生理休暇とは、女性が生理で就業困難なときに取れる休暇です。
「生理なので休ませてほしい」と言われたら、繁忙期でも許可せざるをえません。
本当に生理が辛くて休むのなら当然の権利ですが、生理休暇をとって遊んでいるということも考えられます。
事情を確認したくても生理は個人のプライバシーであり、追及すればセクハラ・パワハラと思われるかもしれません。
忙しい時期に生理を理由に急に休まれるのは、会社としては痛手です。
さらに、特定の人だけが生理休暇でしょっちゅう休んでいたら、女性従業員の間でも不公平感が充満してしまいます。
できれば職場の雰囲気を悪くせず、会社の損失にもならないよう、正当な取得と不正取得の見分けがつきにくい生理休暇をきちんと管理していくにはどうしたらよいでしょう。
生理休暇を請求されたら法律上許可しなくてはならない
生理休暇は法律が定める働く女性の権利です。請求されたら認めなくてはなりません。
ただし、労働基準法では「就業が著しく困難」である場合といっています。ただ生理であるというだけでは生理休暇を取得する理由にはなりません。
もし、生理休暇を請求されて付与しなかったら、労働基準法違反の犯罪となり、30万円以下の罰金刑に処せられる可能性があります。
労働基準法
(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)
第68条 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。第120条 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
一 (中略~)第68条(~中略~)の規定に違反した者
対象者は「就業が著しく困難」であることを証明する必要はありません。医師の診断書も不要です。
会社として確認しなくてはならないときは、同僚の証言程度でOKとしています。
雇用形態を問わず取得できる
正規雇用者だけではなく、パートタイマーやアルバイト従業員でも区別なく生理休暇を取得できます。
当日でも請求できる
生理はその性質上前もってわかるものではないので、当日電話で請求するのでも充分です。
急に休まれて会社としては影響が大きいかもしれませんが、受け入れなくてはなりません。
時間単位・半日単位でも取得できる
かならずしも丸一日休みにする必要はありません。時間単位でも半日単位でも生理休暇を取得できます。
対象の女性から請求される範囲で付与すればよいという判例が出ています。
日数制限はできない
生理の症状はそれぞれなので、日数を制限することはできません。
2日以上でも請求されれば付与する必要があります。
生理休暇が多いと有給休暇の付与に影響も
生理休暇の日数は制限されないからといって、取得しすぎると有給休暇の付与に影響があります。
会社が有給休暇を付与する際に
労働日の8割を出勤していること
という基準を考慮しなくてはなりません。
会社は生理休暇を出勤扱いとする義務はないので「労働日の8割」をクリアできないことがあるのです。
生理休暇がかかえる問題点
女性を守るための生理休暇ですが、現状では働く女性の身体のためという本来の目的が見失われているようです。
経営者や管理職側から正しい生理休暇の取得を奨励すれば、職場の雰囲気は向上し仕事効率もあがるはずです。
取得率が低い
生理休暇の制度があるのに、取得率が低いのは何故でしょうか。以下の理由が考えらます。
- 男性のいる職場では請求しにくい
- そもそも生理休暇があることを知らない女性が多い
- 生理休暇を取る女性がいなくて、職場内に取得しない不文律ができあがっている
このような理由から、生理の症状が重い人にとってはありがたい制度であるはずなのにもかかわらず、本当に必要なときに生理休暇が取れないという問題が発生しています。
同僚女性からの不信感
特定の従業員による不自然な生理休暇の請求が続くと、他の女性たちが不満に思うようになります。
生理の状態は他人があれこれ詮索できないものですが、不正に生理休暇を取得する女性が増えると、女性従業員全体に対する信用が落ちてしまいます。
かといって、職場の女性全体が著しく就業困難ではないのに休む習慣ができたら、会社の経営は成り立ちません。
生理休暇の不正取得をふせぐために法律上できること
冒頭で述べた方法を組み合わせて下記を実行することによって、より高い効果が期待できます。
- 就業規則で生理休暇を無給とする
- 生理休暇を欠勤扱いにする
- 不正取得は懲戒処分もありとする
詳しく説明していきましょう。
就業規則で生理休暇を無給とする
生理休暇の日数は制限できませんが、有給か無給かは労使間の取り決めなので、就業規則で定められます。
生理休暇の不正取得が目立つ場合は、就業規則を改定して「生理休暇は無給」と定める方法も効果的です。
しかし、まったく無給としてしまうと従業員からの反発もあるでしょう。
1日目は有給として2日目以降を無給とすることもできます。人事関連の間違った取扱いを防ぐためにも、就業規則に明記するのはおすすめです。
ただ、従業員に不利益になる変更なので、一定の要件を満たす必要があります。
生理休暇を欠勤扱いとする
精勤・皆勤手当を導入し、生理休暇は欠勤扱いとする方法があります。
生理休暇をとると欠勤になるので、精勤・皆勤手当ては受け取れなくなります。生理休暇は生理で就業が著しく困難な女性が休みをとれるというシステムであり、出勤扱いにしなくてはならないわけではありません。
ただし、賞与査定の対象としたり、休んだ日数を不支給とすることはできません。正当な生理休暇取得まで抑制することになるからです。
生理休暇の不正取得は懲戒処分もありとする
就業規則で生理休暇の不正取得によって懲戒処分もありうることを規定します。これも従業員が不利になる変更なので相応の手続が必要です。
実例としては、1996年4月17日盛岡地裁一関支部判決でバスガイドをしていた原告が生理休暇をとって、夫の運転する自動車で4時間移動し翌日の民謡大会に参加した件を、生理休暇の不正取得であるとして懲戒休職処分を認めました。
いつでも閲覧できるように就業規則を周知
就業規則を変更するときは、事前・事後に社内に周知させ、どこが変わったのかわかりやすく知らせる必要があります。
いつでも閲覧できるように、社内の共有ファイルやサーバーに保管するか、オフィス内の従業員なら誰でも立ち入れる場所に閲覧ファイルを保管しておきましょう。
従業員に不利になる変更は弁護士に相談を
就業規則で生理休暇は有給と規定されていたものを、無給に変更するようなケースは従業員に不利になる変更です。
法律では従業員をまもるために、会社が一方的に就業規則を変更することを禁止しています。従業員に不利な変更をするには次の要件を満たす必要があります。
- 従業員の過半数を代表する者の意見を聴取して書面を提出する
- 当該変更が合理性のあるものであることを説明できること
他にも就業規則の変更手続は法律で細かく決められているため、専門の弁護士に相談するのがおすすめです。
また、下記の状況にあてはまるなら、全面的に見直すことを視野にいれてもいいでしょう。
- 長期間にわたり就業規則を見直していない
- 法令の改正に準拠していきたい
- 時代にあった就業規則にしたい
このような要望に、弁護士なら親身になって応じてくれます。
正当な生理休暇取得を奨励する
不正取得には懲戒処分もあることを周知させると同時に、正当な生理休暇取得を奨励すれば会社の好感度があがり、不正取得の抑制にもつながります。
生理休暇は母性を保護するため、働く女性に与えられた権利です。
それが男性社員の目を気にして請求できなかったり、女性同士の不協和音がもとで取得しづらくなっていたりします。
本当に生理がつらくて困っている人がきちんと生理休暇を取得できるように、会社側から奨励することによって、職場の雰囲気がよくなり仕事効率も改善できます。
たとえば、女性社員を担当者にして相談窓口を設置するなど、相談しやすい環境をつくることから始めてはいかがでしょう。
誰かに相談できることによって、生理が重い人は安心できるし、不公平を感じている人にも話をするチャンスが与えられます。
一人一人の状況を把握して、より働きやすいと言ってもらえる会社・風通しの良い会社を目指すことができます。
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