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盗撮が厳罰化!2023年に施行された撮影罪の内容を詳しく紹介

2023年8月28日

ホームでスマホをいじる人

2023年7月13日に、「撮影罪」が施行され、盗撮が厳しく取り締まられるようになったというニュースを見た方は多いのではないでしょうか。

実際、愛知県警は施行後すぐに、商業施設のエスカレーターで15歳の女子のスカート内にスマートフォンを差し入れて盗撮した容疑で、40代の男性を逮捕しています。

このような容疑をかけられる行為をしないことが何より大切ですが、間違って容疑をかけられないためにも、今回は新設された撮影罪がどのような罪で、どのような刑罰を負うのか、従来の盗撮との違いは何か等について解説します。

撮影罪とは何か?定義と罪の重さとは

屋外でカメラを構える男性

2023年7月13日、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(以下「性的姿態撮影等処罰法」)が施行されました。

撮影罪は、この法律に定められたもので、正式名称を「性的姿態等撮影罪」といいます。

撮影罪とはどんな法律か

日本には、犯罪について定めた刑法に盗撮罪という犯罪は存在しません。

従来、盗撮は各都道府県の迷惑防止条例で取り締まるのみでしたが、スマートフォンの普及に伴い盗撮被害が増加する問題を受け、全国一律の性的姿態撮影等処罰法が制定され、撮影罪が定められました。

性的姿態撮影等処罰法では、同意なく自分の性的姿態等(性的な部位や着用中の下着、性交等をしている姿)を他人に見られないという権利が守られており、なかでも撮影罪では、相手の同意なく性的姿態等を撮影・盗撮することが禁止されています。

性的姿態等とは、次の3つのことを言います。

  • 性的な体の部位(性器、臀部、胸など)
  • 下着(性的な部位を隠すために着用しているもの)
  • 性交やわいせつな行為の最中の様子

つまり、冒頭の例のように、商業施設のエスカレーターなどで相手の同意なく下着を撮影したり、交際中のカップルでも同意なく性交中の様子を撮影するなどすると、撮影罪に該当する可能性があります。

なお、性的姿態撮影等処罰法では、いわゆる盗撮にあたる行為について次のように定められています。

撮影罪や盗撮画像の保管・提供で有罪になった場合の刑罰

性的姿態撮影等処罰法では、撮影だけでなく、盗撮画像を保存したり、提供することも処罰の対象です。

撮影罪に加えて、これらの刑罰もご紹介します。

撮影罪で有罪になった場合の刑罰

性的姿態等(性的な部位や着用中の下着、性交等をしている姿)の撮影を行い、撮影罪に該当して有罪となった場合の刑罰は、「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」です。

撮影罪などで撮影した性的映像記録を特定・少数の人に提供した場合の刑罰

性的な画像を他人に提供した場合も同様に「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」です。

性的映像記録を不特定若しくは多数の者に提供するなどした場合の刑罰

性的映像記録を、不特定もしくは多数の人に提供するなどした場合は「5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」とされ、拘禁刑と罰金刑の両方が科される可能性もある、非常に重い刑罰が予定されています。併科とは、同時に2つ以上の刑罰が科せられることをいいます。

この目的のために性的な画像を保管していた場合は、「2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金」にあたります。

法律で規定された方法で下着姿やわいせつな映像を送信した場合の刑罰

いわゆるライブストリーミング等の方法で、性交中の様子などを送信した場合は、「5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」となります。

なお、拘禁刑とは、2025年に施行予定の改正刑法で新設される刑の種類で、受刑者の身体を刑務所などの刑事施設に拘束する刑罰を言います。

従来、刑務所などで身体を拘束する刑罰には、労働の義務を伴う懲役刑と、労働の義務を伴わない禁錮刑がありましたが、これらを一本化した新しい刑罰です。

撮影罪で処罰される具体例

運動会を撮影する風景

撮影罪では、正当な理由なく以下のような行為をした場合に、処罰の対象になります。

なお、正当な理由とは、

  • 医師が救急搬送の患者の上半身を医療行為のルールに基づいて撮影する場合
  • 地域行事の相撲大会で上半身裸で取り組みをする姿を撮影する場合
  • 親が子供の成長記録として子どもの上半身裸で水遊びをする姿を撮影する場合

などをいいます。

ひそかに性的姿態等を撮影する行為

電車や駅、商業施設の中などで、女性のスカート内や胸をバレずに撮影する行為などを指します。

いわゆる盗撮の典型例です。

相手が同意できない状態で性的姿態等を撮影する行為

相手が同意できない状態とは、

  • 暴行脅迫を用いた場合
  • 心身の障害を生じさせた場合
  • アルコールや薬物を摂取せた場合
  • 睡眠など意識がはっきりしない状態
  • 相手に同意するヒマを与えない場合
  • 恐怖させたり虐待を利用した場合
  • 立場が上にあることを利用している場合

をいいます。

これらの状況で、下着や胸を撮影したり、わいせつ行為や性交、自慰行為の様子などを撮影する行為を指します。

相手を誤解させて性的姿態等を撮影する行為

カメラの前で踊る女子高生

自分以外は誰も見ないとか、いやらしい恰好をさせても問題ない等と被害者に信じ込ませて、性的姿態等(性的な部位や着用中の下着、性交等をしている姿)を撮影する行為を指します。

16歳未満の子どもの性的姿態等を撮影す行為

撮影する相手(被写体)が16歳未満の場合、相手が撮影に同意していたとしても性的姿態等(性的な部位や着用中の下着、性交等をしている姿)を撮影すれば撮影罪に該当する可能性があります。

相手が13歳以上15歳未満の場合、相手と5歳以上年が離れている場合に処罰対象になります。

これは交際相手が同意の上で撮影するケースを処罰対象としないための措置です。

ただし、相手が13歳未満の場合は年齢差に関わらず撮影罪に該当します。

上記の未遂の場合

上記のケースは全て、未遂であっても処罰されます。

やっていないと主張したり、実際にスマホや撮影機器に盗撮画像がきちんと写っていなかった場合でも、現場の防犯カメラなどから撮影したことが認められると、撮影罪の未遂に問われ、逮捕されるケースもあります。

撮影罪と従来の条例違反の違い

盗撮する女性

先ほども解説の通り、撮影罪の施行前は、盗撮は各都道府県の条例で規定されていました。

具体的には、次のような点で変更になっています。

都道府県別の条例から全国統一の法律に変更された

撮影罪が導入される前の各都道府県の迷惑行為防止条例等でも、条例によって刑罰に大きな差はありませんでした。

しかし、盗撮行為が行われた都道府県の条例で処罰されるというルールのため、犯行場所が特定できないと処罰できないという問題がありました。

実際に、2012年に国内線の飛行機内でCA女性がスカート内を盗撮された際、盗撮した男性は嫌疑不十分で不起訴となった事件がありました。

これは、飛行機が高速で移動するため、撮影場所がどの都道府県で行われたかが特定できなかったことが理由です。

このような事例を受け、全国一律の法律が規定され、撮影罪で処分されることとなったのです。

撮影以外にも盗撮画像の保管や流通も対象になった

USBメモリ

従来、児童の性的画像の保管は児童ポルノ処罰法、盗撮画像などを提供する行為や販売(有償)目的で保管する行為はわいせつ物頒布等罪(刑法175条)など、複数の法律で禁止されていました。

性的姿態撮影等処罰法で保管罪が導入されたことにより、成人の盗撮画像でも、提供目的で違法な性的姿態等(性的な部位や着用中の下着、性交等をしている姿)の撮影画像を保管した場合に2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金刑が定められ、処罰の範囲が広がることになりました。

盗撮の罪が重くなった

撮影罪が導入される前、盗撮行為は各都道府県の迷惑防止条例によって処罰されてきました。

たとえば東京都の場合、「人の通常衣服で隠されている下着又は身体の撮影行為」が処罰対象とされ、有罪になった場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が定められていました。

これが、撮影罪では、違法な性的姿態等(性的な部位や着用中の下着、性交等をしている姿)の撮影を行った場合の刑罰は「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」と重くなっています。

また、違法な性的姿態等(性的な部位や着用中の下着、性交等をしている姿)の記録映像を第三者に提供すると提供罪が成立し、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金刑が課されます。

従来のわいせつ物頒布等罪の刑罰は「2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料」と規定されていたため(刑法175条1項)、今回の法改正で画像の流出も厳罰化されることになりました。

このように、今回の法施行により、盗撮に関する罪の厳罰化が進んでいます。

撮影罪に家族が巻き込まれたなど心配な場合は弁護士に相談を

パソコンの前で頭を抱える男性

「夫が撮影罪で逮捕された」「子どもが6歳離れた高校生の彼女の写真をもっていたら撮影罪を疑われた」など、撮影罪に関する事件は今後増えることが予想されます。

たとえば、従来取り締まることが難しいとされていた、アイドルなどの撮影会でことさらに下着を撮影しようとする態様や、スポーツ会場での選手の胸部などを狙った写真撮影の取り締まりが強化されることが考えられます。

盗撮に悩むアイドルや選手が多いことは大きな問題で、彼らの権利が守られるべきことはもちろん重要です。

一方で、通常のファンの撮影で故意ではなく下着が映り込んだ場合などにも罪に問われるような事態は避けなければいけません。

また、交際相手から同意を得て裸の写真を撮っていたような場合も、後日保管罪に問われる可能性も否定できません。

加えて、法改正や新設の直後は、捜査機関側も混乱して、明確に犯罪に該当するか明らかでないのにまず容疑をかけられるという恐れも生じます。

このような場合、まずは弁護士にご相談ください。

弁護士であれば、どのような行為が新法の撮影罪に反するか、きちんと把握したうえで、釈放や前科阻止と言った対応に向けて動くことが可能です。

撮影罪に巻き込まれるなどしてご心配な方は、刑事事件に強い弁護士にできるだけ早くご相談ください。

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