昨今は画像を手軽にSNSなどにアップすることができるようになったためか、インターネット上で拾った画像を無断使用するケースがたびたび見受けられます。
個人だけでなく、企業の販売ページなどでも、他人がネットにアップした画像を無断使用して商売に利用していることも少なくありません。
そればかりか、地方自治体においてまでウェブサイトに画像を無断使用していた事例もあります。
ネットで拾った画像の無断使用は原則として刑事でも民事でも違法であり、逮捕される可能性もゼロではありません。
この記事では、画像を無断使用してしまったらどのような責任を負わなければならないのか、また逆に、自分が撮影してアップした画像などを他人に無断使用されたら、どのように対処すればいいのかについて解説していきます。
画像の著作権の問題は「知らなかった」では済まされません。ネットでの画像の利用方法が気になっている方は、ぜひ参考にしてみてください。
他人の画像を無断使用しているかもしれない方
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画像を無断使用してしまったときに負わなければならない責任
ネット上にある他人の画像を無断使用すると、刑事では懲役刑や罰金刑を科される場合があり、民事でも相手から損害賠償請求を受ける場合があります。
その内容を詳しくご紹介する前に、画像の無断使用がどうして違法なのかをご説明します。
ネット上画像の無断使用は著作権侵害になる
写真に限らず、イラストや絵、文章もそうですが、ネットに掲載されている他人のコンテンツには著作権があります。
著作権とは自分の思想や感情を表現したもの(著作物)を独占して利用し、支配することができる権利です。
他人が制作した画像は、その本人の許可がない限りその人だけが利用できるものです。
その画像を無断で転載すると、その人の著作権を侵害することになります。
ネットに掲載されている画像を簡単にダウンロードや保存できるシステムにも問題がないわけではありません。
保存して自分で見て楽しむだけなら問題ありませんが、無断使用は著作権を侵害する違法行為になるので注意が必要です。
画像の無断使用による刑事責任は意外に重い
画像の無断使用はれっきとした犯罪です。
刑罰は「10年以下の懲役」または「1000万円以下の罰金」であり、この両方が科されることもあります(著作権法121条)。
この刑罰は違反者が個人の場合ですが、法人が違反者の場合は「3億円以下の罰金」となります。
法人に対してこれだけの刑罰が科される上に、実際に違反行為をした従業員等には別途、個人として上記の刑罰が科されます。
著作権法違反で逮捕されることもある
著作権法違反は犯罪なので、逮捕された例はたくさんあります。
例えば、人気漫画「ワンピース」の内容を画像ファイルにして海賊版サイト「漫画村」で公開したとして、サイトの運営者が逮捕されました。
逮捕事例のほとんどは、
- 画像を無断使用した回数が多く
- お金儲けに利用していて
- その行為によって著作権者の収益が妨げられた
というケースになっています。
個人が趣味でやっているSNSに画像を何点か無断使用した程度であれば現実には逮捕されることはありませんが、それでも犯罪であることには変わりありません。
逮捕されるかどうか不安に思う方には、こちらの記事が参考になると思いますので、ご参照ください。
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示談すれば逮捕されない?
著作権法違反の罪は「親告罪」といって、被害者の告訴がなければ処罰されることはありません。
告訴とは、被害者が警察などの捜査機関に犯罪被害を受けた事実を申告して、犯人の処罰を求める訴えのことです。
単に被害を申告するだけの「被害届」とは異なり、告訴がなされると警察も本格的に捜査を行わなければならなくなります。
著作権者から画像の無断使用を指摘されたら、相手と話し合いをして折り合いをつけるのが得策でしょう。
示談が成立して告訴を取り下げてもらうことができれば、刑事罰を科されることはありません。
示談についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
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画像を無断使用するとお金を請求される
民事上の責任は、刑事上の責任とは別に負わなければなりません。
被害が軽微なために警察が動かないようなケースでも、民事上の責任を免れないことがあります。
具体的には、画像の著作権者から損害賠償請求などでお金の支払いを請求されるのが通常です。
お金の支払い義務が発生するのは、画像の無断使用によって相手の収益を妨害したり、こちらが不当な収益を得たことを相手が証明した場合に限られます。
趣味でやっているSNSで画像を無断使用しても、何も収益を得ていないのだからお金の支払い義務はないと思われるかもしれませんが、そうだとは限りません。
その画像が有料で売られているものであれば、無料でアップしたことによって相手の収益を妨害していることになります。
この場合は損害賠償として相手にお金を支払わなければなりません。
いくら支払う必要があるのかというと、民事の裁判例によって相場が形成されつつあります。
現在の相場としては、有料画像の提供企業として大手の「アマナイメージズ」を利用した場合の正規料金を適用するというものです。
アマナイメージズの料金表を掲げておきますので、気になる方はご覧ください。
違法な無断使用にならない画像の利用法とは
SNSやサイトを運営する際に画像を利用するのであれば、正しい利用法を知っておきましょう。
基本は著作権者の許可を得ること
他人のSNSやサイトに掲載されている画像を転載したい場合は、その運営者に連絡を取って許可を得るのが基本です。
トラブルを避けるためには、どの画像を利用したいのかはもちろん、
- どのような場所で利用したいのか
- 利用する目的
- 画像を加工して良いかどうか
- どんな加工をするのか
についてまで細かく話し合って許可を得ることが大切です。
このような作業をしたくないのであれば、著作権フリーの画像を利用することです。
ただし、著作権フリーの画像であっても利用する際に注意すべき点があります。
著作権フリーの画像を使用するときの注意点
著作権フリーの画像を提供しているサイトはたくさんありますが、それぞれのサイトに独自の利用規約があります。
利用する際は必ず利用規約を確認し、守るようにしましょう。
注意が必要な点としては、主に以下のような点があります。
- 画像の加工が認められているか
- 画像掲載元の社名やURLを表記する必要があるか
- 画像掲載元へのリンクを貼る必要があるか
- 収益目的の利用が可能か
- 人物画像の場合、撮影されている人自身が画像利用を許諾しているか
また、画像はそれぞれのサイトで定められている正規の取得方法に従って取得したものを使用しましょう。
この点、使いたい画像と全く同じ画像が他人のサイトに掲載されているのをGoogle画像検索などで見かけることもよくあり、そこから簡単にダウンロードすることができてしまいます。
しかし、このような方法で取得した画像を使用することは画像を提供しているサイトが認めていないため、著作権侵害となります。
画像の「引用」はほとんどの場合著作権法違反となる
他人の著作物を「引用」するためにはルールがあります。
そして、ルールを守って引用するのであれば他人の画像を無断で転載しても問題ないと考えている人が多いですが、極めて危険です。
たしかに、ルールを守って引用する場合は何の問題もありません。
しかし、画像を使用する場面に限っては、「ルールを守った引用」に該当する場合はあまりないのです。
他人の著作物を引用するときに守らなければならないルールは、以下の5点です。
- 量的にも内容的にも、自分のコンテンツがメインであり、引用するコンテンツがサブであること
- 引用する必要性があること
- 引用した部分が他の部分と明確に区別されていること
- 出典元が明記されていること
- 引用する内容を改変していないこと
画像を引用する場合、②の「必要性」が問題となります。
ご自分が他人の画像を使用したいと思う目的を考えてみてください。
その画像がなければ自分のコンテンツを発信することができないほどの「必要性」があることはほとんどないと思われます。
問題は「正当な引用」と言えるかどうか
著作権法第32条1項には、以下のように定められています。
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
ここで注目していただきたいのは、「報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内」という部分です。
例えば、画像の内容に何らかの問題があって批評する目的の記事を発信する際には、問題となった画像そのものを掲載しなければ批評の意味が伝わりづらくなります。
この場合に問題の画像を引用することは、引用の必要性があり、「正当な引用」と言えるでしょう。
これに対して、自分のブログの見栄えを良くするために風景画像や人物画像を挿入したい場合や、説明が難しい部分で分かりやすい画像を掲載したいという場合は、引用の必要性が認められません。
他人の画像を引用しなくても見栄えの良い画像は入手できますし、説明が難しい部分でも自分で分かりやすい図表や画像を作成して掲載することが可能だからです。
このような場合に画像を引用すると、出典元を明記していても著作権法違反となるのでご注意ください。
ツイッターの画像無断使用に要注意
細かいことですが、ツイッター特有の注意点があるのでご紹介しておきます。
ツイッターには埋め込み機能というものがあります。
この機能を使うと、自分のブログやサイトに他人のツイートをそのまま表示することができます。
この表示方法も一種の引用に当たりますが、ツイッターのルールに従った方法なので、基本的には問題ありません。
ただ、なかにはツイートや画像の無断転載を禁止している投稿者もいます。
ツイッターのルールを守っている限りは著作権法違反になるとは考えがたいですが、トラブルは避けたいところです。
無断転載を禁止している投稿者のツイートや画像を埋め込み機能でブログやサイトに表示するときには許可を得るか、削除を要請されたらすぐに削除するなど、慎重な対応を心がけるべきでしょう。
画像を無断使用されてしまった場合の対処法
現代のインターネット社会においては、著作権の問題をあまり意識していない人が多いのか、画像の無断使用は頻繁に見受けられる状況となっています。
自分が撮影した画像をブログやSNSに掲載していたところ、無断で転載される場合もあります。
プロの写真家やイラストレーターが自分の作品をブログで紹介したところ、無断で使用される場合もあります。
そのような被害に遭った場合や、被害に遭うのが心配な場合はどのように対処すれば良いのでしょうか。
Google画像検索で無断使用を発見できる
まず、自分の画像が無断使用されていないかどうかは、Google画像検索を使って簡単に調べることができます。
自分の画像のURLをGoogle画像検索の検索窓にコピペして検索すると、その画像が掲載されているサイトがあれば表示されます。
その中に、自分が使用を許可していないサイトがあれば、無断使用されているということになります。
パソコン(スマホ)内の画像を直接アップロードして検索することもできます。
無断使用されたサイトやGoogleに通報する
画像が無断使用されているのを見つけたら、早めに削除してもらうことが最優先です。
多くのサイトや画像掲示板などには、著作権侵害を報告するフォームが用意されているので、まずはそこから削除依頼を出してみましょう。
Googleが提供しているサービスであれば、『Googleからコンテンツを削除する』という総合的なフォームもあるので、そこから削除依頼を出すのも良いでしょう。
削除依頼を出しても任意に削除してもらえない場合は、プロバイダを調べて対応を求めることもできます。
プロバイダに対応を求める方法は、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
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無断使用した相手に警告文を送る
無断使用の画像が掲載されているサイトが企業のサイトの場合や、個人のサイトでも連絡先が掲載されている場合は、運営者の連絡先に警告文を送ることもできます。
警告文には、以下の点を漏れなく盛り込みましょう。
- 問題となっているサイトのタイトル(またはURL)
- 問題となっている記事のタイトル(またはURL)
- 問題となっている画像のURL(またはタイトル)
- その画像の著作権が自分にあること
- その画像の掲載が著作権法に違反していること
- ただちに画像を削除すべきこと
- 誠意ある対応がない場合は法的手段をとる意思があること
損害賠償額については、この警告文の中に直接明記して請求することできますが、「まずは協議したいので連絡がほしい」と書くのでも構いません。
警告文を作成したら、メールで送信するのでも構いませんが、相手の住所が判明している場合は内容証明郵便で送付するのが望ましいです。
内容証明郵便にすることで相手に心理的な圧力を与えることができますし、後に裁判をするときの証拠にもなるからです。
画像無断使用の被害で訴訟を起こせるか
画像を無断使用されてサイトなどに削除依頼を出したり、相手に警告文を送っても納得できる対応をしてもらえなかった場合は、法的手続しか残っていません。
画像を無断使用されたことで訴訟を起こすのは可能ですが、注意すべき点もあります。
刑事で訴訟を起こすのは難しい
被害者が告訴をすれば、刑事で訴訟になる可能性もあります。ただ、現実的にはほとんど期待できません。
まず、被害が軽微であれば警察が動いてくれませんし、警察が動くほどの被害であっても、訴訟を起こすかどうかを決めるのは警察から捜査を引き継いだ検察官です。
画像の無断使用によって相手がよほど大きな収益を上げているような場合でもなければ、正式な訴訟になることはあまりありません。
民事で訴訟を起こすのは自由
民事では、経済的な損害を受けたと思う人であれば、誰でも自由に訴訟を起こすことができます。
精神的損害を受けた場合でも、慰謝料という金銭に換算できるので訴訟を起こせます。
ただし、訴訟を起こす際には、どのくらいの金額を損害賠償として相手に請求できるのかを確認する必要があります。
趣味で撮影した画像を、相手も趣味でやっているSNSに転載したような場合では、こちらに損害が発生していると言えるのかどうかも難しい面があります。
損害が発生していたとしても僅かな金額であれば、弁護士費用の方が高くついてしまい、費用倒れになってしまう恐れもあります。
損害賠償額の目安については、弁護士に相談してみた方が良いでしょう。
こちらの記事では、弁護士費用について解説していますので、参考にしてください。
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自分で訴訟を起こす方法もある
通常の訴訟は手続きが複雑で手間もかかるため、弁護士に依頼しないとなかなか難しいですが、自分で訴訟を起こす方法もあります。
少額訴訟であれば通常の訴訟よりも手続きが簡単です。
また、訴訟ではありませんが支払督促や調停など、さらに簡単に申し立てることができる裁判手続きもあります。
弁護士の法律相談は無料で受けられるところもあるので、無料相談で自分に合った手続きを教えてもらうのも良いでしょう。
こちらの記事では、弁護士の無料相談について解説していますので、参考にしてください。
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画像の無断使用で著作権が気になる場合は弁護士に相談を
画像の無断使用をしてしまった人のほとんどは、インターネット上の画像の著作権のことをよく知らないためにうっかりやってしまっていると思われます。
インターネット上では他人の画像を無断使用することも技術的には簡単にできる状態なので、実際のところ、無断使用されている例は日常的に頻繁に見受けられます。
そのぶん、オリジナルの画像を発信している人にとっては、無断使用の被害に遭いやすい状況であるとも言えます。
ただ、画像の無断使用が著作権法に違反する違法なものかどうか、さらには損害が発生していると言えるのかどうかについては微妙なケースも多々あります。
無断使用してしまった人も、無断使用された人も、不安に思われるならば弁護士に相談することをおすすめします。
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