若者の車離れがすすむ一方、健康のため自転車を利用する人が増えています。
マンションやアパートなど集合住宅で自転車を保管しておけるスペースは、自転車の需要に追いついていないのが現状です。
特に築10年以上のマンションでは駐車スペースは有料で確保されているのに、駐輪所は少ないところが多いようです。
駐輪所をめぐるトラブルは年々増えています。
ここでは、駐輪所トラブルの原因・対処法に加えて、自転車を壊された・盗まれたときの対処法も説明していきます。
駐輪所で起こるトラブルの原因
マンションやアパートの駐輪所でトラブルになる主な原因は以下のとおりです。
自転車の台数が増えている
車は駐車場代やガソリン代、車検代などの維持費がかかり、通勤や通学では行った先に駐車場がないことも多いのであまり利用できません。
そんな中で自転車通勤・通学する人が増えてきています。家族全員が一台ずつ所持しているのも珍しくありません。
自転車の台数が増えているのに、新しく駐輪所を設けようという動きは少なく、今あるだけのスペースで譲り合って駐輪しているのが現状でしょう。
マンション・アパートには暗黙のルールがある
駐輪所に限らず、廊下やエントランス、ゴミ置き場などの共用部分は住人の暗黙のルールによって支えられている面があります。
もちろん、入居時の契約で規定されている部分は契約に従います。
共用部分の利用トラブルが多いのは新しい住人が入ってきた時と言われています。
それは、暗黙のルールを理解していない人が、前のマンションではこのようにしていたから…と、同じように行動してしまうからです。
暗黙のルールというものは明文がないので、時間をかけて慣れていくしかありません。
大きい自転車は邪魔者あつかいされる
駐輪用のラックがあるところでは、チャイルドシート付の自転車などかさばる自転車が停まっていると隣のラックが使いにくいという問題があります。
子どものいる家庭ではチャイルドシートが必要とわかっていても、ルールでは割り切れない感情のもつれがトラブルの原因となります。
また、普段使われていない自転車も邪魔者扱いされ、奥に移動される、敷地外に持ち出されて放置される、などの被害がでています。
外部の人が自転車を停めている
住人を訪ねて来た人が空いているスペースに自転車を停めているような場合です。
それが原因で、他の住人が駐輪できなくなったり、その場所を「自分の場所」と決めていつも駐輪している住人がいるとクレームの原因になります。
トラブル対策~駐輪所では気配りも重要
管理会社に相談して、張り紙などで注意喚起してもらうのが最も無難な対策ですが、他にも各々の気配りで防げるトラブルもあります。
管理会社・管理組合・自治会などに相談する
トラブルになっている相手に直接話すよりも、管理会社などに相談するのがおすすめです。
管理会社から注意してもらうか、住人全体に向けてポスターなどを貼ってもらうと抑制効果が期待できます。
ただし、管理会社などによっては入居時の契約で住人同士のトラブルには介入しないと決めているところもあります。その場合は相談にのってもらえないかもしれません。
駐輪スペースを守る
駐輪スペースが決まっているときは自分のスペースに駐輪します。
しばらく使っていないと奥のほうへ移動されてしまうこともありますが、まわりの自転車を移動させて自分の自転車を出したら、移動させた自転車をまた元の位置に丁寧に戻しておくのが大事です。
また、いつも停めている場所に他の自転車があったとしても「自分の場所」のような思い込みは避けた方がよいでしょう。
私物を置かない
駐輪所に自転車以外の私物を置かないというのも大事な注意点です。
空気入れなどを置いておくと便利なのですが、邪魔だと感じる人もいます。
防犯対策をする
自転車に付いているカギだけでは不十分です。
U字ロックやチェーンロックを追加する必要があります。
特に有名ブランドのロードバイク、電動アシスト付き自転車などは盗まれやすいので、注意してください。
バイクは駐輪所?駐車場?
たまにマンションなどの駐輪所にバイクを停めている人がいますが、バイクは駐車場・駐輪所どちらに停めるのがよいのでしょうか。
これは法律で決まっていて、50㏄以上のバイクは駐車場です。
原付自転車は50㏄未満なので駐輪所、ということになります。
もし、間違えている人がいたら注意してあげてもよいかもしれません。
事前確認でトラブル回避!駐輪所の基本
できれば入居前に確認しておきたいことを紹介します。
料金
マンションやアパートによっては駐輪所料金を支払うところも増えています。
毎月家賃とともに支払うのか管理シールを購入して自転車に貼るのかを確認しましょう。
月額で料金を支払うところは駐輪スペースも決まっている場合が多いようです。
駐輪スペース
一台分のスペースが十分か、全体のスペースが十分かを確認しておきます。
駐輪所が狭いとトラブルのもとになります。
駐輪タイプ
地面に普通に駐輪するのか駐輪用のラックがあるのかを確認しておきます。
ラックの場合は二段式なのか、傾斜ラック、スライドラックなのかも見ておきましょう。
ラックのタイプによって駐輪しやすさが変わってきます。
公共の駐輪場でのトラブル
「駅の駐輪場に自転車を停めておいたのに、なくなっていた」「後日自治体などから連絡があり、移動費用と自転車の引き取りを要求された」というトラブルをよく聞きます。
駅の駐輪場にありがちな悪意による撤去
これは、駐輪場が満車だったから、あるいは改札口に近い場所に駐輪したかったから、先に停まっていた自転車を勝手に撤去したケースが考えられます。
駐輪場から撤去されてその辺りに放置された自転車は、放置自転車として移動保管されます。
勝手に撤去した人が一番悪いのですが、誰が移動したのかを証明することはできません。
しかたなく費用を支払って自転車を引き取ってきた人も多いのではないでしょうか。
自治体や鉄道事業者も設備投資して、停めた人でなければ移動できないような設備をすすめていますが、自らしっかり防犯対策をしましょう。
駐輪所でのトラブルが原因で自転車が壊れた・盗難に遭った
では、駐輪所のトラブルが悪化して自転車を壊された、敷地外に放置された、盗まれてしまったなどの被害に遭ったときはどうしたらよいでしょうか。
そこまでひどくなくても、傷ついた、落書きされた場合はどうでしょう。
該当する法律は?
自転車は財産ですから、法律で守られるべき「法益」で、器物損壊罪・窃盗罪として追及できます。
刑法第235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法第261条(器物損壊等)
他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
落書き程度でもきれいに落とせない場合は「損壊」と考えられ、器物損壊罪に該当する可能性があります。
しかし、犯人の目ぼしがついているだけでは責任を追及できません。証拠が必要です。
警察に届ける
警察に被害届を出しましょう。
被害届が受理されても捜査をしてもらえるとは限りませんが、くり返し同種の事件が起こっている場合は犯人を突き止められるかもしれません。
自己責任の考え方
犯罪を犯した人間が責任を負うのは当然ですが、所有者にも社会的責任があるという考え方もあります。
自転車のような大きなもので、かつ、移動させることもできるものは、移動されないように管理する必要があるということです。防犯対策はしっかり行いましょう。
駐輪所に関するトラブルは弁護士に相談を
どこの駐輪所にも住人同士の暗黙のルールがあり、住人同士うまく暮らしていくための「智慧」ともいうべきものもあります。
暗黙のルールは慣れるまでに時間がかかりますが、一人ひとりの気配りで回避できるトラブルもあります。
それでも破損・盗難などの事故が起こったときは
管理会社・管理組合・自治会などに相談するとともに、警察署に被害届を出しましょう。
警察があまり積極的に動いてくれないときは、弁護士に相談するのも有効な手だてです。
弁護士は法律の専門家であり、依頼人の味方になって対策を考えることができます。
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