息子や娘を騙って実家に電話を掛けて「事故を起こして急にお金が必要になった」とか「今日中に○○円を返さないと大変なことになる」といった事件が多発していることは、多くの人が知っているでしょう。
こういった振り込め詐欺は電話口で「オレだけど」といった風に、家族であるように振舞うことからオレオレ詐欺などと呼ばれています。
基本的には電話によって被害者を騙す手口ですが、近年はインターネットやチラシなどを利用するケースも増えており、被害者は「家族が大変な目に遭っている」と思ってうっかり送金してしまうことも多いようです。
そういった詐欺に騙されないことも重要ですが、万が一、家族がオレオレ詐欺の主犯や受け子として捕まる側になってしまったら…。
考えたくもないことですが、対応がわからないまま何もせずにいると、大切な家族に前科がついてしまうかもしれません。
そこで重要となるのが、実際に詐欺で逮捕されてしまった場合の流れについて知っておき、然るべきタイミングで弁護士に相談することです。
オレオレ詐欺で逮捕されるとはどういうことか?弁護士への相談は?
まずオレオレ詐欺で逮捕されるとはどういうことか知っておきましょう。
いわゆる「振り込め詐欺」には、オレオレ詐欺をはじめ保証金詐欺や還付金詐欺など、様々な手口がありますが、いずれも刑法246条の詐欺罪が適用となります。
刑法246条:人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
このように、詐欺罪は被害者に虚偽の情報を伝えて(つまり嘘を言って)金銭などを不当に交付させる行為で、当然、振り込め詐欺の一種であるオレオレ詐欺にも適用されます。
特に振り込め詐欺の場合は、組織的犯罪であるケースがほとんどのため、条文にもあるように懲役刑(実刑)となる可能性が高いです。
そのため、万が一、逮捕されてしまった場合は、早めに弁護士に相談して然るべき対応をする必要があります。
オレオレ詐欺の役回りとは?
オレオレ詐欺には、様々な役回りがあると言われており、掛け子、受け子、出し子などと呼ばれています。
掛け子とは被害者に電話を掛けて騙す役で、まさに電話口で「オレオレ」と名乗る役割です。当然、これを行った場合は詐欺罪となります。
受け子とは、被害者に手渡しで現金を渡すように要求した場合に、それを受け取る役割をいいます。
そして出し子とは、騙された被害者が振り込んだ口座から現金を引き出す役です。これは厳密には銀行が管理している金銭を不当に引き出した窃盗罪が適用されるケースが多いようです。
掛け子は相手を直接的に騙す役割のため相応の話術などが必要なことから、オレオレ詐欺では主犯格が担当する可能性が高く、逮捕されると起訴されて実刑判決が下される可能性が高いです。
一方、受け子や出し子は掛け子に比べると罪は軽くなる傾向にあり、特に組織的犯罪の場合は、主犯格との繋がりがないケースもあります。
しかし、だからといって許されるわけではなく、場合によっては実刑となる可能性もあります。
詐欺罪は有罪判決を受けると懲役になる
詐欺罪は刑法246条にもあるように『十年以下の懲役に処する』という刑罰しか規定されていません。
つまり、お金を払えば許される罰金刑は存在しないため、もし逮捕・起訴されて刑事裁判で有罪判決となれば、必ず懲役刑となってしまうのです。
オレオレ詐欺の主犯格であることの多い掛け子は明らかに詐欺罪が適用されることになりますから、有罪となれば刑務所に入らなければならなくなります。
また、受け子や出し子の役割で口座からお金を引き出したり、被害者から金銭を受け取るなどした場合は窃盗罪となるケースが多く、以下のように懲役刑あるいは罰金刑となります。
刑法235条:他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
確かに主犯格に比べると受け子や出し子は比較的軽い罪になることが多いですが、それでも「罰金で済む」などと決して軽く考えてはいけません。
懲役刑となる可能性も十分ありますし、集団でオレオレ詐欺を行っていた場合、単に詐欺罪や窃盗罪というだけでなく、組織犯罪取締法違反として10~15年以上の懲役刑が判決として言い渡されたこともあります。
たとえ事件に少ししか関与していなかったとしても、組織犯罪は厳罰化される傾向にありますから、たとえ初犯であっても実刑が言い渡される可能性が高いと考えておくべきです。
アルバイト感覚で犯罪に加担してしまうケースも
特に気をつけなければならないのが、アルバイト感覚でいつの間にか犯罪に加担してしまっているケースです。
最近では未成年の子供が知らず知らずのうちにオレオレ詐欺のグループの犯行に加担してしまった事件も発生しており、振り込め詐欺が社会問題となる一因ともいわれています。
詐欺罪は故意犯、つまり自らの意思で相手を騙してやろうとしない限りは適用されないのが原則です。
しかし、たとえ軽いアルバイト感覚でお金を受け取ったり、引き出したりする仕事を請け負ったとしても、詐欺とは知らなかったという主張が通らない可能性も高いです。
そのため、特に子供をもつ親の方は、大切な子供がそういった危険なアルバイトをしていないか注意する必要があります。そして万が一、そういった仕事をしていたならば、すぐに辞めさせて弁護士に相談することをおすすめします。
オレオレ詐欺で逮捕された場合の流れと弁護士にできること
それでは、オレオレ詐欺で逮捕されてしまった場合、どういった扱いを受けるのでしょうか?
まず詐欺によって警察に逮捕されると、川越の場合は川越警察署に連行されて取調べを受けることになります。
ここで万引きなどの軽い犯罪ならば微罪処分によって釈放される可能性がありますが、オレオレ詐欺のような社会的な問題となっている重大な犯罪の場合、そのまま検察に送致されて検察官による取調べとなります。
取調べには期限が設けられており、警察が取調べの結果、検察に被疑者を送致するまでに48時間、そして検察官が被疑者の起訴や勾留を申請するまでの期間は24時間と決められています。
つまり、逮捕後72時間以内に被疑者のその後の運命が決まるといっても過言ではないわけです。
振り込め詐欺は厳罰化の傾向にある
近年はオレオレ詐欺をはじめとした振り込め詐欺事件は厳罰が下される傾向にあり、取り調べもさらに厳しく行われるようになってきました。
そのため、こういった詐欺事件で逮捕された場合、検察の取調べの結果、原則10日間の勾留請求がされる可能性が高いです。
勾留とは、逃亡や事件に関する証拠の隠滅を防ぐために被疑者を留置所に拘束しておく措置のことであり、期間は原則10日間と決められています。
しかし、オレオレ詐欺は組織的犯行であることがほとんどで、被疑者の交友関係などを徹底的に調べられることになるため、10日間だけでは捜査が終わらず、勾留が延長される可能性が高いです。
そうなると、最長で20日間(勾留延長も10日間)も身体的拘束を受けることになってしまいます。
勾留期間中に検察官は被疑者を起訴するか不起訴にするかを決めなければなりませんが、明らかにオレオレ詐欺に関与した疑いがある場合、高い確率で起訴されることになり、刑事裁判が終了するまで身柄を拘束され続けるということも有り得ます。
そのため、万が一家族がそういった事件に巻き込まれてしまったならば、なるべく早い段階で弁護士に相談して然るべき対応をとる必要があります。
捜査期間中に面会できるのは弁護士だけ
弁護士に依頼する最大のメリットは、警察および検察による取調べの期間中でも被疑者本人に面会でき、相談を受けてもらえることです。
逮捕されてから勾留されるまでの最長72時間は、たとえ家族であっても被疑者本人と面会ができないため、事件の状況や今後の展開などがわからず不安になってしまいます。
そんなとき、弁護士ならば被疑者に面会して今後の対応について相談できるため、法律の知識のない被疑者に代わって正当な権利を捜査側に主張してくれます。
特に厳罰化の傾向にある犯罪は厳しい取調べを行われることも多く、確たる証拠もないまま自白を強要するような不当な捜査が行われるケースも珍しくありません。
そんなとき、弁護士ならば被疑者の法的な権利を根拠に適切な対応をアドバイスしてくれるため、孤独な状態に置かれた被疑者にとって精神的な拠り所となることは間違いありません。
接見禁止になっても弁護士ならば相談に乗れる
また、オレオレ詐欺のような組織的犯罪の場合、被疑者本人も含め多くの人間が事件に関与しているケースが多いです。
そのため、捜査側は口裏合わせや証拠隠滅のおそれから、勾留期間中も外部の人間との接触を禁じる接見禁止の決定をするケースが多いです。
そうなると、本来は被疑者に接見できるはずの家族でさえも、長期間面会をすることができなくなります。
弁護士ならばそういった事態でも被疑者本人に接見してアドバイスができることになっていますから、逮捕された時点ですぐに弁護士に連絡をとって対応してもらうようにするのがベストです。
オレオレ詐欺で逮捕されたとき弁護士に相談するメリットは?
オレオレ詐欺のような事件に巻き込まれて逮捕されたとき、早急に弁護士に相談するメリットは、上述のように家族に代わって相談に乗れることと、法的なアドバイスを受けられることがあります。
特に被疑者は逮捕されると長時間孤独な状態に置かれるため、精神的に弱ってしまうケースがほとんどです。
捜査側はそういった精神状態を利用して、時には暴言を吐いたり被疑者を罵ったりして自白を引き出そうとしたり、事件に関与した他の人物の名前を聞き出そうとします。
当然、実際に罪を犯したのならば、素直に自白した方が最終的には被疑者自身のためにもなりますが、場合によっては主犯格とみなされて非常に不利な立場に置かれてしまう可能性もあります。
そのため、しっかりと法的な根拠に基づいて被疑者の人権を守ってくれる弁護士は、留置所で孤独な状態に置かれている被疑者にとって非常に心強い存在といえるでしょう。
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示談交渉も弁護士のサポートが必要
また、オレオレ詐欺の刑罰は、事件への関り方の程度と被害金額などから総合的に判断されることになりますが、被害者と示談ができているかどうかも重要な量刑判断の材料となります。
事実、事件の関わりが薄く、しっかりと被害者と示談が済んでいる場合では執行猶予つきの判決が得られた事件もあります。
逆に、示談できず事件への関わりも深いと判断されれば、厳しい実刑判決が下されるケースは珍しくありません。
そのため、ここでも被疑者との示談交渉をスムーズに行ってくれる弁護士の役割が重要で、事前にしっかりと対策を練っておき、裁判を意識した戦略的な示談交渉が必要となります。
こういった専門的な交渉は素人には難しいですから、法律と交渉のプロである弁護士に任せることをおすすめします。
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起訴されても保釈請求ができる
オレオレ詐欺のような社会的に問題視されている事件の場合、検察も重大な犯罪であると考えているため起訴される可能性が高く、不起訴や起訴猶予となることはあまりないのが実態です。
そのため、被疑者の家族としては、起訴されてしまった場合の対応についても考えておく必要があります。
勾留後に起訴されると、刑事裁判が終了するまで起訴勾留となり、被疑者は身柄を拘束される続けることになります。
そのため、たとえ刑事裁判で執行猶予がついたとしても、その後の社会復帰が難しくなるケースは少なくありません。
そこで必要となるのが長期間の身柄拘束から開放するための保釈請求です。
保釈によって、被告人は自宅に戻ることができるため、その後の裁判への対応や制限がつくケースはあるものの、ある程度は社会人としての生活に戻ることができます。
ただし、保釈が必ず認められるわけではないことと、保釈の申請には特別な手続きが必要となるため、被告人が自ら手続きをするのは難しいのが実態です。
弁護士はそういった保釈手続きのサポートをしてくれる存在であり、請求が通りやすくするために便宜を図ってくれたり、保釈金についての相談にも乗ってくれます。
家族が起訴されてしまったからといって諦めずに、弁護士に相談して少しでも不利な状況を回避できるように努力しましょう。
オレオレ詐欺に巻き込まれたらすぐに弁護士に相談を
オレオレ詐欺で逮捕されてしまった場合の流れと、弁護士に相談することのメリットについて説明しました。
近年はオレオレ詐欺のような事件の判断が厳しくなっていますから、たとえ事件との関わりが薄い初犯であっても実刑判決が下される可能性も十分あります。
自分の家族に限ってそんなことはないと思われるかもしれませんが、最近は詐欺の手口も巧妙になっているため、ただのアルバイトだと勘違いしてオレオレ詐欺の片棒を担いでしまっているケースも決して少なくないのが実態なのです。
そのため、万が一に備えて、すぐに連絡できる弁護士事務所を知っておくことが重要となります。
弁護士ならばすぐに警察署で面会ができますし、勾留や起訴されてしまっても、被疑者に適切なアドバイスをすることができます。
川越で逮捕された場合は、実際に取調べが行われることになる川越警察署にすぐ来てくれる弁護士に連絡するようにしましょう。
できるだけ早い対応が、被疑者のその後の運命を決めるといっても過言ではありません。
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