインは、企業や業種によっても異なります。基本方針には、自社が定めるカスハラの内容も盛り込んでおきましょう。

企業が従業員をカスハラから守る姿勢を示すことで、従業員の安心に加え、日頃から従業員の心身の安全に注意を払っているという安全配慮義務の遵守の姿勢を示すことにもつながります。

②従業員のための相談窓口の設置など体制の整備

カスハラを受けた従業員が相談できる窓口を社内に設置し、周知します。

厚生労働省の調査によると、カスハラを受けた従業員の48.4%が社内の上司に相談し、次いで社内の同僚が34.0%、次に多いのが何もしなかった24.3%となっています。

そこで、順序としては、以下の3点を決めておくことをお勧めします。

  • 相談先となる上司の決定(どの役職の上司に相談すべきか)
  • 上司が報告相談すべきカスハラ対応の本社部門の決定(人事部や総務部)
  • 法的な対応に備え、法務部門や外部(顧問弁護士等)との連携フローを決定

③カスハラ対応のフローの制定

カスハラ行為への対応の体制、方法をあらかじめ決めておきます。

対応の内容は、カスハラの方法によっても異なるので、後述する現場での対応でご説明します。

④社内ルールの従業員への研修など

カスハラ対応について、日頃から従業員に研修を行います。可能な限り全員が参加し、定期的に実施するようにしましょう。

研修の際は、過去のカスハラ事案等を踏まえて、以下のような点を含めると効果的な内容になります。

  • 悪質クレーム、カスハラの定義の確認、正当なクレームとの判断基準
  • カスハラのパターン別の対応方法、対応の流れの確認
  • 顧客等への謝罪、話の聞き方、確認すべき点など対応のポイント
  • 記録の作成
  • ケーススタディ、ロールプレイングなど

カスハラが疑われる場合の初動対応

顧客等からクレームを受けた場合、正当なクレームか、カスハラに発展する悪質クレームか、判断に困る場合もあります。

クレーム段階の対応やカスハラが疑われる場合(現場・電話)の初動対応で相手に利を与えず、情報を収集することが大切になります。

クレーム段階に現場で取るべき3つの対応

カスハラになる前に通常のクレームかどうか判断しかねる場合は、まずは相手の主張のヒアリングが求められます。

来客および電話での対応に共通して、以下の3つの点に留意するとよいでしょう。

①事実を明確にし、限定的に謝罪する

顧客等の話を聞き、対象となる事実を限定して、そのことについてのみ謝罪します。

状況が正確に把握できていない段階で非を認める謝罪はすべきではありません。非を認めて謝罪するのは、担当者が上司に報告し、上司が社内で共有し、社内で事実確認をした後の話です。

状況が不明な現場では「不快な思いをさせて申し訳ありません」など、不快感を与えたことに対してのみ謝罪するといった対応が望ましいです。

②状況を把握し顧客等との情報を入手する

顧客の意見を聞く場合、まずは途中で反論せず、一通り顧客等の話を聞き事実を確認しましょう。

話を聞いたら、追加で必要な情報があれば聴取し、誤解があれば訂正して正しい情報を提供します。

その際、後に顧客と連絡が取れるよう、名前・住所・電話などの連絡先を入手します。

加えて、来客の場合は承諾を得てメモを取る、電話の場合は録音するなどしておくと、カスハラ化した際に証拠となります。

③上司・相談窓口と情報を共有する

顧客から聞いた内容は、上司、本社のカスハラ窓口に共有します。

後日法的な問題に発展した場合は、行為の内容に加えて日時も重要になるので、時系列に沿った記録をしておくことをお勧めします。

現場と電話で異なる、カスハラが疑われる場合の初動対応

当初からカスハラが疑われる場合、録音、録画、対応に要した時間など、できるだけ記録を残し、後日カスハラの証拠として利用できるように備えましょう。

来客した顧客等によるカスハラの対応

  • 店頭ではなく、応接室に通すなどして、2人以上で対応するようにしましょう
  • 感情的な相手に乗せられず、冷静に対応します。専門用語を使うと「馬鹿にしている」と激高する人もいるので、言葉遣いに注意し簡易な用語を用いるようにしましょう
  • メモをとり、相手の承諾があれば録音をしましょう
  • 質問を挟みつつ相手の意見を聞いている姿勢を示しますが、議論は避けましょう
  • 対応できないことは明確に断り、回答できない場合は後日回答する旨伝えましょう

電話でのカスハラの対応

  • 電話の会話内容が録音できるようにしておきましょう
  • 録音が作動していない場合に備え、メモを取って確認しながらすすめましょう
  • 最初の対応者が対応し、たらい回し感を与えないようにしましょう
  • 来客の場合と同様、言葉遣いと話すスピードに注意しましょう
  • 対応できないことは明確に断り、回答できない場合は後日回答する旨伝えましょう
  • 途中、対応者を変わる場合などは保留にして社内の会話が相手に漏れないようにしましょう

カスハラを受けた場合・カスハラ行為別の対応具体例

カスハラ_カフェ店員

カスハラの行為は様々ですが、厚生労働省では調査に基づいて以下の9つのパターンに分類しています。

この分類に基づいて、カスハラの行為別に取るべき対応をご紹介します。

①長時間拘束タイプ

居座ったり電話を続けるなど、長時間にわたり顧客等が従業員を拘束するタイプのカスハラです。

その場で対応できない理由を伝え、一定時間を過ぎたら退去を求めます。帰らない場合は、弁護士や警察への連絡を検討します。

電話の場合は、あらかじめ電話ができる時間を伝え、それ以上はいったん終話する対応を取るようにしましょう。

②繰り返しタイプ

何度も来店したり電話するなどして繰り返し不当な要求をするタイプです。

相手の連絡先を取得し、次回以降は対応できない旨を伝えます。

それでも繰り返される場合は窓口を一本化して内容を記録し、弁護士や警察への連絡を検討します。

③暴言タイプ

侮辱的、名誉棄損的な発言をしたり、大声で怒鳴るなどのタイプです。

まずは冷静に相手に止めるよう伝え、ひどい場合は退去を求めます。

暴言の内容は警察に連絡する場合に備えて録音しておきましょう。録音できなかった場合は、詳細な内容、時間を記録します。

④暴力タイプ

わざとぶつかる、殴ったり蹴ったりする、物を投げつけるなどの行為をするタイプです。

明らかに犯罪なので、直ちに警察に通報してかまいません。

自身と従業員の身を守るように、複数人で対応する、距離を取るなど、安全の確保を第一に行動してください。

⑤脅迫タイプ

反社等の関係をほのめかしたり、危険が及ぶような脅迫的発言をしたり、ネットでさらすなどブランドイメージを下げるような発言をするタイプです。

現場で「火をつける」「殺してやる」などの発言があった場合は、警察に連絡し、複数人で対応して安全を確保してください。

それ以外でも、発言の内容によっては脅迫罪にあたるので、記録を残すようにしましょう。また、ネットへの書き込みを示唆された時も、弁護士を通して対応するなど毅然とした回答をするようにしましょう。

⑥権威タイプ

権威を振りかざして不当な要求を通そうとするタイプで、土下座を要求するのもこのタイプに多いです。

窓口の従業員だとかえって増長することが多いので、上司と対応を代わり、要求に応じない姿勢を示します。

社長を出せという人も多いですが、交渉の余地を残すため、社長などトップは出さないようにしましょう。

⑦外部拘束タイプ

顧客等の自宅や飲食店などに呼びつけるタイプです。

詳細がわからない段階で呼びつけることも多いため、まずは詳細を確認したうえで対応を検討します。

出向く場合も1人では行かず、2名で対応すること、公共性の高い場所を指定すること、拘束が長引いた場合に備えて連絡体制を取っておくことが重要です。

拘束時間が不当に長引いた場合は、弁護士や警察への連絡も検討しましょう。

⑧誹謗中傷タイプ

SNSやインターネットに誹謗中傷を書き込むなどするタイプです。

まず、書き込まれた内容をスクリーンショットを取るなどして記録保存します。書き込みについてはプロバイダや管理人に削除を依頼し、場合によっては弁護士に相談して反論文・説明文を自社サイトに掲載するなどの対応を検討します。

相手に損害賠償を請求する場合は、発信者情報開示請求等の手続きが必要になるので、弁護士に相談することをお勧めします。

⑨セクハラタイプ

性的発言をする、従業員の体に触る、デートに誘う、待ち伏せをするなどセクハラ行為をするタイプです。

発言や行動については録音・録画して記録に残して警告を行い、待ち伏せ等については出入り禁止を伝えます。

ストーカー化すると従業員の安全に支障が生じる可能性もあるため、止めない場合は弁護士や警察への連絡を行いましょう。

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カスハラ対応でマニュアルを作成する場合は弁護士に相談を

カスハラは業務に支障を生じ、対応した従業員に加えて企業やほかの顧客にも影響を生じかねない悪質な行為です。

それだけに、企業でカスハラに備えたマニュアルを作成し、対応の研修をしておくことが重要です。

しかし、企業によって業態や社員数も異なり、上記でご説明したカスハラの行為の多様さから、どのような対応フローを取ればいいのか迷う方も多いと思います。

そのような場合は、まずはハラスメント対応の経験のある弁護士に相談されることをお勧めします。弁護士であれば、過去の事例や今後生じる法的リスクを踏まえて、自社に合った対応の指針を示すことができます。

また、事前に相談しておくことで、実際にカスハラが生じた場合の連絡先として相談したり、対応を依頼しやすくなるメリットもあります。

カスハラの対応でお悩みの方は、まずは弁護士にお気軽にご相談ください。

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