何らかの罪を犯してしまったとき、警察に自首をすれば刑が軽くなるというイメージをお持ちの方は多いことでしょう。
ただ、その罪がまだ警察や検察に発覚していない段階で自首をすることには、勇気が必要なものです。
黙っておけばこのまま罪が発覚せずにすむのではないかという気持ちも、理解できないものではありません。
そのため、罪を犯してしまったものの、自首すべきかどうかで悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、そんな悩みを持ったときにどのように考えればよいのかについて解説していきます。
そもそも自首とは何か?
自首については、刑法第42条で次のように定められています。
(自首等)
第42条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
ただ、この規定を見るだけでは自首の詳しい意味は分かりません。
そこで、自首とは何かについて詳しくご説明します。
捜査機関に発覚する前に申し出ること
まず、自首は刑法第42条にも書かれているように、捜査機関に発覚する前に行われる必要があります。
捜査機関とは、簡単にいうと警察官および検察官のことです。
ただ、捜査機関に対して何が発覚する前に申し出ればよいのかについては問題があります。
ここでいう「発覚」の対象には、犯罪事実と犯人の両方が含まれると考えられています。
つまり、以下の場合に自分が罪を犯した犯人であることを申し出た場合は、自首が成立します。
- 捜査機関に犯罪事実が発覚する前
- 捜査機関に犯罪事実は発覚しているものの、犯人が誰であるかが発覚していない場合
一方、次の場合には「捜査機関に発覚する前」には該当しないため、自首は成立しません。
- 捜査機関に犯罪事実も犯人が誰であるかも発覚しており、ただ犯人がどこにいるかが不明なとき
自発的に罪を申告すること
次に、自首は犯人が自発的に罪を申告するものでなければなりません。
既に捜査機関から疑いをもたれて取り調べや事情聴取、職務質問を受けた際に罪を申告した場合は、状況にもよりますが自首が成立しない可能性が高いです。
ただ、罪を申告する際に反省や後悔をしているかどうかは、自首が成立するかどうかには関係ありません。
自分の訴追を含む処分を認めること
さらに、自首が成立するためには、罪の申告に自分が訴追されるなどの処分を受けることを認める趣旨が含まれていなければなりません。
この趣旨は、「どんな処分でも受け入れます」などと明確に述べる必要はありません。
しかるべき処分を求める趣旨が黙示的にでも含まれていると認められれば自首が成立します。
一方、客観的な犯罪事実は申告しても自分の責任を否定しようとする場合や、ことさらに犯罪事実の一部を隠すような場合には自首は成立しません。
自首すべきかどうかを決める前に確認すべきメリットとデメリット
罪を犯して自首すべきかどうかを決断するためには、自首することによるメリットとデメリットを知っておく必要があります。
自首には以下のようなメリットとデメリットがあるので、確認しておきましょう。
自首することで得られる3つのメリット
まずは、自首のメリットからご紹介します。
刑が減軽されることがある
刑法第42条に書かれているとおり、自首をすると有罪判決を受けたときに刑が減軽されることがあります。
ここでいう「減軽」とは、刑法に定められているそれぞれの犯罪に対する刑罰そのものを軽くして適用されるということです。
例えば窃盗罪の場合、本来の刑罰は10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
自首による減刑が認められると、この刑罰の上限が5年以下の懲役または25万円以下の罰金というように減刑されます。
不起訴となる可能性が高まる
また、検察官が起訴するかどうかを決める際に、被疑者が自首したことが考慮されることもあります。
自首した場合は再犯のおそれも高くないと判断される傾向にあるので、不起訴処分を獲得できる可能性も高まります。
不起訴処分とは何か、不起訴処分を獲得するにはどうすればよいのかについては、こちらの記事が参考になりますので、併せてご参照ください。
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逮捕されない可能性も高くなる
さらに、自首をすると証拠隠滅や逃亡をするおそれも高くないと判断される傾向にあります。
そのため、通常であれば逮捕されるような罪を犯した場合でも逮捕されないで済む可能性が高くなります。
もし逮捕された場合の対処法については、こちらの記事で詳しく解説していますので、参考になさってください。
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自首すると受けてしまう3つのデメリット
一方で、自首することには以下のデメリットもあります。
それまで捜査機関に発覚していなかった罪が発覚してしまうことが自首の最大のデメリットといえるでしょう。
罪が発覚することと関連して、以下の3つのデメリットも頭に入れておきましょう。
刑が減軽されるとは限らない
刑法第42条では、「刑を減軽することができる」と定められているだけなので、自首しても刑が減軽されるとは限りません。
多くの場合は減刑されますが、犯行の態様が悪質であったり、自首する経緯に誠意が見られなかったりする場合には減刑されないこともあります。
起訴されることもある
自首すれば起訴されない可能性が高まるものの、絶対に起訴されないというわけではありません。
検察官が起訴するのが相当だと判断した場合は、当然のこととして起訴されてしまいます。
自首するだけで起訴を回避できるとは考えない方がよいです。
逮捕される可能性もある
逮捕されるかどうかの点についても、自首すれば逮捕されない可能性が高まるというだけで、逮捕されなくなるという保証はありません。
結局、自首はすべきか?
それでは結局、罪を犯したときは自首すべきなのでしょうか。
この問題について、道徳的には罪を犯した以上は自首すべきといえるかもしれません。
しかし、ここではあくまでも法律的な観点から自首すべきかどうかを考えてみましょう。
自首する義務はない
法律上、自首する義務を定めた規定はありません。刑法第42条も、自首した場合の特典について定めているだけです。
逆に、憲法第38条1項では、自分に不利益な供述を強要されないことが基本的人権として保障されています。
第38条1項 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
この憲法の規定は刑事裁判における被告人の人権を定めたものです。
しかし、まだ捜査機関に罪や犯人が発覚していない段階においては、なおさら不利益な供述を強要されることはないと考えられます。
罪や刑罰から免れるために嘘を述べるのは許されませんが、あえて自首することを強要されることはありません。
自首が成立するかどうかを検討する必要がある
自首が成立しないのであれば、自首による特典を受けることができません。
したがって、自首が成立するかどうかは自首をする・しないを判断するための重要な要素となります。
「そもそも自首とは何か?」のところご説明した3つの項目について、自分でケースが該当するかどうかを確認してみましょう。
ただ、犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚しているかどうかは分からない場合もあります。
そんなときは、弁護士に相談することで有益なアドバイスが得られる可能性もあります。
一度、無料相談を活用してみるのもよいでしょう。
こちらの記事で弁護士の無料相談の活用方法について詳しく解説していますので、参考になさってください。
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なお、自首が成立しない場合でも、自ら罪を申し出ることは良い情状となります。
そのため、逮捕や起訴を免れたり、起訴されても処分が軽くなる可能性はあります。
したがって、自ら罪を申し出ることは無意味ではありません。
自首することで減刑される可能性があるかどうかも考えよう
先ほど、「自首すると受けてしまう3つのデメリット」のところで、自首しても必ずしも刑が減軽されるとは限らないことをご説明しました。
刑が減軽されないのであれば、法的には自首するメリットがないことになります。
自首したことで刑が減軽されるかどうかは、犯行の態様や自首に至った経緯、その他さまざまな事情を裁判官が総合的に考慮して判断します。
どのような場合に自首しても刑が減軽されないのかは、刑事事件に強い弁護士に相談しないと分からないのが実情です。
刑事事件に強い弁護士を探すには、こちらの記事が役に立つと思いますので、ぜひご参照ください。
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自首すべきかどうかを弁護士に相談するメリット
自首することで法的なメリットが得られるかどうかを判断するには、弁護士に相談することが重要です。
その他にも、弁護士に相談することで次のようなメリットが得られます。
事件の見通しについてアドバイスが受けられる
刑事事件に強い弁護士に相談すれば、事件の見通しについてアドバイスを受けることができます。
自首した場合・自首しない場合に分けて、捜査手続きがどのように進められるか、最終的にどのような処分を受ける可能性があるのかを知ることができるでしょう。
弁護士からのこのようなアドバイスは、自首すべきかどうかを決断するときに役立つはずです。
同行を依頼すれば逮捕される可能性を下げられる
自首する場合は、弁護士に捜査機関への同行を依頼することで、逮捕される可能性を下げることができます。
被疑者が単独で出頭した場合は、捜査機関が証拠隠滅や逃亡のおそれがあるとして逮捕する可能性が低くありません。
それに対して、既に弁護人をつけて自首した場合は、証拠隠滅や逃亡のおそれが低いと判断されて逮捕されず、在宅で捜査が続けられる可能性が高くなるのです。
自首せずに事件を解決できる可能性もある
罪を犯してしまった場合でも、自首せずに事件を解決することができればそれに越したことはないでしょう。
被害者がいる事件の場合は、示談をすることで捜査機関の介入なしに事件を解決することも可能です。
ただし、そのためには円満に示談交渉を行うことが重要です。
自分で示談交渉をする場合は、被害者が感情的になったり接触を拒んだりして話し合いが進まないこともよくあります。
そんなとき、弁護士に依頼すれば示談交渉を円満に進めることが期待できます。
弁護士に依頼するには費用がかかりますが、こちらの記事で弁護士費用について詳しく解説していますので、気になる方は参考になさってください。
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自首すべきかどうかで悩んだら弁護士に相談を
結論として、罪や犯人が捜査機関に発覚する可能性が高い場合は早めに自首すべきです。
しかし、そうでない場合は悩ましいところです。
自首することが法的に得策かどうかは、刑事事件に強い弁護士の見解を参考にして決断するのが望ましいといえるでしょう。
自首すべきかどうかについて一人で悩まず、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
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