「初回お試し500円!」、「1回目実質90%OFF」、「解約自由」、このような広告を目にしたことはありませんか。
このような言葉を見ると「簡単に解約できる」、「最初はお試しなんだ」と思い込んでしまうのも無理はありません。
しかし、実際は定期購入の契約を結ばされてしまうというトラブルが頻発しています。
国民生活センターによると、2016年には約6,000件だった相談件数が2020年には10倍近い55,000件を超えました。
なぜ定期購入を解約するときにトラブルになりやすいのか、さらにトラブルに対処するにはどうしたらよいかを解説していきます。
サブスクとの違いは
サブスクは英語のsubscription(サブスクリプション)から発生した言葉で、もともとの意味は寄付、会費など定期的な支払をすること。主に雑誌の定期購読について使用された言葉です。
定期購入は商品を購入することで、サブスクは商品やサービスを使う権利を購入することといえます。
定期購入解約時のトラブル事例
定期購入のトラブル事例で多いのは健康食品、化粧品、飲料水などです。
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に蓄積されている具体的な相談事例をいくつかみてみましょう。
電話がつながらない、メールでは解約できないと言われた
試用品を使用したところ、チクチクとした刺激を感じたので解約することにしました。
解約は電話でのみ可能と記載されていましたが、しかし、何度かけてもつながりません。
テープ音で「折り返し電話をする」旨が流れますが、電話はかかってきませんでした。
何度も電話したあげく、メールで「電話がつながらないことと解約したいこと」を伝えましたが、「メールでは解約できない」と言われました。
お試しのつもりだったのに「定期購入が条件」だった
「お試し分を飲んでも効果がないので解約したい」と事業者に伝えたところ「定期購入なので解約はできない」との返事でした。
でも定期購入だとはわからなかったのですから、解約できないでしょうか。代金は払いたくありません。
解約には通常価格で支払う条件が付いていた
その後2回目の商品が届いたので事業者に連絡すると「4回継続の定期コースになっている」と言われました。
解約するには1回分の通常価格を2回分支払わなくてはならず、既に支払った500円を引いた16,500円を支払う必要があるとのこと。
定期購入だと知らなかったのに、支払う必要があるのでしょうか。
トラブル事例からみる定期購入の問題点
上記の相談事例からわかる問題点は、次の3点です。
- 電話がつながらない
- 定期購入ということがわかりづらい
- 解約の条件がわかりづらい
解約の電話がつながらない
電話がつながらない問題ですが、相談件数全体の20%を占める大きなトラブルです。
電話がつながらないのでメールを送ると「電話でのみ受け付けている」として対応しないケースです。
また、「発送の7日間前までに」とか「毎月20日から25日の間」など解約できる期間を限定している場合が多いようです。
電話をかけた発信記録やメールは保管しておきましょう。
後々証拠として利用できる可能性があります。
定期購入ということがわかりづらい
通販の定期購入サイトでは定期購入だということがわかりにくいという問題があります。
「初回お試し500円」などの言葉の近くに定期購入であることを記載していないからです。
離れたところに小さな文字で「〇〇回の定期購入となります」とか「解約するには正規料金を支払っていただきます」などと書かれているケースが多いです。
何度もスクロールしないと契約内容の記載に行きつけない縦に長い構成になっていて、途中に何度も「いますぐ購入」といったボタンが設置されています。
「いますぐ購入」ボタンを押すと注文ページに移動するので、契約内容を見落としてしまいます。
また、初回の金額のみ表示されていて、支払総額が表示されていないホームページもあります。
解約の条件がわかりづらい(クーリングオフは適用外)
通販にはクーリングオフが適用されません。
商品到着後8日以内であれば解約できますが、事業者が特約を付けた場合はそれに従わなくてはなりません。
つまり、「閉店セールにつきキャンセルできません」とか「返品不可」などと書かれていたら返品することはできません。
定期購入の場合は「定期購入期間中は解約できません」などと書かれていることがあります。
他にも、「解約する場合は正規の料金が必要」などもあります。
定期購入を解約しにくくするための条件を付けているのです。
上記の契約内容がわかりにくいのと同様に、離れた位置に小さく記載されているので、見落としてしまいます。
このようなホームページのわかりにくさの問題は、法改正によって好転するきざしがあります。
法改正によって定期購入の問題は解決に向かう
ネット通販における詐欺的な定期購入商法への対応として、改正特定商取引法が2017年12月に施行されました。
改正法によれば、顧客の意に反して購入契約を結ばせようとする行為は禁止されています。
また、契約内容のすべて及び支払総額を最終確認画面に明示することを、事業者に対して義務付けました。
誇大広告の禁止と誤認させるような表示を禁止し、違反した場合は100万円以下の罰金に処せられます。
消費者庁のガイドでは具体的な画面を例示してわかりやすく指導しています。
これによって悪質なサイトは減っていくでしょう。
さらに、2019年消費者契約法の改正により第10条に以下の追加がありました。
消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項…(中略)…消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
つまり、消費者が承諾していないのに定期購入が義務付けられるような契約条項は無効になるということです。
定期購入で予定外の支払いをしないために
法律は改正されましたが、まだまだ悪質な通販サイトは残っています。
自分の身を守るには自分で対処するのが一番の近道かも知れません。
注文内容、最終確認画面をよく読む
「お試し価格500円」とか「初回90%OFF」といった謳い文句があれば、まず定期購入かもしれないと疑ってみましょう。
長いサイトを最後まで見るのは大変ですが、小さな表示でも見逃さないように確認します。
未成年なら取り消し可能
成人年齢が18歳に引き下げられたこともあり、10歳代の若者を狙った定期購入サイトも増えています。
定期購入してしまった本人が未成年で親(親権者、法定代理人)の同意を得ていないなら、契約を取り消すことができます。
本人または法定代理人が事業者に連絡します。
その際、証拠として保存できるように書面を「特定記録郵便」または「簡易書留」で郵送するのがおすすめです。
未成年者取消が成立するには、「成年であるといって相手を騙していない」など細かい要件がありますので、迷ったときは消費生活センターなど専門家に相談してみましょう。
クレジットカードの抗弁手続きをしておく
料金支払いにクレジットカードを使ったときは、クレジットカードの支払を止めるという方法もあります。
カード会社の審査で要件を満たせば支払をせずにすみます。
ただ、通販サイトに「定期購入期間中は解約できません」などと明記されていると、難しいかもしれません。
手続きは簡単で、以下のホームページで確認できます。
定期購入でトラブルになったときは専門家に相談
以上、定期購入の問題点について解説しました。
トラブルの一番の原因は購入者が「定期購入」だとわかっていないことです。
わかりにくいように工夫された通販サイトで契約内容を見落としてしまうからです。
もう一つの原因は解約の電話がつながらないことです。
これは発信記録やメールを証拠として保存しておきましょう。
定期購入のトラブルは契約時に予想していた金額を遥かに超えて支払をしなくてはならないなど、想定外のトラブルに発展することがあります。
金額が大きいときは弁護士に、少額の場合は最寄りの消費生活センターに相談するのがよいでしょう。
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