相続・贈与

生前贈与には贈与税がかかる!相続税を節約するために知っておくべきこと

2020年4月27日

祖母から孫まで三世代家族

相続税を節約するために、生前贈与の活用を勧められることがよくあります。

しかし、生前贈与をすると贈与税がかかることがあります。

しかも、贈与税は相続税よりも税率が高いため、安易に生前贈与をするとかえって損をしてしまいます。

節税を考えるなら、贈与税と相続税の仕組みを知った上で上手に生前贈与を活用することが大切です。

そこで今回は、贈与税の負担を避けつつ相続税を節約するために知っておくべきことを解説します。

税率は贈与税の方が相続税より高い

贈与税も相続税も最高税率は55%で同じです。

しかし、課税価格や控除額が異なるため、実際に税額を計算すると贈与税の方が圧倒的に負担が重くなります。

まずは、贈与税と相続税の税率を見ておきましょう。

贈与税で財産の半分以上を失うことも

贈与税の税率(一般税率)は、以下のとおりです。

課税価格(基礎控除後) 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

納付すべき贈与税額は、次の計算式で求めます。

贈与税額=課税価格×税率-控除額

課税価格とは、「贈与額-基礎控除額」で計算した金額です。

基礎控除額は、年間110万円です。

仮に課税価格1億円の財産を贈与した場合、5,100万円もの贈与税がかかり、財産の半分以上を税金に取られてしまいます。

なお、上記の税率表は夫婦間や親子間(子が未成年者の場合)の贈与などに適用される「一般税率」をまとめたものです。

父母や祖父母などから子や孫(いずれも20歳以上)への贈与には、少し軽減された「特例税率」が適用されます。

相続税は基礎控除が大きい

次に、相続税の税率表をご紹介します。

法定相続分に基づく取得額 税率 控除額
1,000万円以下 10% 0円
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

納付すべき相続税額は、次の計算式で求めます。

相続税額=法定相続分に基づく取得額×税率-控除額

法定相続分に基づく取得額とは、遺産総額から基礎控除額を差し引いた残額について、各相続人の法定相続分に従って取得する価格のことです。

相続税には大きな基礎控除があり、次の計算式で求めます。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

法定相続人が1人だとすれば、3,600万円を遺産総額から差し引いて相続税を計算することになります。

基礎控除後の法定相続分に基づく取得額が1億円の場合、相続税額は2,300万円となり、贈与税よりも大幅に低いことがおわかりいただけるでしょう。

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贈与税と相続税の控除や特例を知っておこう

贈与税にも相続税にも税額を減免するためのさまざまな控除や特例が定められています。

以下に挙げる控除や特例のうち、節税対策に活用できるものについては後ほど詳しく内容をご説明するので、ここでは項目だけをご紹介します。

贈与税の減免が受けられる控除・特例

  • 親族間の生活費及び教育費の贈与
  • 夫婦間の居住用不動産の贈与
  • 教育資金の一括贈与
  • 住宅等取得資金の贈与
  • 結婚・子育て資金の一括贈与
  • 暦年贈与
  • 相続時精算課税制度

相続税の減免が受けられる控除・特例

  • 配偶者控除
  • 小規模宅地等の特例
  • 贈与税額控除
  • 相次相続控除
  • 未成年者控除
  • 障害者控除

相続税がかからない場合に贈与税を払うと損をする

それでは、相続税を節約する方法を見ていきましょう。

相続税の節約を考えるなら、まず生前贈与なしで全ての遺産を相続した場合に、どのくらいの相続税がかかるのかを試算することが大切です。

相続税がかからないにもかかわらず、生前贈与をして贈与税を払ってしまうと損をすることになります。

相続税がかからない場合は節税対策不要

先ほどご説明したとおり、相続税には大きな基礎控除があります。

そこでまずは、遺産総額が基礎控除の範囲内かどうかを確認しましょう。

例えば、相続人として妻と3人の子供の合計4人がいる場合、基礎控除額は5,400万円となります。

(計算式)3,000万円+600万円×4人=5,400万円

遺産総額が5,400万円以内であれば相続税はかからないため、節税対策を考える必要はありません。

生前贈与をする場合は「相続時精算課税」を選択する

節税目的ではなく、他の理由で生前贈与をしたいという場合もあるでしょう。

そんなときは、「相続時精算課税」という制度の適用を選択することで、贈与税を非課税とすることができます。

相続時精算課税制度とは、父母または祖父母(60歳以上)から子または孫(20歳以上)へ財産を贈与する場合に選択できるものです。

この制度の適用を選択すると、贈与税を支払う必要はありません。

贈与された財産については、贈与した人が亡くなったときに遺産に含めて相続税を計算することによって税金を精算します。

遺産総額が相続税の基礎控除の範囲内であれば、この制度を活用することによって贈与税も相続税も支払わなくてよいことになります。

相続税の控除・特例を適用することで贈与税も節約できる

遺産総額が相続税の基礎控除を超える場合でも、控除・特例を適用することで相続税を非課税にできます。

以下にご紹介する2つの制度は特に節税効果が高いので、積極的に活用することをおすすめします。

遺産を特定の相続人に渡したいとき、生前贈与をすれば贈与税がかかる場合でも遺贈をした上でこれらの制度を活用すれば、相続税も贈与税も節約できます。

配偶者控除を活用すれば相続税はほぼ非課税に

配偶者が相続した財産については、1億6,000万円または配偶者の法定相続分に相当する金額のどちらか多い方まで相続税はかかりません。

したがって、相続人として妻と子供がいる場合、妻に全ての遺産を相続させれば、ほとんどの場合で相続税が非課税となります。

ただし、妻が取得した遺産をあまり消費しないうちに亡くなってしまうと、次に子供が相続したときにかえって相続税が高くなる可能性があります。

配偶者が高齢の場合には、気をつけた方がいいでしょう。

小規模な宅地の相続税は大幅に減免される

被相続人が所有していた居住用や事業用の宅地を相続する場合は、宅地の価格を一定の面積について最大80%まで減額して評価できる「小規模宅地等の特例」を利用できる場合があります。

利用するためにはさまざまな条件がありますが、被相続人の持ち家で同居していた親族が自宅を相続するばいは利用できる可能性が高いです。

この制度を利用できれば、評価額1億円の土地でも2,000万円として評価できるので、相続税が非課税となる場合が多くなります。

生前贈与は目的を決めて行うことで贈与税も相続税も節約できる

以上にご紹介した相続税の控除・特例が利用できない場合や、何らかの理由で生前贈与をしたいときは、贈与税の控除・特例を活用することで贈与税と相続税を節約することも可能です。

贈与税の控除・特例は目的を限定したものが主なので、生前贈与をする場合は目的を決めて行うことが重要になります。

夫婦間の家の贈与で贈与税がかからない方法がある

まず、配偶者に持ち家を生前贈与した場合は、「夫婦間の居住用不動産の贈与の非課税」を利用できるかを検討しましょう。

夫婦間の居住用不動産の贈与の非課税とは、婚姻期間20年以上の夫婦の場合、夫婦間で居住用不動産や居住用不動産を取得するための資金の贈与があったとき利用できる控除制度です。

贈与額から最高で2,000万円まで、基礎控除と合わせれば2,110万円まで控除することができます。

長年連れ添った夫婦の間で、古い持ち家や小さな持ち家を生前贈与するときにこの制度を利用すれば贈与税が非課税となる可能性が高く、相続税の節約にもなります。

親子間の生前贈与で贈与税を非課税にする3つの制度

親子間での生前贈与には、目的は限定されますが大きな非課税制度が3種類あります。

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教育の目的であれば1,500万円まで非課税に

教育資金を一括で贈与する場合、一定の要件を満たせば子1人あたり最大1,500万円まで贈与税が非課税になります。

親子間だけでなく、祖父母から孫への贈与にも適用されますが、贈与を受ける側は30歳未満の人に限られます。

ただし、この制度は2021年3月31日までで終了する予定なのでご注意ください。

住宅取得の目的の場合は3,000万円まで非課税に

自宅の購入や新築、改築などの目的で資金を一括贈与する場合、一定の要件を満たせば子1人あたり最大3,000万円まで贈与税が非課税になります。

この制度も親子間だけでなく、祖父母から孫への贈与にも適用されますが、贈与を受ける側は20歳以上の人に限られます。

こちらの制度は、2021年12月31日までで終了する予定です。

結婚・子育ての目的なら1,000万円まで非課税に

結婚や子育てにかかる費用を一括贈与する場合、一定の要件を満たせば子1人あたり最大1,000万円まで贈与税が非課税になります。

この制度も親子間だけでなく、祖父母から孫への贈与にも適用されますが、贈与を受ける側は20歳以上50歳未満の人に限られます。

こちらの制度は、2021年3月31日までで終了する予定です。

暦年贈与に贈与税はかからないが3年分は相続税がかかる

特に贈与の目的がない場合は、年間110万円の基礎控除の範囲内で毎年少しずつ財産を贈与することで、贈与税を非課税にすることができます。

贈与税がかからない範囲内で毎年贈与を積み重ねる節税方法のことを「暦年贈与」と呼びます。

この方法でも遺産を少しずつ減らすことができるので、相続税対策にもなります。

ただし、被相続人が亡くなる前3年間の贈与は相続税の対象となるため、長年にわたって計画的に贈与していくことが大切です。

高齢になってから急に暦年贈与を始めても、節税効果は薄い場合が多いので注意が必要です。

贈与税を払わないと相続税の申告の際にバレる可能性が高い

生前贈与をするときには、ここまでにご紹介した制度を利用しなければ贈与税がかかる場合が多いのですが、なかには贈与税を支払っていない人もいるかもしれません。

たしかに、贈与税を払わなくてもすぐには税務署にバレないケースもあるようです。

しかし、生前贈与をしたときにバレなくても、後に相続税を申告したときには税務署が注意深く調査するため、贈与税を払っていなければバレる可能性が高いです。

相続税の申告が不要な場合でも、バレる可能性は少なからずあるので注意が必要です。

万が一、贈与税を払っていないことが後でバレると高額の加算税まで課せられてしまい、節税対策が無駄になるばかりか、かえって税金の負担が増えてしまいます。

生前贈与で贈与税がかかる場合は、必ず申告をして納税するようにしましょう。

相続税と贈与税のどちらが有利か迷ったら弁護士に相談を

相続と生前贈与のどちらが節税になるのかを考えるときには、税金に関する知識だけでなく、相続と贈与に関する法律の知識も必要になります。

場合によっては、相続トラブルを避けるために生前贈与を考えている方もいらっしゃるでしょう。その場合も節税を考えることは大切です。

節税のために相続税と贈与税のどちらが有利なのかで迷ったら、一度、弁護士に相談してみることをおすすめします。

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