などの悩みをお持ちの経営者の方はいませんか…?
厚生労働省が2002年に公表した調査によると、カスハラの内容は
- 長時間の拘束や同じ内容を繰りかえす過度なクレーム:52.0%
- 名誉棄損・侮辱・ひどい暴言:46.9%
- 著しく不当な要求:24.9%
- 脅迫:14.6%
- 暴行・傷害:6.5%
の順で多くなっています(※)。
昨今、カスハラの手口は多様化していて、単なるクレームにとどまらず犯罪や不法行為に該当するケースも少なくありません。
企業としては、相手に対して行為の責任を取らせ、生じた損害を賠償させることを希望することもあるのではないでしょうか。
カスハラの相手を訴える際は、どのような方法で訴えるかという方法の選択、また訴えるための証拠の保全が重要になります。
そこで今回は、カスハラを受けた場合に、企業が相手を訴えるための方法と、訴えるための準備と手順についてご説明します。
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カスハラとは何か?実際に起きた事例から解説
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カスハラで訴える2つの方法
カスハラに対しては、まずはカスハラを繰り返す顧客等と交渉をし、カスハラを辞めるように求めることが前提となります。
しかし、顧客等が交渉に応じずカスハラを繰り返す場合は、訴えることも検討し、手続きを進めます。
カスハラを訴える方法には、主に次の2つがあります。
民事訴訟でカスハラを訴える
民事訴訟とは、個人同士の紛争を解決する裁判手続きのことをいいます。
たとえば、ある行為を辞めるよう請求する、生じた損害の賠償を請求するなどが典型的です。
カスハラの場合、以下のような訴えが考えられます。
- カスハラ行為をやめるように行為の差し止めを請求する
- カスハラで要求された内容について対応する義務がないことを確認してもらう(債務不存在確認訴訟など)
- カスハラで生じた損害について、損害賠償を請求する(従業員のカスハラ対応で生じた残業代、カスハラで生じた企業の売上減少分など)
刑事告訴してカスハラを訴える
刑事告訴とは、告訴状を警察に提出し、犯罪の捜査を進めて処罰を求めることを言います。
似たようなものに被害届の提出がありますが、被害届は犯罪が起きたことを伝えて捜査を求めるもので、告訴状はそれに加えて処罰してほしいという意思を示すものになります。
告訴状や被害届が受理されて捜査が開始し、カスハラが犯罪に当たるとされると、カスハラをした顧客等は取り調べを受けるなどして、最終的に刑罰を受けて前科が付く場合もあります。
どちらの方法が企業にとって一番の解決になるかは、
- 顧客等との関係性
- カスハラの程度
- 生じた損害
等の事情で変わります。
社内だけで判断せず、訴える前に弁護士に相談することをお勧めします。
カスハラで訴える場合の7つの違法な行為
カスハラの行為は様々ですが、厚生労働省では調査に基づいて9つの行為に分類しています。
これらの行為の中には、犯罪に該当する違法行為も含まれます。カスハラで訴えるためには、どのような行為がどのような犯罪にあたるのかを知っておくことが大切です。
ここでは、カスハラが該当しうる7つの犯罪行為をご紹介します。
①威力業務妨害罪(刑法234条)
厚労省の調査でも、カスハラの内容として最も多かった「同じ内容の繰り返し」等に該当する犯罪です。
「威力を用いて他人の業務を妨害する罪」をいい、有罪になると3年以下の懲役または50万円以下の罰金が規定されています。
具体的には以下のような行為が該当します。
- 1日に何度も長時間にわたり要求を電話で繰り返す
- 毎日来店して長時間クレームを言い続ける
- 不当な要求を書面で送り続けたりFAXを流し続ける
②不退去罪(刑法130条)
カスハラでは、いわゆる居座りが該当する犯罪です。
他人の住居や管理する家屋や建物から退去を求められたのに、正当な理由なく滞在し続ける罪をいい、有罪になると3年以下の懲役または10万円以下の罰金が規定されています。
カスハラでは、次のような行為が典型です。
- 閉店時間を過ぎて変えるように求めても居座ってクレームを言い続ける
- 開店中であっても、引き取りを求めても帰らず何時間も居座る
③脅迫罪(刑法222条)
本人やその親族の生命・身体・名誉・財産に危害を加えることを伝えて人を脅す犯罪をいい、有罪になると2年以下の懲役または30万円以下の罰金が規定されています。
カスハラでは、従業員やその家族に危害を加える内容の告知や反社との関係性をほのめかすケースがあります。
- 自分には暴力団の知り合いがいると伝える
- 担当した従業員に「お前の名前と住所は調べた」「火事に気をつけろ」などと伝える
④強要罪(刑法223条)
相手の身体や財産に危害を加えることを伝えて恐怖心を与え、義務のない行為をさせたり妨害する罪をいい、有罪になると3年以下の懲役刑に該当します。
- 従業員に土下座させる
- 怒鳴ったり脅すなどして従業員に謝罪文を書かせる
- 自宅に何度も呼びつけることを強要する
⑤恐喝罪(249条)
相手を脅して恐怖心を与え、お金を支払わせたり、代金の支払いを免れさせる犯罪をいいます。
有罪になると10年以下の懲役が定められている重い罪で、実際に支払わなくても未遂罪が成立します。
カスハラでは以下のような行為が問題になります。
- SNSで悪評を広めるなどと脅して不当な慰謝料請求する
- 株主総会で糾弾することをほのめかして無料でサービスを受けさせる
⑥名誉棄損罪(刑法230条)
不特定または多数の人が認識できる状況で、人の名誉を棄損するような事実を示した場合に成立する犯罪で、有罪になると3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑が定められています。
カスハラの場合は、以下のような言動が典型的です。
- 企業や店舗を特定し、犯罪者が経営しているなどとSNSに書き込む
- 他の利用客がいる前で、人の容姿を貶めたり人格破綻者だ等とののしるような発言をする
⑦侮辱罪(刑法231条)
事実を確認できない暴言を吐くことで成立する罪で、有罪になると1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留(30日未満の刑事施設への収容)もしくは科料(1万円未満の金銭の納付)が定められています。
従来は拘留または科料のみでしたが、昨今のネット中傷などを受けて厳罰化されました。
カスハラでは以下のような行為が考えられます。
- バカ、無能などと暴言を吐く
- 他の利用客がいる前で根拠なくののしる
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カスハラで相手を訴える場合の手順
カスハラで訴える場合、民事・刑事どちらの方法をとるにしても、重要なのは証拠の収集と準備になります。
カスハラの証拠収集
カスハラで訴える場合、まず必要なのは証拠の収集です。これは、民事でも刑事でも同じです。
具体的には、カスハラが、いつ、どこで、誰によって、誰に対して、どのように、どのくらいされたかを客観的に証明できる証拠があることが望ましいです。
具体的には以下のようなものを中心に集め、そのほか集められるものはすべて記録しておきましょう。
- カスハラを録画、録音したデータ
- カスハラの対応に要した日時や時間の記録
- 来訪したり電話があった回数や時間帯
- 対応した従業員に精神の不調が生じた場合などは、診断書などを取得しておく
これらの証拠を時系列に沿って記録しておくと対応がスムーズです。
なお録音や録画は、相手に記録することを伝えると相手がクールダウンすることもありますが、特段承諾を取らずに記録しても問題はありません。
社内で訴える方針を共有する
カスハラを訴える場合、被害者である従業員に任せておくべきではありません。
企業には安全配慮義務があり、従業員の心身に注意を払い対策を講じる必要があるためです。
従業員がカスハラで悩んでいるのに放置するなどして、従業員がうつ病などに罹患した場合は、企業が安全配慮義務違反の責任を負うことになります。
そのため、通常は企業が原告となり、カスハラを訴えるケースが多いです。
従業員から報告を受けたら、企業としてカスハラを訴えるかどうか相談し、方針を決定しましょう。
弁護士に相談し、訴える手続きを開始する
企業としてカスハラを訴える方針が決まったら、弁護士に相談しましょう。
民事訴訟を起こすべきか、刑事事件として刑事告訴すべきか、専門家の意見を聞いて決定することをお勧めします。
代理人として相手と交渉をしてもらう事で企業が直接交渉の窓口に立たなくて良いため、負担が減るうえ、不当な要求に対しても法的な見地から明確に拒否してもらうことも可能です。
また、実際に訴えを提起するとなると、書式をそろえたり警察署に出向くなど煩雑な手続きが必要になります。この点でも、弁護士に依頼すれば代わりに書類を揃えてもらったり、告訴状や被害届の提出に同行してもらえるので安心です。
カスハラで訴える場合に弁護士に相談するメリット
カスハラで訴える場合、民事・刑事いずれの場合でも、企業独自で行うことができます。
しかし、弁護士に依頼すれば、カスハラで訴える際の交渉から手続きまでを相談し、任せることができます。
実際に訴えるとなると、書類を整備し、証拠を精査し、裁判所に出向くといった対応の負担はかなり大きくなります。
法務部がある企業ならまだしも、それを一般企業内で行うと担当者の負担は相当大きなものになります。
カスハラで訴える場合は、カスハラ行為に対してどのような対応を取ることが企業にとってメリットがあるのか、訴える価値があるか、訴えるとしてもどの手段によるべきか、まずは弁護士にお気軽にご相談ください。
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