慰謝料 示談

経歴詐称を理由に婚約破棄はできる?慰謝料の相場と共に弁護士が解説

大人の男女がベンチに座っている後ろ姿です。

昨今、マッチングアプリ、合コン、お見合いパーティー等、出会いの場は多様化しています。

リクルートブライダル総研による2022年の婚活実態調査によれば、マッチングアプリを利用して結婚した人の割合は15.1%にのぼったそうです。

その一方、マッチングアプリがきっかけで婚約した場合、実は婚約者の素性が良く分からない、ウソをつかれているのではないかという不安の声はよく耳にします。

実際、婚約には至らなくても、マッチングアプリで出会った婚約者の経歴が全くウソだったいうケースも少なくありません。

実際に婚約者の年齢詐称などの経歴詐称が発覚した場合に婚約解消はできるのか、婚約解消をしたら逆に婚約者から慰謝料請求されるのではないかなど、心配な方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、年齢詐称などの経歴詐称で婚約解消ができるのか、また慰謝料請求の可能性や慰謝料額の目安について、できることやできないことを含め、対応策について解説します。

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婚約破棄が成立する条件とは

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そもそも婚約とはどういう状況を言うのか口頭の約束でも婚約になるのか婚約破棄として認められる条件にはどんなものがあるのか、見ていきましょう。

婚約成立と言える条件

婚約は、婚姻約束のことをいい、将来夫婦となることを内容とする合意、契約のことです。

婚約は口約束でも成立し、過去の裁判例では、親兄弟に婚約者を紹介しなかった場合や、結納等をしていなくても成立するとされています。

ただし、将来夫婦として共同生活を営む意思や覚悟が必要です。

そこで、日常会話の中で交わされる一時の感情の盛り上がりによる発言、リップサービス、性的関係を維持するための口実では婚約成立が認められない場合もあります。

また、口約束でも婚姻は認められるとは言え、後述するように婚約破棄したり慰謝料を請求する場合を想定すると、婚約が成立したことの客観的な証拠がある方が望ましいです。

具体的には、

  • 婚約指輪の購入や交換
  • 結納の取り交わし
  • 親族や友人に婚約者として紹介したこと
  • 結婚式場の下見や新居探し
  • 長期間の性的関係や妊娠

などがあります。

婚約破棄とは

婚約破棄」とは、成立している婚約を一方的に取りやめることです。

婚約をすると、婚約という契約を履行するために誠実に努力することがお互いに求められます。

そのため、婚約破棄などの不履行があれば契約違反として損害賠償の責任が生じたり、破棄の理由によっては婚約者に損害を与えたとして不法行為責任が発生する場合もあります。

たとえば、婚約者が実は既婚者だった、多額の借金があったなどの経歴詐称や、婚約を維持するのが困難な事実が発覚した場合は、婚約破棄の理由となり、婚約者に慰謝料などの損害賠償を請求できる場合があります。

反対に、正当な理由がなく一方的に婚約を破棄すると、破棄した側が損害賠償の責任を負うこともあります。

年齢詐称や心変わりは?婚約破棄の具体例

マッチングアプリなどの出会いの場でよくある詐称内容には、年収や勤務先、年齢、居住地や出身地、結婚歴の有無など多岐にわたります。

これらが婚約破棄の理由となるのか、具体的に見ていきましょう。

婚約破棄の正当な理由

婚約者がついていたウソが重大で、婚約を継続することのできないようなものであれば、婚約破棄の正当な理由になります。

実務では、裁判所が正当な理由の有無を判断しますが、その際は、交際期間、婚約破棄に至った理由、性的関係の有無など、2人の関係や事情を総合的に検討し、社会常識的に考えて婚約破棄してやむを得ないといえるかどうかが判断されます。

ケースバイケースで判断されますが、概ね次のような事情があれば正当な理由があると認められやすいと言えます。

  • 婚約者が他人と性的関係を持った
  • 婚約者が行方不明になった
  • 婚約者が回復不能な重い精神病や病気を患った
  • 婚約者が性的不能になった
  • 婚約者が仕事、年収などの経歴詐称をしていた
  • 婚約者から暴力やモラハラを受けた

また、過去の裁判例では、婚約者が結婚式直前に家出し挙式の開催が不可能になったり、結婚式当日や初夜に常軌を逸した言動があった場合に婚約破棄の正当な理由と認めたケースがあります。

婚約破棄の不当な理由

一方、婚約破棄に正当な理由が認められないと判断されやすい理由には、以下のような例があります。

  • 婚約者との性格の不一致、価値観の相違
  • 親の賛成が得られない
  • 婚約者以外に好きな相手ができた
  • 婚約者の宗教が自分と異なりやめない
  • 婚約者の出自(被差別部落の出身、外国籍など)
  • 婚約者の美容整形が判明した
  • 気分が変わった

上記のような理由で婚約破棄をした場合、破棄した側が損害賠償を請求される場合があります。

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経歴詐称で婚約破棄できる場合とできない場合の具体例

女性の弁護士が、それぞれ◯と✗が書かれたプラカードを持っている写真です。実際に、経歴詐称があった場合に婚約破棄や慰謝料の請求が認められた場合と認められなかった場合の例をご紹介します。

年齢詐称を婚約破棄の正当な理由と認めた裁判例

実際には52歳の女性が、24歳と年齢詐称をしていた事例です。

女性と婚約していた男性が、女性が年齢や出身についてウソをついて男性を騙したために結婚意思を持つに至ったとして、詐欺による婚姻の取り消しと1,000万円の慰謝料請求をしました。

裁判所は、52歳の女性を24歳であると誤解して信じたことは、結婚意思に重大な思い違いがあったと言えるとして、婚約破棄の正当な理由があると認めましたが、両者の関係は愛情に基づくものとして、慰謝料は50万円のみ認めました(東京高判H18.11.21)。

国籍が婚約破棄の正当な理由と認められなかった裁判例

朝鮮籍であることを理由に、女性が婚約者の男性から結婚式直前に婚約破棄された事例です。

裁判所は婚約破棄は朝鮮人という民族差別の存在に起因したものだとして、破棄された女性の精神的苦痛に対する慰謝料として150万円を認めました(大阪地判S58.3.8)。

男女関係の経歴詐称は婚約破棄の正当な理由と認めた裁判例

男性が内縁の妻の存在を隠して女性と婚約し、妊娠させたうえ堕胎させるなどした事例で、女性の精神的苦痛に対する慰謝料として200万円の慰謝料を認めました(東京地裁S44.10.6)。

婚約破棄した場合の慰謝料額の目安

左に電卓、右に一万円札が何枚か入った封筒が写っている写真です。封筒からは一万円札が見えています。上記の裁判例でもご紹介したように、婚約破棄で認められる慰謝料の額はケースによって様々です。

ここでは、慰謝料額の相場と、慰謝料額を増額させる相場について説明していきましょう。

婚約破棄の慰謝料の相場について

婚約破棄された場合、慰謝料の目安としては50万円から300万円が相場です。

自分が一方的に破棄された側だけでなく、婚約破棄をする正当な理由があり、婚約破棄をせざるを得なかった場合に相手に請求する場合も同様です。

ただし、この金額は目安で、実務では婚約期間や結婚に向けた2人の状況、婚約破棄の理由や性的関係の有無等を踏まえ、個別の事情に応じて金額が決定されます。

慰謝料を増額になるケース

慰謝料が高額になる事情としては、婚約破棄の理由が悪質な場合や、精神的ダメージが大きい場合などです。

具体的には、次のようなものがあります。

  • 交際期間や婚約後の期間が長い
  • 婚姻したことを多くの人が知っている
  • 新居の購入やローンの借入れ等新生活の準備が進んでいる
  • 婚約者の浮気や経歴詐称があった
  • 婚約破棄の時期が結婚間近だった
  • 結婚に向けて退職するなどの事情があった
  • 婚約者の子を妊娠、出産していた

慰謝料以外に婚約破棄で請求できるお金

慰謝料とは、精神的苦痛を損害とする損害賠償金のことを言います。

婚約破棄で出費が無駄になるなどの財産的損害が生じた場合、慰謝料とは別に請求することができます。

具体的な財産的損害の内容としては、婚約や結婚の準備で出費せざるを得なかった費用(積極的損害)と、婚約者の経歴詐称などで婚約破棄せざるを得ない事情がなければ得ることができた費用(消極的損害)の2種類があります。

具体的には次のようなものが含まれます。

  • 婚約指輪の購入費用や結納金
  • 結婚式のキャンセル費用や招待状の発送費用
  • 新婚旅行のキャンセル費用
  • 新居の賃貸借契約費やローン
  • 結婚を理由にした退職等による減収

ただし、経歴詐称で婚約破棄せざるを得なかったとしても、必ずしも詐称した相手に財産的損害の全額を請求できるとは限りません。

婚約破棄に正当な理由がある場合でも、相手の悪質性が低い場合等は、財産的損害を2人で分担するケースもあります。

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婚約者の年齢詐称で婚約破棄を検討している場合は弁護士に相談を

女性弁護士が六法全書を片手で抱え、もう片方の手を挙げている写真です。「婚約者が年齢詐称していた」「経歴詐称をしている婚約者と結婚するのが不安だがどうしたらいいか」など、婚約者の経歴詐称を知った方のお悩みは深いと思います。

婚約、結婚は、多くの方にとって人生の一大事です。

それだけに、詐称されていたことが許せない、婚約破棄をして慰謝料を請求したいという方も多いのではないでしょうか。

しかし、詐称の内容や程度によっては、正当な婚約破棄の理由と認められず、逆に慰謝料を請求されるリスクもあります。

そのような場合は、まずは弁護士にご相談ください。

弁護士であれば、ご自身の婚約者のケースで婚約破棄できるか、過去の裁判例等をもとにアドバイスをすることができます。

また、婚約していることを裁判所に認めてもらう為の証拠の収集、婚約破棄の正当性を裏付ける事情の証明など、今後裁判になる場合を想定した対策も任せることが可能です。

また、裁判になった場合は、弁護士に委任していれば、代理人として法廷に出てもらうことも可能なので、ご自身は日常生活を支障なく送ることができます。

婚約者に年齢詐称等があった場合、ご自身1人で対応する負担は非常に大きいものです。

婚約破棄でお悩みの方は、弁護士にお気軽にご相談ください。

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