特定の人に対して恋愛感情などを抱いてつきまとうと、ストーカーとして逮捕されてしまうことがあります。
自分では悪いことをしている意識がなくても、実は違法なストーカー行為を行っていたというケースもあるので注意が必要です。
この記事では、ストーカーとして逮捕される危険のある行為や刑罰、逮捕されても刑罰を避けるための対処法などを解説していきます。
ストーカー行為をしてしまった方も、自分のしたことがストーカー行為に該当するのか不安な方も、ぜひ参考にしてください。
ストーカーとして逮捕される危険のある8つの行為とは
ストーカー行為とは、簡単にいうと特定の人に対して執拗につきまとう行為のことです。
逮捕される対象となる具体的な行為は、ストーカー規制法(正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」)で8つの類型に分けて規定されています。
それらの行為を恋愛感情などを充足する目的で行うことが、違法なストーカー行為に該当します。
そこで、まずは恋愛感情などの「目的」についてご説明し、その後に8類型の具体的な行為をご紹介します。
ストーカー行為の条件としての「目的」は恋愛感情に限られない
ストーカー規制法では、違法なストーカー行為の条件として「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で」行為を行うことと定められています。
「その他の好意の感情」とあるように、恋愛感情に限らず、広く親愛感が対象となります。
女優など有名人に対する憧れの気持ちも含まれます。
男性から女性に対するストーカー行為で逮捕されるケースが多いですが、女性から男性に対するストーカー行為で逮捕されるケースも少なくありません。
同性へのストーカー行為で逮捕された実例もあります。
上記の目的があることを前提として、8類型のストーカー行為をみていきましょう。
(1)つきまとい・待ち伏せなど
相手に物理的につきまとったり、待ち伏せしたりする行為です。
相手の自宅や職場、学校などに押しかけたり、その付近をむやみにうろつく行為も含まれます。
(2)監視していることを告げる
実際には監視していなくても、監視しているように相手に思わせるようなことを告げる行為が禁止されています。
「いつも見ているよ」と直接告げることはもちろん、「お帰り」「今日、一緒に歩いていた人は彼氏?」などと相手の行動を逐一見ていることを告げることも含まれます。
(3)面会や交際などを要求する
物理的につきまとわなくても、相手が拒否しているにもかかわらず、会ったり付き合ったりすることを執拗に要求する行為も禁止されています。
(4)粗暴な言動をする
著しく粗野な言動や乱暴な言動で相手を怖がらせる行為もストーカー行為に該当します。
大声で「バカ野郎」などと罵倒したり、相手の自宅の前で「出てこい」などと叫んだり車のクラクションを鳴らしたりする他、メールなどで「殺してやる」などと伝える行為も含まれます。
(5)無言電話や頻繁な電話、FAX、メールなど
相手が電話に出てもこちらが何も話さない無言電話や、相手が拒否しているのに連続して電話をかけたり、FAXやメールを送信する行為も禁止されています。
SNSを利用したメッセージの送信やコメントもストーカー行為に該当します。
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(6)汚物などを送る
汚物や動物の死体のような不快な物を相手の自宅や職場に送ったり、目につく場所に置いたりして嫌がらせをする行為もストーカー行為に当たります。
(7)名誉を傷つける
相手を誹謗中傷するような内容をネットに掲載したり、噂を流したりして名誉を毀損する行為も禁止されています。
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(8)性的羞恥心を害する
相手にわいせつな写真や動画・画像などを送りつけたり、卑猥な言動を見聞きさせたりすることによって性的に恥ずかしい思いをさせる行為もストーカー行為に該当します。
相手の裸の画像などをネットに投稿するなどして拡散させる行為も含まれます。
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ストーカー行為で逮捕されるケースと罪名・刑罰
以上のストーカー行為は全て逮捕される対象となりますが、必ずしもただちに逮捕されるわけではありません。
どのようなケースで逮捕されるのか、また有罪となった場合の刑罰をみていきましょう。
ストーカー行為への警告を無視するのは危険
被害者がストーカー行為を警察に届け出ても、すぐに逮捕されるケースは多くありません。
多くの場合は、まず警告や禁止命令が都道府県公安委員会から出されます。
警告や禁止命令を無視してストーカー行為を続けると、逮捕される可能性が高くなります。
したがって、逮捕を避けるためには、警告や禁止命令が出た時点で自分のストーカー行為を自覚して、行動を改めなければなりません。
悪質なストーカー行為や相手の被害が深刻な場合は、警告や禁止命令なしにすぐ逮捕されることもあるので注意が必要です。
ストーカーとして逮捕されるときの罪名
ストーカー行為のみで逮捕されるときの罪名は、「ストーカー規制法違反」となります。
正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律違反」です。
ただし、ストーカー行為がエスカレートして他の犯罪が成立している場合は、より重い犯罪の罪名で逮捕されることもあります。
ストーカー行為と併せて成立しやすい犯罪については、後で詳しく解説します。
ストーカー行為で逮捕されると懲役や罰金の刑罰がある
先ほどご紹介したストーカー行為で有罪となった場合の刑罰は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
思ったよりも刑罰が軽いと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ストーカーで逮捕されるときには他の犯罪も成立していることがよくあります。
その場合は、他の罪とも併せて重い刑罰を受けることになります。
禁止命令を無視すると刑罰が重くなる
禁止命令に違反してストーカー行為を続けた場合は、上記の基本的な刑罰に加重されて2年以下の懲役または200万円以下の罰金となります。
相手がストーカーの被害を警察に申告すると、行為者の意見を聴くことなく警告や禁止命令が出されるのが通常です。
そのため、行為者としては納得できない場合も多いことでしょう。
しかし、警告や禁止命令が出るということは、少なくとも相手が行為者のことを嫌がっていることが明らかな状態です。
警告や禁止命令を無視して相手に接触しようとすることは、現に慎まなければなりません。
ストーカー以外の別の犯罪で逮捕されることもある
場合によってはストーカー行為が発展し、別の犯罪で逮捕されることもあります。
行為者はストーカー行為をしているという自覚がないことも多いため、自分では意識しないうちに他の犯罪も犯してしまう場合が少なくありません。
ストーカー行為と併せて成立しやすい主な犯罪を、それぞれの刑罰とともにご紹介します。
暴行罪
意図的に相手に暴力を振るった場合はもちろん、返事をしない相手の肩や腕をつかんだだけでも暴行罪が成立します。
暴行罪の刑罰は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。
傷害罪
相手に怪我を負わせると傷害罪が成立します。
相手の肩や腕をつかんだだけでも、打撲や脱臼などの負傷が生じることがあります。
ちょっとしたかすり傷や切り傷のような怪我を負わせた場合でも傷害罪が成立するので、注意が必要です。
暴行を加えた場合だけでなく、頻繁に電話やメールをしたことで相手が精神的に病んだ場合も傷害罪に該当します。
傷害罪の刑罰は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
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脅迫罪
相手を脅す言動で怖がらせた場合は、脅迫罪が成立します。
「殺す」「家に押しかける」「家族に危害を加える」などと粗野で乱暴な言動をするのが典型的な例です。
脅迫罪の刑罰は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。
名誉毀損罪や侮辱罪
誹謗中傷をネットに書き込んだり、噂として流した場合は名誉毀損罪や侮辱罪が成立します。
名誉毀損罪の刑罰は、3年以下の懲役もしくは禁固または50万円以下の罰金です。
侮辱罪の刑罰は拘留または科料であり、ストーカー規制法違反の刑罰より軽いため、実際には侮辱罪で逮捕されることは滅多にありません。
住居侵入罪
相手の自宅などに押しかけて、相手が拒否しているのに上がり込んだ場合は住居侵入罪が成立します。
同意を得て上がり込んだ場合でも、「帰ってください」と言われたのに帰らない場合は不退去罪となります。
住居侵入罪も不退去罪も、刑罰は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。
器物損壊罪
器物損壊罪は、他人の物を壊す罪です。
ストーカーで相手の自宅などに侵入する際、鍵を壊したり窓ガラスを割ったりすれば器物損壊罪が成立します。
汚物を相手の椅子に置くなどしてその椅子を使えない状態にしたような場合も器物損壊罪に該当します。
器物損壊罪の刑罰は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料です。
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殺人罪
「ストーカー殺人」は発生件数が多いわけではありませんが、ストーカー行為の末に相手を殺害した事件の報道を見聞きしたことがある方は多いでしょう。
殺人罪の刑罰は、死刑または無期もしくは5年以上の懲役です。
ストーカー行為で逮捕後の刑事事件の流れ
警察に逮捕されると、刑事事件として手続が進められます。
ストーカー行為で逮捕されるとどうなるのか、その流れをみていきましょう。
逮捕・勾留中は取り調べなどの捜査を受ける
逮捕されると、まずは警察官から取り調べを受けます。
この段階の取り調べで犯行の概要や被疑者の経歴や家族関係、生活状況などを全体的に調べられます。
その後に検察官に送致され、必要に応じて勾留の手続がとられた上で引き続き詳しい捜査が行われます。
勾留中には取り調べの他にも犯行現場での実況見分なども行われます。
ストーカーでの逮捕・勾留の期間
逮捕の期間は最大で3日間です。
身柄を拘束したまま捜査を続ける必要がある場合は、勾留手続に移ります。
勾留期間は最大20日間で、この間に警察官や検察官から引き続き取り調べなどの捜査を受けます。
捜査の結果、検察官が起訴するかどうかを判断します。
ストーカー行為で逮捕されても釈放される場合もある
犯行内容や反省状況、被害者の感情などを検察官が考慮した結果、刑罰を科す必要がないと判断されれば不起訴処分により釈放されることもあります。
起訴される場合でも、起訴と同時に釈放されて刑事裁判を待つケースもあります。
ただ、釈放すると被害者に接触する可能性があり、危険性が高いと判断されると起訴後も勾留が続きます。
また、犯行内容が軽微で危険性が低いと判断されれば、逮捕後に勾留されずに釈放される場合もあります。
その場合、微罪処分で捜査が終了するケースと在宅で捜査が続けられるケースとがあります。
起訴されると刑事裁判に進む
検察官が起訴すると、刑事裁判が開かれます。
多くの場合は起訴後も勾留が続きますが、起訴後は保釈を請求することが可能になります。
保釈請求について詳しくはこちらの記事で解説していますので、ご参照ください。
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なお、起訴された後の刑事裁判には正式裁判だけでなく、略式裁判もあります。
略式裁判とは、被告人が罪を認めることを条件に書類審理のみで罰金刑を宣告し、罰金を支払えばすぐに釈放される手続です。
刑事裁判では判決が言い渡される
正式裁判が開かれると、法廷で無罪か有罪かの判決が言い渡されます。
有罪の場合は刑罰も言い渡されます。
有罪の場合でもすぐに刑罰を科されるとは限らず、執行猶予によって一定の期間、刑罰を回避できる場合があります。
犯行内容が比較的軽微な場合や示談が成立している場合、前科がない場合などは執行猶予が付きやすくなります。
執行猶予付き判決や罰金刑が言い渡されると、その場で釈放されます。
なお、執行猶予についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
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逮捕された後の流れをご説明しましたが、必ずしも刑務所に入れられるわけではなく、刑罰を回避できる可能性もあることがお分かりになったことでしょう。
そこで、刑罰を回避する可能性を高めたり、刑罰を軽くするための対処法を次にご説明します。
真摯に反省する
まずは、罪を素直に認めて真摯に反省することが必要です。
自分の行為がストーカー行為に該当することを知らずに行っていた場合は、罪を自覚して相手に迷惑をかけていたことを深く反省することがプラスの情状として有効となります。
もちろん、ストーカー行為を自覚していた場合も反省は重要です。
真摯に反省して、再び犯行に至らないことを誓約することです。
被害者と示談する
ストーカー行為は相手に迷惑をかける犯罪なので、示談を成立させて被害者に許してもらうことができれば、不起訴処分や執行猶予となる可能性が高くなります。
ただし、ストーカーの被害者のほとんどは行為者と接触することを極度に嫌がるため、自分で被害者と示談をするのが難しいのが実情です。
ただ、刑事事件の経験が豊富な弁護士に依頼して被害者と交渉してもらうことで、円満に示談できる可能性は十分にあります。
示談の詳細はこちらの記事で解説していますので、ご参照ください。
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刑事事件の示談金は、個別の被害者の気持ちによって金額が大きく異なるため、一概に相場を示すことはできません。
おおまかな相場としては、被害者に負傷や退職・引っ越しなどの実害がなく、単に精神的苦痛を与えただけのケースで30~50万円程度ということができます。
被害者に実害が発生した場合は、慰謝料の他にも治療費や休業損害、逸失利益、引っ越し代など様々な損害項目の賠償が必要なので、弁護士に相談して対処すべきです。
示談金についての詳細はこちらの記事で解説していますので、ご参照ください。
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しかし、逮捕・勾留中に示談が成立すれば不起訴処分によって刑罰そのものを避けることができる可能性も十分にあります。
また、ストーカー犯罪の場合は何を反省して、自分のどこを改めれば有利になるのかが分からない方も多いことでしょう。
弁護士に依頼してアドバイスを受けることで適切な対応をとることができるので、不起訴処分や執行猶予を獲得できる可能性が高まります。
ただ、弁護士なら誰でも有効なアドバイスができるとは限りません。
後悔しないためには、刑事事件に詳しい弁護士に依頼することが大切です。
刑事事件に強い弁護士を選ぶためには、こちらの記事をご参照ください。
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ストーカー行為をする人の中には、悪いと思いつつ行為をやめられない人もいれば、好意で相手に働きかけているのに実はストーカー行為をしてしまっている人など、様々な人がいます。
いずれの場合も、ストーカー規制法で禁止されている行為を続けると逮捕される危険性があります。
自分の行為がストーカー行為に当たるのかどうかや、逮捕されるかどうかが不安な方は早めに弁護士に相談してみることをおすすめします。
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