交際していた男女が別れるときに、話がこじれる原因の一つは金銭問題です。
信用している相手だからと、口頭の約束だけで金銭を貸してしまったりすると、いざ別れるような状況になると、「あれは貰ったものだから」などと言われることはよくあります。
また、「自分は騙されたのだから、当然お金は返さない」と考える人もいますが、金銭貸借と恋愛感情は別物です。法律的にきちんと解決しましょう。
ここでは交際中にお金を貸したけれど返してもらえない場合の対処法を解説します。
男女間の貸し借りが金銭トラブルになる原因
男女間で金銭を貸し借りした場合にトラブルになる原因は主に2つあります。
- 贈与なのか貸借なのかがはっきりしない
- 借用書や契約書がない
デート代や食事代、はてはプレゼントまで「返せ」と言ってくる人もいますが、それらは法律上の貸し借りにはなりません。
なぜなら、貸し借りが成立するための要件は決まっているからです。
- 借りる側が「借りる」という意思表示をすること
「必ず返すから」とか「とりあえず貸して」などといった言葉があれば、「借りる」意思表示があったとされます。 - 貸す側が金銭を渡すこと
この2つを満たせば金銭消費貸借は成立します。
逆に言うと、契約書や借用書はなくても金銭消費貸借は成立するということになります。
なぜ契約書や借用書が大事かというと、借りた側が「あれは貰ったものだから」などと言い逃れをしようとしたときに、有無を言わせぬ証拠になるからです。
暴力や脅迫がともなうことも
男女間では、暴力や脅迫などのDVによって問題が複雑化しているケースもあります。
暴力や脅迫がひどいときは、暴行罪、脅迫罪、さらに金品を出させたなら強盗罪が成立する可能性がありますので、その場合は、すぐに警察に被害届を出しましょう。警察があまり積極的に動いてくれないようなら、弁護士にも相談しましょう。
持ち去られた金品の返却をもとめることもできますが、大事なのは身の安全です。相手方と交渉するときは必ず弁護士や家族など第三者をともなってください。
返済期限や利息を決めていない
後からでも可能なので、返済期限は決めておいたほうがよいでしょう。
返済期限を決めていないときは、貸した側は相当の期間が経過したのちに、返済するように借主に請求できます(民法591条1項)。相当の期間というのは通常1週間程度と考えられています。
利息を決めていないときは無利息になります。利息を付けることは決めたけれど利率は決めていない場合は、法定利率に従います。
法定利率は3年ごとに見直しされるので都度確認しておく必要があります。2022年に返済期限が来る消費貸借の法定利率は3%です。
男女間の金銭トラブル対処法①~催促する
話しづらい相手であっても貸したお金を返してもらいたいなら催促する必要があります。
催促することによって消滅時効をリセットできるのでとても大事なことです。その際、相手を脅すような言動、暴力などは厳に慎むようにしましょう。
催促しないと時効になるかもしれない
金銭貸借の返済期限がすぎると、貸した側には相手に「返してください」と要求する権利が生じます。
催促せずに5年間経過してしまうと消滅時効といって、返済を要求する権利(債権)が消滅してしまうので、注意しなくてはなりません。
時効は、権利を行使できると知ったときから5年、権利の行使が可能になったときから10年で成立します。つまり返済期限の翌日から5年で時効が成立し債権は消滅します。
時効をリセットするためには、メールでもよいので後に残る形で督促します。相手が一部を返済したり、「少し待ってほしい」などと返信してくれば、債務を承認したことになるので、時効はリセットされます。
違法な取り立て行為をしない
借金を返さないからと言って、暴力や脅しはいけません。また、何度も催促しに行くとストーカーとして警察に通報される恐れもあります。
借金の催促はストーカーではありませんが、何度催促しても良い反応が得られない場合はそれ以上個人で交渉せずに、専門家に相談しましょう。何が違法な行為になるのかを自分で判断するのは危険です。
内容証明郵便で督促する
何度催促しても進展しない場合は督促状を内容証明郵便で送ります。
内容証明郵便というのは、いつ、誰が、誰に、どのような内容の郵便を出したかを郵便局が証明してくれるものです。
返済がないときは法的処置をとることを明記して、できれば弁護士から送ってもらいましょう。
受け取った側はプレッシャーを感じて、返済してくれるかもしれません。返済がなくても証拠になりますので、借りた側は督促状を受け取っていないと言い逃れることができなくなります。
相手の住所がわからなければ郵送することができませんので、なんとかして聞いておきましょう。
男女間の金銭トラブル対処法②~法的手段をとる
催促しても返済がないときは、法的手段をとることになります。
法的手段には支払督促、民事調停、訴訟、少額訴訟などがあります。
これらの手段を講じても、借主に財産がないときは借金を回収することはできません。
訴訟などを起こす前に、相手方の財産状況は調査しておく必要があります。不動産は登記の確認、預貯金については給与振込口座、クレジットカード決済口座などの情報をできるだけ集めます。
支払督促
裁判所を介して借りた側に督促の通知をする手段です。
支払督促は比較的簡単な手続きで短期間で終了でき、申立費用も安く抑えられます。
民事調停
裁判所の調停室で話し合って問題解決を目指します。裁判官の他に調停委員2名が同席し、直接相手と交渉せずに済ませることも可能です。
申立手数料が安く手続きも簡単です。話し合いが合意にいたれば裁判所から調停調書が出され、判決と同じ効果を持っているので強制執行も可能になります。
訴訟
支払督促を出しても返済されず、民事調停でも合意に至らなかった場合には、訴訟という手段があります。もし相手方が「金銭貸借ではなく贈与である」などと主張している場合は初めから訴訟に踏み切る方がよいでしょう。
手続きは他の法的手段に比べて複雑で、時間・費用もかかりますので、債権回収を専門とする弁護士に依頼することをおすすめします。
少額訴訟
60万円以下の支払を請求するときに起こせる訴訟です。簡易裁判所に提訴し、原則1回で審理終了、即日判決が出ます。
通常の訴訟に比べて申立費用が安く手続きも簡単です。
強制執行
上記の法的手段に訴えて、判決・調停調書・督促通知が出たにもかかわらず支払ってもらえないときは、財産を差し押さえるなど強制執行ができます。
男女間の金銭トラブル まとめ
交際していた男女でも金銭の貸し借りが原因でトラブルになることは珍しくありません。
お金を貸すときは文書にして、返済期限や利子はどうするかも決めておいたほうがよいでしょう。
貸したお金を返してもらえないときの対処法は、メールや電話で催促してそれでも返してもらえないときは、内容証明郵便で督促しましょう。
場合によっては法的手段をとることもいとわないと意思表示することによって、スムーズに運ぶ場合もあります。
法的手段には比較的簡単な手続きで費用も少額ですむものがありますので、自分で行うことも可能です。弁護士費用に見合わないくらいの少額請求は通常の訴訟ではない少額訴訟の制度を利用できます。
さまざまな手段をとっても、問題が解決しない場合は訴訟、強制執行を行って解決します。
弁護士に相談するメリット
上記の解決手段はいずれも相手の居所がわからなければ利用できません。通知や出頭命令などを相手の住所に送らなくてはならないからです。
そういった細かいことでも自分で行うよりも専門家に任せる方が確実です。
弁護士は依頼人の代理人として訴訟手続きを行うことができ、依頼人の味方になってアドバイスします。訴訟となれば精神的な負担が大きくなりますが、弁護士のサポートがあれば安心でしょう。
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