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ワクチン接種は拒否できる?~コロナワクチン拒否でパワハラ~

注射器を持つ手

2021年2月から65歳以上高齢者と医療従事者等で、新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりました。

このワクチン、感染拡大防止のためにはどうしても必要なものですが、一方で非常に短期間で開発された新ワクチンです。

コロナに対してどのくらい効果があるのか、副反応は大丈夫なのか。できたら接種したくないんだけど…と不安に思う人も多いはず。

新型コロナワクチンの接種は拒否できるのでしょうか?

新型コロナワクチンの接種は拒否できる

NOと書かれたメモを持つ人結論は、「拒否できる」です。

予防接種法の第9条にもとづき、新型コロナウイルスのワクチン(以下ワクチンまたはコロナワクチンといいます)を接種するかどうかは自己判断に任されています。

つまり、接種したくない人は拒否してよいのです。

ただし、ワクチン接種の目的は一人々々の感染を予防するだけではなく、ウイルスが社会全体に蔓延するのを防ぐためでもあります。

ワクチンの有効性と副反応のリスクをきちんと考えて、ワクチン接種を受けるかどうか判断しなくてはなりません。

では、日本で採用されたのはどのようなワクチンなのでしょうか。

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法律的な解説を先に読む

ファイザー社コロナワクチンは有効?副反応は?

ワクチンには弱毒化ワクチン(生ワクチン)、死活化ワクチン、DNA・RNAワクチンがあります。

新型コロナウイルスに用いられるのはRNAワクチンです。

DNA・RNAワクチン

ウイルスの一部のタンパク質をコードするDNA・RNAを合成したものです。

大量合成が可能なのがメリット。しかし細胞性免疫は誘導が難しく、2回接種が必要です。

これまで人間で実用化された例はなく、新型コロナウイルスが初めてです。

新型コロナウイルスに用いられるワクチンとしては、ファイザー社とモデルナ社がRNAワクチンの開発に成功し、すでに多くの国で接種が始まっています。

ワクチンは効くのか?

ファイザー社のコロナワクチンは95%発症を抑えるという結果が出ています。

さらに、すでに大規模接種を行っているアメリカ、イギリス、カタール、イスラエルでは変異種に対しても充分な効果を発揮していると報告されています。

日本では、国立感染研の発表によると、2回目接種後では86%の効果があったとされています。

これらの結果をまとめると、ファイザー社コロナワクチンは、まん延防止・感染予防に大きな効果があると言えるのではないでしょうか。

ワクチン接種の副反応は?

アナフィラキシーなど重篤な副反応は100万回に数回程度という結果が出ています。

アナフィラキシ―はワクチンによるアレルギー反応で、アレルギーの既往症がある人は注意が必要です。

重篤な状態になりますが、治療方法が確率されているのでほとんどの人が回復しています。

ワクチン接種後30分程度で反応が出ることが多いので、接種後は病院など治療の可能な場所で待機していれば問題ないでしょう。

軽度な副反応としては、ワクチン接種部位の痛み(8割)、倦怠感(6割)、筋関節痛(2~3割)、発熱(1~2割)などがあり、インフルエンザのワクチン接種後と似ています。

あとは、ワクチン接種から数年後、数十年後にどのような健康被害が生じるかですが、今のところまったくわかりません。

ワクチン接種を拒否したら解雇される?

オフィスで会議日本弁護士連合会がワクチン接種についての「人権・差別問題ホットライン」を設けたところ、5月14,15日の2日間で208件もの相談があったそうです。

高齢者・医療従事者等からの相談

相談者は学生も含めた医療関係者、介護施設関係者、施設を利用している高齢者などです。

主な相談内容は以下のとおりです。

  • ワクチン接種を拒否するなら実習は受けられないよと言われた(学生)
  • 職場でワクチン接種を強要された
  • ワクチン接種を拒否するなら退職してもらうと言われた
  • 職場でワクチンを拒める雰囲気がない
  • ワクチンを受けたかチェックリストが貼りだされた
  • ワクチン接種を受けないと、この施設には居られなくなると言われた(高齢者)

このように、企業や施設によるワクチン接種の強要、または過度な勧奨が問題となっています。

会社や施設にはワクチン接種を強制する権利はない

先にも述べたように、ワクチン接種は義務ではないので、企業や施設にはワクチン接種を強制する権利はありません。

とはいえ、接種を勧めるのは問題ありませんし、勤務時間中にワクチン接種に行ってもよい、副反応が出た場合は当日や翌日を特別休暇とするなどを決めている企業もあります。

むしろ、そのような対処は積極的に行った方が企業にも従業員にも良い結果となるのではないでしょうか。

企業の義務、パワハラ防止措置

「接種の有無で不利益な取扱いを受けることは適切でない」という加藤勝信内閣官房長官の発言にもあるように、企業は従業員に対して接種を強要したり、接種しないといづらくなるような状況を作ってはいけません。

企業には従業員が安心して働けるような環境を作る義務(安全配慮義務)、上司や同僚から嫌がらせを受けないように環境を整える義務(パワハラ防止措置)があります。

安全配慮義務

企業として従業員が安全に働けるようにワクチン接種を勧奨するのは問題ありませんが、ワクチン接種ができない人や注意が必要な人に対して、ワクチン接種をすすめると安全配慮義務違反になるおそれがあります。

ワクチン接種ができない人とは、以下に該当する人です。

・明らかに発熱している方(37.5℃以上)
・重い急性疾患にかかっている方
・ワクチンの成分に対し、アナフィラキシーなど重度の過敏症の既往歴のある方
・上記以外で、予防接種を受けることが不適当な状態にある方

厚生労働省厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A

ワクチン接種に注意が必要な人とは、以下に該当する人です。

・過去に免疫不全の診断を受けた人、近親者に先天性免疫不全症の方がいる方
・心臓、腎臓、肝臓、血液疾患や発育障害などの基礎疾患のある方
・過去に予防接種を受けて、接種後2日以内に発熱や全身性の発疹などのアレルギーが疑われる症状がでた方
・過去にけいれんを起こしたことがある方
・ワクチンの成分に対して、アレルギーが起こるおそれがある方
・抗凝固療法を受けている人、血小板減少症または凝固障害のある方

厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A

パワハラ防止措置

ワクチン接種を過度にすすめたり、ワクチン接種しないと居づらい雰囲気になるように仕向けたりはパワハラにあたる可能性があります。

大企業では2020年6月から、中小企業では2022年4月から、パワハラ防止法により企業は職場でのパワハラ防止措置をしなくてはならなくなりました。

厚生労働省があげるパワハラとは以下の6つになります。

  • 身体的・精神的な攻撃
  • 人間関係からの切り離し
  • 過大な要求
  • 過少な要求
  • 個の侵害

退職勧告は権利の濫用につながる

ワクチン接種を拒否したからといって解雇や懲戒処分にするのは、企業の権利の濫用で無効となる可能性が高いといえます。

労働契約法では「社会通念上相当と認められない場合」は解雇や懲戒処分を無効としています。

ワクチン接種は義務ではないのですから、それを強要されるのは「社会通念上相当と認められない場合」にあたると考えられます。

ワクチン拒否も含めた社会のありようを!

マスクをして散歩する人たちワクチン接種を受けるかどうかは一人々々が判断することです。

体質・体調によってはワクチン接種を受けられない人もいるし、新種のワクチンであるため、将来的な健康被害についてはわからない状態です。

人それぞれにワクチン接種を受けたくない理由があるはずなので、ワクチンを拒否したからといって差別したり、嫌がらせをしないようにしたいものです。

社会を守るためのワクチンではありますが、個人の選択を尊重する度量のある社会こそ居心地の良い社会ではないでしょうか。

※本内容は、令和3年6月時点での情報です。

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