慰謝料請求されたとき、どのように対処すればいいのか分からない方も多いのではないでしょうか。
離婚や不倫・浮気、交通事故、犯罪など、慰謝料請求される原因にはさまざまなものがあります。
自分が作った原因によって慰謝料請求されたら、適切に対処しなければ裁判に発展したりして問題が大きくなってしまうことがあります。
かといって、相手から請求されるままに支払いを約束してしまうと、本来の金額を超える慰謝料の負担を余儀なくされる恐れもあります。
慰謝料請求に適切に対応するためには、法律を正しく知っておく必要があります。
とはいえ、知っておくべき知識は幅広く、専門的な知識が必要になる場合もあります。
そこでこの記事では、慰謝料請求をされても支払わなくていい場合や、支払わなくてはならない場合でも減額する方法などを、初心者に向けて分かりやすく解説していきます。
慰謝料請求をされてお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
まずは確認を!慰謝料請求されても支払わなくていい場合もある
何も悪いことをした事実がなく、相手の勘違いで慰謝料請求をされた場合は当然、慰謝料を支払う義務はありません。
しかし、心当たりがある場合でも、事情によっては慰謝料を支払わなくていい場合があります。
そのため、慰謝料請求をされたら、まずは本当に自分に慰謝料の支払い義務があるのかどうかを確認することが大切です。
問題となる事実があっても慰謝料の支払い義務がない場合としては、以下のようなものがあります。
消滅時効が完成している場合
慰謝料の支払い義務が発生するのは、不法行為によって相手に損害を与えた場合です。
不法行為に基づく民事上の慰謝料支払い義務は、3年で消滅時効が完成します。
消滅時効が完成した場合は、その時効を援用することによって慰謝料を支払う義務が消滅します。
ただし、時効の進行が始まるタイミングや、時効が中断するケースなど注意すべき点がいくつかあります。
慰謝料の消滅時効については、こちらの記事で解説しているので参考にしてください。
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離婚原因が相手にある場合
離婚をすると、多くのケースで慰謝料の問題が発生します。
離婚の慰謝料について、どんなケースでも夫が妻に支払わなければならないと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。
妻側に離婚に至った原因がある場合は、夫が慰謝料を支払う義務はありません。
妻の浮気や不倫、浪費、家事や育児の放棄などの事情があった場合は、妻が離婚の原因を作ったことになります。
このようなケースではむしろ、夫から妻に対して慰謝料請求をすることができます。
浮気・不倫は慰謝料の支払い義務がないケースも多い
客観的事実として浮気や不倫をしたことがあっても、以下のような事情がある場合には慰謝料を支払う義務はありません。
肉体関係がなかった場合
浮気や不倫によって慰謝料の支払い義務が発生するのは、原則として不貞行為があったときに限られます。
不貞行為とは
結婚している人がパートナー以外の異性と自由意思によって肉体関係を持つことをいいます。
婚約中の人や内縁のパートナーがいる人も含まれます。
つまり、2人で会うなどの親しい間柄であっても、肉体関係がなければ不貞行為には該当せず、慰謝料を支払う義務はありません。
ただし、最近では必ずしも肉体関係がなくても、肉体関係があることを推測させるような事情があり、そのために相手の結婚生活の平穏を侵害するようなケースで慰謝料の支払いを命じた判例も出ました。
そのため、肉体関係がなければ絶対に慰謝料の支払い義務は発生しないといいきれなくなっています。
それでも、基本的には肉体関係があったかどうかが慰謝料支払い義務の判断基準とされていることには変わりありません。
相手が結婚していることを知らなかった場合
相手に結婚相手がいることを知らずに肉体関係を持った場合は、故意の不貞行為ではないということで不法行為は成立しません。
したがって、この場合も慰謝料を支払う義務はありません。
ただし、相手に結婚相手がいることを知らなくても、通常であれば知ることができたような事情があった場合は過失による不法行為が成立します。
その場合は慰謝料の支払い義務が発生します。
相手の夫婦関係が破綻していた場合
肉体関係を持った時点で既に相手の夫婦関係が破綻していた場合は、不貞行為には該当してもそれによって相手の配偶者に発生する損害はないと考えられます。
したがって、この場合は慰謝料を支払う義務はありません。
実際には夫婦関係が破綻していなかった場合でも、相手から「もう配偶者との関係は終わっている」「近いうちに離婚する」などと何度も言われていた場合は、故意の不貞行為ではないために慰謝料の支払い義務が発生しないと考えることもできます。
交通事故で相手に全面的過失がある場合
交通事故で相手に損害を与えた場合も、不法行為による慰謝料支払い義務が発生します。
しかし、相手に全面的過失があってこちらが無過失の事故の場合は、当然、こちらに慰謝料の支払い義務は発生しません。
ただし、交通事故でどちらか一方に全面的過失責任が課されるケースは多くはありません。
追突事故など、ごく限られたケースのみです。
多くのケースでは被害者側にも多少の過失責任が課されます。
交通事故による慰謝料の支払い義務については、こちらの支払い義務と相手の支払い義務との相殺を主張することはできない点に注意が必要です。
お互いに合意して相殺するのは構いませんが、原則としてはお互いが過失割合に応じて慰謝料をそれぞれ支払い合う必要があります。
犯罪をおかしてしまった場合は必ず慰謝料を支払おう
刑事上の犯罪をおかしてしまった場合は、相手に与えた精神的損害について、民事上でも慰謝料の支払い義務が発生します。
この点、刑事の裁判で判決を受ける前であれば慰謝料を支払うために刑罰が軽くなる可能性がありますが、判決を受けた後は刑罰に影響しないからといって慰謝料を支払う必要はないと考える方もいます。
しかし、不法行為によって相手に精神的損害を与えた以上、判決を受けた後も慰謝料の支払い義務が消滅することはありません。
支払わずにいると民事でも裁判を起こされる可能性があるので、必ず慰謝料を支払うべきです。
慰謝料を支払ったら求償権を行使できる
自分1人ではなく、誰かと共に及んだ行為が原因で慰謝料を支払った場合は、一緒に行為をした人に対して求償権を行使することができます。
求償権とは
他人の債務を代わりに支払った場合に、支払った金額を本来の債務者に請求できる権利のことです。
不倫や浮気は2人の行為によって相手の配偶者に精神的損害を与えるものなので、自分が慰謝料を支払った場合は相手に求償権を行使することができます。
ただし、相手に全額を請求することはできません。
請求できるのは相手の負担割合に応じた金額だけです。
通常は負担割合は半々と考えられるので、半額を請求することになります。
また、求償権があることを理由に相手の配偶者の慰謝料請求を拒否することはできない点に注意が必要です。
自分も不倫や浮気の相手も、相手の配偶者に対しては全額の慰謝料支払い義務を負っています。
どちらかが全額を支払って初めて、相手に半額を請求できるのです。
自己破産をすれば慰謝料を支払わずにすむか
ローンの支払いなど他の債務を抱えている方が高額の慰謝料を請求された場合は、支払えないために自己破産を検討することもあるでしょう。
ただ、自己破産することによって慰謝料を支払わずにすむかどうかについては注意が必要です。
自己破産をすれば、基本的には全ての債務が免除されます。
ただし、場合によっては免除されない債務もあります。
免除されない債務としては、税金など公益性の高い支払い義務や、浪費によって負った借金の返済義務、一定の損害賠償義務などがあります。
損害賠償義務についても多くの場合は免除されますが、悪質な違法行為による損害賠償義務は免除されません。
したがって、自己破産をしても故意の犯罪行為による慰謝料の支払い義務は免除されません。
浮気や不倫の場合も、単なる出来心を超えて相手の夫婦関係を破綻させることを目的としていたような場合は悪質性が高く、免除されない可能性があります。
慰謝料請求されたら証拠の提示を相手に求めよう
不法行為を行ったことが事実であって、ここまでにご説明したような事情がない場合は、慰謝料を支払う義務があります。
しかし、義務があるからといってもただちに相手の請求を認めて慰謝料を支払わなければならないわけではありません。
慰謝料請求の民事裁判では、慰謝料を請求する側が相手の不法行為を証明しなければなりません。
したがって、「証拠を提示しなければ慰謝料は支払わない」と言っておけば、相手が証拠をつかんでいない場合は慰謝料の支払い義務を免れることも可能です。
どこまで証拠の提示を求めるかはケースバイケース
こちらの不法行為によって相手に損害を与えたのであれば、本来は適切な金額の慰謝料を支払うべきです。
たしかに、証拠がないことを理由に慰謝料の支払いを拒否できるケースも少なくありません。
現在も浮気や不倫を継続している場合なら証拠を押さえられる可能性は常にありますが、過去の不法行為について相手が証拠を押さえることは難しい場合も多いのです。
しかし、もし相手が証拠をつかんだ場合には円満な話し合いは難しくなりますし、相手は慰謝料の請求額を増額してくることもあります。
そう考えると、相手が十分な証拠を持っていなくてもこちらが非を認めて謝罪し、誠意をもって話し合った方が慰謝料を減額してくれることもありますし、結果として円満に問題を解決できる可能性も高くなります。
どこまで証拠の提示を求めて慰謝料の支払いを拒否するかは、相手の対応を見ながらケースバイケースで慎重に判断する必要があります。
判断に迷ったら弁護士に相談を
慰謝料を支払う義務があるかどうかについては微妙な判断が必要になるケースも多くあります。
相手にどこまで証拠の提示を求めるかについても、戦略的な考え方が必要になるので難しい面があります。
判断に迷ったら、早めに弁護士に相談してみることをおすすめします。
無料相談でポイントを教えてもらうだけでも役に立つことがあるはずです。
弁護士の無料相談については、こちらの記事で解説していますので参考にしてください。
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どうしても慰謝料を支払う必要がある場合に減額する方法
慰謝料を支払う必要がある場合でも、できることなら請求額よりも支払い額を減額したいところです。
ここでは、支払う慰謝料を減額する方法を解説します。
慰謝料の相場を知っておく
自分がしてしまった不法行為による慰謝料の相場を知っておくことは大切です。
相手が相場よりも高額の慰謝料請求をしてくることはよくあります。
相場を知らず、怒りの感情に任せて高額を請求してくることもありますし、その後の交渉を見通して戦略的に高い金額を提示してくることもあります。
いずれにせよ、こちらに相場の知識がなければ本来支払うべき金額よりも高額の慰謝料を支払わなければならなくなる可能性があります。
相場を知っておくことにより、少なくとも相場の金額にまでは減額することができます。
具体的に慰謝料の相場がどれくらいかというと、不法行為の種類や程度によって慰謝料額が異なるため、一概にいうことはできません。
目安として、浮気や不倫の慰謝料は200万円前後になるケースが多いです。
ただし、事情に応じておおむね100~500万円程度の間で幅があります。
交通事故の慰謝料については、相手の怪我の種類や治療期間、後遺障害が残った場合はその等級に応じて、明確な基準によって算定されます。
計算方法は少し複雑なので、弁護士に相談することをおすすめします。
犯罪をおかしてしまった場合の慰謝料については、相手の感情次第という側面があるので相場を探ることは難しいです。
こちらも、経験豊富な弁護士に相談した方がいいでしょう。
こちらの記事では優秀な弁護士を探す方法を解説しているので、参考にしてください。
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減額できる事情を主張する
慰謝料の支払い義務を免れない場合でも、減額できる事情があるケースは少なくありません。
浮気や不倫の場合であれば、相手に結婚相手がいることを知らなかった場合でも、通常なら知ることができたような場合は過失の不法行為が成立して慰謝料の支払い義務が発生することを先にご説明しました。
ただ、この場合は相手に結婚相手がいることを明確に知った上で故意に不貞行為に及んだ場合よりは責任が軽いはずです。
つまり、過失による不法行為の場合は、故意による不法行為の場合よりも慰謝料の減額を主張することができます。
このことは、相手の夫婦関係が破綻していると軽信して不法行為に及んだ場合にも同様に「故意ではなく過失だ」と主張できます。
交通事故の場合は、過失割合に応じて慰謝料が減額されます。
事故の類型に応じてお互いの過失割合が判断されますが、詳細は弁護士に相談することをおすすめします。
犯罪による慰謝料の場合も、相手の落ち度によって減額を主張できる場合があります。
ただし、加害者から下手に相手の落ち度を指摘すると相手の感情をさらに害して冷静な話し合いができなくなる恐れもあります。
そのような場合は弁護士に依頼したほうがいいでしょう。
支払い能力がない場合
適切な金額の慰謝料を支払う余裕がないために減額したい場合もあるでしょう。
しかし、残念ながら加害者に支払い能力がないことは慰謝料を減額する理由にはなりません。
本当に支払い能力がない場合は、誠意をもって話し合うことによって支払い可能な金額で示談するしかないでしょう。
話し合いが適切にできれば、分割で100万円を支払うよりも一括で50万円を支払う内容の方が示談が成立しやすい場合も多くあります。
話し合いがまとまったら示談書を作成しよう
慰謝料を減額してもらう話し合いがまとまったら、必ず示談書を作成しましょう。
口約束ですませてしまうと、後になって相手から「こんな金額では足りない」と再度請求されることもあります。
このようなトラブルを避けるためには、話し合いで合意した内容を書面にして証拠を残しておくことが必要です。
示談書には合意した慰謝料の金額と支払期日、支払い方法のほか、その金額の支払いをもって問題は解決したこととし、他に何の義務もないことを記載することが重要です。
そしてお互いが署名・押印した示談書を2通作成し、1通ずつを保管するようにしましょう。
誠意をもって話し合うのがベスト
相手と話し合う際には、減額できる事情など主張できることはきちんと主張すべきですが、結局は誠意をもって話し合うのがベストです。
慰謝料とは、被害者の精神的損害を慰めるためのお金です。
慰謝料請求をしてきた相手も人間です。
こちらの不法行為については非を認めて謝罪し、誠意をもって対応すれば相手の精神状態もやわらぎ、ある程度減額してくれることもよくあります。
ただし、話し合う際には注意すべきことがたくさんあります。
あくまでも冷静さを保ちつつ、謝罪すべきことは真摯に謝罪し、主張すべきことは的確に主張しなければなりません。
相手が感情的になっていることも多いため、話し合いを適切に進めることは難しい場合もあります。
そんなときは、弁護士に示談交渉を依頼するのもいいでしょう。
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弁護士に依頼すれば、加害者に代わって相手と話し合いをしてもらえるので、精神的負担がかなり軽くなります。
主張すべきことは冷静に主張してもらえますし、慰謝料を支払う必要がないと判断される場合は明確に支払いを拒絶してもらえます。
弁護士に相談料を支払うのも厳しい場合もあると思いますが、ひとりで悩むよりは無料相談を活用して弁護士の力を借りた方が良いでしょう。
実際に依頼するときの弁護士費用については、こちらの記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
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慰謝料請求をされたら弁護士に相談を
これまで解説してきたとおり、慰謝料請求をされても支払わなくていい場合もあります。
支払い義務がある場合でも、証拠の提示を求めて支払いを拒否することもできますし、減額の交渉をすることもできます。
自分で適切に対処することができれば、弁護士なしで問題を解決することも可能です。
しかし、慰謝料請求をされただけで大きな精神的負担を受けてしまう人も多いでしょうし、その上で被害者に適切に対応することはなかなか難しいかもしれません。
相手からの慰謝料請求を無視して放置しておくと裁判を起こされたりして問題が大きくなってしまう恐れがあります。
慰謝料請求をされたら、早めに弁護士に相談してみることをおすすめします。
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