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貸金庫なら安全”はもう古い?盗難事件から考える防犯と法的リスクを解説

貸金庫窃盗イメージ

銀行の貸金庫といえば、「家よりも安全に財産を保管できる」と考える方が多いでしょう。

しかし、近年は内部関係者による不正やセキュリティの不備を突いた盗難事件も報告されており、貸金庫が「絶対安全」とは言い切れない現実があります。

もし貸金庫の中身が盗まれた場合、銀行はどこまで補償してくれるのでしょうか?

本記事では、貸金庫の盗難リスクや補償の限界入れるべきでないもの、そして盗難なのか家族トラブルなのか判断できないケースの対応についてもわかりやすく解説します。

貸金庫は本当に安全なのか?

銀行イメージ

銀行の貸金庫といえば「自宅に保管するよりも安全」というイメージがあります。

しかし、近年は銀行内部の管理不備や、関係者による不正が原因で貸金庫から盗難が発生する事件も報告されているのが現状です。

銀行の貸金庫に盗難リスクはあるのか

貸金庫は、契約者本人と銀行がそれぞれ鍵を持ち、両方を使わなければ開けられない仕組みが一般的です。

また、入退室の履歴が記録され、金庫室内の防犯カメラ定期的な点検なども行われています。

それでも、管理がずさんであれば内部の人間による不正行為が発生する可能性はゼロではありません。

実際、過去には長期間にわたり貸金庫の中身を盗み続けた銀行職員の事件も報じられ、顧客の信用を大きく揺るがす事件が発生しています。

内部不正やセキュリティ不備は起こり得る

過去に報道された貸金庫盗難事件では、支店の担当者が貸金庫管理を一任され、鍵の取り扱いや入室履歴の管理がずさんな状況だったため、不正行為が長期間発覚しませんでした。

顧客からの指摘でようやく被害が明るみに出た、という事件が実際に起きているのです。

こうした事件は、貸金庫の管理体制そのものが人の運用に依存している部分があることを示しています。

どれだけシステムや監視カメラが整備されていても、最終的に管理するのは人である以上、内部不正の可能性を完全に排除することは難しいのです。

貸金庫の盗難が起きた場合の補償は?

契約_イメージ

そもそも貸金庫は、銀行などの金融機関が提供するサービスであり、基本的には利用者が自由に保管物を選び、銀行はスペースとセキュリティを提供するという仕組みです。

では、いざ盗難事件が起きた場合、銀行はどこまでの責任を負うのでしょうか。

銀行はどこまで責任を負うのか

貸金庫サービスは、あくまで「保管スペースの提供」にとどまる契約であることが一般的です。

そのため、銀行側は貸金庫の中身については把握しておらず、契約書にも「保管物の内容や価値に対する責任は負わない」と明記されている場合が多いです。

ただし、銀行内部の管理不備や職員の不正が原因で盗難が発生した場合は、銀行に管理責任があると判断され、被害額に応じた補償が行われることもあります。

とはいえ、補償額や対応は契約内容や個々のケースによっても異なり、全額が返ってくる保証まではありません。

補償を受けられないケースに注意

具体的には、以下のようなケースで補償が難しくなることがあります。

  • 銀行の管理外で発生したトラブル
    家族や代理人が正規の手続きを経て貸金庫を利用し、その後に紛失・盗難が発覚しても、銀行側は責任を負わないことがほとんどです。
  • 保管物の価値が証明できない
    貸金庫内の現金や貴金属が盗まれたとしても、もともと何がどれだけ入っていたか銀行が把握していないため、証明できない限り補償対象になりにくいのが現実です。
  • 契約約款に「補償しない」と記載がある
    多くの金融機関では、契約書や利用規約に「保管物の損害は原則補償対象外」と定めています。利用者がその内容を理解せずに契約しているケースも少なくありません。

このように、貸金庫は安全性が高い反面、盗難時の補償は限定的であることが多いため、利用前に契約内容をしっかり確認することが大切です。

貸金庫に入れるべきでないものは?

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貸金庫は、相続や緊急時に必要となる書類や換金性の高い財産を入れてしまうと、逆にトラブルのもとになる場合があります。

ここでは特に注意すべきものを解説します。

遺言書や保険証書はトラブルのもとに

貸金庫に遺言書生命保険の証券を入れる方は少なくありませんが、相続や緊急時にすぐに取り出せないリスクがあり、トラブルのもとになりかねません。

例えば、遺言書は本来、相続を円滑に進めるためのもの。

しかし、遺言書自体が貸金庫にあると、内容確認のため「相続人全員の協力が必要」という堂々巡りになりかねません。

同じように、生命保険や医療保険の証券を貸金庫に入れてしまうと、入院や介護などで契約者本人が動けないときに保険請求ができなくなる恐れもあります。

必要なときにすぐ使えないのであれば、本来の役割を果たせなくなってしまうのです。

換金性の高い財産を預けるリスク

現金や貴金属、宝石など、換金性が高い財産を大量に貸金庫に入れるのもリスクがあります。

貸金庫内の保管物は銀行が把握していないため、万が一盗難にあったとしても「そもそも何が入っていたのか」を証明できないことから、補償の対象になりにくいのです。

また、換金性の高い財産は家族内でのトラブルの火種になりやすく、誰が持ち出したのか不明な場合は、盗難なのか相続人の持ち出しなのかの判断も難しくなります。

結果として、相続人同士の争いに発展するケースも少なくないのです。

盗難か家族による持ち出しか分からないときの対応

相続トラブル_イメージ

貸金庫の中身がなくなっていると気づいたとき、安易に誰かを疑ったり放置したりすると、相続人同士の関係悪化や補償を受けられないリスクにつながります。

以下を参考にし、正しい手順で冷静に対応することを心がけてください。

まずは状況を正確に把握することが大切

中身がなくなっていることに気づいたら、慌てて結論を出さず、以下のような順序で状況を確認することから始めましょう。

  1. 貸金庫の利用履歴を確認する
    銀行の貸金庫は、利用時の記録が残る仕組みが一般的です。いつ誰が貸金庫を開けたのか、銀行に照会することで履歴が分かる場合があります。
  2. 家族や相続人に確認する
    正当な理由で持ち出した可能性もあるため、まずは家族や相続人に事情を確認しましょう。一時的に持ち出しが必要だった場合、重要書類の確認が必要だった場合も考えられます。
  3. 銀行の責任範囲を把握する
    盗難が疑われる場合は、銀行側の管理不備なのか、家族間のトラブルなのかで対応が異なります。契約内容を再確認し、銀行がどの範囲まで補償するのか確認することも必要です。

弁護士に相談すべきケースとは

状況を整理しても、盗難か家族の無断持ち出しか判断がつかない場合や、相続人同士のトラブルに発展しそうな場合は、弁護士への相談が有効です。

  • 家族が「持ち出していない」と主張していて真相が分からない
  • 相続人の1人が無断で貸金庫を開けた疑いがあって返還を求めたいなど、
  • 銀行に管理責任があるのではないかと考えているが補償の可否が分からない

こうしたケースでは、弁護士が銀行との交渉や家族間の調整、必要に応じた手続きをサポートしてくれます。

なお、貸金庫の相続トラブルについては、「貸金庫に遺産があった?相続とトラブルの境界線とは」でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

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貸金庫はリスクを十分に理解した上で利用しよう

銀行の貸金庫は、自宅よりも安全な保管場所と考えられがちですが、内部不正やセキュリティの不備による盗難リスクがゼロとは言い切れません。

また、家族による無断の持ち出しや相続のトラブルなど、利用者が想定していない問題に発展することもあります。

もしも貸金庫の中身がなくなった場合や、盗難なのか家族の持ち出しか判断がつかない場合は、早い段階で弁護士に相談することが大切です。

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