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住宅ローンがあると離婚できないって本当?対応策を弁護士が解説

2022年1月25日

住宅ローン離婚

住宅ローンがあるからといって離婚できないわけではありません。

ただ、住宅ローンを残したまま離婚すると支払いが厳しくなるケースが多いのも事実です。

ここでは、離婚後の住宅ローンをどちらが支払うのか、財産分与はどうなるのかといった問題について解説していきます。

住宅ローンがあっても要件を満たせば離婚できる

まず、離婚はどのような状況で成立するのか、離婚に伴う財産分与はどうなるのかについて説明します。

離婚の要件

離婚は双方の合意があればできます。また、相手側の同意がなくても下記のどれかにあてはまれば裁判上の離婚ができます。

  • 配偶者に不貞な行為があったとき
    浮気など。
  • 配偶者から悪意で遺棄されたとき
    重病なのに放っておかれたなど
  • 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

当事者間で話し合いがまとまらないときは家庭裁判所に調停を申し立てます。

子どもがいる場合は親権者を誰にするか、養育費、慰謝料、財産分与についてもいっしょに話し合うことができます。

相手方が調停に応じないときは、裁判を提起することになります。

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住宅ローンがあっても財産分与の基本は同じ

住宅ローンの財産分与財産分与とは夫婦が婚姻関係を結んでいた間に築いた財産を離婚時に分け合うことです。
名義が夫婦どちらになっていても夫婦の共有財産となります。

財産分与の対象となる財産には退職金も含まれます。借金も対象となりますが、個人的に作った借金は共有財産には含まれません。

逆に、財産分与の対象外となる財産には次のものがあります。

  • 結婚前から所有していた財産(独身時代の貯金や嫁入り道具の家財など)
  • 親から相続した財産
  • 別居後に築いた財産

財産分与の割合

原則2分の1ですが、以下のように状況に応じて変わってきます。

  • 清算的財産分与
    婚姻中に夫婦が築いた財産を貢献度に応じて分配します。
  • 扶養的財産分与
    離婚後、夫婦のどちらかが生活に苦しむことが明らかな場合、扶養の意味で生活費を支払うことがあります。
  • 慰謝料的財産分与
    離婚原因を作った側が慰謝料の意味で支払う財産分与です。

住宅ローンが残っている家を財産分与するには

では、まだ完済していない住宅ローンがある場合、財産分与はどのようにすすめたらよいでしょう。

まず状況を把握する

まずは、法律的な取り決めがどのようになっているかを確認しましょう。具体的には下記のような内容です。

  • 住宅の名義人
  • 住宅ローンの名義人
  • 住宅ローンの連帯保証人
  • 住宅ローンの残債
  • 住宅の売却価格

場合によっては共有財産にあたるかどうか判断が難しい事もあるので、弁護士に相談するのがよいでしょう。

住宅購入時の売買契約書、住宅ローン契約書を見れば名義人・連帯保証人はわかりますが、住宅ローンの残債も含めて金融機関に相談するほうが確実かもしれません。

売却価格については不動産会社や不動産鑑定士に相談するのがよいでしょう。複数の専門家の意見を聞くことによって相場を把握しやすくなります。

住宅ローンの残債が売却価格より少ないとき(アンダーローン)

この場合は住宅を売却すれば住宅ローンを完済できますので、財産分与もスムーズです。売却代金から住宅ローンを返済して残ったお金が財産分与対象になります。

ただ、不動産は買主にとっても大きな買い物なので、決まるまで時間がかかることが多いでしょう。それまでは財産分与も確定しないので、その点がデメリットといえます。

夫か妻のどちらかが住み続けて住宅ローンを返済していく方法も考えられます。その場合は査定価格から住宅ローンの残債を引いた額が財産分与の対象となります。

住宅ローンの残債が売却価格を上回るとき(オーバーローン)

この場合は次のような解決方法が考えられますが、アンダーローンのときよりも難しい問題があります。

  • 売却する
  • 夫が住んで、夫が住宅ローンを払る
  • 妻が住んで、妻が住宅ローンを払う
  • 妻が住んで、夫が住宅ローンを払う

例として夫が住宅の名義人で住宅ローンの債務者でもあるケースで説明します。
妻が所有者であり債務者である場合は「夫」と「妻」を入れ替えてお読みください。

売却する

売却代金で住宅ローンを返済してもローンは残ってしまいます。

残債務が少しなら私財を投入して完済できますが、残債務が多額なときは自己破産する方法があります。

妻が住宅ローンの連帯保証人になっているときは妻も自己破産することになります。

夫が住んで、夫が住宅ローンを払う

夫が住宅の所有名義人であり、住宅ローンの債務者なので問題ありません。

ただ、妻が連帯保証人や連帯債務者である場合は妻が債務を免れるようにしておくほうが無難です。夫が滞納するようなことがあれば、妻のほうに一括返済の請求が行くからです。

他の保証人をたてるとか保証会社を利用するなどして、妻を連帯債務者や連帯保証人から外せるか金融機関に交渉してみましょう。

妻が住んで、妻が住宅ローンを払う

この場合の問題は妻に経済力があるかどうかです。住宅ローンの債務者を変更するには金融機関の同意が必要ですが、妻に安定した収入がないと難しいでしょう。

妻が住宅ローンの債務者になれないときは、夫を債務者としたまま、事実上は妻が払うという方法があります。

しかし、妻が返済ができなくなってきたら、金融機関は住宅ローンの債務者である夫に請求してきます。つまり、金融機関に対しては夫が全額の責任を負わなくてはならないという問題があります。

妻が住んで、夫が住宅ローンを払うケースでは、さまざまな問題がでてきますので、このあと詳しく説明します。

離婚後、妻が住んで夫が住宅ローンを払うケースの問題点

離婚後に妻が困る事養育費や慰謝料がわりに夫が住宅ローンを支払うというケースが考えられます。この場合、居住者と住宅ローン債務者が異なるので金融機関と話し合う必要があります。

このケースでの一番の問題点は妻が不安定な位置にたたされることです。夫が住宅ローンを滞納すると、妻は一括返済を要求されたり立ち退きを要求されることになる可能性があるからです。

妻が連帯債務者・連帯保証人になっている場合のリスク

妻が住宅ローンの連帯債務者や連帯保証人になっている場合は、夫が滞納してしまうと妻に返済の請求がきます。

夫が勝手に住宅を売却するかもしれない

住宅の所有権は夫にあるので、住宅ローンの返済が苦しくなってくると住宅を売却してしまうかもしれません。

相手方が事情を知らずに購入したら、妻は退去を要求される可能性が高いでしょう。

夫が再婚したらどうなる

夫としては、自分が住んでいない家のローンを返済していくのは、それだけでもハードルが高い務めです。

さらに夫が再婚したらどうでしょう。夫の家庭の生活費が増大し、元妻や子どものためにという気持ちが弱くなることも考えられます。

すると住宅ローンを滞納する可能性がでてきます。

再婚相手に所有権が移る?

夫が再婚したあと亡くなったらどうなるでしょう。

住宅ローンが残っている間は夫が所有権者です。そして夫の再婚相手が相続人になりますから、住宅の所有権も夫の再婚相手のものになります。

元妻は立ち退きを要求されることも考えられます。

住宅ローン完済後の名義変更を確約しておく

妻が住宅を取得するのなら、所有権の移転も明確にしておく必要があります。

住宅ローンを返済中は金融機関が名義変更を認めないので、住宅ローン完済後に名義変更することを確約しておきましょう。

贈与税がかかるかもしれない

離婚後の財産分与には税金は課されませんが、住宅ローン完済後、つまり何十年も経ってからの名義変更は譲渡とみなされて高額課税されるおそれがあります。

住宅ローンを抱えて離婚するときの対応策

上記のように、住宅ローンが残っている段階での離婚はさまざまな問題が発生するおそれがあります。

対応策としては合意書を作成して、一つひとつの問題点をクリアしておくことです。

住宅の所有権、住宅ローンの支払い方法など必要な項目をピックアップしなくてはならないので、専門家に作成してもらうのがよいでしょう。

財産分与の問題も含めて、離婚問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

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