「毒親と絶縁したい」「親子の縁を切ってこれ以上かかわりあいたくない」という方はいませんか。
子どもに対して暴言を吐く、暴力を振るう、過度に干渉したり、逆に全く世話をせず放置するといった、子どもにとって毒ともいえる言動をする親のことを、一般的に毒親と言います。
毒親の暴力や過干渉は、子どもが小さい間だけでなく、成人してからも続くことは少なくありません。
大人になっても生活を監視してくる、お金を無心してくる、世話を見ることを強要するなど、ご自分の生活が脅かされるような状況に追い込まれ、親子の縁を絶縁したいと思われている方もいるのではないでしょうか。
しかし、親子の縁を切って絶縁するというのは、簡単ではなく、できることとできないことがあります。
そこで今回は、毒親と絶縁し、親子の縁を切る方法について、どうすればご自身の生活が守れるか、毒親から離れて安心して生活ができるかという観点からご紹介します。
法的な「親子の縁」とはそもそも何か
「親子の縁」というと、一般的には人情面から捉えられがちですが、法律的な親子の縁とは、相続と生活扶助義務の関係に尽きます。
相続と親子関係
相続とは、人が亡くなった時に、その人の一切の権利や義務を、特定の関係にある人が引き継ぐことを言います。
夫や妻などの配偶者に加え、親子も相互に相続することができます。
相続は、貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産も含むため、毒親に借金があった場合は、その借金も子どもが背負うことになります。
借金などマイナスの財産を引き継ぎたくない場合は、相続の限定承認、相続放棄といった方法をとることで対処することができます。
親に借金がある場合は、弁護士に相談してみましょう。
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生活扶助義務と親子関係
生活扶助義務とは、直系の血族と兄弟姉妹は、お互いに扶養するという義務です(民法877条1項)。
具体的には、父母や祖父母、子や孫といった親族(直系血族)や兄弟姉妹が、自分だけでは生活できない場合に、自分の余力の範囲で経済的な援助をしなければならないという義務のことをいいます。
この義務は、毒親であっても消えることはありません。
同居したり、介護する、面倒をみるといったことは不要ですが、ヘルパー代を出すといった支援は必要になります。
なお、子どもが未成年の間は、親には親権といって子どもを養育・監護する義務があります。
子どものときに虐待されたり、ネグレクトにあったとしても、親の扶養義務がなくなるわけではありません。
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親子の絶縁をすることはできるか
残念ながら、法的に親子の縁を絶縁することはできません。
親子関係は死ぬまで続き、上記のような相続や扶養義務といった法的な効果が発生します。
実親と法的に絶縁する特別養子縁組
例外的に親子関係を断つことができるのが「特別養子縁組」という制度です。
特別養子縁組とは、事情により生みの親が子どもを育てることができない場合に、子どもが幼いうちに新しい家族の一員とする制度です。
この場合は、生みの親との関係を絶縁し、養い親との関係のみが残ります。
ただし、新しい家族のもとで子どもが成長することを目的としているため、親の年齢や子どもの年齢(15歳未満)など、様々な規制が設けられています。
毒親との親子関係を実質的に絶縁する方法
法的な親子の関係は絶縁できませんが、実質的に親子の縁を切ることができる方法があります。
これにより、親と物理的に距離をとって探し出されないようにしたり、連絡を絶ったり、接触を禁止することが可能になります。
ぜひ参考にしてみてください。
戸籍を分籍して絶縁する方法
戸籍の分籍とは、今の戸籍から自分の戸籍を抜いて、別に新しく戸籍を作ることをいいます。
戸籍を抜いたからと言って、法的な親子関係が切れるわけではありません。
しかし、戸籍を分籍すると、結婚や離婚などが親の戸籍に記載されないため、現在の生活が親にバレずに済みます。
また、本籍地を自由に決めたり、家庭裁判所の手続きを経れば親と違う苗字を名乗ることもできます。
戸籍の分籍ができるのは、18歳以上の人に限られます。
分籍したい場合は、分籍届・戸籍謄本・認印を揃えて、市区町村役場に提出します。
戸籍や住民票の閲覧制限をする方法
戸籍や住民票は、結婚していたり親子関係にあれば自由に閲覧することができます。
そのため、毒親から逃れて住民票を移しても、何もしなければ引越し先が毒親に知られてしまいます。
そこで、支援措置の一環として取られている、住民票や戸籍の閲覧を制限することをお勧めします。
毒親を理由とする閲覧制限は、従前虐待を受けていたなどの事情があると認められやすいとされています。
まずは、現住所や引越先の警察署と役所に相談し、支援措置申出書や本人確認資料を揃えて役所で申請をします。
閲覧制限は無期限ではなく1年間になるので、その後も閲覧制限を続ける場合は、再度申請して延長しましょう。
他人の養子になる方法
養子は、上記の特別養子縁組以外の「普通養子縁組」であれば、成人すれば結ぶことができます。
自分より年長者や尊属(叔父叔母など)を養子にすることはできませんが、養親が成人していて双方に養子縁組の意思があれば、配偶者の同意などを条件として養子縁組をすることができます。
養子になっても、実親と法的に絶縁できるわけではありませんが、養親を親として新たな生活を始めることで、気持ちが救われる人もいます。
親子の絶縁を公正証書にする方法
家族間のトラブルがあった方の中には、絶縁状を公正証書で作成する方がいます。
しかし、公正証書にしても絶縁状に法的効果はなく、相続や扶養義務は発生します。
むしろ、親子の縁を切るのであれば、「相続放棄」をすることで、毒親の遺産を受け取らないという意味で絶縁することができます。
相続放棄は、毒親が遺言を公正証書で作っていてもすることができます。
明らかに負債が多いわけではなく、プラスの遺産もあるという場合は、プラスの遺産の限度でマイナスの遺産も受け継ぐという「限定承認」という方法をとることもできます。
親子の絶縁を弁護士に相談するメリット
親が毒親であっても、法的に親子の縁を絶縁することはできません。
しかし、戸籍の閲覧制限や戸籍の分籍などをすることで、物理的に親と距離をとったり、相続放棄によって親の遺産を受け取らず関係を切ることは可能です。
とはいえ、毒親との関係で疲弊していると、何が正しいか分からない、何かアクションを起こして毒親を刺激することが怖いという方もいるかもしれません。
そのような場合は、まずは弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士であれば、法的手続きに精通しているので、最終的に何をしたいのか、親との関係をどうやって切りたいのかという要望に沿って、取るべき適切な対応のアドバイスを受けることができますし、書類のリーガルチェックもしてもらうことができます。
さらに、もし親と直接交渉をしなければいけない場面になっても、代理人として本人に代わって交渉してもらうことも可能です。
毒親と法的な縁が切れないからと言って、諦める必要はありません。
弁護士は、あなたの味方です。
これからの人生を安心して歩むためにも、まずはお気軽にご相談ください。
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