民法改正により、2022年4月1日から成人となる年齢が引き下げられ、20歳から18歳になりました。
1人で契約ができる、職業や進学先を1人で決められるなど生活に変化が生じると同時に、税金や年金への影響が心配な方も多いのではないでしょうか。
特に、これから仕事やアルバイトを始めようとしている18歳・19歳の方にとっては「どのくらい稼いだら税金を払わなくてはいけないのか?」等、税金や年金の支払いが気になる人も多いかもしれません。
また、子どもがいる親にとっても「子どもが高校生なのに、18歳になったら国民年金保険料を払わなければいけないのか」等、社会保険料控除の関係でも気になる方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、成人年齢の引き下げで生じる、税金や年金への影響について解説します。
18歳に成人年齢が引き下げられて変わる税金とは
成人年齢が18歳に引き下げられたことにより、変化が生じる税金があります。なかでも、18歳・19歳の方やそのご家族に影響が大きいのが住民税です。
住民税とはどんな税金で、何に対してかかるのか、どのくらいまで非課税になるのかについてご説明します。また、いつか訪れる相続に備えて検討しておきたい相続税や、節税対策を考えている方が検討すべき贈与税について、成人年齢の引き下げによって生じる変化についてもご説明します。
18~19歳の方が注意すべき住民税の非課税対象の変更点
住民税は、住んでいる都道府県や市区町村に納める税金です。前年の1年間の所得に対して、1月1日時点で済んでいる自治体に支払う決まりになっています。
住民税には、所得に関係なく負担する均等の均等割(自治体によって異なり、市区町村民税3500~4400円、都道府県民税1500~2500円)と、前年の所得金額に応じて負担する所得割の2つの種類があります。住民税には年齢制限がないので、一定の所得を超えると未成年でも支払わなくてはいけません。
ただし、「未成年者のうち前年の合計所得金額が135万円以下の者」は非課税になるとされています(給与所得者の場合は年収204万4000円未満)。
成人年齢の引き下げにより、2022年4月1日以降は、上記の非課税対象の未成年者が20歳未満から18歳未満に変更になりました。そのため、18~19歳の人はこの非課税枠から外れ、地域により異なりますが概ね100万円以上の年収があれば、学生アルバイトでも住民税がかかることになります。
なお、成人でも、前年の所得が45万円以下の場合は、同様に非課税になります。
万が一の時にかかる相続税は成人年齢引き下げで負担が増える
相続税は、親兄弟などが亡くなり、財産を受け継いだ時に払う税金です。いつまでも元気で過ごせるのが一番ですが、子どもがいる方の場合は万が一に備えて考えておきたい問題です。
相続税には「未成年者控除」といい、相続人が未成年の場合、成人するまで1年あたり10万円を相続税から控除できる制度があります。「10万円×20歳になるまでの年数」が控除対象でしたが、成人年齢の引き下げにより「10万円×18歳になるまでの年数」に変更になりました。
控除を受けられる年数が2年分減ることになり、実質的に負担が増えることになります。
節税対策の贈与で非課税対象が広がる相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は、60歳以上の父母や祖父母から成人の子や孫が財産をもらった時に、合計2500万円まで贈与税が非課税になる制度です。
年間110万円以下の贈与が非課税になる「暦年贈与制度」もありますが、相続時精算課税制度だと一度に多額の財産を贈与できること、合計2500万円を超える額にかかる税率が20%なので、節税になる場合があります。
成人年齢が引き下げられたことにより、相続時精算課税制度を使える年齢が早まります。選択肢が広がることは、節税対策を検討する上でのメリットになるといえます。
成人年齢の引き下げでも変わらない年金・養育費
成人年齢の引き下げによって、上記のように税金は様々な場面で影響を受けます。一方で、成人年齢が18歳に引き下げられても変わらない制度もあります。特に、18~19歳の子どもをお持ちの親御さんにとって気になるのが「国民年金保険」ではないでしょうか。
「国民年金は従来と変わらない」といっても、現在どのような運用になっていて何が変わらないのかよくわからないという方も多いと思います。
ここでは、成人年齢が18歳に引き下げられても変わらない、国民年金保険・特別児童扶養手当・養育費についてご説明します。
国民年金保険料の加入は現状変わらず20歳から
国民年金は、20歳から59歳までのすべての人に加入する義務がある年金です。現行の規定では、20歳になった時点で強制的に加入させられます。
国民年金の年金保険料は月額1万6590円(第1号被保険者、令和4年度)なので、決して軽い負担金額ではありません。それだけに、成人年齢の引き下げによって、「国民年金保険料の加入も18歳になるのか?」と心配される方も多いのではないでしょうか。
しかし、成人年齢が18歳に引き下げられても、国民年金に加入し、国民年金保険料を納付する義務があるのは20歳になってからとされています。2022年4月1日以降、18歳で成人した人も、20歳になるまで何も変更はありません。
なお、20歳以上の国民年金被保険者が対象になりますが、学生納付特例制度も継続して適用されます。20歳以上59歳以下の人のうち、収入が一定以下の学生であれば、国民年金保険料の納付を猶予してもらうことができます。
また、親が生計を共にする子どもの国民年金を払うと、社会保険料控除として所得控除の対象になり、所得税と住民税を安くすることができます。節税のメリットは所得額によっても変わるので、20歳以上の子どもがいる場合は、比較検討してみるとよいでしょう。
特別児童扶養手当の支給年齢も変わらず20歳まで
特別児童扶養手当とは、20歳未満で、精神または身体に障害がある子どもを養育している、所得が一定以下の人に支給される手当のことを言います。
特別児童扶養手当も、成人年齢が18歳に引き下げられても、子が20歳になるまで支給を受けることができます。
成人年齢が18歳になっても養育費の支払いは20歳まで
養育費とは、子どもを監護・教育するために必要な経費、教育費、医療費などの費用です。離婚した夫婦が、「子どもが成人するまで養育費を払う」と取り決めをしていた場合、成人年齢が18歳に引き下げられても、従来通り20歳になるまで支払わなければいけません。
養育費は、経済的・社会的に自立せず未成熟な子どもの監護・教育のために支払う必要があるとされています。成人したかどうかにかかわらず、「子どもが大学に進学した場合は大学卒業まで養育費を支払う」など、年齢ではなくライフスタイルに合わせた合意をするケースも多いです。
成人年齢の引き下げで変わる税金・変わらない年金を知って安心を
成人年齢の引き下げで、住民税・相続税には影響が生じる一方、国民年金保険や養育費には影響がありません。
成人年齢が18歳になったことで生じる影響を知っておくことが、今後の生活の安心にもつながります。
ご不安な点があれば、弁護士などの専門家にお気軽にご相談ください。