学校内で子供同士がケンカしてしまうことは、子供をもつ親ならば一度や二度経験があることでしょう。
しかし、それがエスカレートして深刻なトラブルになってしまう場合は、親としては心配になるはずです。
たとえ子供同士のトラブルには極力介入しないと心がけていても、ひどい怪我をして帰ってきたり、逆にクラスメイトに怪我を負わせてしまったという事態になれば、相手の親と話し合いの場をもつなどして、大人の力で解決しなければならないケースも出てきます。
まして、社会問題となっている「いじめ」に自分の子供が巻き込まれたとなれば、何とかして守ってあげたいと思うはずです。
事実、最近では、いじめや暴力行為がエスカレートして警察沙汰になることも珍しくありません。
そこで今回は、子供が学校内でトラブルに遭ってしまった場合にすべきことや、特に自分の子供が加害者になってしまった場合にするべき対応について解説します。
学校内における子供のトラブルは増えつづけている
文部科学省の調査によると、2018年の段階で小中学校で認知されたいじめの件数は、41万4378件と過去最多となったことがわかりました。
特に、子供が心身に重大な被害を受けてしまう事件も、474件と前年よりも78件も増加しているのが現状です。
児童生徒が自殺まで追い込まれてしまう事件は250件で、そのうちの10人が、いじめによる自殺となっています。
具体的ないじめ内容の割合はこのようになっています。
こういったいじめをはじめ、子供同士が学校内でトラブルに巻き込まれる件数が全国的に増え続けており、被害者になってしまうこともあれば、加害者になってしまう可能性も高くなっているのです。
「いじめ」の範疇を超えた暴力行為も増加
多くの人が考える誹謗中傷や仲間外れなどの「いじめ」とみなされる行為だけではなく、その範疇を超えた暴力行為の増加も、社会問題としてマスコミなどに取り上げられる機会が増えています。
学校内における子供の暴力事件の発生件数は、2013年以降に急増しているのが特徴で、中学校や高校では徐々に減少傾向にあるようですが、小学校の児童が暴力行為に巻き込まれる件数が増えています。
その背景として、自分の感情を上手くコントロールできない児童が増加し、すぐに暴力に発展してしまう事案が増えていることなどが指摘されています。
家では大人しい子供が、学校で急に暴力行為に加担するといった事案も報告されていますから、親が知らないところで、自分の子供が暴力を振るって問題となる可能性も決して低くはないのです。
被害者になることも加害者になることもある
特に注目すべき点として、小学校低学年による暴力行為がここ数年で増加している点が注目されており、特に小学校1年生では5倍以上に増えています。
ケンカで相手の子供に怪我をさせてしまう事件や、教室内にある物を壊してしまうといったケースが多いようです。
小さい子供がついケンカをしてしまうのは、子供を持つ親ならば何度か経験があることだと思いますが、それがエスカレートして相手にひどい怪我を負わせてしまうケースを含め、学校内では、子供が被害者になることもあれば、加害者になってしまうことも十分考えられます。
子供が学校内でトラブルに遭った場合の対応は?
それでは、もし自分の子供が学校内でトラブルに遭ってしまった場合、具体的にどうすればよいのでしょうか?
子供が被害者になってしまった場合
子供がいじめや暴力行為の被害者になってしまった場合、まず学校に働きかけて対策と防止を促したり、ひどい怪我を負ってしまった場合には、警察に相談するといった対策が考えられます。
いじめなどに関しては、各都道府県で対策委員会を設けているケースもありますから、そこに相談することも考えられますが、ひどい暴力を受けて大怪我をするなど重大な事案の場合、学校だけでは対応できないこともあります。
その場合は、警察に被害届を出して刑事事件として扱ってもらうことをはじめ、弁護士に対応を相談してみることが重要となります。
特に学校側は、被害者の両親の訴えだけでは本気で解決に取り組まない可能性もあり、それがマスコミなどに取り上げられて、後々問題となるケースもあります。
社会的に問題視されることで解決につながる可能性もありますが、自分の子供が被害者として周囲に知られてしまうかもしれません。
子供をそういう目に遭わせたくないと考える人が多いでしょうから、まずは弁護士に相談して、法的な手続きを含めて判断してもらうのがよいでしょう。
弁護士ならば、学校側と交渉して行動を促すことができますし、法的な対処をするにしても、専門家ですから適切なプロセスで解決に向けて動くことができます。
事実、被害者の両親だけではまともに動かなかった学校側も、弁護士が間に入って交渉することで、積極的に解決に動き出した例も多くあります。
子供が加害者になってしまった場合
一方、自分の子供が加害者になってしまった場合はどうすべきでしょうか?
実は子供が被害者になる場合以上に、加害者として問題になってしまったときに、どうすればよいか対応に困ってしまう人は少なくありません。
学校側からいじめや暴力の事実を報告される場合もあれば、被害者の両親から聞かされて、こちらの教育方針や子供への対応を含め非難されてしまうケースもあります。
たとえ、こちらが子供のケンカ程度だと思っていても、相手側の子供に怪我を負わせてしまった場合、警察に被害届を出されることで刑事事件となってしまう可能性もありますし、多額の損害賠償請求をされてしまうことも考えられます。
そうなると、自分達だけでは対応しきれないケースが多々ありますから、まず弁護士に相談して対応を協議することをおすすめします。
特に、相手が訴訟を含めた法的手段に出ることを考えている場合、弁護士を立てて交渉してくる可能性が高いです。
その場合は、こちらもしっかりと弁護士を立てて対応しなければ、後の裁判の結果、多額の賠償金を支払うことになるケースは少なくありません。
そのため、子供のケンカなどと軽く考えずに、まずは相手にしっかりと謝罪をし、被害者側の対応をみて、弁護士への相談を含めて可能な限り不利にならないように動くようにしましょう。
学校内で子供がトラブルの加害者になってしまった場合の対応
このように、子供がいじめや暴力の加害者になってしまった場合は、相手側に謝罪することはもちろん、場合によっては弁護士に相談して対応する必要があります。
それに加えて、子供の親として以下の対応をしなければならないでしょう。
子供にしっかりと事実確認をする
人によっては「自分の子供に限っていじめや暴力行為をするわけがない」と考えてしまうこともありますが、実際に暴力事件を起こしていた場合、対応が遅れることで問題が大きくなってしまう可能性があります。
まずは子供に事実の確認をして、客観的にいじめや暴力行為をしたのかどうか確かめましょう。
ここで重要なのは、感情的になって子供を叱り付けたり、一方的に決め付けたりしないことです。
たとえば、はじめから怒った口調で確認しようとすると、子供は事実を言ったらますます怒られてしまうと思って嘘をつくかもしれませんし、威圧的に「暴力なんて振るってないでしょう?」といったような聞き方をすると、たとえ暴力行為をしていたとしても、本当のことが言いづらくなってしまいます。
まずは落ち着いて子供に話しかけ、客観的な事実の把握に努めるようにしましょう。
場合によっては、子供がいじめや暴力の事実を認めないかもしれません。
実際、学校内では日常的に暴力を振るっている子供でも、親の前では大人しい子でいるケースは少なくありません。
そのため、たとえ子供が「やっていない」と答えたとしても、そこで安易に結論を出さずに、子供の雰囲気や態度の変化を観察し、周りの子供からも話を聞くなどして、公正・公平な視点で事実関係を確認しましょう。
特に、いじめの場合は学校側も事態を把握していない場合が多いですから、子供の友達から話を聞く方が、結果として事実確認が上手くできるケースがあります。
いずれにしても、自分の子供の証言だけで、簡単に決め付けてしまわないことが重要です。
とにかく早急に謝罪をする
子供が暴力の加害者であることがわかった場合、できるだけ早く被害者側に謝罪することが重要です。
未成年の子供同士のトラブルの場合、警察への届出や法的手段に出るかどうかを判断するのは、被害者の子供の両親であることがほとんどです。
そのため、被害者の子供に対するフォローはもちろん大事ですが、相手の両親の心証を可能な限りよくすることも、自分の子供を不利にしないために重要となります。
人によっては、自分の子供がいじめや暴力に加担していた事実を認められず、相手に高圧的に出てしまったり、意地になって謝罪を拒否するケースがありますが、それによって相手から本格的に法的手段に出られるなどすれば、不利な立場に追いやられてしまうのは自分の子供になります。
そういう意味でも、まずは謝罪して誠意を見せるという姿勢が大事です。
ただし、被害者側がこちらの謝罪を受け入れてくれなかったり、顔を合わせること自体を拒否するケースもあります。
そういった場合には、交渉のプロである弁護士に間に入ってもらうなどして、間接的に謝意を伝えることも検討しましょう。
弁護士に相談して示談交渉をする
学校内で子供の暴力が原因で怪我をさせてしまった場合、相手の親から訴えられるなどして多額の賠償金を請求されてしまう可能性もあります。
すでに説明したように、こういった法的な請求を受けた場合や、その可能性が高い場合は、早急に弁護士に相談して対応を協議するのがベストです。
特に怪我などの慰謝料の金額が問題となる場合、相手側との示談交渉を上手く進めることが重要とになります。
示談交渉とは
法的なトラブルを含めた問題を、当事者同士が話し合いにって解決すること
子供のいじめや暴力事件の場合、当事者の親同士が直接話し合って解決するケースは珍しくありませんが、話し合いがこじれて進まないということもあります。
特に、具体的な慰謝料の金額を決める場合、そういった方面の知識がなければ、不当に高い金額を請求される可能性もあります。
そんなとき、交渉のプロである弁護士に示談交渉を進めてもらうことで、スムーズな話し合いを実現でき、事態が深刻になるのを防ぐことができます。
示談について詳しくは、以下の記事で説明しています。ぜひ参考にしてください。
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学校内の子供のトラブルを弁護士に相談するメリット
学校内のトラブルに子供が巻き込まれてしまった場合に、弁護士に相談するメリットとしては以下の点が挙げられます。
具体的な解決方法がわかる
弁護士は法律の専門家であると同時に、さまざまな争いを解決してきた実績をもっています。
そのため、学校内でのいじめや暴力の問題についても、具体的にどういったプロセスで解決に導けばよいかを知っています。
特に刑事事件に発展しそうな暴力問題や、いじめの延長で子供が窃盗などほかの犯罪行為をしていたような場合、親の手には負えないことがほとんどです。
そういった場合に、弁護士に相談することで、少しでも子供を不利にしないための具体的対応は何か判断できるようになります。
代理人として交渉してもらえる
上で説明したように、示談交渉を含め、弁護士に代理人としてさまざまな交渉をしてもらうことができます。
子供のトラブルのように、どうしても双方が感情的になってしまいがちな問題では、直接当事者が話し合うと上手くいかないケースが多いですが、弁護士が間に入ることによって、冷静な話し合いができるようになります。
また、学校側と話し合う場面でも、相手は一人の生徒の親としか認識せず、話を聞くだけで問題を解決するための行動に出ないことも考えられます。
ですが、弁護士が代わりに話し合いの席につくことで、こちらの本気度が伝わり、しっかりと対応するようになるケースは少なくありません。
裁判のプロセスを一任できる
子供の学校内のトラブルであっても、最終的に訴訟となる可能性があります。
訴訟とは
裁判所に訴えることで紛争の解決を求めること、またはその手続きをすること。
多くの人は裁判を経験したことがないため、どういう手続きをすればよいか、そして自分達が不利にならないために何をすべきかわからないケースがほとんどですが、そうなった場合でも、弁護士に代理人となってもらって裁判の過程を任せることができます。
裁判となると、どうしても精神的なプレッシャーを感じてしまいますし、まして子供にとっては、かなりの負担になることは言うまでもありません。
そこで、弁護士に裁判の代理人となってもらうことで、当事者としての負担を少しでも和らげつつ、最終的に相手側と和解できる可能性を高められます。
子供が学校内でトラブルに遭ったら弁護士に相談してみよう
学校内での子供同士のトラブルについて、子供が被害者となった場合と加害者になった場合のそれぞれの視点から解説しました。
子供同士のいじめや暴力問題では、被害者としてどうすればよいかが注目されることが多いですが、子供が加害者となってしまった場合に対応に困る人も多くいます。
当事者同士の話し合いでスムーズに解決できればよいのですが、いじめなどは根が深い問題となっているケースが多く、親同士が話し合っても、なかなか解決できないことがほとんどなのが実態です。話し合いそのものが進まないことも珍しくありません。
そんなとき、弁護士に相談することで交渉がスムーズになることも多く、たとえ訴訟になってしまった場合も代理人として不利にならないように取り計らってくれます。
学校内の問題で弁護士に依頼することに抵抗のある人もいるかもしれませんが、子供の問題を早期に解決するためにも、子供がいじめや暴力に巻き込まれたら、事態が深刻になる前に弁護士に相談してみましょう。
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