雇用

従業員による不正!事例別に雇用者がとるべき対処法

従業員の不正行為には、会社のお金や商品、備品の盗難、顧客情報の不正利用、書類の偽造、経費の不正請求などがあります。

業種や職種によって不正行為の内容は様々ですが、いずれも、企業に大きなダメージを与える問題です。

例えば…

数年前には、大手自動車メーカーで無資格の従業員が製品検査をしたり、大手金属メーカーで製品データの改ざんが行われるなどの不正行為が相次ぎ、いわゆる「パニック売り」によってどの企業も大きく株価を下げ、話題になりました。

また2022年にも、自動車部品メーカーの子会社社員が、架空発注によって約2億円を騙し取っていた不正が発覚し、株価の下落を招いています。

このように従業員の不正は、会社の従業員の関係を悪化させるだけでなく、会社の評価や株価を下げるなど、大きな影響を招きます。

それだけに、そもそも従業員の不正を防ぐ対策をとること、もし不正が生じた場合には早急に適切な対応をとることが求められます。

今回は、従業員の不正にどのようなものがあるか、実際の事例をご紹介します。

従業員の不正で多い5つの事例

従業員による不正には、さまざまな種類があります。

以下では、代表的なものを5つご紹介します。

横領・着服

会社の資産や現金を、従業員が不正に私的利用することを横領と言います。

横領とは、一般的に言われる着服と同じ意味です。

横領は、刑法で「自己の占有する他人の財物を横領した」場合に成立すると定められています(刑法252条)。

横領罪が成立するには、従業員が、会社の財物(お金や品物)を、占有する(預かっている)ことが必要です。

具体的には、品物を管理する立場にある店長が会社の商品を持ち帰ったり、会社のお金を管理する経理係が、会社の資金を自分の口座に入金するケースが典型です。

こうした立場にない一般職員が会社の金庫からお金を盗んだり、アルバイトがレジのお金をくすねたような場合は、窃盗罪(同235条)に当たります。

偽造・改ざん

真実と嘘

文書や記録などを不正に変更することをいいます。

経費報告書にウソの内容を記載したり、他人の署名を偽造して契約書を作成するケースが典型的です。

会社が作成する契約書や証明書を偽造・改ざんすると、私文書偽造罪に該当する場合があります(刑法159条)。

私文書偽造罪が成立するには、次の4つの条件を満たす必要があります。

行使の目的があること

偽造した文書が本物だと誤解させる目的があれば、具体的な使用目的がない場合でも成立します。

他人の印章や署名を使用していること

文書の作成名義人しか使用できない印や署名を他人が用いることです。

権利・義務・事実証明に関する文書や図画であること

契約書や交渉の内容を記したものを指します。

文字で記されたものや、写真・絵などに限らず、イラストを使用した説明書のようなものも含まれます。

偽造行為があること

契約書に勝手に他人のサインをしたり押印するなど、文書の名義人と作成者の「人格の同一性を偽ること」を意味します。

なお、他人の印章や署名を使用したかどうかによって、「有印私文書偽造」「無印私文書偽造」かに分かれます。

他人の印章・署名がある方が信頼性が高いことから、前者は3か月以上5年以下の懲役刑、後者は1年以下の懲役または10万円以下の罰金と、有印私文書偽造の方が重い刑罰が定められています。

詐欺・悪質商法

携帯をかける怪しい男性

従業員が、会社の顧客や取引先をだまして、不当な利益を得ることを指します。

例えば、

  • 商品を実際より高く売りつけるケース
  • 製品の不具合を隠して契約を取り付けるケース
  • 金融機関の担当者が顧客の信頼を利用して不正な取引をするようなケース

が想定されます。

詐欺罪に該当すると10年以下の懲役刑(刑法246条)が定められています。

インサイダー取引

インサイダー取引は、金融商品取引法に定める上場企業等の未公表の事実を知った人が、その知識を利用して株取引をする行為です。

取引の損得は関係なく、取引時点でインサイダー取引にあたります。

正社員以外のアルバイトや外部の取引先など、幅広い人が対象となり、取引が発覚すれば5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金が課されます(金融商品取引法197条の2)。

報告漏れ・虚偽報告

パソコンで作業をする男性

会社の業績や財務状況などを隠したり、虚偽の報告などをすることを指します。

例えば、受注がキャンセルされたことを報告しなかったり、実際よりも高い収益を報告したりすることがあります。

社内の内部監査や担当者の変更によって明らかになるケースが多く、不正が発覚した時にすぐに修正すればダメージも少なくすみます。

しかし隠ぺいすると会社に与える影響は大きくなり、社会に露呈した時には最悪の場合会社の倒産を招きかねません。

業務妨害・不祥事

会社の業務を妨害したり、社会的に問題となる行為を行うことを指します。

例えば、同僚への暴力行為や、職場内でのパワハラ行為などが挙げられます。

昨今、ハラスメントに対する社会の目は厳しくなっており、発覚すると株価の下落を招くケースは少なくありません。

加えて従業員がプライベートで犯罪をしたケースでも、勤務先の会社が特定されるなどすると、会社へのダメージは避けられません。

従業員の不正が会社に損害を与えた実際のケース

悩むビジネスマン

従業員の不正が、会社にダメージを与えたニュースや事例は少なくありません。

ここでは、実際に会社に損害が生じたケースをご紹介します。

従業員の不正を隠ぺいした結果、会社の赤字や倒産を招いた事例

従業員の不正を隠ぺいした結果、会社が倒産に追い込まれた事例として次のようなものがあります。

日本を代表するメーカーだった東芝は、2015年に不正会計を行っていたことが発覚し、その後の調査で不祥事を隠ぺいしていたことが判明しました。

この不正会計の影響で東芝は資金繰りに苦しみ、2017年には約20年ぶりに赤字決算を発表しました。

その後も業績が低迷したことから、2020年には半導体部門を売却するなどのリストラ策を進める中で、再び赤字決算を発表しています。

また、不動産会社の大京も、1997年に不動産関連の不正会計が発覚し、不祥事を隠ぺいしていたことが明らかになりました。

この不正会計により、大京は負債を抱えたまま経営が悪化し、2000年に破産しました。

従業員の詐欺行為が会社に損害を与えた事例

従業員による詐欺行為は、会社に大きなダメージを与えます。

日本においても、そのような事件は多数報道されています。

以下その一例を紹介します。

上記でもご紹介した東芝の事件では、発端は同社の従業員らが収益を水増ししていたことが発覚し、会計不正が行われていたことでした。

東芝の会計不正事件は同社の株価に影響を与え、当時の社長や役員らが辞任するなど、大きな社会問題となりました。

また、2018年のスルガ銀行不正事件では、同行の元従業員らが投資型マンション・アパートについて不正な融資を行い、顧客から資金をだまし取っていたことが発覚しました。

この事件により、同行の株価は急落し、未だ信頼回復が果たされたとは言い難い状況にあります。

従業員のパワハラやセクハラが原因で会社の株価が下落した事例

ハラスメントを受ける女性

ここ数年、パワハラやセクハラが原因で会社の株価が下がったとされるニュースはいくつも報じられています。

例えば、2019年には、大手化粧品メーカーの資生堂に勤務する女性社員が、上司によるセクハラパワハラを訴えました。

同社が社内調査を実施したところ、問題があったと判明し、この報道を受けて同社の株価は下落しました。

また、翌2020年には、料理サイトのクックパッドや大手通信メーカーのソフトバンクにおいて、社員が上司からのセクハラ・パワハラを受けたことがニュースになりました。

各社が調査した結果、いずれもハラスメントがあったと判明し、株価の下落を招いています。

加えて最近では、大手牛丼チェーン吉野家の役員が、同社のマーケティング戦略に関して「生娘がシャブ漬けになるような企画」と、女性を蔑視し人権を無視する不適切な発言を行いました。

同社は、この発言が明らかになった直後に臨時取締役会を開き、同役員の解任を決めましたが、発言は社内外に波紋を広げ、同社のCM発表会の中止、株価の急落といった大きな影響に繋がっています。

これらの事件は、従業員のハラスメントによるものですが、ひいては会社が社員の人権を尊重していないと評価され、株価に悪影響を与えることを示しています。

それだけに、会社には、従業員のハラスメントを防止するとともに、社員の健康的な働き方を実現する体制を取ることが求められます。

従業員の不正が疑われる場合は弁護士に相談を

法律の相談を聞く男性弁護士

従業員の不正には、上記のように様々な種類があります。

刑法に該当し処罰対象になるものから、コンプライアンス意識が問われるもの、社会的責任が問われるものまで様々です。

また不正を行う従業員も、役員などの責任ある立場にあるもの、若手社員が行ったもの、非正規雇用の職員が行ったものまで、誰がどのような不正を行うか、推測ができないこともあります。

このような不正を会社がすべて想定し、備えを行うのは困難です。

それだけに、会社における従業員の不正の事例を熟知し、生じる結果の予測ができ、取るべき対策を講じることができる弁護士に、まずはご相談ください。

弁護士であれば、会社の業種や状況にあった不正の予防策のアドバイスを取ることが可能です。

また、残念ながらもし実際に従業員の不正が生じた場合でも、どのように公表すべきか、謝罪等の対応は必要か、当該従業員に対してどのようなペナルティを与え対応すべきかという方針を示すことも可能です。

従業員の不正に備えたい経営者の方や、実際に不正の懸念があってお悩みの経営者の方は、企業の状況に詳しい弁護士にまずはお気軽にご相談ください。

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