インバウンド旅行客の急増に伴い、様々な迷惑行為が社会問題となっています。
写真撮影、交通機関の利用、公共の場でのふるまいなど、文化の違いから生じるトラブルも少なくありません。
本記事では、
- よくある迷惑行為についての法律的な側面
- 迷惑行為を受けた場合の対応策
などについて解説します。
インバウンドによる迷惑行為でお悩みの方は、是非ご一読ください。
法律的にどう?インバウンドでよくある迷惑行為
ここ数年、日本各地でインバウンド観光客が増加しています。
しかし一方で、文化の違いから生じる様々な迷惑行為も急増しています。
インバウンド観光客の、日本の法律やマナーに反する行動が問題となっているのです。
ここでは、インバウンドでよく見られる迷惑行為について、法律的な問題点を解説します。
無断での写真撮影
私有地や寺社仏閣、美術館など多くの施設では、撮影が禁止・制限されています。
撮影のために無断で私有地へ侵入した場合、「住居侵入罪」や「迷惑防止条例違反」として、罰金や科料が科される可能性があります。
また、観光地の多くでは、地域の特性に応じた様々な規制が設けられています。
例えば、京都の祇園地区などでは、芸者や舞妓の無断撮影、つきまとい行為が禁止されており、違反すると科料が科せられます。
交通機関への無賃乗車
交通機関への無賃乗車も、よくある迷惑行為の1つです。
日本の鉄道営業法では、正当な理由なく運賃を支払わずに乗車することは禁止されています。
無賃乗車が発覚した場合、通常運賃の支払いに加え、割増運賃を請求される可能性があります。
悪質な場合は警察に通報され、刑事事件に発展するケースもゼロではありません。
女性専用車両への乗り込み
女性専用車両への乗り込みも、インバウンドで発生しやすい迷惑行為です。
最近も、女性車両に乗り込んだ動画を上げている男性YouTuberが話題になっていました。
もっとも、女性専用車両に男性が乗ること自体に、法律上の問題はありません。
女性専用車両は、あくまでもサービスの一環として実施されているものであり、法的強制力は無いからです。
ただし、車両内でYouTubeの撮影をして他の人が映り込んだ場合は、肖像権やプライバシー権の侵害にあたる可能性があります。
列への割り込み
電車やバスの乗降時に列を作って待つことは、日本人にとって、一般的なマナーとして定着しています。
しかし、文化の異なる外国人にとっては当たり前ではなく、列への割り込みが発生するケースも見受けられます。
列への割り込みは、迷惑行為ではあるものの、違法とまでは言えません。
法律によって規制されている訳ではないからです。
ただし、割り込みの際の行動によっては、法的問題に発展します。
例えば、列へ割り込む際に暴言を吐いたり、威圧的な態度を示したりすると、軽犯罪法違反に該当する可能性があります。
ごみのポイ捨てや路上喫煙
インバウンド旅行客による「ごみのポイ捨て」や「路上喫煙」を見かけるケースも多いです。
ごみのポイ捨ては、多くの自治体で、条例により厳しく規制されています。
軽微な場合でも、1,000円〜30,000円程度の罰金や科料が科される可能性があるのです。
重大な不法投棄となると、最大5年の懲役や1,000万円以下の罰金といった厳罰が設けられている自治体もあります。
また、路上喫煙も禁止されている地域が大半です。
違反した場合は、1,000円〜20,000円程度の過料が科せられてしまいます。
「外国人お断り」は違法?
インバウンドによるトラブルが増加することで、一部の飲食店やサービス業では、外国人観光客の入店を拒否するケースが発生しています。
このような「外国人お断り」は、法律的に認められるのでしょうか。
ここでは「外国人お断り」の違法性について解説します。
「人種・国籍」による入店拒否はNG
「人種・国籍」による入店拒否はNGとなる可能性が高いです。
日本は、1995年に人種差別撤廃条約に正式に加入しました。
この条約の下、人種や国籍を理由とした入店拒否は、不当な差別と見なされる可能性が高いです。
特定の人種や国籍を理由にサービスを提供しないことは、公平性を欠く行為として、厳しく批判されるでしょう。
迷惑行為による入店拒否はOK
一方で、具体的な迷惑行為を理由とする入店拒否であれば、認められる可能性が高いです。
例えば、店内でのマナー違反やマスクの着用拒否、他の客への迷惑行為などです。
改善を促した上で、その後も続くようであれば理由を説明し、退店してもらうことを検討してみましょう。
インバウンドによる迷惑行為を受けたらどうする?
それでは、迷惑行為に直面した場合、どのように対応すれば良いのでしょうか?
インバウンドによる迷惑行為の対処法を解説します。
勇気を持って注意する
勇気を持って注意することで、意外と簡単に解決する場合もあります。
外国人観光客の大半は、悪意をもってルールに違反している訳ではないからです。
文化や習慣の違いが原因の可能性が高いため、冷静に状況を把握することが大切です。
簡単な英語や、身振り手振りで状況を説明し、理解を求めましょう。
地域の観光協会や自治体に報告する
問題が続くようであれば、地域の観光協会や自治体に報告することで、改善される可能性があります。
可能であれば、迷惑行為の様子を写真や動画で記録しておきましょう。
具体的な状況が判明することで、観光協会や自治体が動きやすくなります。
弁護士に相談する
被害が深刻な場合は、早めに弁護士に相談しましょう。
インバウンドによる迷惑行為は、慢性的なストレスになるだけでなく、事業の運営や地域社会にも大きなダメージを与えることがあります。
大きな被害への発展を防ぐには、専門家のアドバイスを受けて、早期に対処することが必要です。
トラブルが深刻化する前に、弁護士に相談して、法律に則った対応を行いましょう。
まとめ
インバウンド観光客による迷惑行為は、必ずしも悪気があるわけではなく、文化の違いや理解不足から生じていることが多いです。
異文化理解とコミュニケーションによる解決を第一に考え、法的手段はあくまで最後の手段として検討することが望ましいでしょう。
悪質な場合は、早期に法律的な対応が必要です。
1人で解決できないと感じたら、事態が深刻化する前に弁護士に相談しましょう。