コロナ禍で対面での男女の出会いの機会が減ったことから、マッチングアプリなどによる出会いが増加し、それに伴い結婚詐欺の件数も増えたことが指摘されています。
全国のデータではありませんが、佐賀県の場合、
- 2021年
15件、被害額約8,500万円 - 2022年~8月
被害件数24件、被害額約2億5700万円
と、結婚詐欺被害件数が1年を待たずに約3倍に増加しました。
その半数がマッチングアプリによるもので、中には1億円の被害にあった40代男性もいます。
また最近は、外国人が結婚や交際をもちかけお金を要求するロマンス詐欺も急増しています。先日も70代の著名な女性漫画家が7,500万円を騙し取られたニュースが話題になりました。
このように、近年、結婚詐欺は手口が多様化し、年齢・性別を問わず誰もが被害にあう可能性があります。
そこで今回は、結婚詐欺の事例や、万が一の場合の相談先をご紹介します。
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結婚詐欺はどんな犯罪?
結婚詐欺とは、結婚する気がないのに異性に近づき、結婚をほのめかせて相手のお金や財産を奪う詐欺の種類を言います。
詐欺罪に該当すると、犯人には、10年以下の懲役刑が科せられる可能性があります(刑法246条)。
なお、結婚詐欺は同性でも成立しえますが、日本では同性婚が法的には認められていないこと、伝統的に異性間の発生が多いため、ここでは異性の結婚詐欺を前提として解説します。
結婚詐欺師・詐欺被害者の特徴とは
結婚詐欺師も、結婚詐欺の被害者も、特別な人ではありません。身近にいる人が実は詐欺師だった、友人が結婚詐欺被害にあったというケースが少なくありません。
結婚詐欺師の特徴
男性詐欺師の場合は、
- 社会的地位がある
- 一流会社に勤めている
- 経済的に余裕がある
といった姿のことが多いです。
そして、優しく、包容力のある男性を装って近づきます。
昨今増えている国際ロマンス詐欺では、中東に赴任中のアメリカ海軍の将校であるとか、軍医であるなどと偽り、簡単な英語で連日愛のメッセージを送ってくるケースが多いです。
女性詐欺師の場合は容姿の美しさのアピールだけでなく、
- 叶えたい夢がある
- 親の病気のために頑張っている
など、男性が守ってあげたくなるような姿をアピールしてくるケースが多いです。
女性の国際ロマンス詐欺師の場合、男性同様に軍人や医師と偽り、
などとして騙してくる例があります。
結婚詐欺の被害者になりやすい特徴
男性の被害者の場合、年齢は40代から60代の男性が多いと言われています。
いわゆる結婚適齢期と言われる時期を過ぎたり、離婚を経験している年代に該当するからです。
また、社会人生活もある程度年月を重ね、お金を貯めていると詐欺師が目をつける年代とも合致します。
また、性格的には、責任感が強く、優しくてお人よしの人がターゲットにされやすい傾向があります。
女性の被害者の場合は、年齢は30代後半以降、男性同様周りが結婚をして、自分の婚期や出会いに悩みやすい世代がターゲットになりがちです。
また、
- 仕事で管理職や役員の地位にある
- お金がある
- 社会的ステータスがある
といった人も狙われやすいと言えます。
このような人は、面倒見がよく、責任感も強いことが多いため、詐欺師の術中にはまりやすく、お金を引き出すことが目的の結婚詐欺師からすれば、格好のターゲットと言えるからです。
結婚詐欺の特徴的な手口とは
結婚詐欺師は、出会いからお金を騙し取るまで、次のような手口を用いるのが典型です。
異性との出会いを作り詐欺被害者に接触する
結婚詐欺師は、魅力的な異性として接触してきます。
従来は、婚活パーティーなどが中心でしたが、最近は出会い系サイトやマッチングアプリ等がメインです。
また、インスタグラムやFacebookのメッセージでアプローチしてくるケースもあります。
結婚詐欺師は恋人関係から信頼を築く
結婚詐欺師は、出会いから早い段階で交際を申し込んだり、肉体関係を持つなど、深い関係に持ち込みがちです。
また、結婚詐欺師には魅力的な人が多いと言われています。
被害者の気持ちに寄り添う行動をし、相手が望むような言葉をかけ、信頼関係を築いていきます。
最初は返済するケースもある、詐欺師がお金を騙し取る方法く
相手との信頼関係ができると、結婚詐欺師はお金が必要であると打ち明けます。
- 親が手術をするのにお金がいる
- 事業が行き詰っている
- 一緒に投資をしてお金が増えたら結婚できる
など、理由は様々です。
最初から高額なお金を出させて、そのまま連絡が取れなくなるケースもありますが、中には、最初は少額で、借用書も作り、きちんと返済もすることを何度か繰り返し、信頼度を深める詐欺師もいます。
そして、被害者が信じ切って
と思わせてから、高額なお金を出させるケースも少なくありません。
急に音信不通になっても結婚詐欺は被害に気付きにくい
結婚詐欺師が目的のお金を騙し取ると、電話番号や住所を変え、急に連絡を取れなくなるのが大半です。
被害者からすれば、信じていた相手と急に連絡が取れなくなるので、事故や病気かと心配してしまいますが、結婚詐欺師は次のターゲットを探しているのです。
被害者の中には、徐々に発覚するつじつまの合わない言動から詐欺だったと気付く方もいます。
しかし、相手を信じて疑わず、周りに諭されたり、同じ詐欺師が別件の結婚詐欺で逮捕され、ようやく自分も詐欺被害にあっていたと目が覚める方も少なくありません。
結婚詐欺はどこから罪?詐欺罪に問えないケースもある
結婚詐欺は、実は犯罪を立証するのが難しいタイプの犯罪です。
そこで、どこから詐欺罪の犯罪に該当するか、また、結婚詐欺に当たらない場合をご説明します。
結婚詐欺が成立する条件
詐欺罪は、
- 相手を騙す行為があり
- 相手が騙されて
- 騙されたことに基づいてお金や財産を渡し
- 犯人がお金や財産を受け取る
ことで成立する犯罪です。
結婚詐欺の場合、「結婚するのにお金が必要」「借金を返さないと結婚できない」などと結婚を口実に相手を騙し、被害者がその話を信じ、
とお金や財産を払い、犯人がそれを受領すると成立します。
詐欺罪には未遂罪があるため、騙す行為があれば、実際にお金が犯人の手元にわたらなくても、詐欺未遂罪が成立します。
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結婚詐欺師に騙されても罪にならない場合がある
上記のように、結婚詐欺は「結婚すると偽って相手を騙し」「相手がその話を信じてお金を出す」ことが必要です。
そのため、
と言う犯人の主張が認められると、詐欺罪が成立しないこともあります。
結婚詐欺において、結婚の話や、お金のやり取りの話は、会話の中で行われ、逐一録音したり書面化していないのが通常です。
そのため、「騙してお金を取った」という関係の立証が難しいケースが多いのが実情です。
結婚詐欺の事例を紹介
男性詐欺師、女性詐欺師、どちらの場合でも結婚詐欺事件は多く発生しています。
ここでは裁判例を含め、それぞれ事例をご紹介します。
男性結婚詐欺師の事例
男性が結婚詐欺師だった事例として、次のようなものがあります。
将来の結婚資金と偽り200万円を騙し取り逮捕された事例
交際相手の30代女性に結婚をにおわせ、現金約200万円を騙し取った結婚詐欺の容疑で、兵庫県警がアルバイトの男性(48歳)を逮捕した事例です。
犯人は既婚者、被害者女性は元同僚で、約3年間交際し、入籍の約束もしていました。
犯人は、10回にわたり計1,300万円を騙し取っていましたが、本件の200万円は「将来の結婚資金にしよう」と持ち掛けながら、実際は借金返済に充てたとされています。
【参照】2016年2月20日産経WEST
婚活パーティーで出会った複数の女性から計3,500万円を騙し取り実刑になった裁判例
婚活パーティーなどで知り合った8人の女性に対し、マンションを購入しないと交際を続けることが難しい等と嘘をつき、計3,500万円を騙し取った結婚詐欺の容疑で、犯人男性が懲役7年の実刑判決を受けた事例です。
犯人男性は既婚者で、航空会社従業員を装うなどしていました。
被害金は一部しか弁償されておらず、被害女性らの精神的苦痛は大きく、厳しい判断となっています(仙台地判H30.1.24)。
女性結婚詐欺師の事例
女性が結婚詐欺師の事例や裁判例として、次の事件をご紹介します。
結婚相談所で会った複数の男性から1億5000万を騙し取り実刑になった裁判例
結婚相談所で知り合った50~70代の男性11名に対して、資産家のように装い、叔父が実印を持ち出して借金をした、事業が失敗したなどの嘘をつき、被害者達からお金やキャッシュカードを騙し取って現金を引き出すなどして、総額1億5000万を騙し取った結婚詐欺の容疑で、犯人女性に懲役9年の実刑判決が下された事例です。
被害者の中には、闇金から借金してまでお金を払った人もいましたが、犯人は、被害金をホストクラブでの豪遊やぜいたくな生活の資金に充てていました(横浜地判H15.6.4判決)。
結婚詐欺の被害が心配な場合は弁護士に相談を
結婚詐欺師の詐欺のテクニックは巧みです。
上述のように、証拠を残さない、言い逃れできる口実を作っておく、連絡を完全に断つなどするため、逮捕されても、詐欺罪で刑罰を負わせるのは難しいのが実情です。
また、結婚詐欺で警察に相談に出向いて相談しても、証拠不足等で被害届や告訴の受理をしてもらうことが難しい場合もあります。
しかし、弁護士に相談すれば、詐欺師のどのような行為が詐欺罪の構成要件(犯罪が成立する条件)に該当するのか、どのような証拠が必要かなどのアドバイスを受けられるので、被害届や告訴を受理してもらいやすくなります。
また、結婚詐欺師が見つかり、仮に刑事事件として詐欺罪に問い、刑罰を下すことが難しい場合でも、民事事件として損害賠償を請求し、被害金を取戻し、精神的苦痛を慰謝料として償わせることができる可能性が高まります。
詐欺の被害の場合、他の人には相談しにくいこともあるかと思います。
弁護士ならば、守秘義務があるので、相談内容が他に漏れることはありません。
また、過去の裁判例や、同種の事件に精通しているので、ご自身のケースが詐欺かどうか、相談に乗ることも可能です。
ご自身が結婚詐欺にあっているのではないか、実は過去の恋愛は結婚詐欺だったのではないかなど、ご心配な方は、まずは弁護士にお気軽にご相談ください。
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