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育児休暇で解雇!会社で不当な扱いを受けたときの対応を解説

2019年7月23日

公園とベビーカー

近年、政府による「働き方改革」など女性の社会進出を後押しする政策の影響もあり、職場で育児休暇を取得できる企業が増えてきました。

しかし、企業のなかには育児休暇の取得自体を社内ルールで禁じているところもあり、また、表立って禁止してはいないものの、育児休暇の申請を上司が拒否するケースも少なくないのが実態です。

あるいは、最終的に育児休暇が認められたとしても、職場に戻ったときに居場所がなくなっていたり、いわゆる閑職に追いやられて苦しい思いをしてしまう人もいます。

もし、あなたが育児休暇を理由に会社から納得のいかない扱いを受けてしまったら、どうすべきでしょうか?

今回は、育児休暇を理由に解雇を含む不当な扱いを受けた場合の対応と弁護士に相談するメリットについて解説します。

育児休暇による解雇の実態とマタニティ・ハラスメント

冒頭で説明したように、現在は多くの企業が社員の育児休暇を前向きに捉えており、積極的に推奨するところも増えてきています。

しかしその一方で、育児休暇の取得を拒否する企業や、一時的に認めたとしても、途中で復帰を催促したり、場合によっては復帰後に不当な解雇をする企業もあります。

こういった「育休切り」は慢性的に人手不足に陥っている企業に多いですが、だれもが知っている有名企業でも起こっている問題で、しばしばメディアに取り上げられて話題になります。

また、対外的には育児休暇の取得を推進している企業であっても、実際に取得することで社内での風当たりが強くなったり、復帰後に職場を変えられてしまうなどの不当な扱いを受けた経験のある人も多くいます。

全国的に「マタハラ」の被害は後を絶たない

マタハラとはマタニティ・ハラスメントの略で、企業に勤める女性が妊娠や出産、あるいは子育てなどが原因で職場から精神的(ときには身体的)な嫌がらせをされることをいい、不当な解雇や給与の削減などもマタハラに含まれます。

厚生労働省による平成30年度の「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)での法施行状況」によると、職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの相談件数は2108件で、婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いは4507件と、かなり高い水準になっていることがわかります(※1)。

さらに相談件数は年々伸びており、業界・業種を問わずこれからも伸び続ける可能性は高いでしょう。全国的にマタハラの被害は後を絶たないのが実態なのです。

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男性が育児休暇によって不当な扱いをされるケースもある

育休で不当な扱いまた、最近では女性のみならず、男性でも育児休暇の取得が当たり前になってきていますが、それに応じて男性の育児休暇取得による職場からハラスメントを受けることも増えてきています。

育児休暇をとる男性に対して嫌がらせや差別的な発言をすることをパタニティ・ハラスメント(パタハラ)といい、育児休暇申請をしたことで職場で侮辱されたり、昇給が認められないなどの被害に遭う人が出てきています。

たとえば、2014年に行われたパタハラに関する実態調査では、「育児は女性がやるものだから認められない」などと育児休暇の申請を拒否されたり、あるいは「取得すればキャリアに支障が出る」といった発言をされたケースなどが報告されています。

そして場合によっては、企業が定めている子育てのための制度を利用したために、それまで望んでいたキャリアから不当に外されたり、自ら会社を辞めざるを得なくなるような配置転換をされるといったケースもあるようです。

特に男性の収入は家計において主な収入源となっている割合が高いため、予定していた昇進ができなかったり、給与が下がってしまった場合などは、解雇にまで至らなかったとしても家計に大きな負担となることは間違いないでしょう。

特に大幅に給与が下がってしまうような配置転換は、事実上の解雇と変わらないほどのダメージとなります。

このように、いまや男女問わず育児休暇によって不当な扱いを受けてしまう可能性のある時代ですから、そうなった場合の適切な対応について知っておく必要があります。

不当解雇の違法性と育児休暇・産休の解雇制限

育児休暇を理由とした解雇や不当な扱いに対しては、まず育児休暇の取得を背景とした解雇は違法であることを知っておきましょう。

育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)には、雇用主は労働者が育児休業を申し出たり、実際に育児休業をしたことを理由に解雇をはじめとした不利益な扱いをしてはならないと定められています。

つまり、育児休暇を取得した社員を解雇することはもちろん、たとえば正社員の立場だった人をパートタイムにしたり、賞与(ボーナス)を減らす、あるいは昇給を取りやめるといった不利益な扱いをするのはすべて違法なのです。

また、育児休暇明けにも、正当な理由なく配置換えを命ずるなどの行為も許されない行為とされており、企業は育児休暇を取得した社員に対しては、休暇前の仕事やそれに相当する役職に復帰させる必要があります。

それに加えて、企業には育児休暇後の給与や配置などの労働条件についても、あからじめ就業規則に明示するように努力義務が課せられています。

育児休暇の取得を巡る問題の多くは企業側の違法行為が原因となっていますが、企業は育児休暇取得者に対する違法あるいは不当な扱いをすぐに止めなければいけません。

それだけでなく、本来は育児休暇後の社員が元の環境で問題なく働けるように努力する必要があるのです。

たとえ独自の社内ルールで育児休暇の取得を禁じていても、それは法律に照らせば無効であり、社員はそのような一方的なルールに従う必要はありません。

育児休暇復帰後の配置換えは拒否できる場合がある

また、育児休暇の取得までは問題なかったものの、復帰後に望まない配置換えをされてしまったり、転勤を命じられるケースもあります。

配置換えや転勤によって職務の内容や環境が変わってしまうことは、育児休暇から明けたばかりの人にとっては大きな負担になってしまいます。

そのため、育児休暇明けの状況にまったく配慮のない配置転換を強要された場合、はっきりと異動を拒否することができます。

たとえば通勤に何時間もかかる勤務先に異動を命じられたり、時短勤務を利用できないといった場合です。

上で説明したように、企業は育児休暇後の社員ができるだけ元の役職、あるいはそれに相当する職に復帰できるように取り計らう努力が求められます。

育休明けの異動自体は禁止されているわけではありませんが、配置換えや異動にまったく合理性がない場合や、異動によって暗に退職を勧めているような場合、社員側はそれを拒否することができます。

育児休暇を延長したら解雇通告されたら?

育休延長それから、人によっては、育児休暇の延長をしたら解雇通知を出されてしまったというケースも問題になっています。

育児介護休業法では、子供が1歳6か月になるまで育児休暇の延長ができ、さらに2歳になる誕生日の前日までに再延長ができることになっています。

育児休暇の延長は勝手にされるものではなく、延長が開始される2週間前までに企業側に必要な申請書類とともに伝えなければなりませんが、その際に「延長するなら辞めてもらう」といった発言をされるなど、育児休暇の延長によって解雇を迫られるケースがあるようです。

当然、こういった発言を含め、法律に則った育児休暇の延長を理由に解雇する行為や辞職を迫る行為は違法となります。

その場合は、まず解雇は違法であることを伝え、それでも企業側が話を聞こうとしない場合は弁護士に相談するか、各都道府県の労働基準局に相談することをおすすめします。

具体的に禁止されている行為の例

ここで育児・介護休業法によって具体的に禁止されている企業の行為の典型例をいくつか紹介しておきます。

今現在、育児休暇の取得を理由とする企業の以下のような行為に悩んでいる人は、弁護士に相談するなどして必要な対策をとりましょう。

  • 解雇すること
  • 雇用契約の更新をしないこと
  • 契約の更新回数の上限が明示されている場合に、その回数を引き下げること
  • 退職を促したり、正社員をパートタイムや非正規社員とするような労働契約の強制的な変更をすること
  • 正当な理由なく自宅待機を命じること
  • 降格させること
  • 減給したり、賞与(ボーナス)の支給に関して不利益な算定をすること
  • 人事考課において不当な評価をすること(昇進が妥当にもかかわらず昇進させないなど)
  • 不利益な配置換えをすること
  • 就業環境を害すること(劣悪な環境で仕事をさせるなど)
  • 育児休暇所得者が派遣労働者だった場合に、派遣元企業がその労働者に対して派遣先の提供・紹介をしなくなること

これはあくまでも事例の一部ですが、育児休暇の取得を理由に企業からこういった扱いをされた場合、それはすべて企業側の違法行為です。

特に解雇を通告された場合、育児休暇の取得以外の正当な解雇理由があることが立証されない限り、解雇自体が無効となりますので辞職する必要はありません。

こういった違法な扱いを受けた場合は、以下で説明するように、弁護士や専門機関に相談することをおすすめします。

産休(出産前後休業)の場合は解雇制限もある

また、産休中に一方的に解雇を通告された場合には、解雇制限を理由にそれを拒否することができます。

労働基準法では、企業は6週間以内に出産する予定の女性社員の休業請求に応じる必要があり、産休中と出産後30日間は解雇が禁止されています。

これは法的な解雇制限であり、企業がそれを認めなかった場合には、6か月以上の懲役または30万円以下の罰金が雇用主である企業側に科されることになります。

当然、妊娠や出産を理由に解雇を言い渡したり、退職を迫る行為は違法であり、実際に妊娠を理由に退職を強要された事件では、慰謝料を含む数百万円の支払いが企業側に命じられています。

また、上司などから「妊娠したら会社を辞めてもらう」といった発言をされる女性社員も少なくないのが実態ですが、こういった発言自体が違法ですから、実際に解雇されそうになった場合には、すぐ弁護士に相談して対策をしましょう。

契約社員でも育児休暇が理由の解雇は不当!更新時期に注意

非正規でも育休は取れるそれから、企業によっては「契約社員は育児休暇をとれない」という独自のルールを決めているところもあり、それによって一方的に解雇を通告される女性も少なくありません。

人によっては不公平に思いながらも「自分は契約社員だから」と納得してしまうケースもあるようですが、正社員でなければ育児休暇がとれないというのは間違いです。

育児介護休業法には、子供が1歳になるまでの間、申し出によって育児休業をとることができるとされており、2005年の法改正によって、非正規雇用の場合でも以下の条件を満たせば育児休暇を取得できることになっています。

  • 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
  • 子供が1歳6か月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと

つまり、同じ企業で1年以上働いており、子供が1歳6か月に達する日までに労働契約の期間満了が確実ではない場合には契約社員でも育児休暇を取得でき、申請によって育児休業給付金などを受け取ることができるわけです。

そのため、契約社員であることを理由に育児休暇の取得を拒否したり、解雇したりする行為は違法です。

また、妊娠や出産を理由に減給や降格などの不利益となる扱いをすることも禁止されていますから、同じ企業に1年以上勤めている契約社員の方で、雇用契約の満了が明らかでないにもかかわらず育児休暇の取得を拒否された場合は、弁護士や労働基準局に相談しましょう。

解雇された場合の対応と育児休暇の問題を弁護士に依頼するメリット

このように、育児休暇や産休の取得が原因で解雇されるなどした場合、企業側の行為は違法となりますから、法的根拠をもとに企業と話し合うことにより、解雇が撤回されたり、不利な扱いから解放される可能性があります。

しかし、多くの企業はそういった社員からの訴えを無視したり、場合によってはさらに酷い扱いをするケースも少なくないのが実態です。

企業によっては違法であることを知りつつ退職を迫るといった倫理観に欠けるところも存在しています。

そういう場合、どう対応すればよいのでしょうか?

すぐに弁護士に依頼するのがベスト

ベストなのは、できるだけ早く弁護士に相談し、状況を伝えることです。企業との交渉を弁護士に任せることで企業側も話し合いに応じざるを得なくなり、結果的に解決できた例は多くあります。

弁護士は法的根拠をもとに解雇が不当だということを企業側に主張してくれますから、被害者自身が訴えるよりも聞き入れてもらいやすくなります。

特に、企業側は弁護士が出てきた時点で、こちらが「訴訟も辞さない」という姿勢だと感じるため、素直にこちらの主張を認めてくれる可能性が高いです。

本当に訴訟になった場合、負けるのは実際に違法行為をしている企業の方だからです。

弁護士に依頼するメリット

他にも、こういった不当解雇の問題を弁護士に相談するメリットとしては、以下の点が挙げられます。

  • 短時間で争いを終わらせることができる
  • 解雇に対する慰謝料の請求が可能になる
  • 裁判になった際に、そのまま対応を任せられる

すでに説明したように、被害者本人が企業側と交渉すると、話し合いがこじれてしまったり、そもそもまともに取り合ってもらえないこともあります。

ですが弁護士が代わりに交渉することにより、話し合いをスムーズにまとめることが可能になります。

また、不当に解雇を言い渡された場合、それを無効にできるだけでなく、企業側に賠償金の請求が可能になるケースもあります。

その位置づけとしては、無効な解雇をされたことで、本来もらえたはずの給与がもらえなかったことに対する賠償というものですが、これに関しては法的な知識がなければ主張するのが難しいのが実態です。

しかし弁護士ならば、類似案件の判例などをもとに説得的に主張してくれますから、解雇の無効とともに、本来もらえるはずだった給与も回収できる可能性があります。

さらに、もし企業側との話し合いで決着がつかなかった場合は裁判になりますが、被害者は裁判所への出廷なども含めて、すべての対応を弁護士にそのまま任せることができます。そのため、精神的にも非常に楽になるというメリットがあります。

弁護士にかかる費用はどれぐらい?

このように、弁護士に相談することでさまざまなメリットが得られますが、多くの人は「弁護士費用はいくらかかるのか?」と不安に思うのが普通ではないでしょうか?

一口に弁護士費用といっても種類があり、それぞれの弁護士によって若干の費用の違いがあります。

育児休暇などを理由とした不当解雇の場合の弁護士費用については、以下のものを押えておくとよいでしょう。

  1. 相談料:弁護士に相談するのにかかる費用。30分5000円~1万円程度が目安。
  2. 着手金:事件対応を依頼した時点で発生する費用。弁護士によって違いがあるが、大体20~40万円程度。
  3. 報酬金:事件が解決した際に弁護士に支払う費用で、基本的に成功報酬となっている。不当解雇の場合は、企業側から得た賠償金の10%程度が目安。
  4. その他の費用:企業に内容証明郵便を送るための費用(5万円程度)や弁護士が企業と交渉するためにかかった交通費や日当など。

このように、弁護士に依頼すると相応の費用がかかりますが、最終的に企業側に解雇を取り下げさせたり賠償金を請求できる点を考えれば、自分で交渉するよりも長い目でみれば得になるケースが多いです。

また、相談料などに関しては初回相談に限り無料で請け負ってくれる弁護士や弁護士事務所も多いですから、積極的に活用するとよいでしょう。

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社会全体では育児休暇の取得は当たり前の権利であることが認知されつつありますが、企業のなかには「育児休暇で会社を休むのは迷惑だ」といった理由で拒否したり、あるいは「男性が育児休暇をとるのはおかしい」といった価値観から、さまざまな不当な扱いをするところも少なくないのが実態です。

もし企業に不当解雇されたり、不合理な配置転換などの扱いを受けたら、迷わず弁護士に相談しましょう。それがもっとも早く解決に至る道となります。

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