新型コロナウイルス

ワクチンが信頼されない理由~日本のワクチン&ワクチン訴訟史~

注射器と瓶

新型コロナウイルスのパンデミックによって世界中に新型コロナウイルスが蔓延している状況で、コロナワクチンに対する日本人の反応はいまひとつのようです。

少なくとも1回目の接種を終えた人の割合はイギリスでは60%、アメリカでも50%を越えています。

なぜ日本ではワクチン接種がすすまないのでしょうか。

一つには、過去のワクチン問題でワクチンへの根強い不信感が生まれたこと、それによって行政側が弱気になってしまったことが挙げられます。

では日本の過去のワクチン問題とはどのようなことでしょうか。

相次ぐ集団訴訟で敗訴・日本のワクチン行政

裁判所日本のワクチンは先進諸国にくらべて10年、20年も遅れているといわれているのは何故でしょうか。

過去の日本のワクチン政策、その弊害・敗訴が原因で、行政がワクチンに対して及び腰になっており、積極的なワクチン開発・定期接種などを進めてこれなかったからです。

戦後日本のワクチンの歴史

戦後間もなくの日本は劣悪な衛生環境によって感染症での死亡が多発していました。

感染症の流行を抑えて人材を確保するため、1948年に予防接種法が制定され、12疾病のワクチン接種が義務化されました。

予防接種を受けないと罰が課せられるという厳しいものでした。

その結果1960年代以降、感染症の蔓延は抑えらましたが、種痘後脳炎や無菌性髄膜炎などの健康被害が社会問題となります。

種痘後脳炎

種痘後脳炎というのは、天然痘のワクチンを接種した後で脳炎を起こすという副反応です。

1970年に北海道小樽市の被害者が行政機関を相手に損害賠償請求訴訟を起こすと、それを期にマスコミでも大きく取り上げられ、種痘の問題が全国に知れ渡りました。

1972年種痘の集団接種は一部で中止され、希望者のみが接種を受けることになりました。

1970年代以降の集団訴訟

1970年の種痘後脳炎の集団訴訟、さらに、1989年から開始されたMMRワクチン(麻疹・風疹・ムンプスワクチン)接種による無菌性髄膜炎の集団訴訟。

各地で訴訟がおき、国の敗訴が相次ぎました。

1992年東京高裁で国に賠償を命じる判決

1992年東京高等裁判所において予防接種の副反応訴訟で国に賠償を命じる判決が出ました。

被害者救済の画期的判決として全国に報道され、国は上告を断念しました。

これを受けて、1994年には予防接種法が改正されて、予防接種は「義務」から「勧奨」接種へと緩和され、接種形態も「集団」から「個別」接種へに変わりました。

行政の及び腰・国民の不信感

続いて、2005年に起きた 日本脳炎ワクチン接種後の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)発症や2011年のHibワクチンと小児用肺炎球菌ワクチン同時接種後の死亡事案など相次ぐワクチンによる健康被害がでました。

次々とワクチン訴訟で敗訴して、国はワクチン政策をためらうようになってしまいました。

日本のワクチン政策が先進諸国に比べて大幅に遅れている原因はこれです。

結果として、ワクチンの危険な面ばかりが印象付けられ、国民のあいだにはワクチンへの不信感が植え付けられたといえます。

根強い不信感を残したワクチン訴訟

注射器を持った手日本人のワクチンへの根強い不信感の基になっているのは、大きく分けて2つあります。

  • ワクチン自体の副反応~子宮頸がんなど
  • ワクチンの集団接種時に他のウイルスに感染~B型肝炎など

では、それぞれ代表的な事例をみていきましょう。

子宮頸がんの後遺症(ワクチン自体の副反応)

日本では毎年子宮頸がんで亡くなる人が2700~3000人います。

子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)によって子宮頸がんになる過程の異常(異形成)は90%以上予防できますが、半面、副反応で苦しむ人たちもいます。

子宮頸がんワクチンの副反応としては、注射部の痛み・発赤・腫れ、疲労感、発熱、頭痛、知覚異常などがあります。

アナフィラキシー、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎による全身の疼痛、知覚障害、運動障害、記憶障害など、まれに重い副反応もあります。

2016年、そのような重い副反応に苦しむ人々が全国各地で集団訴訟を起こしました。

15~22歳の女性63人が国と製薬会社2社に総額約9億4500万円の損害賠償を請求する集団訴訟を東京、大阪、名古屋、福岡の4地裁におこしたのです。

63人のうちほとんどの女性は中学・高校時代に受けたワクチンによるものです。2021年現在も係争中です。

2016年時点までで、子宮頸がんワクチンを接種した人は340万人、そのうち副反応による重症者は1600件です。

その結果、現在では厚生労働省は「(子宮頸がんワクチンを)積極的にはお勧めしていません」としています。

これらの数値をどうとらえるかは、一人々々の判断にゆだねられます。

子宮頸がんのリスクと副反応のリスク、どちらが危険かをじっくり考えて判断するしかありません。

集団接種によるB型肝炎感染(集団接種時に注射器から感染)

集団予防接種時に同じ注射器が複数人に連続使用されたことが原因で、B型肝炎感染が広まりました。

日本国内のB型肝炎(ウイルス性肝炎)の持続感染者は110~140万人と推定されていますが、このうち、昭和23~63年までの間に受けた集団予防接種等で感染した人は最大40万人以上とされています。

その後昭和33年から注射針を、昭和63年から注射筒を集団接種時に取り替えるように指示が徹底されました。

平成元年、幼少期のワクチン集団接種時にB型肝炎ウイルスに持続感染した人々が、国にたいして集団訴訟を起こし、平成18年の最高裁判所判決で国の損害賠償責任が認められました。

全国の他の感染者に対しては救済措置はとられていませんでしたが、平成23年被害者と国との間で基本合意が成立。

平成24年には「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」が施行され裁判で和解が成立した人に給付金等が支給されることになりました。

また、20年の除斥期間(不法行為に対して損害賠償請求できる期間)が過ぎている被害者についても、平成27年の合意書によって死亡、肝がん、肝硬変(重度)、肝硬変(軽度)の人は給付金を受けることができるようになりました。

正しいワクチン情報が求められる

長い間人類を苦しめてきた天然痘は1990年代に全世界で撲滅されたことが確認されています。

多くの犠牲を強いられましたが、ワクチンのおかげで人類は天然痘の恐怖を克服できたのです。

他にも、ワクチンがさまざまな感染症を抑制してきたのは全世界的にあきらかな事実です。

100%副反応のないワクチンというものは存在しません。

日本ではワクチン接種は自分で決められることになっています。

ワクチンの有効性と副反応のリスクをきちんと考えて、接種するかどうかを決めなくてはなりません。

そのためには、ワクチンに関する正確な情報公開、ワクチンによる健康被害の救済制度の充実がより一層望まれます。

また、医師ら専門家による情報発信や受診者へのレクチャーも重要度が増していくでしょう。

※本内容は、令和3年6月時点での情報です

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