ここ数年、「パパ活」のトラブルをニュースでよく見るようになりました。
実際、2021年には、パパ活をしている女性が、デート中に訪れたホテルで、相手の男性の高級腕時計を盗んだ窃盗容疑で逮捕されたり、パパ側の男性が、女性の飲み物に睡眠薬を入れて乱暴して逮捕されるなどの事件が発生しました。
このように、パパ活をめぐるトラブルは男女を問わず発生します。
態様によっては違法になり、警察沙汰になったり犯罪に該当する場合もありますし、犯罪にはならなくとも、トラブルになるケースは少なくありません。
そこで今回は、パパ活とは何か、どのようなトラブルが発生し、犯罪になりうるのはどういう場合かについて、男女別の事例をもとに分かりやすく解説します。
パパ活とは何か
「パパ活」とは、若い女性が年上の男性とデートや食事をして、経済的な対価を得ることをいいます。
多くの場合、SNSやマッチングアプリ、パパ活アプリで相手を見つけて行われます。
パパ活とは逆に、若い男性が年上の女性と時間を過ごして対価を得る「ママ活」もあります。
パパ活自体を取り締まる法律はありませんが、態様によっては警察沙汰などトラブルになることがあります。
パパ活と援助交際の違い
一昔前、「援助交際(援交)」が大きな話題になりました。
パパ活も援助交際も、若い女性が年上の男性とデートなどをして、お金をもらうといった金銭的援助を受ける点で共通します。
ただし、援助交際は「交際」と名がつくように、一般的に肉体関係に発展するケースが多いと捉えられています。
パパ活の場合は、肉体関係を持つことは前提ではなく、食事だけのデートで数万円払う人も少なくありません。
とはいえ、肉体関係に至り、トラブルが大きくなるパパ活の当事者も多いのが実情です。
パパ活と売春の違い
売春(買春)は、対価を払って性交渉をすることです。
肉体関係のないパパ活や、性交渉をしても対価の支払いがない場合、売春には当たりません。
売春は、斡旋等をしない限り、成人の当事者間で合意すれば、お金を払って性交渉をしても罰則等はありません。
しかし、相手の年齢が18歳未満だった場合は、児童買春防止法、対価がなくても青少年育成条例違反、相手が13歳未満の場合は合意の有無に関わらず強制性交等に当たりますし、成人でも合意がなかった場合は不同意性交等の犯罪に該当する場合があります。
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犯罪にはならないパパ活の例
若い女性とデートをしてお金を渡すだけで、性交渉がなければ、パパ活が違法になるケースは少ないです。
ただし、次のような場合には注意が必要です。
軽いデートでは犯罪になりにくい
食事を一緒にするだけ、軽いデートをするだけの関係ならば、パパ活をしてもトラブルになりにくいと言えます。
しかし、未成年の相手を連れまわすなどしていた場合は、後で説明する未成年者略取誘拐罪に該当する場合もあるので注意が必要です。
配偶者から損害賠償を請求されることも
既婚男性がパパになり、相手の女性と性交渉をした場合、配偶者(妻)から損害賠償、いわゆる不倫慰謝料を請求される場合があります。
法律上、結婚している夫婦は、配偶者以外とは性交渉をしないという貞操義務を負うとされています。
パパ活という一時的な関係でも、性交渉をすれば「不貞行為」にあたります。
不貞行為は犯罪ではありませんが、民法という法律で定められた「不法行為」にあたります。
そのため、不貞(不倫)された配偶者は、不貞をした配偶者とその相手に、精神的苦痛に対する損害賠償(慰謝料)を請求できる場合があります。
もし、パパ活の相手と性交渉をしていなくても、頻繁にデートしたり泊りがけの旅行に行くなど交際の程度が親密と判断されれば、不法行為に該当する可能性もあります。
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男性側が加害者になりやすいパパ活のトラブル
パパ活でトラブルになるのは、圧倒的に男性が加害者側になるケースが多いです。
代表的なケースを事例別にご紹介します。
相手の女性の年齢を問わず犯罪に当たるケース
パパ活の相手が若い未成年とは限りません。
相手が成人女性でも、パパ活の態様によっては次のような犯罪が成立する可能性があります。
不同意わいせつ罪
相手の女性の同意なく、無理やり、キスする、胸をもむ、抱き着く等の行為をした場合は、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります(刑法176条)。
以前は、暴行・脅迫を用いた場合に限られていましたが、法改正により、相手が寝ているなど意識がはっきりしない状況や、アルコールや薬物を摂取させたり、社会的な立場に基づく影響力を利用するなど、「いやだと言えない状況」を利用して性交渉をした場合も該当します。
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不同意性交等罪
同様に、相手の同意なく性交渉をした場合は、不同意性交等罪に当たります(刑法177条)。
相手の女性が未成年の場合に犯罪に当たるケース
法律上、18歳未満の子どものことを「児童」といいます。
法改正により、成人年齢が18歳になったため、未成年=児童と捉えて差し支えありません。
パパ活の相手が未成年だった場合、該当する犯罪は多くなります。
未成年者略取誘拐罪
18歳未満の女子を、誘惑して連れまわした場合に成立する犯罪です(刑法224条)。
誘惑とは、高級料理をご馳走する、お小遣いをあげる、ブランド物を買ってあげるなどの条件を示すことを言います。
そのため、パパ活相手の女子が小遣いをねだった場合でも、車に乗せて連れ回すなどすると、男性の支配下に置いたとして未成年者略取誘拐罪が成立する可能性があるのです。
女子が自らパパ活をしている場合でも、両親の監護権を侵害したとして同罪が成立することもあります。
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青少年育成条例違反
パパ活女子の未成年に、対価を支払わずわいせつな行為や性交渉をした場合は、各都道府県が定める青少年育成条例に違反する可能性があります。
育成条例、愛護条例など、名称は様々ですが、内容に大きな差はありません。
児童買春、児童ポルノ法違反
正式名称を「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」といい、未成年に対価を払って性交渉をした場合や、わいせつ画像を撮ったり、わいせつな自撮り画像を送らせるなどすると成立する可能性がある犯罪です。
不同意わいせつ・不同意性交等罪
上記でご説明した不同意わいせつ罪、不同意性交等罪ですが、相手の女性が未成年の中でも特に13歳未満だった場合は、仮に女性の同意があっても成立します。
女性側が加害者になりやすいパパ活トラブル
パパ活では、女性側が罪を犯してトラブルになるケースもあります。
パパ活女子の行為が犯罪に当たるケース
パパ活をする女性の行為が犯罪になるケースは、男性と比べれば少ないです。
しかし、実際に逮捕された事例も発生しています。
詐欺罪
女性が、パパ活相手のパパに対して、お金が必要だとウソをつき、同情を買ってお金を騙し取るような場合は、詐欺罪が成立する可能性があります(刑法246条)。
実際、パパ活相手に対して借金があるなどとウソをついて、約1600万円をだまし取った詐欺の容疑で逮捕されたパパ活女子もいます。
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恐喝罪
パパ活をしていることを奥さんにばらすなどと男性を脅し、金銭を要求するような場合、脅迫罪が成立する可能性があります(刑法249条)。
また、パパ活女子の交際相手や夫が、パパ活相手の男性に対し、自分の彼女(妻)と関係を持ったなどと言いがかりをつけて脅迫する「美人局」のケースも少なくありません。
窃盗罪
冒頭の例でもご紹介しましたが、パパ活女子が、相手の男性の腕時計を盗んだり、財布からお金を抜き取るケースは少なくありません。
このような場合、窃盗罪(刑法235条)に該当します。
未成年でパパ活をすることは犯罪か
パパ活女子が未成年の場合、パパである男性側に成立しうる犯罪が多いことを上記でご説明しました。
一方、女性が、未成年でパパ活をしても犯罪になるわけではありません。
もっとも、夜間出歩くなどしているときに警察に補導されたり、サイバーパトロールで警察から話を聞かれたりする可能性はあります。
しかしそれは、青少年の健全な育成のために行われるものなので、犯罪になるわけではありません。
パパ活が警察に発覚する経緯
警察にパパ活が発覚し、逮捕されたり、取り調べを受ける経緯としては、次の4つのパターンがあります。
パパ活女子側からの被害届の提出・告訴
パパ活中に、相手の女性に対して同意なくわいせつ行為をしたり、性交渉をするなどした場合、後から被害届を出されたり、告訴されることがあります。
被害届
犯罪の被害に遭った事実を申告するもの
告訴
被害届に加えて、相手を処罰してほしいという意思を示すもの
補導やサイバーパトロール
警察が未成年者を補導した際、未成年者がスマホを任意で提出するなどすると、その履歴などから芋づる式にパパ活が発覚することがあります。
また、警察はサイバーパトロールといって、SNSやアプリなどで違法薬物の売買や売春行為などが行われていないかチェックしています。
こうした活動から、パパ活が発覚するケースは少なくありません。
職務質問・現行犯逮捕
パパ活女子と性交渉するためにラブホテルに出入りする際、警察に声をかけられ職務質問をされる場合があります。
さらに、その場で相手が未成年と発覚した場合現行犯逮捕されることもあります。
合意の上で性交渉をしたとしても、児童買春や育成条例違反といった犯罪に該当します。
「18歳未満と思わなかった、知らなかった」という言い訳は、相手が年齢を偽って18禁のパパ活アプリを利用していた、学生証を偽造していたなどの事情がなければ、認められるのは難しいといえるでしょう。
第三者の通報
パパ活女子が学生の場合は、友人や学校の教員から警察に通報されることがあります。
また、家出少女がパパ活をしている場合、両親が捜索願を出し、本人が見つかると同時にパパ活が発覚するケースがあります。
男性が独り身、単身赴任中の場合など、パパ活をする家出少女を住まわせている場合もありますが、このようなケースでは、男性側にそのつもりがなくても未成年者略取誘拐罪に問われる可能性が高いです。
パパ活トラブルが心配な場合の相談は弁護士へ
上記のように、パパ活はお金を払ってデートや食事を楽しむ分には問題ありませんが、相手の年齢や、パパ活の態様によっては犯罪に転じうるリスクが高いです。
もし、逮捕されれば、職業や会社など立場によってはそれだけで報道されることもありますし、有罪になり前科がつけば、資格や職業に支障が生じる可能性もあります。
このような影響を防ぐための相談先として、弁護士をお勧めします。
弁護士であれば、相手の女性や、女性が未成年の場合は法定代理人である両親などと示談交渉をしたり、捜査機関側と交渉して、トラブルを最小限に抑えることが期待できます。
また、もしご自身が既にパパ活をしている場合、どのような行動に注意すればよいか、専門家の立場からアドバイスを受けることも可能です。
一時の遊びのつもりのパパ活が、人生や家族に重大な影響を及ぼすリスクもあります。
パパ活が心配な場合は、できるだけ早く弁護士にご相談されることをお勧めします。
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