返済しきれないほどの借金を抱えてしまったときは、債務整理をすることによって解決することができます。
ただ、債務整理をすると財産を処分しなければならないと考えて躊躇している方も多いことと思います。
たしかに、自己破産をすると生活に必要な最低限の財産を除いて処分する必要があります。
しかし、個人再生なら基本的に財産を処分する必要はありません。
それどころか、住宅ローンを払いながら他の債務を整理してマイホームを残すことも個人再生なら可能になります。
この記事では、手放したくない財産があるものの多額の借金を整理する方法についてご説明します。
特に、せっかく購入したマイホームを手放したくない方のご参考になれば幸いです。
借金があっても手放したくない財産があるときはどうすればよい?
借金問題を解決するためには債務整理をするのが有効です。
債務整理にはいくつかの種類があり、財産を手放さなければならない手続きもあれば、そうでない手続きもあります。
手放したくない財産があるときも、債務整理方法を適切に選択することで借金問題を解決することができます。
ここでは、どのような債務整理方法があるのかを簡単にみていきましょう。
借金返済が苦しいときに役に立つ法律は3種類
まず、借金返済が苦しいときに債務者を守ってくれる法律があることを知っておきましょう。
次の3種類の法律が債務者を救済してくれます。
- 破産法
- 民事再生法
- 利息制限法
破産法には「自己破産」の手続きが定められており、民事再生法には「個人再生」の手続きが定められています。
利息制限法には貸金業者からの借金にかかる金利の上限が定められており、この法律を活用することで「任意整理」と「特定調停」の手続きが可能になります。
それでは、以上の4種類の債務整理方法の概要をご説明します。
自己破産ではすべての借金が免除される
自己破産は、裁判所に申し立てることですべての借金を免除してもらうことができる債務整理方法です。
一定の条件を満たせばすべての借金から解放されるという大きなメリットがあります。
その反面、財産があれば処分して換価したお金を債権者に配当しなければならないというデメリットもあります。
個人再生では債務が大幅に減額される
個人再生は、裁判所に申し立てることで借金を原則として5分の1にまで(最低返済額は100万円)減額してもらえる債務整理方法です。
一定の金額を返済する代わりに、財産を処分する必要はないというメリットがあります。
ただし、「清算価値保障の原則」が適用されるため、高価な財産がある場合は返済額が増えてしまうことがあります。
清算価値保障の原則とは、財産があるのであればその財産の総額に相当する金額は最低限、返済しなければならないという決まりのことです。
例えば、借金総額が300万円の場合、所有財産が100万円以内であれば個人再生によって返済額は100万円に減額されます。
しかし、150万円の財産を所有している場合は、最低150万円を返済しなければなりません。
ただ、返済額が増えるものの財産を手放す必要はありません。
したがって、車などある程度高価な財産を手元に残すことも可能になります。
マイホームについては、事項で詳しくご説明します。
任意整理では手軽に債務を減額できる
任意整理は、裁判所を介さずにそれぞれの債権者と個別に交渉することによって借金の返済額や返済方法を変更する債務整理方法です。
任意整理の場合、財産を手放す必要は一切ありません。
ただ、支払い中のローンを任意整理の対象とする場合は、そのローンで購入した財産をローン会社に引き揚げられる場合があります。
しかし、自己破産と個人再生ではすべての債務を対象とする必要があるのに対して、任意整理では対象とする債務を自由に選ぶことができます。
したがって、支払い中のローンを手続きから除外すれば財産を引き揚げられることはありません。
任意整理のデメリットとしては、元金をカットすることは難しいため、大幅に借金を減額することは期待できないことです。
任意整理についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
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特定調停は自分で手続きをすることも十分に可能
特定調停は、簡易裁判所の調停手続きを通じて債権者と交渉し、借金の返済額や返済方法を変更してもらう債務整理方法です。
得られる効果は任意整理と概ね同じです。
しかし、特定調停では簡易裁判所の調停委員が債権者との話し合いの仲立ちをしてくれるという特徴があります。
そのため、弁護士に依頼しなくても適切に債務を整理しやすいというメリットがあります。
マイホームを手放したくないときの借金の整理法は個人再生が最適
それでは、住宅ローンを支払い中のマイホームを手放したくないときの借金の整理方法についてご説明します。
結論を申しますと、この場合は個人再生が最適です。
ここでは、個人再生の仕組みや個人再生をしつつマイホームを残す方法についてご説明します。
個人再生で借金減額が可能となる仕組みとは?
個人再生では、借金総額に応じて最低返済額が次のように定められています。
借金総額 | 最低返済額 |
---|---|
100万円未満 | 借金全額 |
100万円以上500万円未満 | 100万円 |
500万円以上1,500万円未満 | 借金総額の1/5 |
1,500万円以上3,000万円未満 | 300万円 |
3,000万円以上5,000万円未満 | 借金総額の1/10 |
併せて、「清算価値保障の原則」により、債務者の所有財産も考慮されます。
所有財産の総額が上記の表の最低返済額を超える場合は、所有財産の総額が最低返済額となります。
所有財産の総額が上記の表の最低返済額以内の場合は、上記の表の金額がそのまま最低返済額となります。
マイホームを手放さずに個人再生をする方法とは?
個人再生には「住宅資金特別条項」という制度が用意されています。
住宅資金特別条項とは、住宅ローンを支払い中のマイホームがある場合に、住宅ローンだけは返済を続けながら、他の債務のみを減額する制度です。
この制度を利用することによって、マイホームを残しながら他の借金を整理することができます。
個人再生を利用できる3つの条件
マイホームを手放したくない方にとって非常に有効な個人再生ですが、この手続きを利用するためには次の3つの条件を満たす必要があります。
借金総額が5,000万円を超えないこと
個人再生の申し立てができるのは借金総額が5,000万円以内の場合に限られることが民事再生法で定められています。
ただし、住宅資金特別条項を適用する場合は、ここにいう5,000万円に住宅ローンは含まれません。
例えば、総額7,000万円の借金がある場合でも、そのうち3,000万円が住宅ローンであれば、それ以外の借金は4,000万円なので個人再生の利用が可能です。
継続的・反復的な収入があること
個人再生は、借金が大幅に減額されるとはいえ、最低100万円以上の債務を継続的に返済していかなければならない手続きです。
そのため、返済が可能な程度の継続的・反復的な収入を将来にわたって得られる見込みが認められない場合は、個人再生を利用することはできません。
住宅資金特別条項を適用する場合は、個人再生による最低返済額と住宅ローンとを合わせて返済していける程度の収入が必要です。
住宅ローンがオーバーローンとなっていること
住宅ローンの残高が少なくなっている場合は、個人再生の利用が難しくなることがあります。
なぜなら、マイホームの資産価値が大きい場合は先ほどご説明した「清算価値保障の原則」により、個人再生による最低返済額が増えてしまうからです。
例えば、マイホームの評価額が3,000万円であるのに対して住宅ローンの残高が2,000万円の場合は、差額の1,000万円が債務者の資産とみなされます。
この場合、個人再生による最低返済額は最低でも1,000万円以上となり、返済していくのはほぼ不可能でしょう。
住宅ローンがオーバーローンとなっていればマイホームの評価額が資産とみなされることはありません。
したがって、この場合は個人再生の利用に支障をきたすことはありません。
弁護士に借金相談をするときに注意すべき3つのポイント
個人再生の申し立ては自分で行うのも不可能ではありませんが、一般的には弁護士などの専門家に依頼して行われています。
住宅資金特別条項を適用する場合は特に手続が複雑なので、弁護士に依頼すべきでしょう。
そこで、まずは弁護士に借金相談をすることが必要ですが、その際には以下の3つのポイントに注意が必要です。
希望する解決方針を明確に伝える
弁護士は専門家としての立場からさまざまなアドバイスをしてくれますが、最終的に解決方針を決定するのは自分です。
したがって、解決方針を明確に弁護士に伝えることが重要です。
具体的には、どうしてもマイホームを残したいのか、他に良い解決方法があるのであればマイホームにはこだわらないのかについて自分の希望を固めておきましょう。
弁護士が第三者の目で見た場合、借金総額や住宅ローンの返済額、本人の収入などによっては個人再生よりも自己破産の方が適切であると判断する可能性もあります。
このとき、どうしてもマイホームを残したいのであれば早い段階で伝えなければ、弁護士は自己破産をするものと考えて検討を進めてしまうことがあります。
こうなると、弁護士と相談者との間に認識のずれが生じるため、相談や打ち合わせがスムーズに進まないことになりかねません。
資料は些細なものでもすべて提供する
多額の借金を抱えている方は、さまざまな資料を手元にお持ちのことと思います。
なかにはあまり意味がないと思えるような資料もあると思いますが、借金や住宅ローン、マイホームに関連する資料はすべて弁護士に提供しましょう。
弁護士は必要な資料に目を通さなければ、適切に手続きを進めることはできません。
できる限り多くの資料に目を通すことで、より良い解決策が見つかることもあります。
必要最低限の資料は弁護士から提供を依頼されますが、原則として依頼されたものに限らず、手元にある資料はすべて弁護士に見せることが大切です。
自分に不利な事実も正直に伝える
借金問題を弁護士に依頼する際に、自分に不利な事実をつい隠してしまう方がいらっしゃいます。
しかし、これでは適切に借金問題を解決できなくなるおそれがあります。
例えば、保証人がいることや一部の債権者にのみ一括返済したことなどを隠していると、個人再生の申し立て準備や手続きそのものに支障をきたすことがあります。
弁護士は相談者・依頼者の味方です。
不利な事実もすべて知ってもらった上で最適な解決法を見つけてもらうようにしましょう。
借金問題に強い弁護士を探す方法
弁護士に債務整理を相談・依頼するときは、借金問題に強い弁護士を選ぶことが重要です。
法律問題にはさまざまな分野があり、弁護士にも得意な分野・苦手な分野が必ずあります。
借金問題は借金問題が得意な弁護士に相談・依頼してこそ最適な解決が期待できるものです。
借金問題に強い弁護士を探すためには、以下のポイントを参考になさってください。
知り合いに紹介してもらう
最も安心できる方法は、知り合いに弁護士を紹介してもらうことです。
直接紹介してもらうことで、どのような弁護士なのかをあらかじめ知ることができるからです。
知り合いに弁護士がいれば借金問題に強い弁護士を紹介してもらうことは容易でしょう。
弁護士に依頼した経験がある知り合いから弁護士を紹介してもらうのも有効です。
また、弁護士会に問い合わせれば借金問題に強い弁護士を紹介してもらえる場合もあります。
インターネットで探す
借金問題の案件に力を入れている弁護士はホームページを開設して借金問題に関する情報を提供していることが多いので、インターネットで弁護士を探すのも良いでしょう。
ただし、ホームページに掲載されている実績などの情報を鵜呑みにはしないでください。
依頼する前には必ず実際に法律相談を受けて、弁護士の対応を確認すべきです。
無料相談を活用して、いくつかの法律事務所で弁護士に相談してみることをおすすめします。
弁護士の無料相談については、こちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
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個人再生をすれば大幅な減額が可能ですが、借金総額が大きくなれば返済額も多くなってしまいます。
そのため、「いつでも個人再生で解決できる」と安心するのではなく、早めに対処することが重要です。
返済が苦しくなったら早めに弁護士に相談し、実情を正直に話して自分の希望も伝え、最適な解決方法を探りましょう。
まずは、お気軽に無料相談を活用してみてはいかがでしょうか。
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