養子縁組をすると、養子は法律上、養親の子として相続人になります。
そのため、実子がいる家庭で養子縁組をした場合や、再婚相手の連れ子との親子関係を明確にしていない場合などには、相続をきっかけに家族間の認識の違いが争いへとつながることがあります。
また、養子縁組そのものの有効性や相続分をめぐって争いになるケースも少なくありません。
この記事では、養子縁組によって起こり得る相続トラブルを事例やパターンとともに紹介し、トラブルを防ぐための対処法について解説します。
養子縁組で起こりやすい相続トラブルの事例
養子縁組による相続トラブルは
- 実子との相続分の違いに対する誤解
- 再婚家庭における親子関係
など、さまざまな場面で起こります。
まずは、代表的な事例を見ていきましょう。
事例1:養子が加わったことで実子の相続分が減り対立する
養子は法律上、養親の子となるため、養親が亡くなった場合には実子と同じ順位で相続人になります(※1)。
例えば、相続人が実子2人だけであれば、それぞれの法定相続分は2分の1です。
しかし、新たに1人と養子縁組をすれば、実子2人と養子1人で相続するため、それぞれ3分の1になります。
養子縁組をすること自体について家族に十分な説明がない場合、実子が

と感じ、兄弟間の対立につながるケースはめずらしくありません。
養子だからといって実子より相続分が少なくなるわけではないため、将来の相続を踏まえて養子縁組をする場合は、家族への影響も確認しておくことが大切です。
事例2:再婚相手の連れ子が相続できずトラブルになる
再婚した場合、配偶者の連れ子と再婚相手との間に、自動的に法律上の親子関係が生じるわけではありません(※2)。
例えば、母親が子どもを連れて再婚し、再婚相手と長年親子として生活していたとしても、養子縁組をしていなければ、その子は再婚相手の法定相続人にはなれないのです。
そのため、

という認識から、相続が始まった後にトラブルになる可能性があります。
連れ子に財産を相続させたい場合は養子縁組をするほか、遺言によって財産を遺贈する方法もあります。
再婚家庭では、法律上の親子関係がどのようになっているのかを事前に確認しておきましょう。
事例3:養子縁組の有効性をめぐって争いになる
相続開始後に、実子などから

と主張され、養子縁組の有効性そのものが争われるケースもあります。
民法第802条では、当事者間に縁組をする意思がない場合などについて、養子縁組を無効としています。
縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
一:人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。
(引用:民法|e-Gov法令検索)
ただし、相続税対策などの目的があったからといって、直ちに養子縁組が無効になるわけではありません。
最高裁判所は平成29年1月31日の判決で、専ら相続税の節税を目的とした養子縁組であっても、その理由だけで「当事者間に縁組をする意思がない」と判断しています(※3)。
養子縁組の有効性は、実際に法律上の親子関係を作る意思があったかなど、個別の事情を踏まえた上で判断される、ということです。
養子縁組による相続トラブルが起こる理由
養子縁組では、実際の家族関係と法律上の相続関係に違いが生じる場合があります。
相続が始まってから認識の違いに気付くと、遺産分割をめぐる対立につながりかねません。
養子と実子の相続順位・法定相続分に違いがない
養子は縁組によって養親の子となるため、実子と同じ第1順位の相続人です。
また、同じ順位の子が複数いる場合、養子と実子で法定相続分に差はありません。
子が複数いる場合の相続分は、原則として均等とされています。
そのため、実子からすると、養子が増えるほど自分の法定相続分は小さくなります。
養子縁組の目的や経緯が共有されていなければ、相続開始後に不満が生じる一因となるでしょう。
普通養子縁組では実親側との相続関係も残る
普通養子縁組では、養親との間に新たな親子関係が生じても、実親との親子関係は終了しません。
養子は、養親だけでなく実親についても相続人となる可能性があるのです。
例えば、普通養子となった人が子どもを残さず亡くなり、実親と養親がともに存命の場合には、双方が相続に関係することがあります。
家族が

と思い込んでいると、想定していなかった人が相続人となり、遺産分割が複雑になってしまうのです。
遺言の内容によっては遺留分をめぐる争いが起こる
養子縁組による相続トラブルを避けようとして遺言書を作成しても、その内容によっては遺留分をめぐる問題が生じます。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の一定の相続人に保障された最低限の遺産取得分です。
養子も法律上は子であるため、実子と同じく遺留分を持ちます。
例えば、「財産をすべて実子に相続させる」という遺言を残しても、養子の遺留分が侵害されていれば、養子から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
反対に、養子へ財産を集中させた場合には、実子の遺留分が問題になることもあるでしょう。
遺留分権利者及びその承継人は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
(引用:民法|e-Gov法令検索)
遺言書を作成する際も、養子と実子それぞれの遺留分を踏まえて内容を検討する必要があります。
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養子縁組による相続トラブルを防ぐための対処法
養子縁組による相続トラブルは、相続が始まる前に家族関係や財産の分け方を整理しておくことで防げる可能性があります。
養子縁組によって相続関係がどう変わるか確認しておく
まずは、養子縁組によって誰が相続人になるのかを確認しておきましょう。
実子がいる場合は養子が加わることで法定相続分がどう変わるのか、普通養子縁組であれば実親側との相続関係がどのように残るのかを整理します。
再婚家庭では、連れ子との養子縁組の有無も重要です。
家族として一緒に暮らしているだけでは法律上の親子にならないため、戸籍上の関係も含めて確認しておくとよいでしょう。
遺言書を作成して財産の分け方を明確にする
相続人が複数いる場合は、遺言書を作成し、誰にどの財産を取得させたいのかを明確にしておく方法があります。
特に、養子縁組によって実子の法定相続分が変わる場合や、特定の相続人に多く財産を残したい事情がある場合は、意思を遺言として残しておくことが重要です。
ただし、遺言があれば必ずトラブルを防げるわけではありません。
実子や養子には遺留分があるため、財産を一人に集中させる場合などは、遺留分侵害額請求まで想定した内容にする必要があります。
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家族だけで判断せず専門家へ相談する
養子縁組をすると、親子関係だけでなく相続人の範囲や法定相続分も変わります。
一度縁組をした後に

と気付いても、簡単に元の状態へ戻せるとは限りません。
また、相続開始後に養子縁組の有効性や遺留分をめぐって対立した場合は、当事者同士だけで解決することが難しいケースもあります。
養子縁組をすることで相続にどのような影響が生じるのか不安がある場合は、事前に弁護士へ相談し、家族関係や財産状況に応じた方法を検討しましょう。
養子縁組による相続トラブルは事前の対策が大切
養子は実子と同じ順位で相続人となるため、養子が加わることで実子の法定相続分が変わります。
また、再婚相手の連れ子と養子縁組をしていなければ、その連れ子は原則として再婚相手の法定相続人にはなりません。
養子縁組の目的や財産の分け方について家族間で認識が異なると、相続開始後に実子や兄弟との対立につながる可能性があります。
養子縁組を検討している段階から、相続関係や遺留分への影響まで整理しておくことが大切です。
すでに相続トラブルが起きている場合や、養子縁組をした場合の相続関係を正確に判断することが難しい場合は、弁護士への相談を検討しましょう。
参考サイト

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